ここ宿だって言ってんでしょうが!何改造してんの!?
前世のあらすじ
なんとかエンバージュと契約を交わし、彼の力と不死性を手に入れたゼロ。早速シルビアでお試しした。ピンチになったその時、ゼロにエンバージュが乗り移った…いや、ゼロがエンバージュになったのだった…
追記
今回…というかこれからはおそらくこんな感じで短めにして投稿頻度を上げようと思います。今までは元があったので書けましたがこれからはそうはいかないでしょう。それに小分けにしないと振り返る時に探しづらいのもありますが、なにより長々と書いてると矛盾しそうで怖い…あとなるべく埋もれたくない(正直半分くらいこれ)とかいろいろ理由はあります。これからも応援よろしくお願いします!
宿に帰ると、ルシアが青ざめた表情で出迎えてくれた。
「どうかしたか?」
「あの…魔神の配下の方が…地下に…」
地下に繋がる隠し階段を指差して震えている。いったいなんだと言うのだ。もしかしてとんでもないゲテモノでもいるのだろうか?
「手配するとは言ったが随分と早いな」
「私が帰った時には既に3名、後から残りの3名の計6名が…彼女達は自分達を『聖エンバージュ騎士団』だと…」
「聖エンバージュ騎士団ねぇ…」
(『聖』って付いてるやつに碌なのが無いってのは常識なんだが…流石に邪教みたいなのを手配するなんてことはないよな?)
ゼロは恐る恐る地下に続く階段に向かった。後ろにはちゃんとルシアがいる。
「なんか…こんなのだったか?」
「到着して早々に改造なされて…気づいたらこのように…」
「えぇ……」
学校の職員室程度の地下室だったものが、左右と正面に続く階段の踊り場と化しており、高級そうなシャンデリアが辺りを柔らかく照らしていた。
「待て。誰か来る」
正面の階段から誰かが登ってくる音がする。音的に2人、どちらも規則正しいリズムで近づいてくる。なにやら話し声も聞こえる。
「だから言ったでしょう?ビアンカさんに的当てゲームで勝てるわけがないと」
「いやぁ…分かってはいたんだがね?売られた喧嘩は買うのが私なものでな…」
階段を登りきってゼロ達の踊り場まで来ているが、互いの方を見て口論に集中していて気づく様子がない。
「あなたいったい何千年生きてるんです?今の学院の学者があなたの今の姿を見たらさぞかしがっかりするでしょうね?」
「まさか、私の名はその程度で穢れやしないさ。超偉大な魔女フェリシー・ド・アークス様だぞ?」
「『超偉大な』?『超邪悪な』の間違いでしょうに」
いかにも学者気質な方の女性は薄青く長い髪を持ち、右眼が赤と青、左眼が白と黒の特徴的な目をしている。対してもう片方は桃色のやや短めな髪と綺麗な琥珀色の目をしている。頭から後頭部らへんに向かって角が生えており、尻尾もあるため龍人だと分かる。
「偉人と悪人は紙一重って言うだろう?そう言うことさ」
「それなら知ってますよ。天才と馬鹿は紙一重、という言葉ですよね?」
「ハッ!言ってくれるじゃないか!」
「本当にこれが天才なのやら…おや?あなた方は…はっ…!」
ようやくこちらに気がついたようだ。ゼロとルシアを交互に見て、何かに気が付いたかのように目を点にした。
「あっ、どうもこんば「御無礼をお許しください!!」「ゲフゥ!!」…へ?」
桃色の方がもう片方の頭を掴んで一緒に頭を下げた。何が何だか分からない。
「ちょっとネメシス君!何をするんだ!」
「黙りなさいフェリシー!失礼しました。ご帰宅なさったことに気が付きませんでした。ゼロ・スティングレイ様ですね?既に話は聞いております」
「ええと…君達がエンバージュの…?」
もう1人は頭を掴まれたままジタバタしている。白衣を着ており、いかにも研究者と言ったところだがゼロは見逃していない。白衣の下がとんでもない衣装になっている。スカートのようにも見える前掛けのようなものは、切れ込みが入っており風が吹けばその下が露わになってしまうだろう。
「はい。エンバージュ様に『ゼロ・スティングレイという男が君達の王だ』と言われたので、貴方様が私たちの王です」
「王とか厚かましいことこの上ないな」
「なぁネメシス君、手を離してくれないか?私も王の尊顔を拝見したいのだが」
「これは失礼」
ぱっと指を広げ、もう1人の方を解放する。
「ほう…聞いた通りエンバージュに似ているな。好感が持てる。実に好みの顔だ」
「フェリシー、人を顔で判断するのは失礼ですよ」
「褒めてしかいないのだから良いではないか。それに君もどちらかというとタイプだろう?」
「なっ…!」
「まぁ初々しい小娘の初恋を応援してやってもいいが、まずは自己紹介から始めよう。初めまして我が王。フェリシー・ド・アークスだ。私と子を成す気はないかな?」
桃色の髪の方が赤面したのを楽しそうに揶揄ったのち、悠々と自己紹介を始めた。
「ああ、聞いたことがあります」
「そうだろう?何しろ私は有名人だからね。困ったことがあったら何でも聞きたまえ」
「普通に生きてるんだな」
「そりゃ私は不死だからね。というか聖エンバージュ騎士団は不死であることが最低条件だ。主君に離別の悲しみを与えないためにな」
なにやらとんでもない集団が仲間になってしまったようだ…
「ネメシス君も自己紹介したまえ」
「あなたのせいですよ…コホン、ネメシス・ド・イヴェルナです。以後お見知り置きを、我が王。それとフェリシー、王に軽々しく接しないでください。私の王です」
「『私の王』だと?笑わせる!ゼロ君は私の王だ」
フェリシーとネメシス、2人の自己紹介が終わったところでひとつ疑問を投げかけた。
「あのさ」
「何ですか?」「何かな?」
「君達なんでそんな初対面から好感度高いわけ?」
ネメシスの方は顔を赤くし、フェリシーの方はにやにやと笑っている。
「エンバージュにはユーリ君がいてな。他に不死を持った相手がいなかったから我々も初めて安心して愛せる者に出会えて嬉しいのさ」
「お恥ずかしながら…」
「俺が不死だって言いたいのか?」
「エンバージュの力を引き継いだのなら不死だとも」
(初めて聞いたわそんなん!てか、えっ?俺不死身なの?そんなポンってなれるもんなの?エンバージュやばすぎだろなんでベルナールに負けたんだよ)
「…そこは受け入れよう。だけどよ、俺がとんでもないクズ野郎だったらどうすんの?」
「あり得ないな。私達は数週間前から君の存在を監視していたからね。君は間違いなく『良い人』だ。予言とは偉大だと思わないか?それ抜きでもじきに分かるさ、不死を手に入れた者はいずれ悟るのだから」
「…?とりあえずお前たちは恋愛したいだけなの?」
確かに、永遠の命を手にした者は大切な人との別れを無限に繰り返すだろう。唯一の相手だったエンバージュが既に妻がいるとなれば諦めるしかなく、寂しい思いをしていたのだろう。
「まぁ…それもありますね」
「うむ…要するに我々は欲求不満なのだよ、我が王」
「言葉を選びなさいフェリシー!」
「いいじゃないか。実際君も相手がいなくて寂しい思いをしていたのだろう?」
この不毛な言い争いを割とマジで引きながら見ていたゼロだったが、ふとルシアの方を見た。とんでもなくキレている。
「あの」
とてつもなくドスの効いた声だ。初めてゼロはルシアに恐怖を抱いたかもしれない。
「「あっ…」」
「あちゃー…」
ゼロは悟り、2人は察した。顔が笑っているが、目が笑っていない。
「ゼロ様は私の王です」
「「はい…」」
「ヒェッ……」
獣人特有の耳をぴょこぴょこと動かしながら2人に迫っている。念のために言っておくが、フェリシー・ド・アークスはリヴィドはおろか世界的に有名な魔女で、歴史の教科書には必ず彼女の名があるほどの人物なのだ。ネメシスの方はさほど有名ではないが、龍人特有のフィジカルの強さは折り紙付きのはずなのだ。
(スゲェ…大魔女と龍人がそろって土下座してる…)
「まぁ私は優しいので独占せず皆の王ということにしますけども?初めにゼロ様に仕えたのは私ということはお忘れなく」
「はい…」
「…肝に銘じる」
「そしてもう一つ聞きたいのですが、この改装は一体誰が?」
「アイリス・アイゼン・シグマスという小娘だ。技術者兼研究者でな、よく武器開発やら施設開発やらを担当している」
「あなたから見たら誰でも小娘でしょうに…」
「そうかね?彼女は我々の中でも相当に若い方だぞ?もしかしてアレか?ネメシス君も若く見られたいのかな?ならそれは諦めた方がいいぞ。老いは必ずやってくるものだからな」
「老いという概念を最も早く否定したあなたに言われたくはありません。あなただって老いから逃げ続けているでしょうに」
「ハハッ。何しろ最近の若輩はやたら近距離戦をしかけてくるのでな。体も使わないと戦闘が億劫でしかたない」
「…最後に戦闘なんてしたのいつです?」
ルシアが恐る恐る聞く。だいたい答えは分かっているが…
「確か100年前だから…おや、あの時以来一切してないというのか。時の流れは早いものだな」
「はぁ…申し訳ありません我が王、ルシア様。フェリシーは老害なんです。このまま話をしていると明日になってしまいますので、残りのメンバーと顔を合わせにいきましょう。皆食堂で待っております」
「食堂まであるのか…いったいどれだけ広く作ったんだ?」
「えっと…アイリスのことですから城が丸ごと入るくらいは作っているのでは…適宜拡張するとも言っていたのでさらに広くなるかと…」
城が丸ごと入る?正気ではない。今朝エンバージュと契約を交わしたばかりだというのに、もうそんなに広げられているなんて…
「あのさ…ここ俺の家じゃなくて宿なんだけど」
「問題ありません。ベルティーナが買収しました」
「誰それ何者!?」
よく分からないが行動が早すぎる。少しは確認とかできないのだろうか?
「ベルティーナ・オーディアス。私と同じ龍人です。彼女の取り扱いにはお気をつけを。何しろ…その…」
ネメシスが言葉に詰まる。フェリシーの方を見て、『お前が言え』とでも言うかのようだ。
「うむ…何というかその…会う前から随分と君の事を気に入ってしまってな…我々が可愛らしいレベルなんだ。いや狂愛と表現するならもう一人頭のネジが外れた奴がいるんだがね?」
「…ゼロ様」
「俺の体持つかなぁ…」
設定資料 ゼロ・スティングレイ
黒髪赤眼の少年、或いは青年。戦闘の際は異世界の黒いミリタリージャケットの上に白いコートのようなマントのような羽織を着る。身長172、体重57程度。
ステータス
魔力生成:S→S+
魔力貯蔵:D+→B
魔力変換効率:EX→測定不可
魔眼:測定不可
属性:血属性:C(New!)
[エンバージュが魔神であると同時に吸血鬼でもあることに由来する属性]
刀剣作成魔術?:EX
『死なずのエンバージュ』:B(New!)
[エンバージュが不死の魔神であることに由来する能力。不死性の強さとしては他と比べると並程度]
『叛逆者の意志』:EX(New!)
[叛逆する者に与えられる力]
※以上のデータはエンバージュとの同調時である。




