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005 胡桃との話し合い①

湊は胡桃の言っていることを聞いてがっかりした。確かに世間ではMINATOは女性シンガーとして騒がれている。それは湊がVtubeに顔を出さないで仮面をかぶっているからだ。顔を出すのはVtuberとしてNGだしそもそも女声であることがコンプレックスなので顔を出すつもりはなかった。


それにMINATOが自分でVtubeを通して女性であるという発言をしたことが無い。マスコミやSNSで女性だと取り上げられたりすることで世間で一般的にMINATOが女性だと勝手に認識しているだけだ。そのことをMINATOが自分で女性でなく男性だと言っていないだけだった。


なので、胡桃の怒りは彼女や世間一般が勝手に思い込んでいることで湊は悪いことなんて一度もしたことが無い。だから「ファンを騙していたのね」と言われても正直言って湊にはあずかり知らないことだった。


「何か言いなさいよ。よくも私たちを騙してきたわね」


その言葉に湊は怒りが湧いてきた。いつもなら何も言い返さないで黙っているというのが湊の性格だ。だが胡桃に対しては何故だかストレートに怒りをぶつけてしまった。今までの気の弱い湊ではなかった。


「いい加減にしろよ。俺は一度も自分でMINATOが女性だと言ったことはないんだよ。お前の言っていることは俺にとっては理不尽なことなんだよ。マスコミやSNSで勝手にMINATOを女性扱いにしやがって。もしそんなことが無ければ俺は今頃、歌い手としてーデビュー出来ていたんだよ。それが、結局顔出しNGでデビューすることになったんだぞ。お前たちの勝手な妄想が俺の夢を潰したんだぞ。そのことをお前はどう思っているんだよ。どう責任取るんだよ」


胡桃はおとなしそうに見える湊が怒りだしたことに驚いた。そして湊が言うようにMINATOが自分でVtubeを通して女性だと言っていないことは雑誌で読んだことがあった。でも女性の声で透き通るようなソプラノ声のMINATOが男性だと思う方がどうにかしていると思っていた。


胡桃は一応自分の言い分が間違っていることを認めることにした。でも納得できないところがあった。


「ごめんなさい。私が悪かったわ。貴方が自分から女性だと言っていなかったことは理解できたわ。でも一言だけ言って良いかしら」


「なんだよ」


「一言だけ『MINATOは男性です』ってVtubeで言えばよかったじゃい。そうすれば世間でMINATOが女性だと騒がれずに済んだと思うわ。だから私は被害者なのよ。私の大好きなMINATOを返してよ」


胡桃の言っていることは一理あると湊は思った。しかし、胡桃は湊の気持ちを理解していない。『オカマ』と言われて虐めにあっていた湊がマスコミやSNSで女性だと言われたときにMINATOは男だと言ったら世間はどういう反応をするだろうかと湊は考えた。


その時に『オカマ』といわれ傷ついた時のことを思い出してMINATOのことを男だと言えなくなってしまったのだ。そんな理由があってMINATOは女性だと言う事になってしまった。


だから何も知らない胡桃にどう説明していいか分からない。湊は返す言葉が無くなり黙って俯いてしまう。そしてとても悲しそうな顔をする。今にも涙が出てきそうな感じになった。


そんな湊を見た胡桃は自分が言い過ぎたかなと思って後悔した。でもやはり大好きなMINATOに裏切られたという気持ちが拭いきれない。


そんな時に学校の予鈴がなる。


「一先ず、話しは放課後にしましょう。連絡先を教えてくれるかな?」


胡桃は湊にスマホを向ける。湊はその申し出を受けて連絡先を交換した。


そしてそれぞれの教室に戻っていった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



湊は落ち込んだ状態で教室に入る。湊の顔は青白くなっていた。そんな湊の表情に康弘と朱音は直ぐに気が付いた。二人はいつでも湊のことを気遣っている。また虐めに会っていないかと神経をとがらせているのだ。


康弘が湊の席に一早く駆けつけた。次に朱音が心配そうな顔をしてやってくる。前の席の浩二も湊の様子がおかしいことに気が付いた。美奈は朱音の様子がいつもと違うことに気づき湊の席に行く。


「おい、湊、いったい何があった。また虐められたのか?」


湊は康弘が心配して来てくれたことが嬉しかった。だけど今回ばかりは康弘にも相談できない。MINATOとしての活動は康弘にも朱音にも内緒だったからだ。


「なんでもないよ。少し落ち込んでいるだけだから心配しないで」


「何でもない訳ないでしょ。ちゃんと説明しなさい。私が力になってあげるわ」


朱音は湊の様子が何でもないはずが無いと気づいている。三年の付き合いだ。顔を見るだけで湊がなにか悩んでいるとすぐに気が付いていた。美奈は湊が悩んでいることを朱音が心配していることが分かった。


でも、なにも言葉をかけることが出来ない自分に歯がゆさを感じていた。


「湊、康弘と相川さんが心配して来てくれているんだ。本当に大丈夫なのか?」


浩二も湊が落ち込んでいるように見えて心配している。でも湊には何も話すことが出来なかった。


「ごめん、心配かけたね。でも今回ばかりは自分で何とかしてみるよ。虐められているわけじゃないから安心してほしい」


「本当に虐められていないんだな」


湊がそう言っても康弘は心配で仕方がない。


「本当に虐めじゃないから」


「分かったわ。でも私たちが湊の味方だと言う事だけは忘れないでね」


朱音の言葉に嬉しさを感じる。いつもこうして湊のことを心配してくれる優しさがたまらなく嬉しい。康弘にも感謝している。いつも湊を気遣ってくれている。それが分かっている分今回の理由を話せないのがつらかった。


「俺も相談に乗るぜ。何かあれば言ってくれ」


「私も微力ながら力を貸すわ」


浩二と美奈も湊に優しく接してくれる。その気持ちがありがたく感じられて湊は嬉しくなる。そしていつの間にか不安は消えていた。


「みんなありがとう。いつも感謝しているよ。本当に困ったときは相談するから。その時は話を聞いて欲しい」


「分かったわ。必ず話してね」


「うん、必ず話すよ」


湊の顔色が良くなってきて晴れやかな顔になったのを確認して康弘と朱音は自分の席に帰っていった。そのタイミングで予鈴がなり、斎藤先生が入って来た。


斉藤先生は教室を見渡して空いている席が無いか確認する。いちいち出席を取らない。


「よーし、今日も全員いるな。休むときは連絡をよこせよ。無断で休んだ時はしばくぞ」


斉藤先生がそういうとシャレにならない。綺麗な先生なのに喋ると残念な性格の人だ。これでも空手の有段者だと言うので誰も逆らわない。


「来週には新入生歓迎の球技大会がある。男子も女子もバレーボールとバスケットボールだ。選手を選んでおくように。必ず全員参加させるぞ。控え選手になるとか考えるなよ。いいな」


湊はまた落ち込む。身長の低い湊はバスケットが苦手だった。ましてバレーボールなんて高くそびえるネットから手が出ないほどだ。どうやってバレーボールをすればいいのか教えて欲しいくらいだった。湊は球技大会の日は休みたいというのが本音だった。


先生は球技大会のことを伝えると教室を出て行った。


「湊はどの種目に出るんだ?」


後ろを向いて浩二が訪ねてくる。正直湊はどの競技にも出たくない。


「俺は余った方に出るよ。この身長だから、どの競技に参加しても活躍できそうにないからね」


湊自身は運動神経は悪くない。でも小さい身長はどうしようもない。湊は一人途方に暮れるのだった。

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