(25) 知恵の実-2
上層と呼ばれる"学園"の階層には運営施設が集約された区域があり、上の中庭と呼ばれる広場には2人の魔女の姿があった。
ロゼ ロワイヤルはワンドを片手に手にしながら、毅然とした態度で相手の様子を見据えている。対するシュリードゥワリカはスタッフを両手に下げるようにして微笑み、
「気遣いは不要です、いつでも構いませんよ」
それは熟達した佇まいを感じさせる、そんな余裕を持っていた。
「────それはどうも」
言うな否や、ロゼ ロワイヤルはワンドを振りかざすと、放射状に広がるようにして青白い稲妻が走ってゆく。同時に大地を踏み切って疾走するロゼ ロワイヤルは、稲光を帯びた両手で正確に狙いを定めていった。
大気は一瞬にして高熱を帯び、膨張し、膨大な魔力が発散する。空気は衝撃波となって、雷鳴と共にシュリードゥワリカを目掛けて放たれてゆく。確実にシュリードゥワリカの位置を捉えてゆくそれは、苦労や努力の末に得た賜物だった。
白煙の中、シュリードゥワリカは平然とした態度で微笑み、
「結構なお点前で」
そう言いながら底の知れない様子で佇んでいる。
「────もう一服お立てしたいところだけれど、生憎在庫切れね」
ロゼ ロワイヤルは左手に宿った魔力の奔流を霧散させると、肩をすくめるように息をつく。
どちらの魔女も全力を尽くさず、余力を残している様子であったが、それは彼女達にとっての、昔からの習わしの様なものだった。
*
魔女達は何らかの能力、才能、そして賜物を授かっている。
苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むとされており、魔女達はそれらの価値を見出しながら、発展させていくことが使命とされる。
"学園"の目的の一つは、互いに奉仕の機会を与えることにより、授かった賜物を祝福し、また才能を開花させる事にあった。
ロゼ ロワイヤルはシュリードゥワリカと肩を並べるようにして、中庭に設けられた椅子へ座り込む。シュリードゥワリカは座談に興じるように、穏やかな表情で語り掛けた。
「"森"の魔女様は、貴女によく似ていらっしゃいますよ」
「────不思議な雰囲気を持つ魔女ね、飛べない魔女には一体何が出来るのかしら」
ロゼ ロワイヤルは気兼ねないやり取りをするように、シュリードゥワリカと他愛のない会話を続けていく。幼い頃からの付き合いであった彼女は、ロゼ ロワイヤルにとって飾らない自分を晒す事の出来る数少ない友人であり、家族のようなものだった。
シュリードゥワリカはどこかおどけてみせるようにして、
「気の合う友人が出来ると良いですね」
そしてロゼ ロワイヤルは椅子から立ち上がる様にして、
「────余計なお節介」
そう微笑するように、居館の方角へと歩みを進めたのだった。
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