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姑とボロ屋敷に同居したら幽霊が出たけど、どうみても姑なんですけど!?

作者: ぱんねこ

初めまして、私の名前はあい。


旦那のケンジとは結婚生活5年目です


ケンジはとても穏やかで優しい旦那で

幸せな結婚生活だったのですが…


ケンジ「あい…悪いんだけど母さんと同居してもらえないかな?」


あい「え…」


ケンジ「母さんももう年だし、介護が必要な年齢なってくるだろ?

最近転んで怪我したみたいで…家事も大変そうなんだよ

俺は父が早くに亡くなってシングルマザーで母さんには苦労かけたからさ…


面倒見てあげたいんだ…」


あい「そう…」


ケンジの気持ちもわかります。

うちの両親はどちらも健在で元気ですし

私の兄夫婦が面倒を見て、仲良くなっているようなので

心配ありません。ですが、ケンジは


ケンジ「お兄さんにだけ苦労はかけられないから」


と、毎月私の両親実家にも3万円の仕送りと、

兄夫婦の子供へのお年玉をかかさない、義理堅くて

とても優しい人なのです。


なので…私もケンジのお願いを聞くことにしました。


こんなに優しいケンジさんを育てたお母さんなら…

きっといい人!実際以前にお会いした時にも


ゆうこ「ケンジと結婚してくれてありがとう…」


と涙ながらに訴えてきたのです。


と、思っていたのに…

ゆうこ「あいさん!あんた、この家に住むんなら、しきたりってもんがありますよ!」

同居のために旦那の実家を訪れて、開口一番がこれ!?

私の夫、ケンジの実家は築150年の古い屋敷で、

代々続く老舗の呉服屋を営んでいる。

その屋敷で姑との同居生活が始まったのだ。

あい「はい、お義母さん。できる限り努力させていただきます」

ゆうこ「ふん。口先だけね!すぐ追い出してやるから!」

あい(お義母さんってこんな人だったの!?

第一印象と違いすぎるんだけど…)

ケンジ「母さん!そんな言い方はないだろ!

せっかく同居することになったんだから仲良くやろうよ」

ゆうこ「ふんっ!同居なんて頼んでないよ!あんたが無理やり決めたんじゃないかい!」

ゆうこさんは鼻で笑うと、廊下をずんずんと歩いていった。

同居が始まってからは、ゆうこさんは

毎日のように私の欠点を指摘してきた。

ゆうこ「あ、あなたお茶の入れ方下手ねぇ!

そんなんじゃ他人様に出せないわよ!」

ゆうこ「掃除するときは、家をきれいにするんじゃないよ!

心をきれいにする感覚でやるんだ!

トイレ掃除は私と日替わりで毎日必ずしてもらうよ!」

あい「…はい…」

ゆうこ「文句があるんだったらいつでも家を出ていきなさい!

あんたみたいな嫁と同居したいなんて私は思ってないんだからね!」

旦那に相談してみても

ケンジ「どうしてだろう…母さんはそんな人じゃないのに…

本当に子供のころからすごく優しい人なんだよ…

あんな姿初めて見るんだ」

あい「…う~ん…嫁姑ってなると普段優しい人でも

豹変するって話は聞いたことあるけど…」

ケンジ「怪我をしたストレスでおかしくなっちゃったのかな…」

あい「更年期とかかもしれないね」

ケンジ「そうか…本当ごめんね…

あいがどうしても我慢できないなら言ってくれ」

あい「もう少し様子を見てみるよ…

嫌味っていっても、そんなに大したことないし」

それを部屋の外か聞き耳をたててこっそり聞いてる姑

ゆうこ「…まだダメなのね…こうなったら…」

ある日、突然お義母さんが突拍子もないことを言い出した。

ゆうこ「実はねぇ、この屋敷幽霊が出るのよ」

あい「え!?」

ゆうこ「歴史の長い家だからねぇ…特に幽霊は

若くてきれいな女に恨みがあるみたいで、きっとそのうち

あいさんはターゲットにされるよぉ~くっくっく」

あい「若くてきれいな女だなんて、私の事思ってるんですか?

ありがとうございます!」

ゆうこ「は?きゃ、客観的に見てそう思ってるだけだよ!

別に褒めたわけじゃないわよ!」恥ずかしがるお義母さん


そしてその日から、アレが始まりました。

深夜二時。トイレに行こうと廊下に出ると、異様な雰囲気が漂っていた。

廊下の突き当たりに、白い人影が立っている。

長い黒髪が顔を覆い、血で染まったような着物をまとっていた。

ゆうこ「ウフフ...あいさん...」

かすれた声が響く。人影がゆっくりとこちらに近づいてくる。

あい「あら!お義母さんなにしてるんですか!」

私は目を輝かせた。

「すっごい!なんですかこの演出!血のりの使い方うまいですね。それに、声の出し方...もしかして声優の経験とかあるんですか!?」

人影が立ち止まる。

ゆうこ「...は?」

あい「あ、でも髪の毛の垂らし方は『貞子』っぽさを意識されてます?でも、着物の色合いは『朧村正』寄りですよね?ゲームとホラー映画のミックス感、たまりません!」

私は嬉々として人影に近づいていった。

あい「あ、このメイク、近くで見せていただいていいですか?写真撮らせてください!」

ゆうこ「ぐぬぬぬ…わ、私は幽霊です!あなたのお義母さんじゃありません!」

人影はそういうと、慌ててさっさと廊下の向こうへ消えていった。

あい「あれ…いっちゃった…お義母さん何がしたかったんだろ?」

実は私、幼い頃からホラーゲームが大好きで、お化け屋敷には年間パスポートを持っているほど。得意分野は日本のホラー作品で、貞子から伽椰子まで、名作と言われる作品は全て制覇している。

あい「もしかして…お義母様がホラー好きだったなんて!共通の趣味ができてよかった!

きっと私と仲良くなろうと歩み寄ってくれようとしてるんだわ!」

場所・夫婦の寝室

私は喜んでケンジにそう報告すると

ケンジ「えっ、母さんが?」

ケンジ「俺が子供の頃、母さんはホラー映画を見るのも嫌がってたけどな...」

あい「そうなの?じゃあ昨日の演出は...」

ケンジ「もしかして…嫌がらせなんじゃないか?

母さんほんとどうしちゃったんだよ…俺から注意しておくよ」

あい「え、ちょっと待って!ダメだよ!もったいない!」

ケンジ「もったいない…?」

あい「だって、すっごい楽しいし!

アレがこれから見れるなら、これからも

同居楽しめるよ!」

ケンジ「…そ、そうなの?」

あい「うん!こんなイベントがあるなら同居してよかった!

お義母さんの昼間の嫌味なんて可愛いもんだし!」

ケンジ「わかった…でも嫌になったら行ってね」

あい「うん」

午後、台所で家計簿をつけていると、ゆうこさんが現れた。

ゆうこ「あいさん!」

あい「はい、お義母さんどうしました?」

ゆうこ「...あんた、なにか見なかった?」

あい「はい!素晴らしい演出でした!特に、着物の血のりの付け方...

お義母さんすごい技術ですね!やっぱ呉服屋さんやってると

そういうメイクのお勉強もしたりするんですか?」

ゆうこ「なっ...」

ゆうこさんの顔が引きつる。

ゆうこ「わ、私がそんなことするわけないでしょうが!

それは幽霊だよ!怖がりなさい!幽霊に取り憑かれたら怖いでしょうが!」

あい「えー…でも…どう見てもあれはお義母さんそっくりでしたけど」

ゆうこ「違うよ!こ、この家に昔からいる幽霊だからきっと親戚みたいなもんなのよ、だから見た目が似てるだけ!あれは幽霊!!」

あい「はぁー…まぁ、お義母さんがそういうなら…そうなんですかね」

ゆうこ「や、やっとわかったかい!これからも

きっと幽霊があんたを呪うよ、怖けりゃこの家を出ていきなさい」

あい「う~ん、でもまだ家を出ていくほど怖くはないというか…」

ゆうこ「もっと怖かったら家を出ていくのかい?」

あい「…そうですね、本当にすごく怖かったら出ていくかもしれません」

私がそういうとお義母さんは何かやる気がでたようでした。

それからというもの、ゆうこさんの「おどかし作戦」は毎晩のように続いた。

ある夜は、天井から逆さまにぶら下がる姿で登場。

あい「おぉ!なんてタイミング!これは怖いです!う~ん、でも、首の角度がもうちょっと...こうすると、より恐怖感が出ますね…てかどうやって降りるんですか?」

ゆうこ「お、おろしなさい!」

あい「え…いいですけど…協力を求める幽霊とかいますかね…?」

ゆうこ「う、うるさいわね!」

私がおろしてあげると、お義母さんは一目散に逃げていきました。

また別の夜は、庭から這いずり寄ってくる姿で。

あい「ぬぐぉおおお」

ゆうこ「すごい!『犬鳴村』テイストですか?

でも、這い方のスピードが早すぎるかも。もっとゆっくり、こう...」

私が実演して見せると、お義母さんは

あい「ひぃいい!!こわっ!」

とビビッて逃げていきました。

私の添削によってお義母さんのおどかしの演出は、

日に日にクオリティが上がっていく。

血糊の質感が本物そっくりになり、特殊メイクも本格的に。白装束の質も上がり、動きもより洗練されていった。

あい「お義母さん、最近の幽霊どんどんクオリティーあがって怖くなってきてるんですよ

このままいったら私もうすぐ出ていきたくなるかもしれません」

ゆうこ「え!?本当かい?」

あい「はい~」ニコ

ゆうこ「普通の嫁なら、とっくに実家に逃げ帰ってるのに…あんた、おかしいんじゃないの?こんだけ幽霊が出てるのよ!」

あい「うーん、でもそれはもったいないというか…」

ゆうこ「もったいない?」

あい「あ、違います、ま、まだ我慢出来てるだけですよ、

ほら幽霊って怖がると逆によくないじゃないですか、だから強がってるだけですよ」

ゆうこ「…そうなのかい?」

あい(お義母さんって本当にちょろいなぁ)

ある日、ケンジが私に相談してきた。

ケンジ「母さん、最近寝不足みたいなんだ。夜な夜な何かの練習をしてるみたいで...」

あい「あ、それって...私を怖がらせるための練習だと思う」

ケンジ「ま、まだやってたの!?」

あい「うん、すごい楽しませてもらってるよ」

ケンジ「お義母さんもなんか、最近元気だから…これはこれでいいのかな…?」悩むケンジの顔。

次の日から、私はお義母さんの朝食に栄養ドリンクをそっと添えるようになった。

ゆうこ「ふん。これくらいで取り入ろうたって無駄よ」

嫌味ははくけど、毎回きっちりドリンクは飲まれていた。

一ヶ月が経ち、ゆうこさんの演出はさらにパワーアップ。

ゆうこ「あい!今夜こそ、覚悟なさい!」

清水さんが夕食時に宣戦布告してきた。

その夜。

屋敷中の電気が消え、異様な雰囲気が漂う。

廊下からは低い唸り声、階段からは鎖を引きずる音。

あい「おおー!サラウンド効果ですか?」

次第に、屋敷のあちこちから様々な音が...。

あい「まさか、スピーカーの配置まで...!」

あい「これはもはや完全にお化け屋敷ですね!」

そして突然、私の目の前にゆうこさんが現れた。

血まみれの着物姿のお義母さん。完璧な特殊メイク。プロ級の演出。

あい「すごい!もう完全にプロの領域です!」

私は感動のあまり、お義母さんに駆け寄った。

あい「これはもはやお金がとれるレベルですよ!」

ゆうこ「うるさいうるさいうるさい!」

ゆうこさんは着物の裾をはためかせながら、激怒の叫びを上げた。

ゆうこ「なんで!なんであんたは怖がらないの!」

あい「だって素晴らしすぎて...」

ゆうこ「もう!」

ゆうこさんは、血のりのついた手で髪を掻き揚げながら号泣した。

ゆうこ「こんなに頑張って怖がらせてるのに!私の気持ちが全然伝わらないなんて!」

あい「お義母様...」

ゆうこ「あのねぇ!私はあなたたち夫婦のお荷物になりたくないのよ!

介護の迷惑だってかけたくないの!だから頑張って嫌われて

追い出そうとしてたのに全然めげないなんて…」

あい「お義母さん!」

ゆうこ「なによ!」

あい「私は、お義母さんのこと好きですよ、本当は優しいのは

伝わってました。だって、お義母さんの言葉って嫌味をはいてても

毒がないし、顔もあんまり怖くないんですもん」

ゆうこ「そんな…」

あい「ケンジさんもすごく優しいですし…

介護が迷惑だなんて思いません、

これからは普通に仲良くやりませんか?」

ゆうこ「でも…」

それからお義母さんは話してくれた。

自分が昔この家に嫁いだ時は、姑がとんでもなく厳しくて

毎日が地獄のようだったこと。

介護が必要になってからも毎日のように罵倒されて、時には殴られ、

大変だったこと。

そんな姑さんを見て、私は将来あんな風には絶対なりたくないし

嫁に苦労もかけたくないと思ったそう。

だから、同居もしたくなかったけど、ケンジが押し切るような形で

決めてしまって、断り切れずに同居になったが、

嫁が姑と同居したいなんて絶対思うはずがない、必ず何かしら我慢させることになるから

自分が嫌われて、離れてもらおうと思って、精いっぱい嫌味をいっていたらしい。

やっぱり、お義母さんはケンジさんと同じぐらいすごく優しい人だったのだ。

あい「お義母さん、確かに正直最初は同居することに抵抗はありました…

でも、お義母さんが優しい人なのはわかりましたし、この幽霊作戦…

実は私ホラーゲームとか幽霊屋敷大好きで、すごく楽しかったので

お義母さんのことすごく好きになっちゃったんです

なんだろう、私の中での推し!みたいな感じです」

ゆうこ「お、推し…?」

あい「ファンみたいな感じです!

よかったらこの活動を続けてみませんか?」

ゆうこ「えぇ…でも」

あい「お願いします!お義母さん!私のためだと思って!!」

それからもゆうこさんの「おどかし作戦」は続いている。

最近では、屋敷の裏庭に「練習用」と称して、カメラやマイクなど本格的な機材まで導入された。深夜、物置からはゆうこさんの独り言が聞こえてくる。

私は密かに、ゆうこさんの演出をすべて動画に収めている。いつか必ず、この記録は心を通わせるきっかけになるはず...。

そう信じながら、今日も私はゆうこさんの新作ホラーを楽しみに、布団に潜り込むのだった。

夫のケンジは、そんな私たちを見て、ため息をつきながらも、なぜか微笑んでいる。

「母さんとあいが…まさかこんな形で仲良くなるなんて…

人生って何が起きるのかわからないもんだね…」


漫画版をブログで更新中。

kindleでは「恐怖!?ツンデレ姑とのお化け屋敷内同居」

漫画一気読み、おまけ付き限定エピソードを無料公開中。

https://okangaru.blog.jp/

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