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楽園の魔女  作者: 金星
3.知恵の実
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(39) 知恵の実-16

星瞬く東の夜が白み始める頃、居館3階の作業部屋で私は素材の下拵えを進めてゆく。"学園"から依頼された調剤品の大半は処理を終え、後は幾らかの仕上げを残すばかりだった。


私は汗を拭いながら備え付けの椅子へと腰掛けて、天井を仰ぎ見るような姿勢で背筋を伸ばす。椅子の背に身体を預けながら、


(────役目を終えたら、どうしようか)


気の抜けた様子で、遠く視線を向けて思う。



魔女達は不老で長命ではあるが、決して不死という訳では無い。

生き続ける魔女の間に、それぞれの土地で育まれる、環境と共にあるもの。


"森"を離れてから、"学園"で続けている暮らしに不満は無い。ただひたすらに、周囲と触れ合いながら、それでも私達は生き続けてゆく。



一歩先を行く存在は、誰かの勇気となるだろう。

そして誰もが先を行く存在であり、それを必要とする誰かに、見付けて貰う事を願っている。


だから痛くても、苦しくても、涙を流したとしても、

時に振り返っても、立ち止まってしまったとしても。

後悔なんてしないように、自らが選んできた物を、信じて育み、私達は歩み続けてゆく。


疲れたら休めばいい。

止めて手放す必要なんて、決してない。



「────楽しいからではなく、好きだから続けてゆくんだ」



窓越しに差し込んでくる太陽の光の中で、私はそう小さく呟いたのだった。



*



私達は、きっと何処に居てもいい。

居たいと思う場所で暮らし、行きたいと思う場所へ行く。

やりたいと思う事をやりながら、帰りたくなったのなら帰ればいい。



帰る場所がある。


それはとても幸せで、

それがあるから安心できて、

それがあるから前へ前へと進んでゆける。


もし無くしてしまったとしても、

居なくなってしまったとしても、

頑張れない訳では無いけれど、


それがその場所にあるだけで、いつも以上に頑張れる。



そういうものであって、そうありたいと、私は想いを願いに込める。

きっと"森"は、何時だって私を迎え入れてくれるだろう。



"森"、


────それは自分にとっての、いつかの私が帰るところ。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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