【第一章第一話】物語の始まり始まりってなァ!!
やっと書きたかった本編開始ですよ!やったね!零章を見なくても分かるように全部説明しながら書いてくのでどうぞよろしくお願いします!
異世界を覗く魔女マリー・メリア・ベルナールのもたらした技術によって急激な発展を遂げた魔術国家リヴィド。この国にはつい一年前まで『魔霧』と呼ばれる霧が夜を覆っていた。この魔霧は長く当たっているとやがて人を魔獣に変えてしまうため、人々は夜になると屋内から一歩も外に出なかった。そして驚くべきことに、この魔霧を生み出したのはその魔女ベルナールだったのだ。
…しかしそれも一年前の話。ベルナールは『叛逆者』に敗れ、魔霧も収まった。彼女は負けを認め、それまでとは比較にならないほどの異世界の技術や知識を広めた。その叡智によって今もなお栄え続ける国がリヴィドだ。
そしてその『叛逆者』こそがこの俺、ゼロ・スティングレイなのだ。…っと、少し変な口調になりすぎたな。学者風ってやつ?まぁいいや。今はちょっと時間が無いからまたな!
「止まりなさい!スティングレイ卿でしょう!?止まってください!」
物語の始まり始まり〜ってなぁ!!
よく晴れた日の夜、月明かりがリヴィドの街を優しく包み込む。その月の浮かぶ空を横切る男が一人。男の行方は誰も知らず、男が誰であるかすら知る者はいない。
そんな謎に満ちた男が潜んでいるとも知らずに悪事を働く者達…
「オラ!さっさと荷物を置いてどっか行け!」
賊と思わしき集団が建設中の鉄道を襲撃していた。斧や剣を持って簒奪の限りを尽くしている。
「くっ…!騎士団の到着はまだか…!」
襲われている側は工具で何とか対抗していたが、それももう時間の問題だろう。
「あぁ?騎士団なんてタダ飯喰らいの無能共を信じるのかァ!?」
「そこまでです」
「あ?誰だテメェ」
月光を反射する金の鎧と、その鎧の輝きに負けぬ程の美しい金髪を纏った女騎士が、今まさに斧を振り下ろそうとした賊の前に立ち塞がった。
「我が名はゴールドスタイン!あなた達を逮捕します!」
彼女は人々から黄金卿と呼ばれ、名実共に最強格の騎士として知られている。
「騎士団のお出ましか!随分と早いじゃねぇか!」
「全員まとめて牢獄に送って差し上げます!」
(あれ?もう救援が来たのか。これじゃ俺の出番は無いかな)
そう、謎に満ちた男とは何を隠そうゼロ・スティングレイのことだ。『あの事変』から早一年、彼は人知れず夜のリヴィドを守っていた。長く当たると魔獣化してしまう恐怖の霧、『魔霧』が消滅してから、夜を活用できるようになったリヴィドの発展は急激に進むようになったがそれと同時にこのような賊も多く出現するようになってしまった。
(にしてもド派手な魔術だなぁ…アレで花火とかやってみたいな)
現在彼はとある事情で表に姿を出していない。近くの高木に剣を刺してその上に乗って様子を伺っている。出てもいいのだが、何しろあの女騎士はちよっとした知り合いなので彼がここにいると知られると面倒だ。
「ふん!盗賊如きに遅れはとりません!」
流石王国最強の6騎士、シックスガーディアンの第二席『黄金の聖炎』の異名を持つヴィエル・ゴールドスタイン・モローだ。そこら辺のチンピラ程度ならいくら大人数でも相手にならない。
「クソッ!こうなったら…おい!こいつがどうなっても良いのかァ!?」
「なっ…!卑怯者!」
(おぉ…!良いなあのシチュエーション!俺もやってみたい!いや、やられる側でもいいしなんなら人質側もやってみたい!くっそもっと早く駆け付けてれば俺がアレできたのか…!)
逃げ遅れた作業員の首根っこを掴んで喉に剣を突き立てる賊。人質は恐怖で声も出さないでいた。この窮地にかの黄金卿がどう対応するのか実に見ものだ。
「贅沢なことは言わねぇ。一分間目を瞑ってくれりゃコイツは解放してやる。さぁどうする!?十秒以内に決めろ!10!9!8!」
「ええ!?くっ…!どうする…」
(嘘だろ本当にロマンしかないシチュエーションじゃないか!譲ってやってるんだからカッコよく決めてくれよ!?)
ゼロは人の命がかかっていることがすっかり頭から抜け落ちてしまった。つい身を乗り出しすぎて、乗っている剣から落ちてしまいそうになった。
「7!6!もう時間が無いぞ?早く決めろ!…4!3!2!」
「分かりました。一分間目を瞑ります!だから彼を解放しなさい!」
(えー!?嘘だろ!?マジで!?えっちょどうすんの!?)
賊の男がニヤリと笑い、人質を抱えたままそろり、そろりと目を閉じた黄金卿ににじり寄った。
(はぁ…仕方ない…)
「クヒヒ…!」
「っ…!?」
賊のリーダー格の男が剣を振り上げ、黄金卿に向かって振り下ろす…その瞬間だった。
キン!という短く鋭い金属音が鳴り響き、賊の剣が弾き飛ばされた。
「何…!?」
「っ!隙あり!」
一瞬の隙をついた黄金卿が賊のリーダー格の男の腹に拳を喰らわせ、そのまま何かの魔術によって気絶させた。
「うっ…!」
男はドサッ!という音を立てて倒れ込んだがまだ後方に賊はたくさん残っており、こちらに続々と向かってきている。
「早くお逃げなさい!このまま焼き払います!」
「え、えぇ…?『焼き払う』…?」
解放された作業員は困惑しながらも言われた通り鉄道から離れて一目散に逃げ出した。それを確認すると、黄金卿は残りの賊に向き直り、右手を突き出して開いた。
「聖炎よ!悪しき者どもを焼き払え!」
黄金色の炎が扇状に広がって残りの賊を焼き払った。彼らは声を上げる間も無く酷い火傷を負い、無力に倒れ込んだ。
「ゴールドスタイン卿!ご無事ですか!?」
彼女の後方から続々と王国の騎士達が駆け付けた。
「ええ。すみません、無駄足になってしまいましたね」
「いえ!卿がご無事でなによりです!この者達を連行します、よろしいですね?」
「頼みます」
騎士達は気絶した賊達を運び込んだ。彼らが作業を終え、再び黄金卿のいた方を見た時、彼女は既にこの場から姿を消していた。
「止まりなさい!スティングレイ卿でしょう!?止まってください!」
(何でこうなるかな…!てか怖!本当に止めるだけのつもりで撃ってるのかあれ!?)
現在俺は後ろから追いかけてくる黄金卿を振り切るために屋根から屋根へと伝って絶賛チェイス中だ。何故追いかけられているのかを説明すると随分長くなるためここでは省略するが、とにかく捕まると面倒事に巻き込まれるので全力で逃げる。
(Fooo!美女にケツ追われるのも結構ロマンあるな!…なんて言ってる場合じゃないなこれ…!)
本当に足止めをするだけなのだろうか?一般人だったら普通に死にそうなレベルの魔術を放ちながら追ってくるのが怖すぎる。
「待って!お願いだから!」
「そう言われて止まる馬鹿はいないって相場が決まってるんだよ!」
誰かに追われる事は魔霧があった時から経験してるけど流石に夜間に追われるのは初めてかもしれない。…いや覚えてないだけか?まぁいい。流石に市街地なら無闇に魔術使えないだろ。
「ならやはり君は馬鹿だな」
「っ!?ぐえっ…!」
何かにぶつかった。そしてこの声に聞き覚えがある。記憶が正しければ今俺がぶつかった相手は後ろの黄金卿の相方…名前は…なんだっけ…『シルバー女』としか呼んでなかったから覚えてないや。
「シルビア!どうしてここに?」
「エンジェライア様の命令だ。と言っても常に同じ命令だがな。『ゼロを連れ戻してー!』ってうるさいんだ」
…今なんと?あのワガママ女王様が俺を連れ戻そうとしてるだと?ここ一年はご無沙汰していたはずだが…
「エンジェライアが…?」
続く




