30ーー4年生(10月)
ここから文化祭&体育祭編が14話続く予定です。
読んで頂けたらワッショイ喜びます!
夏休みが終わり、二学期が始まって一ヶ月経った。
今日から金土日の三日間、ここ片瀬学園では片瀬祭が開催される。金曜日は内部の学生用の文化祭、土曜日は外部の一般客を招いての文化祭、そして日曜日は体育祭の三日間で構成されている。
飲物に特化したカフェやお腹を満たす飲食店、お化け屋敷や縁日など、各クラス毎に趣向を凝らした出し物で賑わうのだが、四年生のクラスは毎年休憩所としてクラスを開放する事が決められている。それぞれのホームに、四月から協力し調べまとめ上げたアクティブラーニングの課題を展示するのだ。
「森田、引きがイイねー!」
「ホント!一番手は時間気にしなくてイイよね〜!」
「ま、明日は中途半端な時間だけどね!」
メグとエリが話しているのはこの四年七組のホームにいなければならない時間のことだ。はっきり言って展示を見にくる人間はあまり居ない。せいぜい担当した生徒の家族ぐらいなもんだろう。しかし椅子を並べて休憩所としても使うことが出来るようになっている為、解放している時間は必ずクラスの人間が待機することになっている。万が一展示物にイタズラがあったらいけないということだ。森田の引いたクジの結果、塔子たちの班は一日目は8:30〜9:45、二日目は13:30〜14:45の間、ホームで待機することになった。
そして今、六人で暇をしているところだ。
「今年は暇だよね〜。展示だもんね〜」
「トランプとか遊べる物持ってくれば良かった!」
橘の言葉に塔子は悔しがる。
「明日は持ってこよ〜」
「その代わり他のクラスに遊びに行けるけどねー!どこ回りたい?明日は外部も来るから遊ぶんなら今日の方がイイよね!」
「明日は混むもんね。行きたいトコは今日のウチに行った方がイイよね〜!」
メグとエリがパンフレットを見ながら盛り上がっている。楽しそうだ。
「あ、高瀬、バスケ部は何かするの〜?」
メグたちの横で自分のパンフレットを見ていた塔子は、パンフレットの中アリーナの部分を橘に示す。
「うん、ここでフリースロー勝負だよー」
「フリースロー勝負?」
「そうそう、その時間担当のバスケ部員が待機してるから、その中から一人選んでフリースローの勝負するの。勝てたら賞品あり」
「賞品って?」
メグが食いつく。
「うまい棒」
「うまい棒かよ!!ショボ!!」
「好きな味が選べるよー?」
「いらないよ」
「それとさー、希望があればなんだけど、そのうまい棒をもらう時に戦ったバスケ部員と一緒に写真撮れる」
「え?指名した人に勝てたら一緒に写真撮れるってこと?」
「うん。誰得なんだろ。いらなくない?」
「え、じゃーあの真山って人に勝てたら一緒に写真撮ってくれるの?」
「そうなるね。チェキ用意してあるよ。メグ来てくれるの?」
「うーん、あのイケメンとのツーショットチェキかー……しかし彼女持ちー。ちなみに勝てる要素あんの?」
「……ないかも。バスケ部殆ど外さないから。殆どは言い過ぎかな。緊張感ある時だと確率下がるしね。でもあんまり外さないよねー」
「ダメじゃん!!」
「フリースローはねー、あんまり外さないよねー。だからスリーも選べるよ、一応」
「スリー?」
「うん、スリーポイントシュート勝負。これだと入る確率ガッツリ下がるから。でも未経験者だともっと入らないよねー」
「やっぱダメじゃん!!」
「まーだから勝負は明日なんだよね。明日は他校のバスケ部とか来るらしいからさー。外した方が負ける」
「ね〜それって高瀬も出るの?」
橘に聞かれ、塔子はちょっと憂鬱な顔になった。
「うん、担当の時間は居ないとだよね。指名されなきゃイイんだけど……嫌じゃない?知らない人に自分の写真とか持たれてるの。目とか鼻に画鋲刺されたりするかも」
「いや、だから発想が小学生男子なんだよ、塔子……」
「…………」
阿久津も呆れた顔で塔子を見ている。
塔子の視界の端で森田が顔を上げこっちを見る。
「それってお金取るの?」
「一回五十円。フリースロー五本勝負」
「五十円か、安いな。それって何度も挑戦するヤツとか出てくるんじゃないの?」
森田が難しそうな顔で訊いてくる。
「あ、なんか去年、六年の男バスの先輩がさ、他校の女子生徒グループに永遠に指名されて途中から腕上がんなくなってさー。最後はもう撮影会になっちゃったんだよ。だから今年から一人に対する指名は一人一回しか出来ないことになった」
「うわ……」
「バスケ部って中等部は別だからさー、観客として見に行ってたんだけど、なんか少し気の毒になったよ。軽くイジメだよね。『ボールってこんなに重かったっけ……』って呟いてたのが印象的だったわ」
「なんか……高瀬、気を付けてね?」
「すみっこで小さくなっとくわー。
森田、化学部は何するのー?」
「ドライアイスでペットボトルロケットを飛ばして距離を競うのと、小学生の受験生向けにシャボン玉に入ろうってヤツ」
「面白そー!」
「でも正直シャボン玉に入るヤツ、ベトベトになるんじゃないかと心配なんだけどな」
「私入ってみたい!」
「子供か」
森田は呆れた顔を塔子に向けた。
「阿久津くん、剣道部は何かするの〜?」
「……何も」
阿久津は腕を組んで下を向き、椅子に深く沈んでいる。
「阿久津眠いの〜?」
「…………暇」
「確かに暇だね〜。この後どこ行く〜?」
橘が阿久津に訊いている横から塔子が答える。
「私さ、クイズ研の『暗号探偵!落ちぶれたアイツを救え!』をやりたいんだよねー」
「何それ?そんなのあった?!もうさ、題名からツッコミどころ満載だね〜」
橘が苦笑いだ。
「これってね、三部作のラストなんだよー」
「何それ?」
「私も知らな〜い」
メグとエリが首を振る。
「今のクイズ研の部長が四年の時に第一弾やったんだよ。『暗号探偵!隠された宝を探せ!』だったかな」
「第一弾は王道だな」
「森田こういうの好きそうなのに知らないの〜?」
「全然知らなかった。そんなのあったんだ」
「パンフレットに載せてないんだよねー。私たまたま売店の自販機の横に貼ってある暗号を解いてる人たちを見てさ。聞いたら、探偵になって学校中に張り巡らされた暗号を解いて盗まれたお宝を見つけ出すってヤツだよーって教えてくれて。クイズ研に走ったよ、探偵手帳買いに!」
「何でパンフレットに載せないんだ?客来ないだろ、それじゃ」
森田が最もな疑問を投げかける。
「学校中に隠してある暗号にイタズラされたりするから大っぴらにしたくないんだって。クイズ研がやってた暗号探偵の前身のクイズが破られたり持って行かれたりで成り立たなかったらしい。二日目が特にやられちゃうみたい」
「なるほど……やってみたかったな」
「でしょー!面白かったんだけど、難しくて結局お宝に辿り着けなかったんだよ、私」
「そんなのやってたんだ、塔子ちゃん」
「うん、この年はバスケ部の友達が付き合ってくれた」
「その友達優しいな」
メグが真顔で言う。
「で、第二弾は『暗号探偵!盗まれたお宝は俺のハート!』だったかな。去年は誰も付き合ってくれなくてさー。一人でやってみたんだけど難し過ぎて撃沈したね」
「どうしよう、どこから突っ込んでいいのか分かんないよ、僕。とりあえず今年は付き合ってあげるよ?」
「ホント?!イエーイ!今年も一人でやる気だったから嬉しいー!去年真相に辿り着けなかったから分かんないんだけど、きっと暗号探偵は傷心で落ちぶれちゃってるんだよね。救ってあげたい」
「なんかよく分かんないけど、きっとクイズ研の部長も本望だと思うよ、高瀬みたいなのが居てくれて」
橘と塔子の話を聞いていたメグがつまんなそうな顔をしてため息を吐く。
「えー、それアタシたちも付き合わないとなの?」
「あ、ううん!メグも見たいのあるでしょ?軽音のライブとか観に行きたいって言ってなかった?でもご飯とかは一緒に食べたいなー!」
「うん、食べよ〜!ってか軽音とか塔子ちゃんも聴きたいんじゃないの?六年のあのバンド、ボーカルかっこいいよね〜!歌はそんなに上手じゃないけど」
「あ、うん。だから大丈夫」
「結構容赦ないな、高瀬」
森田が引いている。ほんの少し。
「阿久津はどうする〜?」
「…………」
「お〜い、寝てんの〜?」
「…………隠された宝っての依頼人の孫の女性だったんだよ。で、その孫は探偵の助手になる」
「「え??」」
塔子と橘は驚いて阿久津を見る。阿久津はゆっくりと顔を上げ塔子を見る。
「……で第二弾は近所の失せ物探しから始まって色々見付けていくんだけど、その過程で探偵は助手に心惹かれていくんだよ。でも最後に探偵の言葉が誤解されて二人の間に距離が出来て終わる」
「……阿久津やってんじゃーん!仲間発見!!」
「え?阿久津、去年姿見えなくなったと思ったらそんなことやってたの?意外すぎるんだけど〜」
「あははははは!!面白い!!阿久津も一人でやってたの?去年知り合ってたら一緒に出来たのにねー!!あはは!!」
塔子は意外なところに仲間を発見して大興奮だ。お腹を抱えて笑っている。
「阿久津……マジかー……」
メグはガッカリしている。
「阿久津くんと一緒に回りたかったね〜。でも軽音のライブとかも興味なさそうだよね〜」
エリもガッカリしている。
「ふふ。今年は探偵を救ってあげたいな〜」
塔子は阿久津が居たら救える気がした。
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