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叛逆者はヤンデレを避けて気ままに暮らしたい  作者: 芋ケンプ
番外編 第零章 叛逆者と死なずの七騎士
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白銀と黄金

最近恋愛要素無くて申し訳ないです。学園編までもう少しなのでしばしお待ちを。初めからジャンル別のにしとけばよかったかな…


「エンジェ、いるか?」


王宮でエンジェライアがいるはずの部屋のドアをノックする。反応が無い。どこか出掛けているのだろうか。


「どうしたスティングレイ卿」


ドアの前で待っているとフィリドールがやってきた。今日は兜は外しているようだ。窓から差し込む光が白銀の長髪に反射して眩しい。


「シルバー女…別にお前さんの気にすることじゃない」


「シルビアだ。そう強く当たらないでくれ。先日の不敬な態度については深く謝罪する」


頭を深く下げるフィリドール。何もかもが銀色な彼女は屋内では目立つ。


「別に気にしてねーよ。ただ本当に関係無いだけだ」


「そうか…なら…」


フィリドールの右手が素早く動き、腰の剣を抜いた。


「随分と物騒だな」


右手で剣を作り、軽く受け止める。彼女はこれといって驚きもしていないし、悪びれもしていない。


「ガーディアン同士に隠し事は御法度だ」


「技を隠すのは例外か?」


ゼロが皮肉混じりにそう言う。『銀の盾』のアーツの不意打ちが無ければエンバージュに交代することなく勝っていた、と不服気味なのだ。


「そちらこそ、その剣の力をまだ隠しているはずだ」


「そっちが全部話すんだったら俺も話してやるよ」


胴に思い切り蹴りを入れて突き放す。フィリドールが後ずさり、剣をしまった。


「はぁ…頑固なのは前ベルナール卿と同じか…」


フィリドールがそう呆れた時だった。


「2人とも何をしているのです?」


ゼロの後ろから、フィリドールより高い声が聞こえた。振り向くと、金色の鎧を纏った金髪の女性がいた。髪を伸ばし、肩にかけている。


(シルバー女の次はゴールド女かよ…)


「ゴールドスタイン卿…」


「誰?」


「あなたが噂の…ベルナール卿の後継ですか?」


見れば見るほど対照的な2人だ。落ち着きがあってクールなシルビアに対して、彼女は声から既に焦燥が伝わってくる。


「初めまして。ゼロ・スティングレイだ。それでお前は?」


「シックスガーディアンのヴィエル・ゴールドスタイン・モローです。それで、何をしていたのですか?私には貴方達がエンジェライア様の御部屋の前で争っているように見えましたが」


名前が長い…などと不粋なことを考えながら、彼女の右手が腰の剣の柄を握っていることを見逃さなかった。喧嘩っ早いのは同じらしい。或いはゼロとエンジェライアの目論みが気づかれているのか。そうでないことを祈りたいものだ。


「さぁ?シルバー女に聞いたらどうだ?」


「ゴールドスタイン卿、あなたの気にすることではない」


「何ですかその言い方。シメた方がいいですか?」


ヴィエルが両者を睨みつける。ガーディアンには物騒な輩しかいないようだ。…いや、それはゼロも同じか。


「ほう?第二席の私によくそんな口が聞けたものだな。なぁ第三席?」


「僅差でしょうに!そこまで言うなら…貴殿に決闘を申し込みます!」


「なぜ私がそんなくだらないことに付き合わねばならない?」


「ガーディアンの掟を忘れたとは言わせませんよ。申し込まれた決闘には必ず応じること、女王陛下の取り決めです!」


「くっ…少しは頭を使うようになったか…いいだろう。白銀の城砦が如何に強大かを思い知らせてやる。審判監督はスティングレイ卿に任せる、よろしいな?」


「えぇ…?」








訓練場にて


白銀と黄金が激しくぶつかる。犬と猿、水と油、盾と矛。2人は対照的だった。


「ゼロ様」


背後から聞き慣れた声。


「ルシアか」


「はい。ゼロ様はここで何をなさっているのですか?」


そう聞かれても返答に困る。何をしているかと言われても、何もしてない。ただ眺めているだけだ。そもそも決闘に審判が必要かどうかすら怪しい。


「一応あの馬鹿2人の決闘のジャッジを任されてる」


「はぁ…白銀の城砦と…もう1人は?」


「なんだっけな…名前が長いから覚えてないんだ。確かゴールドなんとかさん…」


ガーディアンの序列では第3位らしいが、僅差と言っていたようにシルビアとヴィエルは互角の戦いをしている。


「浮気ですか?」


「なんでそうなる!?」


怪しげにジーッとゼロの方を見るルシア。そういえばこの頃彼女にとってはゼロを巡ってライバルが増えすぎている。相当ストレスが溜まっているのだろうか。


「ゼロ様の最初の配下は私ですので」


「分かってるよ。それに俺は別に身を固める気はない」


「へぇ…そうですか…」


「何だよその目」


やれやれ、といった具合で戦場に目を戻した


相変わらず激しい攻防だ。シルビアの銀の盾が目まぐるしく回転してヴィエルの斬撃と魔弾を防いでいる。


「相変わらずッ!臆病な戦い方ですねッ!」


大雑把にも見えるが、その実かなり正確に銀の盾を誘導させているあたり、彼女はただの脳筋というわけではなさそうだ。


「堅実と言え。貴様のその獣のような戦い方には心底呆れる。少しは人間らしさを見せてみろ」


「その傲慢さ!すぐに叩き治して差し上げます!」


黄金の斬撃と白銀の盾が何度もぶつかる。とても目が痛くなりそうな光景だ。普通の人間が見ればヴィエルが圧倒的に優勢に見えるが、ゼロには分かる。ほぼ互角か、僅かにシルビアが有利だ。


(そろそろ…)


「っ…!?」


「隙あり」


やはり来た。攻撃を全て無効化してからのカウンター。あまりにも理不尽な技だ。ゼロも一度アレにやられかけた。…のだが…


「…やはり傲慢ですね」


「……!」


カウンターで突き出された剣を、手で受け止めている。いや、手に纏った黄金色の魔力で包み込んでいる。


「頭を冷やしなさい!」


ドゴォ!という鈍い音と共に、シルビアが吹き飛ばされて壁に激突する。何が起きたのか分からなかった。


「勝負あり!えーと…ゴールドスタイン卿の勝利!」


ゼロはまだ追撃しようとするヴィエルを止めるため、咄嗟に審判を下した。その声を聴くと彼女は剣を鞘に収めた。


「…ルシア、他のガーディアンの情報を集めてくれ。可能な限りでいい」


「仰せのままに」


堂々と出て行くルシア。彼女に渡した聖遺物のおかげで彼女は彼女の存在を知らない者には認識されない。だが完全に認識されないわけではないため少しは忍んでほしいところだ。


「…どいつもこいつも…ゴリラかよ…」







「まだ私は負けていない!」


シルビアはチェスのボードを思い切り叩いて憤慨していた。


「気を失っておいて何を言うのです。銀が金に勝るわけがないでしょう」


憤慨する白銀と勝ち誇る黄金。決闘前とはまるで正反対だ。彼女達はやはり相容れないのだろうか。ヴィエルは散らばった駒を元に戻しながらなだめている。


「これで勝ったと思わないことだ!ベルナールの席は貴様には遠い!」


「本当に子どもなんだから…スティングレイ卿はそれ程強いのですか?」


気まずくなったように目のやり場を無くしながらシルビアが答えた。


「…途中までは勝っていた。だが…何かタガが外れたかのような…強大な力に負けた」


「どんな魔術を?」


「剣を作り、剣の性質を変えて射出することができる。爆発する剣を投げてきたり、あとは軌道も自由に変化させられるみたいだ」


「面白い魔術ですね。一度手合わせ願いたいものです」


「やめておけ。痛い目を見るぞ」


「どうして?」


「あの瞳の中にどこまでも続く闇を見た」


「魔神の眼…?」


駒を拾う手が止まり、シルビアの瞳を見た。エンバージュの狂気とも言えるあの瞳をあの少年が有しているとでも言うのか…そう言いたそうだった。







一方ゼロはと言うと…


「前ベルナール卿が…帰ってくる…!?」


エンジェライアに、ベルナールが帰還する旨を伝えた。彼女は驚いた表情、あるいは怯えた表情を作った。


「相当ヤバいらしいな」


「計画を早めに実行できないかしら…!?彼女が帰ってきたら…!」


「俺も丁度そう考えてたんだ。明後日には準備が完了する、ちょうどその時がパレードの日だったよな?」


「ええ…確かそう。…ねぇ、もし間に合わなかったら…」


エンジェライアの顔がより一層曇る。彼女の言いたいことは分かる。エンバージュですら勝てなかったベルナールが戻ってきたら…彼女がゼロの叛逆を許すはずがない。


「心配すんな。俺が守ってやるよ」


「信じていいのよね?」


「ああ。叛逆者の名に誓って」


「ありがとう。あなたに会えて良かった」


「俺もお前に会えてよかったぜ。いろんな奴と戦う機会をくれてありがとな」


「どういたしまして、とは言えないわね」


エンジェライアがくすくすと笑う。最近は多少心に余裕が生まれたように見える。


「本当に感謝してる。…そうだ、ベルナールについて教えてくれないか?」


「ベルナール卿…199年間ガーディアンとして、王国の英雄として輝いていた騎士だけれど…一年前に国を出たわ。近くの国から招集がかかったとか、余生を楽しむための旅行だとか色々言われているわね。あなたをその席に無理矢理座らせたのはガーディアン内に亀裂を作るためでもあった」


エンジェライアが少し落ち着きながら話し始めた。


「亀裂?」


「ええ。実際、今日ヴィエルとシルビアが争ってたでしょう?彼女達もその席を狙っていたのよ。ガーディアン内の結束を弱くしておけばどちらかは味方になってくれると思っていたの」


「恐ろしいこと考えるなお前…」


「い、生きるために必死だったのよ!」


「分かってるよ。そんで、具体的にどんな奴だ?」


「ベルナール卿は…正直何を考えているのか分からなかったわ。魔神を倒した事をちっとも誇らないし、英雄と呼ばれる事を嫌っていた。でも結局王国側の人間よ。でなければ200年もあんな腐敗したシステムを容認するはずがない。もっと言えば、リヴィドの全てを敵に回しても彼女なら勝てるはずなのに…」


「…エンバージュとベルナールは初代リヴィド女王と面識があった。しかも仲間だった」


「どこかで仲違いしたのかしら。エンバージュが裏切ったのか、ベルナールとエンジェリア女王が裏切ったのか…」


ゼロの中にあるエンバージュの魂の断片はあの時以来ゼロに応えないため、何があったのかは聞くことができない。6人の部下達も知らないらしい。


「エンバージュにも、リヴィドを救いたいって気持ちがあった。それを邪魔したのはベルナールだ。ならお前の敵であることに変わりはない。だろ?」


「そうね。彼女が帰ってくるまでに全てが終わるのが最善、間に合わなかったら…あなたに任せるわ。この負の連鎖を断ち切って見せなさい」


「ああ、叛逆王の名にかけて」








「とは言ったけどよ、実際どうすんの?」


それから宿に戻ったゼロは全員を招集して会議をしていた。


「パレードの襲撃だろう?国民に真実を告げるのは君の役目だが…問題はベルナールがいつ帰ってくるかだな。キリエ君、天啓は降りてきてないのかい?」


「無いですね。占星術も効きませんでした」


「嫌な予感しかしないね。他のガーディアンも思ってたより強そうだし」


ビアンカは落ち着いているがベルティーナの顔には焦りが見える。アイリスは相変わらず表情が読めないしキリエも相変わらず祈りを捧げている。


「私とネメシス君で組めばまず負けないだろうがな」


「なんであなたと組むのが前提なんですか…」


「他はどうする?金銀抜きにしてもあと2人、最悪もう1人一番強いのがくるぞ?」


「ベルナールが来た場合は君が抑えるんだ。その間に私達が他を抑える。来なかったらそのまま国民に真実を告げるんだ」


「8人で無理だったとお聞きしましたが…その、いくらゼロ様でもお一人でそれは…」


「ルシア、俺はやる。お前たちは信じて他を倒してくれ」


「…分かりました…」


「では確認を。フェリシーとネメシスが『白銀の城砦』と『黄金の聖炎』の相手を…」


「『黄金の聖炎』?」


「ゴールドスタイン卿のことです。続けます、ベルティーナ、キリエ、ビアンカは雑兵とその他ガーディアンの相手を、私とルシア様は全体の補佐を行います」


「待ってください!やはり私もゼロ様のお側に…!」


「ルシア、お前の聖遺物を活かすための戦術だ。ヤバくなったら助けてくれ」


「…はい」


「日次は明後日の正午。ルキア・ペントルクスを捕捉した後身柄を拘束、我らが王によってペントルクス家の悪虐を暴きます。最重要注意事項はベルナール卿が帰還する可能性が大きいこと。以上です」


「被害の方はどうするんですか?」


ベルティーナの質問にはフェリシーが答えた。


「なるべく抑えるんだ。特にネメシス君とビアンカ君」


「わ、分かってますよ!」


「被害が出たらそれはアイリスの調整ミスってことで」


「なんでそうなるの…」


恐らく魔改造レールガンを使うのだろう。ビアンカが真面目なのかふざけているのかはよく分からない。


「神の御名において、あらゆる犠牲は正当化されます」


「一般市民には手を出さないように。ビアンカ君、キリエ君、本当に頼むぞ?」


「分かってる」


「神がそうお告げするのなら」


「本当に大丈夫だろうな…まぁいい、一同解散!質問は俺かフェリシー、アイリスに頼むぞ」


「「了解」」


こうして会議は終了した。ゼロは先に自身の部屋へと戻った。結論としては、ベルナールとエンカウントすることを覚悟しなければならないというものだ。


(ベルナールを抑える…最強と戦えるのは嬉しいが…)


『恐怖を感じている、だろ?』


声の主はどこにもいない。頭の中で声がする。


「エンバージュ?」


『ゼロ・スティングレイと魔神王エンバージュの魂が融合した存在、それが僕だ。だから君でもあるし、エンバージュでもある』


不思議な感覚だった。自分自身に問いかけているようだが、帰ってくる答えに予想はつかない。


「じゃあ何と呼べばいい?」


『別に、エンバージュでいい』


「そうか。ならエンバージュ、どうして今出てきた?」


『白銀と戦った時にも一度出てきたじゃないか。君を混乱させないように自重してただけさ』


「…そうか。変な事を聞くが…お前とベルナールってどんな関係なんだ?」


『いつの話かによるが…初めは幼馴染だった。次は同級生、そして…敵だ』


「同級生?」


『僕もハイドレスト魔術学園に通っていたのさ』


「敵対したのは…やっぱり分かり合えないからか?」


『ああ。彼女はリヴィドを存続させたいようだけど僕は違う。義姉の子孫が犠牲になり続けるくらいならリヴィドを滅ぼす。作り上げた国と子孫、どちらを尊重するかで僕達は対立した。互いに譲れなかったんだ…。彼女はエンジェリア女王の残した国を、僕は…エンジェリア女王の子達を大切にしたかった…!』


エンバージュの声は次第に涙声になっていった。それがゼロの心にも伝わり、ゼロも気分が沈んでいく。


「俺はエンジェライアを守りたい」


『僕もエンジェリアの子孫を守りたい』


「ならやっぱり俺達の目的は同じみたいだな」


『ああ…。もう寝た方がいい。明日で準備は終わらせないと。残された時間はそう多くない』


「だな。おやすみだぜ、エンバージュ」


エンバージュからの返答はない。この日、ゼロは珍しく深い眠りについた。おそらく、彼の生涯で今日以上によく眠れた日は存続しないだろう。彼の心にひっそりと、彼自身気が付かない程に静かに付き纏っていた不安のような感情をエンバージュが肩代わりしているかのようだ。相変わらず得体の知れない魔神だが、決して悪い者ではないと思えた。













設定資料:シルビア&ゴールドスタイン



シルビア・エヴリン・フィリドール


白銀の髪を持ち、片目は血のように赤いガーディアン第二席の騎士『白銀の城砦』。クールビューティーだが敵には挑発的で、やや大人げない一面も。身長171、体重不明。ヴィエルとはベルナールの席を巡ってやや険悪だが、任務や戦闘の際は非常に相性の良いコンビとなる。


魔力生成:A+

魔力貯蔵:A+

魔力変換効率:S

魔眼:詳細不明、Cランク程度の魔眼と思われる。

[彼女の赤い方の眼に宿る魔眼]

属性:無属性:A+ 地属性:B+

擬似魔法:『銀の盾』:EX

[縦に彼女の背丈の8割弱、横に片腕の長さ程の楕円形の銀色に染まった半透明の魔術。彼女を守る盾となり、時には矛となる]



ヴィエル・ゴールドスタイン・モロー


シルビアとは対極の存在であり、美しい金髪と琥珀の目、シルビアと同じく片方の眼は赤色である。礼節を重んじ、悪を許さぬ正義の騎士『黄金の聖炎』。シルビアが堅実に耐え、カウンターを狙うタイプに対して彼女はとにかく攻め続けることを得意とする。ガーディアンに選ばれる時点でかなり優秀ではあるが魔術の才はシルビアに劣る。しかし剣術の腕は超一流。身長162、体重不明。


魔力生成:B

魔力貯蔵:EX

魔力変換効率:C+

魔眼:詳細不明、Bランク程度の魔眼と思われる。

[彼女の赤い方の眼に宿る魔眼]

属性:無属性:C+ 炎属性:A+

擬似魔法:『聖なる黄金の炎』:EX

[悪を焼き尽くす聖なる魔術。武器や鎧に宿すこともできる。吸血鬼や魔獣などに大きな効果がある。また、悪であれば悪であるほど、つまり、世界の意思に反する者に対しても効果が強まる]


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