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33ー4年生(10月)

文化祭&体育祭編 第四話!




「メグとエリもう来てるかなー?」

 塔子は化学室を覗く。中では午前中におこなった実験の後片付けをやっている化学部の生徒たちの姿がある。その中に森田の姿もあった。


「あ、来たんだ。入ってもいいよ。」

 塔子たちの気配に気付いた森田が中に招き入れてくれる。

「ありがとう!ねぇここでご飯って食べられる?他の教室行った方がイイ?一緒に食べない?」

「シャボン玉に入りに来たな?お昼は使わないから大丈夫。十三時からまた準備に入るから使えなくなるけど。まだ片付けしてるからアッチの方の机に座ってて」

 森田が教室後方の使用されなかったであろう机を指差す。塔子はそちらに移動しつつ首を捻る。

「バレてる……」

「だから分かりやすいんだって」

 橘が苦笑いで塔子を見る。


「あ、メグからメールきてる。他のクラスの子たちと執事カフェでご飯食べることにしたってー。来ないんだ、残念」

「執事カフェって六年七組だっけ?さっきのフランス人形の教室の近くで長蛇の列が出来てたトコじゃない?」

「あー、あったねー。よっぽど美味しい物出してるのかなー」

「うん、違うだろうね〜」




「お待たせ。暗号探偵はどう?」

 片付けを粗方済ませた森田がやって来た。

「森田〜。僕、暗号探偵を舐めてたよ。反省した」

「面白いのか、いいな。俺もやりたかった」

「化学部、結構人きてるのー?」

「うん、そこそこ来てる。午後はもっと忙しくなるかも。ってことで、午後は高瀬の相手してる時間ないだろうし、今入っとく?きっと明日はもっと無理だしな」

「!!それはシャボンへのお誘いですか?!」

「それ以外ないだろ。でもサクッとな。橘、手伝ってくれる?」

「了解〜」

「あ、阿久津!写真撮っといて!後で送ってー!」

 スマホを触っていた阿久津に写真係りを命じ、塔子は森田の指示する場所に立つ。塔子を囲うように置いてあるフラフープには四つの持ち手が付いていて、それを森田と橘が二つずつ持つ。

「橘、早過ぎず遅過ぎずのスピードで。高瀬の頭を超えたら左右に振るぞ。

 ……行くぞ、せーのっ!」

 

 森田が掛け声に合わせて橘と二人でフラフープを持ち上げる。

 「うわーーーー!!」

 時々虹色に光る膜の向こうでスマホを片手にこっちを見ている阿久津と一瞬目が合った気がする。森田と橘がフラフープを左右に振ってシャボンが綺麗な玉になった瞬間、手の中のスマホを見ていた阿久津がフワっと柔らかく笑ったように見えた。

 


「一瞬だったけど私シャボン玉の中に居たよね?!」

 塔子は大興奮だ。写真だけじゃなく動画も欲しかったと言う塔子の為に、三人はもう一回塔子をシャボン玉の中に入れてくれた。


「本当にありがとう!!私、もうこれで、あとは今回の文化祭は探偵を救うだけで大満足だよー!」

「あはは!探偵は救うんだ?」

 笑いながら言う橘に、塔子は真剣な表情で返す。

「今年こそは!」






 午後の準備に入る森田にお礼を告げて化学室を後にした三人は校庭に向かう。

 

「青いカードに書いてあったから青団って安易かな?」

「でもそんなもんだろ。きっとある」

 塔子の呟きに、校庭を縦断しながら阿久津が答える。


 観客席として組まれた大きな足場を正面から眺める。

「えっと、下から三列目の一番右だったっけ?」

 塔子はタタッと登って座席の部分を確認するも何も無い。首を捻って反対側の座席も確認しにそちらも行くが何も無い。

「あれ?何も無いなー」

「もしかして裏かな〜」

 橘が横から座席裏を覗き込んで確認する。

「あ!何か貼ってあるよ〜!」



「なんか二枚貼ってあったね」

 それぞれスマホで撮った画面を見ながら内容を確認する。

「一つはアナグラムだろうな」

 阿久津の言葉に塔子も頷く。

「うん、私もそう思う」

「アナグラムって並べ替えて違う言葉にするヤツ?」

「そうそれ。もう一つは何だろうね、これ」


 

 もう一つはちょっと凝った装飾がなされたカードに金髪イケメン風の線の細い男性が描かれている。首からクロスペンダントを下げたその男性の下には『神官』と書かれていて、横には彼のセリフが付いてる。


『私はずっとエリザさんと一緒に祈りを捧げておりました。悪魔から彼の魂が解放されることを祈っておりました。ですので私もエリザさんも犯人ではあり得ないのです。』



「……何が始まったんだ?」

 阿久津が顰めた顔で首を捻るのを見て塔子が笑う。

「あはは!何か始まったねー!ってか今年凝ってるねー。去年ここまで無かったよね?イラストとかすごく上手!」

「いや〜これもっと周知するべきだよ〜、もったいない」

 橘も気に入ってくれたようだ。

 

「とりあえず、こっちのは後回しだろうな」

「まずはアナグラムだねー、苦手なんだよな、私」

「とりあえず解いてみよっか〜」

「よし!誰が先に解けるか勝負ー!」

 勝負を宣言した塔子がシャーペン片手に団席に座って解き始めた。





「あ、解けたかも?これどう?」

 一番先に声を上げたのは橘だった。

「橘解けた?!すごい!!何になった?」

「えっと『数学の小池に聞け』どう?」

「それだな」

 探偵手帳に書き込みながら考えていた阿久津が顔を上げて頷く。

「それだーーー!橘すごい!!」

 塔子は手を叩いて褒める。

「ヤバ〜、僕才能あるかも〜」

「橘天才!よし、小池先探そー!」





「これさ、何気に時間なくない?」

 小池先生を探して歩きながら塔子がスマホを確認すると十三時半を過ぎたところだ。

「まだまだ序盤だよね?」

「……急いだ方がいいかもな」

「そうなの?明日もあるんでしょ?」

「うん、そうなんだけどさー。大丈夫かな?」

「とりあえず出来るだけ急ごう」


 

 小池先生は数学準備室に居た。ノックして入ると椅子に座った小池先生がクルッと振り返った。


「何の用だ?」

 既に芝居が始まってるようにも思える微妙に違和感ある口調で聞かれ、笑っていいのか迷う。塔子は我慢し、三人を代表して真面目に答えることにした。

「あの、探偵……」

「探偵に教えることは何もないぞ!何もないんだ!」

 先生は手のひらでこちらを制するよう左手をにバッと前に突き出した。やはりもう芝居は始まっていたようだ。

「何も教えられんがヒントだけはやろう」

 そしてやはり話は勝手に進むのだ。そう言って先生はメモを渡してくれた。きっちり人数分数えて渡してくれた。律儀な協力者だ。

 

「検討を祈ってるぞ」

 そう言ってまたクルッと椅子を回し向こうを向いてしまった。おそらく芝居の終わりの合図なのだろう。塔子たちは礼を言って数学準備室を出た。




「すごいね〜。先生も演じてくれてるじゃん」

 そう言いながら橘はもらったばかりメモを確認する。

「これもまたさっきの魔法陣かな?さっきよりマス目多いけど」


 橘が言うように、メモには7✖️7の49マスに二つの数字とAから Hまでのアルファベットが入った図が書いてあった。


「魔法陣……だったとしたらこれ解けねーぞ」

「え?何で?」

 橘が驚いて阿久津を見る。

「ヒントが少な過ぎる。49マス埋めんのにヒントの数字2個だけじゃ……」

「ホントだ……」

 三人は廊下に設置されているベンチに腰を下ろし、メモを見て考え込む。


「魔法陣じゃないとしたら何だろう?」

「入ってる数字が1と49なんだよな。いかにもなんだけど……」

 阿久津の言うように、図の一番上の段の真ん中に『1』、一番下の真ん中に『49』の数字が入っている。そして『1』のマスには『G』のアルファベットも一緒だ。

「49マス数字で埋めたくなるよね〜」

「あ」 

 塔子は橘の言葉を聞いて声を上げた。

「どうした?」

「んー、これが魔法陣だとしてさ、()()()()んだけど()()()ことは出来るかも」

「……うん?」

 塔子を見ている阿久津が首を傾げる。


「えっと、結局解くってことになるのかな。この『1』と『49』の場所だったら私このマス目埋めることが出来る」

「え?マジ?高瀬やってみてよ!」

 橘に促され、塔子は自分のメモに数字をどんどん書き込んでいく。


「多分これで魔法陣として成り立ってると思うんだけど……でももしこれであってるとしたら問題としてどーなの?」

「……49マスの魔法陣だから1列……175か。適当な列いくつか確認してみる」

 塔子が埋めたマス目を見ながら阿久津が計算する。

「……合ってる。すげーな、高瀬。これどーやんの?」

 興味津々な阿久津の反応に塔子は思わず笑顔になる。

「うーん、解いたっていうより作ったんだよ。奇数の魔法陣で『1』がこの場所だったら作れる。そしてこの作り方だと終わりは必ずこの『49』の場所になるからイケるかなって。まずね、この『1』からスタートで、右上に『2』を入れたいんだけどマスがないでしょ?だからその列の一番下に入れるの。これが一つの条件。そしてそこからまた右上に数字を入れていくの…………」



…………………………


  

「なるほど。こんな風に作れんだ」

「高瀬、よく知ってたね〜!」

「うん、前に作ってみたくてねー。でもこれで合ってるかはまだ分かんないよね。アルファベット順に並べてみる?」

 塔子はアルファベットの場所の数字を抜き出してみる。


A『9』B『2』C『21』D『32』

E『43』F『7』G『1』H『45』


「さて。これからどうしよーか」

「あのさ〜、このHのトコさ、右上汚れてる?僕のだけ?」

「……橘、それだ。これ汚れてんじゃねーな。濁点だ」

「あ、なるほど。ってことはAとBで一文字、、FとGで一文字かな?簡単だったねー」

「この魔法陣完成させんのが簡単じゃねーよ、高瀬」

 よくやった!とでも言うように、阿久津が柔らかく笑い塔子の頭を軽く撫でる。孤高の黒猫も解けた喜びで思わず大盤振る舞いのようだ。こういう時に過剰反応すると猫は途端に逃げていくのを塔子は知っている。ちょっと驚いた顔をしている橘に何でもない顔をして塔子は言う。


「五十音表だよ」

「え?ゴメン、何?」

「五十音表にこの数字当てはめてみよ!」

「あ〜なるほど〜。えっと『り』『か』『し』『つ』『ま』で最後が『と』に濁点だから『ど』なんだね」

「行こう」

 阿久津はサッと立ち上がり歩き出す。塔子も橘も遅れないように急いで着いて行った。



 

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