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36ーー4年生(10月)

遅くなってしまったー!

文化祭&体育祭編、第七話!




「昨日カレーは食べなかったねー」

「三年だから中等部の方なんだよね〜」

「なんか、印が無いトコのレトルト温めてるみたいだよ。味も色々選べるって」

「美味しさは間違いないね〜」

「阿久津は何食べたいー?」

「……肉?」

「あはは!肉って!うん、私も食べたいわ」

「肉なんてあったっけ〜?肉巻きおにぎりだったらあったかな?」

「二クラス合同で縁日っぽいのやってるクラスあったよね〜。遊ぶだけじゃなくて唐揚げとかフランクフルトとか出してたよーな」

「じゃー中等部の方行ってみよ〜か!」

 三人は武道場のある高等部エリアから中等部の方へ移ることにした。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



 

「高瀬っ?!高瀬だろ?高瀬塔子!」

 中等部へ行く為に中央の広場を横切っていた時、突然フルネームで呼ばれた塔子は驚いて声の方を振り返った。そこには同い年くらいの男の子、そしてその後方にはやはり同い年くらいの男女グループが居る。


「やっぱり!高瀬だよなっ?!」

 駆け寄ってきた男の子に塔子は見覚えがあった。

「……田中?」

「わー!高瀬、覚えててくれたー!嬉しいー!」

「あ、うん、久しぶり……」

 そこに居たのは小学校が一緒だった田中だった。あのミキが好きだった男の子だ。明るいサッカー少年だった田中は爽やかな好青年への道を歩み始めたようだ。田中に気付くとその後ろのグループも見覚えのある子たちだと分かる。

  

ーーさっき橘と話した時に嫌な予感がしたんだよな……あういうのをフラグって言うんだな。


「わぁ〜ホントに居た〜、塔子ちゃんじゃ〜ん」

 ミキも居る。成長して少し派手になったようだ。

「すごーい、久しぶりー。都内の学校通ってたんだねー」

 ミキの取り巻きも昔と変わらずのようだ。

「うわーマジで高瀬だー」

「誰にも言わずに居なくなんなよー!」

 この男の子たちは誰だっただろうか。名前が思い出せない。

「ホントホント!中学校行ったら居ないからビックリしたよー!逃げたの?あはは!」


 塔子の顔が強張る。背中を嫌な汗が流れた気がした。


「おい!やめろよ!

 ……高瀬が居なくて俺ビックリして……俺何も知らなくて。家も引っ越してたからさー。どこに行ったか誰も知らなかったし。こないだ偶然SNSで見付けて片瀬学園って」

「SNS?」

 塔子が聞き返す。

「え?うん。高瀬の友達だろ?夏祭りかなんかで撮った写真SNSで見付けて。浴衣着てたしちょっと感じ違ったけど高瀬だって分かったよ。それで文化祭あるって知って、俺会えたらって」

「見せてくれない?SNS」

 被せるように塔子が言うと、田中は戸惑いながら自分のスマホでその部分を見せてくれた。

 塔子の両脇から阿久津と橘がそれを覗き込む。間違いなく、あの夏祭りで六人で撮った写真だった。

「メグ…………」

 他の投稿を見ても、そのSNSのアカウントはメグの物で間違い無さそうだ。


「あ、その写真に一緒に載ってた人たちじゃん?」

 ミキが阿久津と橘を見て言う。

「ホントだぁ!本物の方がカッコイーねー!」

「塔子ちゃん、お友達出来て良かったね?あはは!」

「だからお前らやめろって。大体何で付いてきたんだよ」

 田中が端正な顔を歪めてミキたちに言う。

「元々一緒に遊ぶ約束してたのにここに行くって言い出したの田中じゃん。だからミキたち着いてきてあげたんだよ」

「頼んでねーよ。

 ……高瀬、良かったら連絡先教えてくんない?俺高瀬とまだ話したいことあるし」

「おい、時間がねー。行くぞ」

 田中の言葉を遮るように阿久津が塔子の腕を引く。その横から橘が、塔子の手の中にある田中のスマホを取り本人に返す。

「ゴメンね、僕たち急いでて〜。楽しんで帰ってね〜」

「ちょ、ちょっと待って」

 有無を言わさず塔子を連れて行く二人に戸惑いながら田中が追いかけて来ようとするのをミキたちが止めている。その光景を時々振り返りながら見るも、塔子はどうしたらイイのか分からず、ただ腕を引かれるのに合わせて歩いていた。




「高瀬、大丈夫〜?」

 橘に心配そうに聞かれ、塔子は我に帰る。気付いたら喧騒から少し離れた場所にあるベンチに座っていた。

「あ、ゴメ……うん、大丈夫」

 塔子は膝に両肘をつき、両手で顔を覆う。そのままふぅーーーと息を吐き、顔を上げた。

「うん、大丈夫。電車で三十分のトコだからねー。来ててもおかしくないよねー。ビックリしたけどもう大丈夫!二人ともありがとね!」


ーーメグにSNSの写真消して欲しいってお願いしないとなー。そこは憂鬱だな……


「よし、ご飯買いに行こっ!」

 塔子は明るく言うと、まだ気遣わしげな二人に笑顔を向け歩き出した。二人は何か聞きたそうな顔をしていたが、塔子は何も話したくなかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



「結局あの番号が何だったのか分かったの?」


 クラスの待機時間、化学室から戻ってきた森田に聞かれ、そう言えばあれから謎解きを進めていないことに塔子は気が付いた。


「あ、そうだった。あの番号って何なんだろう?」

「なんだ、まだ解けてなかったのか」

「うん、ご飯食べてて忘れてたよ〜」

 橘が優しく笑う。

「何か使ってない謎って無いの?」

 森田の言葉を受けて阿久津が顔を上げる。


「忘れてた、あれがあったな。六年の教室のドアに貼ってあったヤツ。まだ使って無いのってあれと神官とかのカードだけだ」

「あ、そうじゃん、あのカードも解いてな〜い」

「河合先生、何か言ってたな。嘘吐いてるのが一人だって。つまり犯人探せばイイんだよな?」

 森田に塔子は頷く。

「そうだったねー。番号に気を取られててそっちも忘れてたー」

 四人がまた手元の探偵手帳に目を落とし考え出したところでメグがブーブー言い出した。


「また暗号だか何だか解いてんのー?しかも今日は森田まで。そんなに楽しいの?」

 呆れた顔で言うメグに塔子が楽しいよ!と返そうとしたその時。


「あ、おい、和田。お前SNSに投稿してる俺の写真消せ」

「……え?」

「え、じゃねーんだよ。許可なく人の写真上げてんじゃねーよ。俺嫌いなんだよ。二度と載せんな」

 阿久津がいつになく強い口調でメグに言い放った。普段メグの名前を呼ぶことも殆どない阿久津が冷たい目線を向けて言ったことで場の空気がかなり冷えた気がした。

「俺だけじゃなくて載せる時は人の許可ちゃんと取れ」


 阿久津は言うだけ言って、後は顔も上げずに謎を解き出した。塔子は自分が言うべきだったことを阿久津が言ってくれたんだと分かった。でもこの場でそれについて言及するのは違う気がして、心の中でただただ阿久津に感謝した。



「たまたま見付けたんだよ〜。メグ、あの夏祭りの時の写真上げてるでしょ〜。僕もSNSのはちょっと消して欲しいけど、あの写真は欲しいな〜。貰うの忘れてたんだよね〜」

 橘がニコニコとメグに話しかける。橘にはいつもフォローしてもらっている気がする。

 阿久津に強く言われて固まっていたメグも橘の言葉でフリーズが解けたようだ。


「あ……渡して無かったっけ。送るね」

「ありがとう〜。あとちゃんと消しといてね?」

「う、うん、分かった。皆んなにも渡して無かったからグループトークに写真送っとくね」

「うん、助かるよ〜」


 塔子は後で阿久津と橘にお礼を言おうと心に決めた。



「これ、騎士が犯人じゃない?」

 気まずい雰囲気を断ち切るように森田が声を上げた。今までずっと考えていたようだ。

「…………多分それで合ってると思う。あとこの番号だけどやっぱり電話番号なんじゃねーかな」

 阿久津の言葉に橘が首を捻る?

「電話番号?どういうこと〜?」

 阿久津はスマホの画面を見せながら言う。

「コレ、六年の教室のドアに貼ってあったヤツ。この図の形が電話の並びなんじゃね?つまり左上の『ふ』の文字が『1』の場所。その右隣の『ん』が『2』って感じで並んでんじゃねーかと。最後の段の飛び出してる『に』の文字が『0』に対応してる。

 それを踏まえて、もらった番号の順に読んでいくと『はんにんのてふだのうらがわ』になる」

「なるほど〜!犯人の手札の裏側か〜!」

「手札って?」

 塔子が聞くと阿久津と橘が声を揃えて言う。

「「カードだ(よ)」」

「つまり騎士のカードの裏側に何かあるのか!」

「これが終わったら見に行こ〜。騎士ってどこにあったっけ?」

「……あれ?どこだったっけ?」

 塔子も混乱していて思い出せない。

「理科室だったと思う」

「だったっけ?じゃ、時間終わったら行こ〜」

 塔子も頷きながら暗号探偵もいよいよ終盤かなーなどと考えていた。



 

薄目でふんわりだよ!

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