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楽園の魔女  作者: 金星
4.裂け目
51/77

(51) 裂け目-5

地上が厚い闇に閉ざされた中、切り立った崖の切っ先に一人の魔女が立っていた。世界の狭間、裂け目の淵に立ちながら、魔女、ヤミーは深い闇を覗き込む。目には見えないものを視て、語られる事の無かった声無き声を聴いている。彼女は声を潜めて忍び寄る彼等の声を聴きながら、塗り潰された深淵をずっと見詰め続けていた。



無言の祈りは、何処まで遠く届くだろう。

どれだけの祈りを捧げれば、この時を慰めてくれるのだろう。



「気遣いも行き過ぎると、かえって誰かを遠ざける。無理にでも手を引っ張る図々しさがあれば、違った結果になっていたのかな」



ヤミーは泣いてなんかいないと自分に言い聞かせる様にして、無理に押し出したように微笑んだ。



*



祈りのかたちがそれぞれである様に、魔女にもそれぞれの生き方がある。



誰しもが心の中に、それぞれの闇を持っている。


けれど闇は闇でしかないし、それ自体には何もない。

そこには善悪なんてものも無いけれど、かといって虚無というわけでもない。


何があるか分からないものの中から、魔女達はそれぞれの闇を手探りで探している。闇は分からないものであるからこそ、自らが見たいものを見出してしまえる事だろう。


でも何があるか分からないところへ、どうして踏み込んでいくことが出来ようか。きっと足を踏み外してしまうのは簡単で、崩れ去っていくのもあっと言う間かもしれない。


時が戻って欲しいと願っても、返って来るのは胸の痛みと悲しみばかり。寂れていく感覚は、命の意味を狂わせていくみたいで怖かった。


闇を愛する事を覚えた彼女が、一体何を見出したのかは分からない。



「取り返しはもう付かないけれど、嫌いなのに会いたいと思うのは私だけ?────ねえ、ラタタン」



細く掠れた声で呟いた言葉は、底を見通せない深い闇の中へ、吞まれていって消えていった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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