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29ーー4年生(8月)

最近少し忙しくて更新遅れちゃいましたー。

すみません。



 ここ片瀬学園には、10月に片瀬祭という文化祭と体育祭が合体した大型イベントがある。

 毎年、夏休み前に各クラスで文化祭の出し物や、体育祭での出場種目を決め、出し物や競技の内容によっては夏休みの間に準備が必要になる事も多い。


 文化祭については、塔子たち4年生の出し物は決まっていて夏休みに集まる必要はない。体育祭については出場種目によるのだが、塔子の出る種目は何の準備も必要なかった。

 メグとエリが勝ち取ったダンスの種目は衣装を作る為に少なくない日数、学校に来る必要があり、塔子は部活の前後にメグとエリに会うことが数回あった。


 夏祭り以来初めてメグを見かけた塔子は、その後ろ姿に話しかけるか一瞬迷った。隣にいるエリは普通に話してくれると思えたが、メグがどう出るか想像もつかなかったのですごく緊張した。

 勇気を出して話しかけてみたら二人とも夏休み前と変わらない態度で接してくれ、少し肩透かしをくらった気分の塔子だったがとてもホッとした。

 早紀も言っていたように自分の考えすぎだったのかもしれない、と夏祭りで感じた気まずさは忘れることにした。



 毎日の部活はとても充実していたし、希望していていた特別講座も楽しいものばかりだった。

 部活の帰りはチームメイトと寄り道をしたり、同じく部活帰りの阿久津に会って途中まで一緒に帰ることもあった。剣道部は夏休み中に大会があったようで、この茹だる暑さの中の練習にも愚痴をこぼすことなく真面目に取り組んでいる阿久津の話を聞くのは楽しかった。学校では常に怠そうな雰囲気の阿久津が剣道のことを話す時は少し目に力が入る。塔子はそこに自分がバスケに感じる熱と同じものを見て、勝手に阿久津を同志認定していた。




 

ーーーーーーーーーーーーーーーー




「塔子ー、明日の帰りご飯食べ行こー!夏休みの打ち上げー!」

 明日が夏休みの部活のラスト。早紀に誘われた塔子は満面の笑みで頷く。

「行くーーー!秋も?それとも他の子たち誘う?」

「女バスで行こっか!皆んな誘おう!」



ーー次の日。


「……だからなんで男バスも?いつもこのパターンじゃん」

 塔子はウンザリしながら横に立つ真山を見上げる。

「うるせーぞ、高瀬。こっちだって今日がラストなんだぞ。打ち上げるだろー」

「別にそこに文句は言ってないよ。同じお店じゃなくて良くない?って言ってるんだよー」

「近くの長居出来そうなファミレスがココしかねーんだから文句言うなよ」

 反対側に立つ秋に頭を軽く突かれる。秋も真山も背が高い。突き易い場所に塔子の頭があるのか、いつも脳みそ揺らされるのに納得がいかない。

「秋、時間さえあれば早紀と居るんだからこういう時は遠慮しなよ……」

「これ、俺の意見入ってないし」


 秋の反論を嘘くさく思いながらお店に入っていく塔子たち。男バス六人、女バス五人は少し離れた席をそれぞれ確保出来た。




「何食べるー?」

「ヤバい、超お腹空いてるんだけど!」

「とりあえず山盛りポテト3皿くらいイケるんじゃ?」

「イケるな」

「パスタじゃ足りないなー」

「やっぱ肉だよ、肉。糖質よりタンパク質だって」

「え、ポテトは?」

「別腹」


 塔子はこの運動部のノリが大好きだ。ここではどれだけ食べても誰も揶揄ってこない。


「あとドリンクバー五つで!お願いしまーす」




 それぞれ注文した品物も届き、ワイワイ食べながら今年の夏の練習を振り返る。毎日疲れたが充実していた。


「先週の練習試合、最後悔しかったよねー」

「私の最後のスリーは失敗だったよね。我慢出来なかったんだよー」

「あそこでフェイント入れられたらカッコ良かったかも!」

「いや、私がスクリーンかけに行けば良かったなー」

「あーウチらもかけあえば良かったねー」

「やっぱいかにフリーを作れるかだよねー」

 バスケ談義は尽きない。


「私ドリンク取ってくるー」

「あ、チカちゃん、私も行くー」

 チームメイトの近元に続いて、塔子も席を立つ。


「高瀬、何飲むの?」

 ドリンクバーのマシーンを前に塔子が悩んでいると、後ろから真山が覗き込んでくる。

「うーん、迷ってる。お茶にしとくかなー」

 悩む塔子が烏龍茶のボタンを押し始めた時、斜め後ろでガチャン!とグラスが落ちた音がした。

 

「あぁっ!ゴメンナサイ!!」

 

 振り向くと隣のマシーンでアイスカフェオレを作っていた近元が、男の子とぶつかってグラスを落としてしまっていた。同じく運動部らしき男の子のTシャツもジャージもカフェオレでビチャビチャだ。 

 

「うわ、どうしよう!ホントにゴメンナサイ!」

 店員さんも駆け寄ってきてくれてタオルを貸してくれる。グラスは割れなかったようで床はモップで拭くだけで良さそうだ。

「あ、ありがとうございます」

 その男の子は特段気にしてなさそうに店員さんからタオルを受け取り、汚れた部分を拭いている。

「別に大丈夫ッスよ」

「でもTシャツが……」

 カフェオレで汚れた白いTシャツはクリーム色に染まってしまっている。近元は申し訳なさそうな顔でオロオロしている。塔子もどうしたものかと考えていたところに知っている顔が現れた。


「磯部、どうした?」

 カフェオレ風味の男の子は磯部というらしい。その名前を呼んだのは阿久津だった。


「あれ?阿久津じゃん!知り合い?」

「……高瀬。あー剣道部」

 阿久津は磯部を指して言葉少なに教えてくれた。


「剣道部も来てたんだねー」

 L字の店内でお互い死角に座っていたようだ。


「ホント、気にしなくてイイっスよ」

 磯部は近元に向かって手を振りながら笑う。しかし注いだばかりのドリンクをモロに被った磯部は上下ベチョベチョだ。

「真山、着替えとか持ってない?」

「持ってねーわ。誰か持ってねーか聞いてくるか」

 真山に訊いた塔子だったが、阿久津の顔を見て真山を止める。


「あ、待って真山。私持ってるわ!」

「あ?お前が持ってても仕方ねーだろ」

「違う違う、私のじゃない。阿久津の着替え持ってる!」

「「は?」」

 真山と磯部が同時に間の抜けた声を出す。


「ねー阿久津、こないだ借りた服、私今持ってる!今度会ったら返そうと思ってたんだよー。持ってくるね!」

 塔子はそう言うとダッシュで着替えを取りに行った。

 

「…………使う?」

 塔子の後ろ姿を見送って阿久津が磯部に聞く。

「……えーっと、今度の手合わせで俺めためたに打ち込まれたりしない?」

「…………まーそれは着替えた方がいいな」

 阿久津は無惨な磯部の服と、小さくなってこちらを見ている近元をチラッと見て着替えを促した。



「はい!阿久津、ありがとね!」

 笑顔で言いながら磯部に手渡す塔子。

「あ、じゃー借りるな」

 少し申し訳なさそうな顔で受け取りレストルームに向かう磯部。その磯部と阿久津に向かって頭を下げる近元。

 その横で中途半端になっていた塔子のドリンクを首まで満たした真山が眉間に皺を寄せている。


「ほら、これ。ってか高瀬、なんでソイツの服持ってんの?」

 塔子にドリンクを手渡しながら阿久津を顎で指す。

「あ、ありがと。こないだ借りたからだよ」

「どんな状況だよ」

「え?真山ウチの父さん?同じこと聞くね?」

「あはは。塔子、お父さんに訊かれたんだ?」

 少し元気を取り戻した近元は塔子の隣でスマホ片手に磯部が出てくるのを待っている。

「うん、ウチ男物の服って父さんのしか無いからさー。目敏く気付くよね。あ、早い、出てきた」

 

 塔子の目線を追うと、着替えてサッパリした磯部がレストルームから出てきたところだった。阿久津の服は磯部にも少し大きいようだ。

 そこにスマホ片手に駆け寄り近元が何か話している。おそらく汚してしまったTシャツのお詫びをしたいのだろう。

 二人の姿を眺めながら真山から受け取ったドリンクに口を付けた塔子はその不味さに思わず吹き出しそうになった。


「ちょっと!これ何混ぜてんの?!不味っ!」

 思いっきり顔を歪めた塔子を見て真山は大笑いする。

「あはははは!捨てんのは良くねーぞ。飲めよ?」

「もう信じらんない!」

 もう一口試してみるが、どうしても飲めそうにない。

「え、不味。何を混ぜたらこうなんの?これどうしろと?」

「えーーそんなに不味い?」

 真山が塔子のドリンクに手を伸ばしかけた横から阿久津が奪い、代わりにちゃんと烏龍茶だけが入ったグラスを塔子に渡した。

「じゃな、高瀬」

 そう言って阿久津は真山の作ったドリンクを返却台に載せ、自分の席に戻って行った。


「あ、ありがとー!」

「……ムカつくな」

「え?今文句言った?悪いのは真山だからね?!」

「オレは悪くねー」

「いやいや……子供か!」

 



 


 長いようであっという間の夏休みが終わった。

 二学期が始まる。



 

次話から文化祭編です!

もう書き上げてあるのでチェック終わり次第更新出来るはずでっす!

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