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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋するサキュバスは勘違いでも実現させます!

作者: さいぼ

この物語はミッドナイトノベルズで連載中の「転生することになったのでイキイキ生きていきます。」の外伝になります。

なるべくそのまま読める内容になってるはずですが、細かい国やキャラの関係などは本編をご覧ください。(R18注意)

やっと私15歳になったんだ!

この冬が終わったら冒険者になるんだ!

あの人に少しでも近付く為に!


今、家族と新年の祝いをしてる。

私の家族は魔族。というか、ここ、魔国ではだいたいみんなそうなんだけどね。

私、メルディとお父さん、お母さんの3人家族。


ただ、私とお母さんはみんなとちょっと違う。

魔族の中の変異種みたいなもので、サキュバスなんだ。

サキュバスは普通の魔族より少し肌が白っぽい。

私には見分けつかないくらいなんだけど、わかる人にはわかるらしい。



お父さんは普通の魔族。


サキュバスは女だけなの。それに遺伝的に強いみたい。

母がサキュバスなら、子供は娘でサキュバス。

それがサキュバス。


だから男から精気を吸うとか卑猥な種族だとか外の国では言われているらしい。


ちょっと信じらんないんだけど、ヒトは知らないものに恐怖を感じて、それを悪いように伝えることがあるんだって。


お母さんは「魔国でサキュバスをちゃんと知らない人なんていないから気にしてないわ」って言ってた。


お父さんも「半分くらいは合ってるんだから気にしても仕方ないさ」とか言ってた。



そうなの、サキュバスは男の人からあるものを吸う。

それは魔力。


ただ、それは男なら誰でもいいってわけじゃないの。


本当に好きになった人から気がついたら勝手に吸っちゃってるんだって。

お母さんが言うにはサキュバスが生来持ってる『吸収』スキルの力らしいんだけど、お母さんもお父さんを好きになったときに勝手に吸い始めたらしいよ。


そして、魔族は本来魔力が強めな種族なんだけど、サキュバスはそれが弱くて、『吸収』スキルでそれを補うように成長するの。

だから早くに結婚できたサキュバスのご先祖様にはめちゃくちゃ強くなった人もいたんだって!


そんなずっと吸われててお父さん平気なの?って聞いてみたら、「MPがちょっと減るだけで寝て起きたら問題ないくらいにしか吸われたことはないよ」ってことだからそんなにちゅーちゅー吸ってるってわけじゃないみたい。



ちなみに私は吸ったことがある。

この話を聞いたあとだったから、好きになった自覚より吸ったことに気付いたのが先で恥ずかしかったのを覚えてる。


ただその時ちょっと吸っただけで物凄く魔力が強くなった。

それに気付いたのは少し経ってからだったけど。


その人との出会いは3年前。

友達のエリンと冒険者ギルドに行ったとき。



※※※※※


「ごめんねぇ、登録は15歳からなの」


魔国独自のルールらしいんだけど、私もエリンも知らなかった。

しょんぼりしながらカウンターから離れようとした私達におじさんの冒険者が絡んできた。


「お前、サキュバスだな?こんな歳から男探しかぁ?」


やっぱり長く生きてる人にはすぐバレるんだ。

私はどうしたらいいかわからなくなって頭がぐるぐるしてた。

エリンもビックリしておろおろしてる。


ごめんね。サキュバスだって言ってなくて。

ごめんね。嫌いにならないで。


そんな私の心に気付いたのか、エリンはギュッとしがみついてきた。

ありがとうエリン。安心したらちょっと落ち着いたよ。


とはいえどうしよう。

なにか言い返してもダメなのは子供の私でもわかる。

こういう人は反抗とか抵抗が嫌いなんだ。


結局多少冷静になったところで私にはなにもできない。


「なんだぁ、だんまりか!?」


ヤバい。反応しなさすぎで逆に癇に障っちゃった!?

どうしよう!?

もうダメだ!


――そう思ったとき、その人は現れた。


「人がようやく登録できて気分が良いときになにしてるんだ?」


現在序列No.6、当時15歳のパズズさん。

ちょうど登録に来てて、最初のランクを決める試験を受けてたらしい。


「は!登録したてのヒヨッコが随分かっこいい真似するじゃねぇか」


「そっちこそベテランのくせになにやってんだ?こんな子供に絡んで楽しいのか?」


「名前も知らないお兄さん、かっこいいんだけど、正論すぎて相手怒っちゃってますよー!」


はっ、しまった!思ったことが声に出てた!


「このガキ共ぉ!」


おじさんは思いっきり拳を握り込んで、あろうことか私に殴りかかってきた。

その行動にイラッときた私は魔法を撃とうと手を翳す。


でも、その手もおじさんの拳もパズズさんに止められた。


「ギルドの規約違反、だよな?ギルドマスター」


「そうですね。彼の処分はお任せください、パズズ君」


その時初めて私はその人の名前を知った。

そして、彼の試験をしていたのはギルドマスターで一緒に来てたみたい。全然気付かなかった。


おじさんが奥に連れていかれて、パズズさんは私の前で膝をついて目線を合わせてくれた。


「あ、ありがとうございました!え・・・っと、パズズ?さん」


「うん、合ってるよ。どういたしまして、お嬢さん」


さっきと違って優しい話し方だ。

あ、私名乗ってない!こういう時は先に名乗るのが礼儀なのに!


「あ、私はメルディといいます。本当にありがとうございました!」


「君があんなやつに手を出す必要はない。どんな魔法を撃とうとしたのかはわからないけどね」


あ、やっぱりバレてた。

それもわかってて止めてくれたんだ。


って、あれ?私今なんか魔力吸ってない?

それってつまり、私、そういうことよね?

ヤバい顔が熱い。熱い。熱い。


「あー、そういやサキュバスっつってたな。その、なんだ。せめて俺と並べるくらい強くならなきゃ、無理だ」


私が魔力を吸ったことに気付いた彼は困った顔をしながらそう言った。


私と3つしか違わないのにちゃんと知ってるのね。



なろう。強く。彼に並べるように。




このとき私は浮かれていて気付かなかった。


彼は私に諦めさせる為にそう言ったんだって。



私は知らなかった。


彼がなぜ冒険者登録をしに来たのか。

そして、彼には既に好きな人がいることを。



そのことに気付かなかった私はお父さんとお母さんに頼み込んで訓練を始めた。

パズズさんから吸った魔力はかなりの力を私に与えてくれた。

それを知ったお母さんは私を全力で応援するって言ってくれて、私も全力で受け止めると決めた。


そして冒険者をしてる両親と一緒にだけど、魔物を狩りに行けるくらいには強くなった。


それから2年後、私は順調に成長していた。


だけど、それ以上にあの人は成長しているらしく、魔国の幹部である序列に入っていた。

まだ17歳という若さでの序列入りに魔国中が注目した。


だから私にも彼のことがいろいろ伝わってきた。


それは私が浮かれポンチだったことを気付かせてくれた。


彼は幼馴染である魔王様が好きなのだ。


魔王ルリィナ様。

圧倒的な魔力の持ち主で先代様の一人娘。

今の私にとっては憧れの存在だ。


強くなろうと決めてわかった。

初めて知った、ルリィナ様の凄さ。


パズズさんはそんなルリィナ様を追いかけて序列入りまでしてしまった。


追いかけて、といえば。

パズズさんが冒険者登録したのはルリィナ様がこっそり冒険者登録してたのを知ったかららしい。


私と出会ったあそこにいた理由がルリィナ様を追いかける為だったなんて。


でも、朗報もあった。

ルリィナ様は別にパズズさんを特別に好きではないらしい。

なら、私にもまだチャンスはあるよね?

ここまで訓練してきたこと、無駄じゃないよね?



※※※※※


そして春になり、私は冒険者登録をした。

ランク試験は私を覚えてくれていたギルドマスターが相手だったけど、ランク4から始めることを認めてくれた。


簡単なクエストを受けつつ過ごしていたある日。

その日から起こった一連の出来事は私のことを後押ししてくれているかのようだった。



まず、凄まじい魔力を感じた。

場所は人間族の国(ヒューマニア)の方角かな?

でも、周りの人は誰も気付いてない。

私が感じたのは他人の魔力に敏感なサキュバスだからかも。


それから城下町の方は相変わらずだったけど、魔王城のほうが騒がしくなってた。

といっても、それが町の方に伝わって来たのは翌日になってだったけど。


先代様達が帰ってきたみたい。

奥様のサーヤ様がハイエルフなの。

お二人で旅に出てたんだよね。


それからしばらくなんの情報もなかったんだけど、次に出た情報に魔国は沸いた。

先代様の復帰とそのお祭り!


最近エリンと疎遠になってたし、お祭りに誘ってみよう!


エリンの家、久しぶりだなぁ。

歩きながら私はエリンを想う。


私が本気であの人を目指すって言っても受け入れて応援してくれた、あの子はほんといい子!


それに一緒に冒険者をやる為に回復魔法を練習してる。

登録だけは私と一緒にしたんだけど、試験官だったギルドマスターに私とクエストを受けるならもう少し練習した方がいいって言われちゃったんだよね。


回復魔法の練習は私じゃ一緒にいても邪魔になるからって別々に行動してるけど、偶に見に行くと必死に練習してる。


私がガチガチに特訓して置き去りにしてしまったようなものなのに、追いつこうと頑張ってくれてる姿がもう嬉しくて仕方がない。


エリンが男の子だったら私魔力吸ってる自信があるよ!


だから私はエリンが言い出すまで討伐とかの難しいクエストは受けないことに決めてる。


エリンが「一緒に行けるようにいっぱい練習するね!」って言ってくれたときに勝手にそう決めたの。

やっぱりあの人に追いつくのと同じくらいエリンのことも大事。



久々のエリンの家に少し緊張しつつもドアをノックする。


「あら、メルディちゃん!久しぶりね。さぁ、入って入って!エリンも呼んでくるわね」


エリンのお母さんが出迎えてくれた。

促された椅子に腰掛けてエリンを待つ。


呼びに行ったのが部屋じゃなくて裏の方ってことは今日も練習してたのね。


「メルディ!久しぶり!」


ほとんど待たずにエリンが駆け寄ってきて、私も立ち上がる。

そして手を取り合って再会を喜んだ。


「エリン!ごめんね、邪魔しちゃった?」


練習の途中だったんだろうと思ってそう言ったんだけど、


「ううん!私にとってメルディは何よりも優先だよ!」


「もー嬉しいこと言ってくれちゃって!」


思わず抱きしめた。


エリンのお母さんも「あらあら」とか言いながら笑っている。


いや、違っ!

たしかに吸っちゃうかもとか思ってるけど、あくまでも「男の子だったら」ですからね!

そういうんじゃないよ!


心の中で何かに対して必死に否定する私だけど、エリンは蕩けた顔でこっちを見てる。


え、エリン!?


いや、エリンは私がパズズさんに夢中なのは知ってるから違うわよね。

お願い、違うって言って!


「あのさ、エリンはお祭りのこと聞いた?」


なんとか心を無にして本来の目的に戻る。


「うん、先代の魔王様が戻ってきたお祭りだよね」


「そうそう。エリンと一緒に行きたいな、って誘いに来たの」


「もちろん!いいよね?お母さん!」


「いいわよー。久しぶりのメルディちゃんとのお出掛けだし、おめかししなきゃね!」


お、お母さん?


「わーい!楽しみー!」


え、ツッコんだほうがいいのかなぁ?

いや、純粋に私とのお祭りを楽しみにしてくれてるんだ。きっと。


「お城の近くまで行きたいんだけど、いい?」


もしかしたらパズズさんの姿を見れるかもしれないし!


「あの人、今は幹部だもんね。お姿見れるといいね!」


よかった!やっぱりエリンは変わらずに応援してくれてるみたい。


「うん!それじゃ、お祭りの日は早めに来るね」


「あ、メルディちゃん!お城の近くに行くなら朝から出た方がいいわよ。だから前の日に泊まりにいらっしゃい」


お母さんからありがたい提案を貰った。

そっか、そんなに人が集まるんだ。


「ありがとうございます!お世話になります!」


「じゃあね、メルディ!」


その日はそこで家に戻って、両親に話した。


「あらあら、それならお土産持っていきなさい。ちょうどエリンちゃんの練習してることにも合う物が手に入ったから」


お土産の中身はわからなかったけどお母さんはお泊まり自体は許してくれた。

練習してることってなんだろう?回復魔法だけじゃないの?



お祭り前日、私はお土産を持ってエリンの家にやってきた。

そこそこ重いと思ったらお土産は盾だった。

え、エリンって盾使うの?

めちゃくちゃ喜んでたからそうなんだろうな。

でも、私が知らないのに両親は知ってたのかー。


「えへへ、私の目標はメルディの盾になることなんだよー」


相変わらずエリンは私の心の機微に聡いなー。

エリンは自分が戦闘でどういう動きをするのかを事細かに語ってくれた。

常に私の前に立って、私が安心して攻撃に専念できるようにしたいらしい。

回復魔法はそれで傷を負ってもすぐ治せるってわかるからだって。

もちろんいざという時は私のことも。


ヤバい。泣きそう。嬉しすぎる。

今思えば初めてあの人と会ったあの日もエリンは何もできないながらも私を守ろうとしてくれたんだよね。


目標を改めよう。


あの人の隣に立っても、逆隣にはエリンにいて欲しい。

エリンと一緒に強くなろう。

できればそのエリンの隣にも良い人がいるといいな。


その日はエリンと一緒のベッドで眠った。

ずっと抱き付かれてたけど、1人用のベッドで狭かっただけよね?

それ以外は何もされてないし、何もしてないからね?




「うわぁ、すっごい人」


城門の前にやってきた私達は驚愕してた。

朝早くから家を出てきたのにもう人でいっぱいだった。


城門を超えて城までの道の半分も行かないあたりで進めなくなった。


「この辺から見えるかなぁ」


「見えるといいね!」


私達のあとからもどんどん人が集まってきて、完全に身動きが取れなくなった。


「お弁当作って貰って正解だったね」


エリンが嬉しそうにお弁当を開いてる。

来た時はまだ出店もやってなかったし、今からはもう買いに行けない。

何から何までエリンのお母さんの言った通りになっちゃった。

ありがとう、エリンのお母さん。


お昼すぎ、ルリィナ様が出てきた!

カッコいい!

周りのみんなも盛り上がってる!


そして、ルリィナ様が手を挙げると、騒がしかったみんながあっという間にシーンとなる。


「皆の者、今日はわたしの父、サタンの帰還を祝う祭りに集まってくれて感謝する!そして、わたしは魔王を辞し、その座に再び父に座って貰おうと思う。それでは、その新魔王からの言葉を聞いてもらおう!」


おおお!やっぱりカッコいい!


そして、ルリィナ様は下がっていって見えなくなった。

ああ、パズズさんもあそこにいるのかなぁ。

全然見えない・・・悔しい。

けど、飛んだりしたら怒られちゃうよね。


ルリィナ様に代わって次はサタン様が出てきて話し始めた。

ルリィナ様があっさり身を引くってことはやっぱり強いんだろうなぁ。


そんなことを考えていたら、聞き逃しちゃいけない言葉が耳に入ってきた。


え!?ルリィナ様が結婚!!

相手はユーキ・・・様?パズズさんじゃない!?


あれ・・・エルフ?遠くてよくわかんないけど、サーヤ様と同じ感じがする。

ってことはハイエルフ?!

というか、この人の魔力――あの時感じた魔力だ。


あぁ、ルリィナ様・・・幸せそう。

いいなぁ。


そうだ、魔王様と結婚ってことはパズズさんもみんな認めたんだよね?


「メルディ、チャンスだよ!」


気付けば隣でエリンのテンションが爆上げしてる。


「そうだね!エリンは行けそう?」


よし、ここはエリンに乗っかろう!


「うん、昨日持ってきてくれた盾があれば怖いものはないよ!」


「そんなにいいものだったの?」


「あれね、ずっとMPが回復する付与があったんだ!だから私の回復魔法も身体強化もし放題だよ!」


盾自体も頑丈そうに見えたし、確かにそれなら怖いものはないわね!


私達は頷き合って、明日からクエストを受けることを決めた。



それから数日後、私とエリンは町外れに出たバイソン1体の討伐クエストを受けた。


単体だと☆4のバイソンは私達でも倒せるはず。

ランク3スタートだったエリンもここまでのクエストでランク4に上がってる。



「きゃっ!」


「エリン!」


バイソンの突進にエリンは堪えきれず突き飛ばされる。

すぐさま自分を回復するエリン。

練習の成果で無詠唱での回復をマスターしてるエリンは頼もしい。


「大丈夫。次は逸らすから止まったところを狙って!」


「わかった!」


言葉通り、次は受け止めるように見せて横に流す。

私はその突進の進行方向に入らないように位置取り、止まったところにファイアアローを撃ち込む。


脚を撃ち抜き、完全に身動きが取れなくなったバイソンに今度は剣で切りつけトドメを刺す。


「「やった!」」


二人揃って歓喜の声を上げた時だった。



「おい!気を抜くな!」


男の声に思わずそっちを見てしまった。


「バカ!こっちじゃねぇ!」


「メルディ!」


二人の声が聞こえた時には目の前にもう一匹のバイソンが迫ってた。


「えっ?きゃぁっ!」


思わず目を閉じて悲鳴を上げちゃったけど、バイソンは来ない。

恐る恐る目を開けると――


「パズズ・・・さん?」


「話は後だ!さっさとあいつを仕留めろ!できるんだろ!?」


「はいっ!」


返事をしてバイソンを探したら、向かってきてたラインから少し逸れた先で止まって振り返るところみたい。


パズズさんがズラしてくれてた。


でも、これ以上力を借りるわけにはいかない!


「エリン、お願いっ!」


「任せてっ!」


さっきと同じ戦法でもう一体も倒す。

そして、今度は油断なく周囲を確認する。


「ふうっ、さすがにもういないみたいね」


「うん!ビックリしちゃった。ゴメンね、守れなくて」


「まぁ、上出来だ。1体って聞いて来たんだろ?」


あっ!そうだった。


「ありがとうございます!()()、助けられちゃいましたね」


「また?あーこの感じ、それにメルディって呼ばれてたな」


あっ。私また吸ってる。


「ご、ごめんなさい!でも、どうしてここに?」


「サキュバスってそういうもんなんだろ?気にするな。ここに来たのはたまたまギルドに顔を出したら、バイソンが複数いるって報告がちょうど入ってな。1体ってことでクエストを受けたやつがいるってんで様子を見に来たんだ」


「そうだったんですね。助かりました」


エリンもお礼を言った。

私はちょっと顔向けできなくなってきた。


「気にするなって言っただろ?」


パズズさんが優しく声を掛けてくれる。

でも、そんなわけにいかないでしょ!


「だって、魔力を吸ってるって、その・・・ご存知なんですよね?」


あー!私のバカ!素直に言えばいいのに!


「あー、その、まぁ、知ってるっちゃ知ってるけどよ」


頭を掻きながらそう言うパズズさん。

ほら、困らせちゃった!

言え!言うんだ私!


「ほら、メルディ!」


エリンが背中を押してくれる。

ありがとうエリン。


「あの、私!あなたに助けられてからずっと!ずっと好きです!あなたの隣に立てるように、あなたに言われた通り強くなれるように訓練してきました!」


言えた!想いの全部!


ポン。


えっ。


頭に手の感触ががが。


「頑張ったんだな。あのお嬢さんが」


「はいっ!」


ダメだ。まだ泣いちゃダメだ、ってわかってても止まんないよぉ。


「あの時は諦めさせるつもりで言ったんだけどな」


「でも、ルリィナ様も結婚して、私が諦める必要はなくなったでしょ?」


精一杯の強がりだ。

たぶんバレてる。

だってまだ涙止まってないもん。


「まぁ、ルリィナのことはスッキリ諦められたからな。あいつは、ユーキはいい奴だ。だが、俺はそうとは限らないぞ。それでも俺で・・・いいのか?」


そんなの決まってる。


「はい!私はあなたが"いい奴"だって知ってますから」


自分でもビックリするくらい自然と言葉が出てきた。

それに笑顔も。



!?


き、キスされた!


今キスされたよね?


あの時以上に顔が熱い!


「メルディ、おめでとう!」


ああ、エリン。


「エリンありがとう。パズズさん、エリンと一緒に序列に入ってみせますからね!」


「ふふっ、待ってるぞ。お前に自信がついたら城で一緒に暮らそう。その時は堂々とな」


「ふぇっ」


初めて見るパズズさんの笑顔と予想外の一言に思わず変な声が出た。

それって、つまり――


「いきなりプロポーズなんてパズズさんもやりますね!」


え、エリン!?

私はまだその事実を受け入れてないんだけど?!


「あ、いや、その、まぁ、そういうことだ」


照れてるパズズさんって可愛いかも。



「ふふふっ。待っててください。必ず行きます。あなたの隣に」


お読みいただきありがとうございます。


夢に出てきたサキュバスをなんとか思い出して物語にしました。

ちょっと覚えていた時点で「これをネタにしなければ!」という謎の使命感に駆られて書き上げました。


これ、ちゃんと恋愛ものになってますかねぇ?


良かったら是非評価・感想お願いします。

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