ギルドと得意技(スキル)Ⅱ
お疲れ様です。
今回はお風呂とご飯会です。
——パシャン
「わああああ!! そんなところ触らないでくださいいいい!!」
「んふふふ、恥ずかしがっちゃってえ、かわいいなあ」
「はっはっは!」
まったくもう! どうしてこんなことに......。
母さん、ハナ......スグル16歳、貞操の危機です。
――30分程前。
ボクはギルドに迎え入れられる事になり、先ずは戦闘でドロドロになってしまった身体を風呂場で洗うように勧められた。
ギルドの大広間の左奥に入り口があり、脱衣所を抜けるとそこには大人が五人は入れる大きめの浴室がある。
ちなみに反対側には厨房と食堂があり、洗い終えたらそのまま夕食にするのだそうだ。
「着替えはこちらで適当な物を用意するので気にしないでください、その服は......もう処分してもいいですね?」
「あっ、はい! お...お願いします」
トビさんが色々と面倒を見てくれている。
シャツにネクタイという姿も相まって、まるで優秀な執事が応対してくれているかのようだ。
「あの、ボクもなにか夕飯のお手伝いとか出来れば——」
「これといってありません、今はゆっくり湯船で疲れを取ってください」
こんな底辺冒険者の面倒を、上位のハンターさんに見てもらっているのがあまりにも申しわけがないのだけど......。
仕方なく言われるがまま浴室に入る。
扉を閉めて服を脱いだ後、トビさんの「あ......」という声が聞こえたが、既に全裸になっているわけで、気にせずに入る事にする。
扉を開けると、湯から湧き立つ蒸気に驚いた。
木で作られたの湯船から柑橘系のとてもいい匂いがする。
田舎ではこんな風呂なんて無かった。
湯を貯めた桶に麻布を入れて、身体をゴシゴシと洗う程度しか出来なくて、こんな大きな......いや、そもそも浴場なんてもの自体無かったのだ。
ボクは溜めてあるお湯が汚れないように全身をしっかり洗い流して神妙な面持ちで湯船に浸かる。
「はぁあああ〜〜〜〜〜〜......」
少し熱めのお湯が、身体を、心をほぐしていく。
なんて気持ちがいいんだろう。
もうここに根が生えて動けなくなってしまっても構わない......。
——そこへ。
「はっはっは! コウは相変わらず肌が綺麗で羨ましいな!」
「得意技があるからねえ、私はサヤのその傷痕好きよお?」
「そうか? ははは! 勲章ってやつだな!」
............。
......ハハハ、ココは混浴だったんですねえ。
............。
やばい!
これはやばい! あああああどうしよう?!
浴場には出入り口が一つだけしか無く、窓も壁の上側に小さくあるだけだ——。
詰んだ、逃げ場がない。
ボクはどうにか湯煙で見えなくなれないだろうかと湯船の端に縮こまる。
「おっ! スグル少年が居ないと思ったら、先に入っていたのか!」
「あらやだあ、トビ君何も言ってなかったわよお?」
はい、見つかっちゃった。
言っている割には躊躇なく浴場に入ってくる二人。
トビさん!!?
何故さっき彼女達に伝えてくれなかったの!!!?
あ......って言ってたでしょ!?
先客を気にもせず湯船の側で身体を洗い始める二人。
湯煙のおかげであまり良く見えないのだが、二人の艶かしい肢体と、肌色が見える。
「ああああのすみません!! ボク二人が来るなんてしらなくて!! すぐ出ますからあの!!!」
咄嗟に手で目を覆い隠して叫ぶ。
「ははは! 良いじゃないか! まだ入ってそれ程経っていないんだろ?」
「そうよお、一緒に入りましょお?」
貴女たちには羞恥心というものが存在しないのか?!
「いやあのでも——」
「それよりもだ! コウ! また胸が大きくなっていないか?!」
「あらそお?確かに最近シャツが苦しいなあって思ったのよねえ」
「けしからん乳だ! この!」
「やあん! スグル君の前でやめてよお」
彼女達はふざけあいながら湯船に、ボクの両隣に入って来た。
「んっ......あはあ〜、気持ちいい〜」
「一週間ぶりだものな! あ〜〜〜! 良いな!」
良くない!
教育的に良くない!!
......この人達、またボクをからかっているんだろうか。
いやそうだろう、そうに決まっている!
16歳には刺激が強過ぎます!!!
——そして冒頭に戻る。
「はっは! いい加減にしないとスグル少年が焼け石みたいになっちゃうな!」
「仕方ないわねえ、......ほらあ、これなら良いでしょお?」
「うん! もう見ても大丈夫だぞ!」
「お風呂マナー的にはだめだけどねえ」
恐る恐る手を退けると、両隣に居る彼女達は身体にタオルを巻いていた。
全然良くは無い、濡れたタオルで二人の豊満な胸の形が丸分かりである。
二人とも隠しているがそれが寧ろ色っぽい。
いや、サヤさんに限っては装備を着けていても下着同然なので大きな差は無い......んだろうか。
なんだかもう彼女達があまりに普通にしているので恥ずかしがっている自分の方がおかしいのではと思い始めていた。
不純な考えを持ちたく無かったので直視した事が無かったのだが、サヤさんの身体は筋肉が引き締まって程よくガッシリしている。
健康的な美とでも表現すれば良いだろうか。
胸ほどに伸びウェーブが掛かった髪はカラスの羽の様に艶やかで、強さと美しさをマイルドにしている。
手、腕、首も鎖骨にも胸元にも、見える限り数えきれない程古傷があり、過去に一体どれ程苦労をしたのかと、その傷を見ると思う。
反対にコウさんは、ガントレットや脚鎧で見えていなかったが、程良くスレンダーなのに胸が大きい。
顔もそうだがまるで赤子の様に肌が白くキメ細やかだ。
動物やモンスター、人間にもアルビノという色素が無い個体が居るが、彼女もソレなのだろうか?
白い髪、白い肌、青い瞳。
まるで大きな人形がお風呂に入っているかの様な違和感すら覚える。
違和感といえば......。
傷跡だらけのサヤさんと比べて不自然に思えるほどに傷跡が無い。
サヤさんは別格だが、普通戦闘職のハンターは生傷が絶えないはずだ。
コウさんの謎が増えた。
「ん......ゴク......ぷはぁ」
「もう呑んでるのか!」
「んふふ〜、食前酒よお」
これも謎だった。
コウさんは常に一日中何かしら飲んでいるような気がする。
そう言えば、と、恥ずかしさを紛らわす為にも話題を切り出した。
「......あの、得意技の事なんですけど」
「ああ! そういえば説明してなかったね!」
「んふふ、何処から説明しましょうねえ」
「うん! 先ずは——」
彼女達曰く
戦闘能力に優れるハンターのほんの一部に限られているが、何かしら特定の条件で特殊な能力を成長段階で発現させる人がいるのだそうだ。
得意技には任意で発動するアクティブタイプ、意思に関係なく常時発動しているパッシブタイプとあって、効果も人それぞれらしい。
但し、強い効果であればあるほど反動は大きい。
実際にも見たがサヤさんの得意技は『鬼人化』。
一時的に筋力を極度に活性化して超人的なパワーを引き出す事が可能になる。
そのかわりに、使う度に筋肉などの細胞が破壊されて、激しい痛みが襲ってくる。
加減を忘れると、皮膚を突き破って筋肉が爆発するらしい......。
「そんな......じゃああの時傷だらけだったのは......!」
「はっは! そうそう、あの時はコウとはぐれちゃってね、治せずに困ってたんだ!」
ボクの腕が千切れていたあの時も壮絶な痛みだったが、攻撃をする度にその痛みが襲いかかって来るのだとしたら......。
「ははっ! 痛みなんてどうにでも出来るさ! それに......コウが居てくれるしな!」
「いつも言ってるけどお、過信は禁物よお?貴女天才的な方向音痴なんだからあ、次はぐれても生きている保証なんて無いんだからあ」
「はっはっは! すまない!」
「まったくう」
この様子だとサヤさんはきっとまた無茶をしてしまうのだろうな。
この人の笑顔に少しだけ不安を覚えてしまった。
そして、肝心なのはコウさんだ。
薬のとんでもない効能もそうだが......。
「その、コウさんの得意技は一体......?」
「不思議だよね! ずっとそばにいるアタシですら未だによくわかってないんだ」
「んふふ、そうねえ」
コウさん曰く
彼女の得意技は『効果転移』と言うアクティブタイプの得意技で、口にした薬等の効果を、任意の対象に付与できるのだそうだ。
まるで魔法のような能力だ。
つまりサヤさんが負傷する度に、コウさんは薬を飲んで治していたのだ。
薬はコウさんが自分で調合していた。
この辺りの薬草等は特殊で薬効も濃度も高過ぎて、一般の人間では調整が難しいらしいが、彼女の得意技を介せば薬効がそのまま対象に届くのだそうだ。
それであんなに飲んでいたんだ......でもまてよ?それ以外の時にも飲んでいたような......?
「そう! その所為で昔コウは『神子』って崇められて——」
「サヤ、その話はだあめ」
「あ、ああ! ごめん!」
どうやら話したくない過去があるらしい。
それにしてもサヤさんも凄いが、コウさんの得意技は......。
「副作用はどうなるんですか?」
「おっ! するどいねスグル少年!」
毒は薬にもなり得るとよく聞く話だが、逆に薬は飲み過ぎれば毒になるという事。
あれ程の効果の薬だ、その分強い副作用があるはず。
「はっはっは! そこがだなスグル少年!」
サヤさんは自分の事の様に大きな胸を更に強調するかのように自慢げに言った。
「コウには得意技が二つあるんだよ!」
コウさんにはもう一つ凄い得意技があるのだそうだ。
その名も『超再生』。
常に自身が回復し続けている状態で、四肢が無くなっても半日置く程度で元に戻るとんでもないパッシブ能力だ。
そのため、毒は大抵の場合短時間で消えてしまうために、『効果転移』と非常に相性が良く、薬の毒性を気にせずに服用できる。
っていうかそれって不死身なのでは......?
「二つも得意技を持っている人間はとても珍しくてね!」
「リューももってるけどねえ」
「そんな力を......ですが——」
「んー?の反動の事かしらあ?」
サヤさんは単純に強い得意技だから反動が大きいが、コウさんの効果はより特殊な上に二つもある。
反動が物凄いのでは......。
「んふふ、心配してくれているのねえ?ありがとお」
「あんなに薬飲んでたのに大丈夫なんですか?」
「だあいじょぶよお、それにそれこそが私の得意技の反動」
コウさんの瞳は何処か遠くを見ていた。
それが寂しそうで、辛そうで、なんだか切ない気持ちにさせた。
「すっごくねえ、渇くのよお」
「へ?」
「喉があ、すんごーく渇いちゃうの、それが得意技に対する代償、飲まないと死んじゃうの」
「死......」
ボクは言葉を無くした。
喉の渇きは誰にでもあるものだ。
彼女が言う「渇き」は、そんな生易しいレベルではなく、常に何か飲み物を飲んでいないと生命活動に異常をきたすレベルらしい。
それが二つの得意技からの反動......。
「それだけじゃないのよお?」
......ん?
「あれえ?気がついてないのかしらあ?」
「あれ?!はっはっは!目を隠してたから風呂に入ってきた時点で気がつかなかったのか!」
「え?......え?」
コウさんはクスクス笑いながら、体に巻いたタオルに手を掛ける。
「あああえとちょっと?!コウさん?!」
「んふふ、スグル君には見せてあ、げ、るう」
......ゴクリ。
ゆっくりとタオルを取ろうとしているのを、何も言えずにただただ見るしかできなかった。
豊満な胸があらわになりそうになったその時——。
「おーい!そろそろ飯やでえ!!......なんや、スグルもおらんと思うてたらお前ら仲良ぅやっとんな!」
「ひぇえええ!!」
突然のリューさんの登場によってボクはまた顔を手で覆い隠した。
「んもう、あとちょっとだったのにい」
「はっはっは!スグル少年はかわいいな!」
「ねえ〜」
はぁ......。
死にかける程の戦闘に、驚きの連続と、死ぬ程恥ずかしい経験をして、ボクの心臓と脳味噌がそろそろ着いていけなくなりそうだ。
「カカカカ!そりゃ災難やったな!」
「リューさん、笑い事じゃないですよぉ......ボク恥ずかしくて死ぬかと思ったんですから!」
借りたシャツのボタンを留めながら赤面したままのボクはリューさんに食堂に案内される。
シャツはやや小さめでボタンの留める向きが逆向きなので、女性用だという事が分かる。
団員に、ボクよりも小さな女性が居るんだろうか?
「カカカ!そんなんでドキドキしとったら、この先身もたへんで?」
「ちょっと不安です......」
「習うより慣れろや!さあ今は飯や飯!折角新人が来たから全員紹介したかったんやけどなあ、今ほぼクエストで出払っててなあ......」
「い、いえ!Fランクのボクをこうして歓迎してくれてるだけで充分です!」
「カカ!ウチの調理担当がおるから、ソイツには紹介出来るし、食べながらゆっくり話そうや」
言いながらリューさんは食堂の扉を開くと、二十人は座れるのではと言うほどの大きな楕円形のテーブルがあり、既に沢山の......いや、凄まじい量の料理が並んでいた。
巨大な草食獣の腿部分を丸ごと焼き上げた物や、見たことのないブルーのスイカの様な果物、大人の腰ぐらいの太さはあるイカの中に米を詰めて煮詰めた物など、多種多様な豪華な食事が並んでいる。
どう見ても数十人で食べる量だ、数人で食べる量じゃない。
「あ、あのこの量は......」
「ああ、食い切れへんくても問題あれへんで、俺一人でも全部食べれる量やから」
「えぇ......」
「この大飯食らいクソ団長は得意技の反動で、大量のカロリーを摂取しないとならないんです」
「クソは言い過ぎやでトビぃ?!」
「ウチの経費でも食費が何より大きいのを良い加減理解したらどうですか?フードファイターにでも転職したら良いんですよ」
「ああそれはもうやってんねん」
「いつのまに?!」
「三回優勝して運営に出禁食ろうてな、もう出られへんねん」
食卓の前で待っていたトビさんがリューさんと言い合っている間に、サヤさんとコウさんが着替えを済ませてやって来た。
二人とも風呂上りで蒸気した肌にシャツをラフに着た姿が色っぽい。
「はっはっは!凄い量だろ!アタシも初めてリューと食べた時は驚いたもんだ!」
「リューは食べ盛りなのよねえ、スグル君もいっぱい食べてリューみたいに大きな子になるのよお?」
「コウは何年前からそれを言うとんねん、もう俺おっさんやで」
「あらあ、泣きながらサヤと来た時から大してかわってないわよお?」
「それは言わん約束やでえ!たのむわあ」
「んふふふ」
どうみてもリューさんが30歳ぐらい、コウさんが20歳ぐらいに見えるのだが......違うのだろうか......?
「そういえばあの子はどこなのお?はやく食べましょうよお」
「せやな、おーい! フブキ!! まだなんかー?」
「まってよぉー! マジせっかちぃ、だから女に振られるってわかってないのかなぁ」
リューさんが厨房に向かって叫ぶと160センチのボクよりも小さな褐色の肌をした、狐耳の女の子が丸焼きにした巨大な魚の頭を盆に乗せて持ってきた。
狐の亜人種?この街でも田舎でもみたことがない種族だ。
「フブキ! 今日入った新人や! まず自己紹介せえ」
「いやマジでせっかちなんだけどぉ、ちょっとコレ置かせてくれない?」
「ボク手伝います!」
「いいのぉ? マジサンキュー♪ このテーブルの端でいいからぁ、よいしょ......っと」
狐耳のフブキという女の子と一緒に皿をテーブルに置くとニッと尖った犬歯を見せてはにかんだ。
「にへへ、団長が言ってたけどアタイはフブキ、料理とかぁ、武器とかぁ、色々作ってるの、宜しくぅ! あ、一応ハンターだよ」
「スグルです、宜しくお願いします」
「よっろしくぅ、スグルん♪」
「すぐるん......?」
随分とザックリとした挨拶だが、笑顔が可愛らしく悪い気はしない。
呼び方になんだか違和感があるが......。
狐の耳をした褐色肌の彼女は、毛はオレンジ、髪をサイドポニーにしていて東の国の「カッポウ」というオレンジの葉をあしらった着物を着ている。
一重の瞳は金色で、長い爪には緻密で色鮮やかな花の絵が描かれている、あんな爪でどうやって調理したのだろうか......?
挨拶にと握手をした彼女はボクの手を握ったまま、一度目を閉じてキッとボクを見た。
「......へぇ、スグルんも得意技持ちかぁ」
「お!流石はフブキ!もうわかったのか!」
「んーん、まだ得意技があるかどうか見ただけだよぉサヤりん♪」
「んふふ、先ずはご飯をたべましょお?」
「はーい!コウさん♪」
あ、リューさんとコウさんは呼び方が普通なんだ。
それと、握手しただけで得意技の存在を認識した......?そういう得意技なのだろうか?
楕円形のテーブルに、ボクの両隣にサヤさんとコウさん、向かい側にはフブキさんとトビさんが、そしてお誕生日席にリューさんが座っている。
「んじゃ! 来た初日で悪いんやけど、スグルの入団を祝って!」
「「いただきます!」」
「かんぱ......い、いただきます!」
そこは乾杯じゃないんだ......。
ビックリして少し遅れてしまった。
この後しばらく、料理を食べる事に集中し過ぎて会話どころでは無くなってしまった。
「はぐっ......っ! んっ! はぐっ! んぐんぐ!!」
(訳、ん! これっ! 美味しい!!)
「ふぁっふぁっふぁ! ふぐぐ! ふぉんなにんふぉがんぐうぇおうぇうぇんあえ!」
(訳、カッカッカ! スグル! そんなに急がんくてもええんやで!)
「ヤダー団長食べカス飛んでる! マジありえないんですけどぉ」
「クソ団長のソレは今に始まった事じゃ無いですから」
「んふふ、スグル君も沢山食べて偉いわねえ、コレも美味しいわよお」
「はっはっは!」
料理の量こそ見てるだけで胸焼けしてしまうと思っていたのだが、味がとにかく素晴らしくて、食べる手を止めることが出来ない。
肉はしっかりと焼けているのに柔らかくて、脂がしつこくない。
逆に魚はまるで肉の様にジューシーで、全くパサつかない。
付け合わせのサラダのドレッシングも絶妙な酸味に嫌味がなくて、いくらでも食べられる。
一言で言うと......美味い!
向かい合う席の相手が見えなくなる程あった料理はあっという間に無くなってしまった。
殆どはリューさんが食べてしまったのだが。
コウさんといいリューさんといい、口に入れた物は一体何処へ行ってしまうのか......。
食後のお茶をフブキさんが出してくれた。
トビさんは調理室で食器を洗っている。
「ふぅー! 食ぅた食ぅた! やっぱフブキの作る飯がいっちゃん美味いわ!」
「べ! 別に団長の為に作った訳じゃないんだからね! スグルんが来るって言うから♪」
「まだまだ食えるんやで?」
「......また作ってあげるわよぉ、それより♪ 食べてて何にも話せなかったんだから、今色々お話したら?」
「せやな......せやったらスグル」
「はい!」
「まずはギルドのルールを教えとくで」
「はい! お願いします!」
「カカカ! ええ返事や!」
ギルド万華鏡のルールは以下の通りである。
一つ、人様に迷惑を掛けない。
一つ、街を破壊しない。
一つ、仲間を見捨てない。
街を破壊する様な事があり得るのだろうか......。
「そして最後の一つ!これがいっちゃん大事や!」
「はい!」
「自分を含めて、助けられる命を無駄にせぇへん事!」
「はい!」
「そんだけや!」
「はい! ......え?それだけ?」
「おう! そんだけや! 一応上からのクエストとか色々細かい制約はあるんやけどな、そこさえ守ってくれたらなんでもええよ」
「んふふ、急に言われても困っちゃうわよねえ、スグル君」
「んと、ボクとしては異存はありませんけど......」
「はっはっは! 曲がった事をしなければ好きにしていいってことさ! スグル少年はどうして冒険者として登録したんだい?」
サヤさんが背中に手を当てて快活に、優しく聞いてくれた。
「それは......」
長くなりそうなので続きは次回に。