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23ーー4年生(7月)



「塔子って夏休み何やってんのー?」


 今は夏休み前、最後のアクティブラーニングの時間。メグが阿久津に課題の内容をチェックしてもらっている。


「部活ー」

「……部活か。まーそーだよね。エリは何やってんのー?」

「え〜暇してるよ〜!メグちゃん遊ぼうよ〜」

 エリは橘に見てもらっている。なんとか二人とも最終日までに仕上げてきたみたいだ。


「イイね!何して遊ぶー?ってか塔子は部活かもしれないけど、皆んなはそんな事ないでしょー?遊ぼーよ!夏だよ!」

「高瀬って毎日部活なの〜?」

「ううん、基本平日の午前か午後のどっちかだけかなー多分?まだ予定表もらってないから分かんないけど。橘はカナダ行ったりするの?」

「行かない行かない。ずっとこっちに居るよ〜」

 

「阿久津くんは〜?」

 エリが訊く。

「……部活」

「え?剣道も結構部活あんの?!」

「……土日以外多分。大会あるし」

「えー!マジかー!」

「森田はー?」

「うちの部活は自主性に任されてるからな。来たかったら来る。と言うか、夏の補習誰も取んないの?」

「あー、忘れてた。取るよ、私。部活の予定表でたら申し込むつもり」


 この学校では夏休み、各先生方が授業の補習や趣味の講座などを開いてくれる。好きな講座を選択し申し込むことで、その口座が定員に達してない限り受けることが出来る。

 塔子は部活の日程と被らない理数系の講座は受けてみたいと思っていることを伝える。

「あは、理数系だけなんだ〜」

「高瀬は補習って言葉の意味分かってないだろ」

「ぐっ……」

 中間テストの結果を森田に揶揄される。数学は抜群に良かったし、暗記系も悪くはなかったが、語学系が見事に散った。塔子らしい結果に終わったと言える。

「皆んなは?何か取る?」

 塔子は気を取り直して皆んなを見渡す。

「え、取らないけど?あれって取る人そんな居るの?六年じゃあるまいしー」

「私も取らないよ〜!今年は文化祭の準備ないのに夏休みまで学校来たくな〜い!」

 メグもエリも補習の予定は無いようだ。

 

「俺は化学部の顧問がやる予定の化学実験講座は行こうかと思ってる」

「分かる!」

 森田の言葉に塔子が頷く。

「私もあれ受けたいって思ってるー!でもすぐ定員になりそうだよねー。間に合わないかも」

「先に希望は出しておけば?キャンセル出来る筈だよ〜。空きでるとホームページに反映されるし」

「あ、そうなの?じゃー申し込んどくー!」

「……それ俺も興味あった。キャンセル出来るんだったら申し込もうかな」

 阿久津が自分のタブレットでホームページの申込画面を見ながら言う。仕事が早い。

「あ、もしかしてまた剣道部も予定出てないの?早く欲しいよねー。橘は何か取らないのー?」

「うーん、僕化学はやめとこうかな〜。音楽の佐藤先生が毎年やってるっていう映画鑑賞には興味あるんだけど。今年は何の映画なんだろう?」

「あれって行ってみないと分かんないらしいね?あれも人気なんじゃないのー?早くした方がイイかも」

「そんなのあんの?!それだったら受けてみたい!」

「私も〜!」

「じゃ〜申し込みしちゃおっか!」

 橘とメグとエリは映画鑑賞に申し込むことにしたらしい。


「しっかし真面目だよねー、森田も塔子も。つまんないー、もっと遊びたいとか無いワケ?!」

 メグに言われて塔子はまた少し胸がザワザワする。またノリが悪かったのかもしれない。


「うーん、遊びたいとも思うよー!夏祭りとか行きたいね!」

「そうそう!そういうことだよ、塔子!」

「塔子ちゃん夏祭りとか行ったりするの〜?」

 エリに聞かれて塔子は去年の夏祭りを思い出す。



 去年の夏、三年生にとって最後の大会が終わり、打ち上げ代わりに学校近くの少し小さめの夏祭りに行こうと女バスの仲間で盛り上がった。男バス女バス共に試合に負け引退試合ともなった日だった為、女バスが盛り上がって計画を立てているのを知った男バスも、それなら俺たちもと結局皆んなで連れ立って夏祭りに向かった。


「楽しかったんだけどさー、配慮が足りなかったわ。失敗だった」

「何が?超楽しそうじゃん」

「前も話したと思うけど、男バスには彼女持ちも居てさ。別に男バスの子たちと特別何かしてたワケじゃないんだけど、気分悪かったんだろうね。なんか揉めたんだよねー。だからそれから徹底してるよね。誤解を受けるような行動は慎む!」


 塔子の話を聞いて何てこと無い顔でメグは言い放つ。

「陽キャ揃いの部活は楽しそうでイイねー」

「え?今の話聞いてた?そんな要素あった?」

「まー着飾った女子と夏祭り行かれたらやっぱキレんじゃない?でも楽しんだモン勝ちでしょ」

「いやいや、Tシャツにハーフパンの汗臭い集団だよ?どこに誤解する要素が……でもダメなんだよね。理解したよ」

 

 二人の話を聞いていた橘が納得したように頷く。

「だからか〜。この前のカラオケの話。危機管理ね〜」

「そうそう、アレもNGだからねー」


「ねー塔子ちゃん、去年行ったっていうその夏祭り、今年もあるんじゃないの?」

 エリが目をキラキラさせて身を乗り出す。

「うん、あるある。確か八月の第一土曜日だったと思うよ。あそこの円川公園でやってるよ」

「今年も女バスの子たちと行くの?」

「え?ううん、今年は約束してないなー。去年もたまたま学校に集まってたから行っただけだしねー。今年は土曜日に部活ないと思うし」

「じゃ〜一緒に行こうよ〜!今年は着飾って!夏っぽいことしたい!」

「イイね!そうしようよ!塔子はTシャツにハーフパンでもイイよ!」

「え、着飾るって浴衣とか着るってこと?」

「うんうん!そうそう!楽しみ〜!」

「塔子、浴衣とか持ってる?」

「うん、ウチ女兄弟だから結構豊富にあるかも……え、本当に行く?決定?」

「「決定!!」」

「わ、分かった。浴衣出しておいてもらわないとー」


「ね〜それ僕たちも誘ってくれないの〜?」

 橘がニコニコしながら首を傾げる。

「誘う!一緒に行こうよ〜!」

 エリが胸の前で両手を組みながら笑顔で応じる。

「いや、誘ってない!強制参加にしよう!行きたいかとか聞いてないから!阿久津も森田も強制参加で!」

 そのエリを手で制しながらメグが宣言する。塔子は驚き、阿久津と森田の顔を伺う。森田は眉間に皺を寄せて考え込んでいるようだ。阿久津はペンを片手にメグの課題に目を通している。

「ねー、阿久津!聞いてた?八月の第一土曜日、夏祭り!強制参加だよ!!」

 メグに名前を呼ばれた阿久津はペンを机に置き、タブレットをメグに返す。

「……分かった。それまでに印付けたところ直しで」


 

「「「「「…………マジか!!」」」」」


 五人の声が揃った。自分で言い出したメグも驚いているが橘が大きな目を限界まで見開いている。前から知っている分衝撃が大きのかもしれない。

 塔子もビックリしたが、人慣れしつつある猫の様な姿が微笑ましく思えて笑みが漏れる。


「あはは!楽しみだねー、阿久津!」

 阿久津は笑いかける塔子に一瞬だけ目を向けると下を向いてしまった。塔子はニヤニヤしながら森田に言う。

「森田ももう断れないね、これじゃ」

「マジか……」

 森田が信じられない物を見るような目で阿久津を見ながら呟く。メグとエリは目を輝かせ手を取り合って喜んでいる。そのエリに橘が申し訳なさそうに課題を差し出す。

「じゃ〜この直しもその時までに頑張ってもらおうかな〜」

「うわ〜ん、もうちょっと浸らせてよ〜」

 エリがチェックがたくさん入ったタブレットを手にガックリと肩を落とした。





ーーーーーーーーーーーーーーーー




「はーい、じゃあこれで終わりまーす。夏休み羽目を外し過ぎないようにねー!」


 小林先生の声を皮切りに教室内が一気に騒がしくなる。皆んな既に開放的な気分になっているようだ。

 

 塔子は荷物を持ってメグとエリに声をかける。

「二人とも、またね!次は夏祭りかな?」

「そうだね!塔子ちゃん、部活頑張ってね〜」

「じゃーねー、塔子。またメールするー」


 二人に手を振ると塔子はクラブ棟へと小走りで向かった。


 夏休みが始まる。



 

読んでいただきあざまーす!

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