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004 胡桃にばれた。

湊は次の日早めに起きて学校に向かった。あの歌詞ノートには『赤坂46』の歌詞がかかれている。発売前に歌詞が世間に知れ渡るのを防ぎたかったからだ。誰もまだ登校していない。


そんな中を優斗は職員室に急ぐ。そして拾いものの担当をしている人が佐藤先生だと聞きだして佐藤先生の下に向かう。


「佐藤先生ですか?」


「はい、そうですよ。私が佐藤です」


佐藤先生は今年新しく先生になった新米教師で大学生と思えるような若い容姿をしていた。


「佐藤先生。僕は昨日ノートを落としたのですがノートの届け出はあったでしょうか?」


「今確認してみますね」


佐藤先生は届け物のリストを見て確認する。そして落とし物も確認してノートが無いことを見届けた。そのことを湊に伝える。


「ノートの届け物はないみたいですね。落とし物が拾われたら連絡しましょうか?」


「はい、お願いします」


「では、リストを作りますのでお名前とクラスを教えて下さい」


「一年四組の綾坂湊です。連絡先は良いのですか?」


「連絡先は良いですよ。個人情報なので聞くことはありません。最近はそう言う事にも気を使わないといけないんですよ」


湊は落とし物の届け出を出して職員室を後にしようとした。その時に職員室のドアが開き見たことのあるような美少女が入って来た。湊は美少女だから見たことを覚えていたのだろうと思った。


しかし、そうではなかった。


美少女は拾い物を届けに来たと言って佐藤先生の下にやって来た。湊はその少女がノートを拾ってくれたかもしれないと思い待つことにした。


その少女は佐藤先生に拾い物をしたと言いノートを取り出した。そのノートを見た佐藤先生は今しがたノートを落としたという湊がまだ職員室にいるのに気付いた。そして湊を呼んだ。


「綾坂湊君。ノートの届け出があったけどこれは君のかな?」


美少女は綾坂湊と佐藤先生が言ったことに驚いた。美少女は湊を頭の先から足の先まで観察する。湊のことを彼女は知っていた。女性の様な顔立ちに小学生と見間違えるような背の低さが印象的で顔だけは知っていた。


湊は佐藤先生に呼ばれてノートを確認しに来る。そしてそのノートが湊の落としたノートだと分かり安堵した。


「これは俺のノートです。見つかって良かったです」


「そうなのね。彼女が届けてくれたのよ」


湊は美少女を改めてみる。彼女は校内でも有名だった。美少女ではあるが気が強いことでも名を爆ぜていた。湊は極度の人見知りなので気の強い相手は苦手だった。


「貴方は湊という名前なのね。私は白石胡桃よ。宜しく」


「宜しくお願いします。綾坂湊です。大切なノートを届けていただいてありがとうございます」


胡桃は湊という名前と女性の様な声ではっとした。そして湊と言う名前とMINATOというVtuberの名前が同じことに気づいた。それは偶然だったかもしれない。でも胡桃は湊に興味を持った。


「湊君、少し時間はあるかしら? 大切な話があるんだけど……」


胡桃の目は湊を逃がさないという獣が獲物に狙いを定めたような目をしていた。決して湊を逃がさないという勢いがある。湊は気が小さい胡桃の威圧に押し切られてしまう。


「……は、はい。時間はあります」


今日は朝早くに家を出ていたことが災いした。朝のホームルームまでは30分も時間がある。そのせいで湊は胡桃から逃げられなかった。


「それじゃあ、付いて来てくれるかしら?」


胡桃の力ある言葉に湊は逆らうことが出来ない。


「はい、どこに行くんですか?」


「ここでは出来ない話だから。中庭に行くわよ。湊君もその方が良いと思うわよ」


胡桃が何を考えてそう言っているのか湊には分からない。取り敢えず胡桃の言う事に従うことにした。


「さあ、行くわよ」


そう言い胡桃は職員室を出て行く。湊はしょうがなく胡桃の後ろをついていく。普通なら美少女の胡桃の誘いだったら男子生徒は喜ぶだろう。しかし、湊は胡桃に恐ろしさを感じていた。


中庭に着くと周りに生徒がいないか胡桃が確認をする。登校時間にはまだ早いのであたりに生徒はいない。中庭には昼時には生徒で賑わうが朝や休み時間は閑散としていて人はいない。


胡桃はおもむろに湊に話し始めた。


「湊君。私はあのノートの中を見たわ。私が知っている曲の歌詞がたくさん書かれていた。いろいろな詩のフレーズも書かれていた。そのフレーズにも心当たりがあったわ」


湊は胡桃の言っていることが理解できた。そして拙いと思った。恥ずかしくて穴があったら入りたいという気持ちにもなる。


「はっきり聞くわ。貴方がMINATOなの?」


「え!? 俺は綾坂湊ですけど?」


胡桃はそう答える湊がなにをとぼけているのかと頭にきた。胡桃は短気なのだ。そして強気な性格をしている。


「誰が貴方のフルネームを訪ねたのよ。私が言っているのは貴方がVtuberのMINATOなのと聞いているのよ」


湊はもう胡桃を言い負かすことは出来ないと諦めた。気の強さで湊が胡桃に勝てるはずがない。どこまでも気の小さな湊だった。


「……これは内緒にしてほしいんだけど……。俺がVtuberのMINATOです。本当に内緒ですよ。世間ではMINATOは女性と言うことで評判なんですから。ファンを失望させたくはないので……」


胡桃は湊の言ったことを聞いて愕然とした。胡桃もMINATOのファンだったのだ。そして湊が実は男だと言う事におどろいてしまい唖然とする。そして自分の勘が正しかったと理解した。


「貴方はファンをだましていたのね?」


湊はその言葉を聞くのを最も恐れていた。しかし湊自身が自ら女性だと言う事を公表したことはない。あくまでも世間がそう騒いでいるだけだ。湊はそのことを不満に思っていた。そのせいでメジャーデビューを諦めた経緯があったからだ。


そうでなけらば今頃は歌い手としてデビューをして何枚もCDを出していたことだろう。結局、顔出しNGでデビューしてCDだけは発売にどうにかこぎつけたが顔出しを出来ないことで大分苦労することになった。


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