プロローグ 推しのVtuberが俺にだけ重い愛を向けてくる
俺はPCのモニター画面にこびりついていた。
もうすぐ目当ての生配信……伝説が始まるからだ。
画面はいまだブラックアウトしており、何も映っていない。
その代わりに待機所に映る、画面の左下の同接の数は数万人を超えて、期待を寄せているコメントが物凄いスピードで流れている。
これが会場だとしたらドームでライブができる程のとてつもない人数。
これから始まる物語を、多くの人が固唾をのんで見守っている。
そして、とうとうオープニングムービーと共に、画面に三日月のアバターをつけた少女のアバターが出現した。銀色の長髪に、水色の瞳。頭にはトレードマークの三日月が付いている。
『キターーーーーー!!』
『伝説の始まり!』
『wktk』
彼女は少し裏返った声で軽めにマイクテストをする。
『あー、あー!。マイクテスッ! 皆さん聞こえてますか!?」
『声可愛いいいいいいい』
『うおおおおおおおお!!!』
『癒しボイスえぐい!?!?』
『こんばんはー!!!』
『天才来たか……』
『声好きです。結婚してください』
物凄い勢いで流れるコメントの中、彼女は高らかに宣言した。
「こんばんナイト! みんなを照らす輝く月! 天宮ルナですっ!」
大手Vtuber事務所所属の期待の大型新人。
何十万、何百万人に愛されるであろう、輝くアイドル。
そして、リスナーとしてそれを見守る俺。
デビューしたばかりの俺は、リスナーとしてその配信を楽しむだけと思っていた。
だけど。
——彼女がデビューをしてから一年も満たない月日が経過した頃だった。
俺と彼女の関係性に異変が起き始める。
「それでは、今日も配信にきてくれてありがとうございました! では、乙ルナでした~!」
いつも通りルナが配信を終えたので、俺はPCをブラウザバックする。
その直後だった。
配信を終えたばかりの俺のスマホの通知音が鳴る。
表示された通知はSNSや公式アプリのものでもない。 個人間の――メッセージアプリのやり取り。しかも相手は配信を終えたばかりのルナ本人だった。
『ねぇ、今日の配信ちゃんと観てましたか?』
『他の子の配信に浮気してないですよね?』
『勿論見てたよ』
リスナーの俺に個別でメッセージを送ってくる彼女。取り敢えず返信をする俺。
『良かったぁ。配信中、君のコメントが見つけられなくて不安になっちゃいました。他の子の配信を観てたら許してなかったかも』
『君だけは、私だけのリスナーでいて欲しいから』
『だから、浮気は絶対に許しませんからね?』
いや、あの。ルナの配信には俺以外にいつも万以上のリスナーが配信観てるじゃん……。
どうして、俺にだけそんなにこだわるんだ。
俺はただのリスナーなのに、いつのまにか推しのVtuberから重い愛を向けられ、執着されるようになっていた。
これは俺が推しのVtuberを応援してたら、逆に俺が推しから重い愛を向けられるようになった経緯を語る、そんな感じのお話だ。




