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借り物の冒険者  作者: Ny
4/15

ギルドと得意技(スキル)

 お疲れ様です。

 まずはご覧いただいてありがとうございます。


 今回は街の紹介とギルドの出会いです。


 一話の方でも言っていますが、小説関しては本当に初心者なので、なにか気になる点がありましたら気にせずコメント下さると幸いです。


 感想等も是非頂けると泣いて踊ります。



 研究と貿易の街ベルヘイム。


 街は北にある封印の地への門(閉ざされていて誰にも開けないが)から南に向けて扇状に広がってカットされたケーキの様に区分けされる。


 海に面した西から貿易区画、次に商業区画、居住区画、そして東にあるのが研究区画。

 ちなみに門の手前にあるのが中央区画、ここでは街の管理、研究された遺物の精査や選定、街を警備する騎士団の駐留地などが含まれている。


 ボクはサヤさんとコウさんに、シールドベアから剥ぎ取った鱗を満載した馬車に乗せられて、ベルヘイムの東の森から街へと移動している。


 彼女達曰く

 所属するギルドからの指示で、たった二人でシールドベア達をここ一週間観察していたらしい。

 一緒に荷台の中で向かい合って座るコウさんが教えてくれた。



「蜂蜜と魚があ主食でねえ?魚を取り逃がす所とかかわいいのよお」



 どうやらシールドベアは群れで行動していて、こちらから危害を加えない限り比較的大人しいモンスターだったのだそうだ。


 ボクは出会った時のサヤさんの言葉を思い出した。



「少年、見た所若いけど、()()()()()()シールドベアに追い掛けられるなんて一体何をしたんだい......」



 もしかして......。


 ボクは冷や汗をかいた。



「それがあ、今日突然暴れ始めたのよお、観察をしに行ってみたらあ、群れの8頭が急に怒って襲い掛かってきてえ、途中でサヤが迷子になっちゃうしい、ほら、あの子あの性格でしょお?突っ走って行っちゃうからついて行くの大変なのよお」



 サヤさんが最初から満身創痍だった理由が分かった、あそこに来るまでに既に複数のモンスターと戦っていたのだ。



「......。」



 ボクの所為だ。



「......スグル君も危険な状況だったのでしょお?」


「うっ......」



 コウさんがジッとボクを見つめる。



「何か知ってるよおな顔ねえ?」


「ははは!コウ!あまり少年を虐めるなよ!」



 馬車の手綱を握っているサヤさんが笑ってコウさんを窘める。



「んふふふ、だあって可愛いんですものお」


「うぅ......。」


「ほら!萎縮してるじゃないか!」



 コウさんの到着があと少しでも遅かったら、サヤさんがあの時助けてくれなかったら......。


 想像するとボクは体育座りのまま頭を膝に当てて小さくなってしまった。



「そもそも!団長の指示は急発生したシールドベアの群れの調査と『ええ感じの数になるまで討伐』でしょ?目的は達成したし!少年を助ける事ができたし......」


「ボクの所為なんです。」


「え?」


「んふふ」



 どうやらコウさんはお見通しらしい。



「ボク、田舎から街に来たばかりで、冒険者のランクFなんです......」


「まあ見た目からしてそうだね!」


「うっ......」


「いいからあ、聞いてあげなさあい?」



 血で汚れたボクの装備は、シャツに革のベストを着ただけの簡素な物。

 武器は都市中央部から冒険者登録時に支給されるショートソードとバックラーだ。


 シールドベアから逃げる途中で無くしてしまったのだが......。


 コウさんが今度は優しい目でこちらを見る。

 青い瞳が綺麗だ、整った顔に宝石を嵌め込んだみたいな。



「それでえ?ランクFの貴方がどおしてあんな所にいたのかしらあ?」


「......そのシールドベアの鱗です」



 ボクはコウさんが剥ぎ取った大量の素材を指差す。



「新種のモンスターの素材は良いお金になります......ですが大して強くも無いボクにはハンターを雇うお金も無いし、知り合いもいない、ですから......」



 言葉が詰まる。

 あの時の恐怖が蘇って血の気が引いていく。



「うんうん、大丈夫よお、ゆっくりお話しましょお」


「ありがとう御座います」



 コウさんが優しく促してくれた。

 サヤさんは黙って前を向いて手綱を握っている、どんな表情をしているのか分からない。



「それでえ?」


「はい......ですので、寝ているシールドベアの鱗を少しだけ切り取って売ればお金に出来るんじゃないかって......」


「それで起こしちゃってえ?」


「はい......」


「追いかけられたのねえ?」


「はい......」



三人「「「......。」」」



 暫くの沈黙。



「っぷ!!」


「んふふふふふ」


「あっはっはっはっは!!!」



 彼女達は突如として笑い出した。



「はっはっは!それで、右腕を千切られて、血塗れで全力で走って?」


「んふふふ、初心者があ、凄い経験ねえ?」


「はい......貴女達が居なかったら、ボクは今頃......それに、そのまま怒ったシールドベアが街に行ってしまったとしたら......」


「今頃大騒ぎねえ、んふふふ」



 笑い事ではない、とんでもない大事件になっていただろう。



「すみません......助けてくださって、ありがとうございました、なんてお詫びすれば......」


「いいや!助けてくれたのはキミだろう?少年!」



 ......。


 ちょっと何を言っているのか分からなくてキョトンとしてしまった。



「ん...ゴク......。んふふ、そおねえ、『戦鬼(せんき)』の二つ名でえ、誰も近寄らないっていうサヤを左腕一本で助けたのよねえ、んふふふふ、それも駆け出し冒険者があ」



 いつの間にか薬を飲んでいた口に手を当てて肩を揺らして笑うコウさんが言った。


 戦鬼(せんき)、確かに、あの時得意技を発動したサヤさんを誰かが見たら、そんな呼び方をしても仕方ないのかもしれない。



「いやでもそれはサヤさんが......」


「少年!細かい話は団長とギルドでしよう!ほら、街が見えてきた」



 話をしている間にいつの間にやら街に到着していたようだ、行きは歩きだったのでほぼ丸一日掛かった道のりも、数時間で着く。






 まずは東側の門を潜って近くに敷設されている一般用総合厩舎へ。

 積荷をギルド前で下ろして都市中央部の一般用厩舎へと運ぶ為に臨時の馭者が必要なのだ。


 小柄な猫族の女性が厩舎からトコトコと歩いて来る。


 猫族。

 世界中に存在する亜人種。

 大人でも150センチを越えない小柄な姿に、猫らしい耳と尻尾が生えているのが特徴で、あとは人間とそれ程変わった容姿はしていないのが特徴。


 亜人種は偏見の多い地域にはそれ程姿を見せないが、大昔に人類と亜人種との争いが起こった後からは偏見も少なくなり、いまではお互いに協力して普通に生活している。

 数は亜人種の中でも一番多く、人類の次に人口が増えている。


 戦闘能力は、例外もあるが軒並み低い。

 だが基本的には働き者が多く、食事も少量で済む上に、雑務も汚れ仕事も何でも率先して行動する為に、様々な所で見かける。


 ボクの故郷も、田舎ではあるが猫族が沢山居て、農作業等を手伝ってくれていた。



「こんにちにゃー、いつもベルヘイム総合厩舎をご利用頂き、ありがとうございにゃすー!身分証を拝見しにゃすー!」


「うん!いつもご苦労様!」


「おつかれさまでえす」



 サヤさんとコウさんが馭者に挨拶をして、ポーチから身分証明書のカードを出す。


 ここでは大抵の一般用馬車は馬と一緒に都市中央部管轄の厩舎でまとめて管理するのが定番である。

 政府に登録されているハンターや冒険者等は、身分証明書を持たされていて、政府、または都市の主要な施設の利用にこの証明書が必要になるのだ。


 維持費などの問題もあって個人で馬車を所有する人はそれほど居ない。



「ふむふむ......はいー!確認しにゃしたー!ではそのまま一度ギルド前までお送りしにゃすのでー、手綱お受けしにゃすねー!」



 サヤさんが行き先を伝えて馭者と運行を交代し、ボク達が居る荷台へと入ってくる。

 そもそも積載した積荷が多過ぎてボクとコウさんがギリギリ座れるスペースしかないのだが......。

 高身長のサヤさんが座れるスペースが無い。


 ちなみにコウさんの身長は170センチ程、サヤさんよりは低いがボクよりはずっと大きい。



「おっと!これは、どうしようかな!」


「出て走ればいいんじゃなあい?」


「寂しい事言わないでよ!アタシも一緒に座りたいぞ!」


「あ、あの、ボク立ってますので」


「ああ!成る程こうすればいいのか!」



 サヤさんはそそくさと立ち上がったボクを正面から持ち上げる。

 なんだかボクはこの人に抱っこされてばかりのような気が......って。



「サヤさん何を?!」


「はっはっは!コウ!」


「はあいどうぞお」



 座ったままのコウさんは両腕を広げてサヤさんからボクを受け取る。

 背中からギュッと抱き留められて彼女の温もりを強く感じた。



「あああああの?!ちょっとこれは......流石に恥ずかしいと言いますか......」


「んふふ、いいからいいからあ」


「いやあの!せ......背中にその......む、むね」


「んー?なあに?」



 耳元で囁かれてゾワゾワする。



「ああああいやあのなんでもありません!!」



 コウさんの白銀の鎧はコルセット状になっていて、肩から手、太腿から足先はしっかり鎧で覆われているが、シャツを着た胸回りと、腰布で覆われた骨盤周りは鎧を着けていない。

 つまりは豊満な彼女の胸が、衣服越しとは言え直接背中に当たっている状態である。


 16歳のボクには刺激が強過ぎる。

 ボクは全身を硬直させて下手な事をしない様に耐えた。



「あああわわわわわ」


「んふふふ、本当に不思議な子ねえ」


「んなななんでしょうか」


「私、薬臭くなあい?」



 確かに薬品の刺激臭はするが、それだけだ。

 薬はさっき戦闘中に直接飲んでどんな匂いか知ったし、そんな事よりもボクの身体に付いてる自分とモンスターの血液の方がずっと臭いと思う。



「ななななんのことでしょうか??」


「......んふふ、なあんでもない」


「はっはっは!スグル少年は本当に変わってるなあ!」


「そうねえ、んふふふ」


 

 二人にからかわれている間に、馬車の揺れが収まった。

 どうやらギルドホームに到着したらしい。


 彼女達のギルドホームは、居住区の南側の通り沿いにあり、向かい側に商業区が見える。



「到着しにゃしたー!積荷はいつもの場所にまとめて置けばいいのですかにゃー?」


「うん!いつも悪いね!」


「承知しにゃしたー、いつもご利用ありがとうございにゃす!」



 大量の積荷に嫌な顔一つ見せずに、猫族の馭者は建物の裏手へと馬車を走らせて行った。



「さて!ここがアタシ達のギルドホームさ!」



 入り口の前で仁王立ちするサヤさんがドヤ顔で言う。



「そんなあ偉そうに言う程素敵なホームじゃあないでしょお?」


「いいの!ホームがあるだけ充分立派!」



 ギルドはハンターや冒険者の集団、チームの事で、大抵の場合所帯が多ければ宿舎も大きくなる。

 ホームがあるだけで凄いと思うし、一般家庭やボクの様な駆け出し冒険者から見れば十二分に立派な建物だと思うのだが......。


 外観は木造で、装飾も無く簡素な造りではあるが、二階建ての家をコの字型に配置した様な形をしている。


 家と言うよりお屋敷、というのが素直な感想である。


 彼女達に連れられて、借りてきた猫のような面持ちのボクは正面扉に歩いて行く。



 ギギィイ......。



 居心地の悪い音を立てて両開きの扉を開けると、そこには石畳のエントランスがあり、真ん中には中央に様々な色の花が添えられた花瓶の置かれた円卓があった。


 円卓の奥にはガタイの良い30代前半ぐらいの男性と、眼鏡を掛けている20代前半ぐらいの細身な男性が話し合っている。

 どちらも背が高い、サヤさんよりも大きいのではないだろうか。


 眼鏡の男性が怒鳴っている、どうやら揉めているらしい。





「ですから!毎回毎回見知らぬ女性に衣服をプレゼントする程ウチは裕福では無いのですから!」


「せやけど、可愛かったやろ?」


「そりゃまあ、そうでしたけど......じゃ無くて!!」


「カカカ!せやろ?!ええ感じに誘えたと思ったんやけどなあ〜」


「何処にですか?!」


「そりゃお前、ヤる事なんて一つしかないやんけ?」


「はっはっは!その様子だとまたフラれたな団長!」


「おっ?!......なんや、サヤとコウか」


「なんだとはあ、随分なご挨拶ねえ?」



 サヤさんとコウさんを見るなりガッカリする団長と呼ばれたガタイの良い男性。


 燃えるような赤い長髪、左側頭部は編み上げていて、両耳に金のピアスを着けて、胸元をはだけさせたシャツにこれまた真紅の花が刺繍された真っ赤な着物を羽織っている。


 着物は遠い東の国のファッションで、一昔前にこちらの国の遊び人達の間で流行した。


 細かな事は忘れてしまったが、大きな事件が東の国であって、そこから自粛ムードとなり、次第に着物ブームは去っていったのだが......。


 遊び人の着る物としてのイメージが強かったからなのか、この人の格好の所為なのか団長と呼ばれるこの男性の印象は......。



 チャラい。

 顔はイケメンなだけに余計チャラく見える。


 

「カカカカカ!!すまんすまん!冗談やん!......あん?なんやそのボロボロのガキは」



 笑いながらこちらへと歩いてくる団長さんは、サヤさんとコウさんの横で小さくなっているボクを見つけた。

 彼から見たら誰も彼もが子供サイズに見えてしまいそうな気もする。



「んふふ、スグル君よお。スグル君、この人が私達のギルドの団長」


「おう!俺がこのギルドの団長!ハンターのリューやで、宜しくな!......んでそこのうるさい眼鏡野郎が」


「副団長のトビです。経理事務、ハンター、ギルドメンバー総括をしています。あと団長」



 トビという長身細身の眼鏡の男性は、深い青色の髪をオールバックにして、シャツにネクタイ、髪と同じ色のタイトな革のロングコートを着ている。

 キリッとした目に眼鏡がよく似合う。



「なんや?」


「来月のお小遣いカットします」


「なんでやあああああああ?!!」


「色ボケしやがってギルドの経費まで手をつけるからですこのクソ団長」



 冷静なトビさんのツッコミに、コメディアンもビックリのオーバーリアクションで一番大きな身体の団長さんが派手にズッコケる。

 彼らなりに、緊張を解そうとしてくれているのだろう。


 よし......言うぞ。



「す......スグルです。冒険者......ランクFです」


「Fやて?」

「Fですか?」



 うう......団長たち二人の目線が痛い。

 血塗れズタボロのみすぼらしい少年がFランクでこんな所に居るのが恥ずかしすぎる。



「ふむ、それでスグルをどうしたいんや?どうせ連れて来たんはサヤやろ?」



 あれ?

 てっきり笑われるのだと、ボクは思っていた。

 何故そんな程ランク冒険者を連れてきたのか、と。

 


「はっはっは!お見通しだったか!」


「カカカッ!突飛な事するんはいっつもサヤやからな」


「いつも振り回されるう私の身にもなってほしいわあ」



 確かに、と、ここに来るまでに何度赤面したのか思い出していた。



「そんなことよりやな、スグルの服に付いたその血ぃ......」


「少年!下がって!」



 両隣に立っていたサヤさんとコウさんが一歩前に出る。

 まるでボクを庇う様に。



「ああん、そうなる気はしてたのよねえ」



 服の派手な血痕を見るなり団長の目つきが変わった。

 なんだ......なんか部屋全体の空気が一気に重たくなった様な......。





「......おどれら、スグルになんかしたんとちゃうか?」





 ガクッ




 団長が言うなり、とてつもない重圧感が襲いかかってきて、ボクの前に立っているサヤさんとコウさんは耐えきれずに膝をついた。


 コウさんの実力は弓の腕前しか知らないが、あの怪力のサヤさんですら、何かとてつもない力に圧倒されて団長さんの前に平伏した状態になっている。


 きっと団長さんがなにか得意技(スキル)を発動させたんだろう、ボクはそう確信した。

 後ろに立っているボクはなんともないのだから。



「何をやらかしたんや?言うてみいや、あ?」


「ぐ......あ......」



 謎の重圧感に声も出せない二人。


 これがこのギルドの団長......目の前に立っている男性がまるでとんでもない大きさの巨人の様に見える。


 手が、足が震える。

 今少しでも彼に反発しようものならば、即座に捻り潰されてしまうのではないだろうか。

 言いようのない恐怖を感じた。



「団長、ここはそれぐらいにして......」


「トビは黙っとれや、ギルドに関係あらへん冒険者を巻き添えしたっちゅう事は事実やろが」



 声こそ荒げてはいないが、彼は彼女達に怒っている。

 自分達以外の人間を巻き込んだということに。


 違うんだ......。

 ボクの所為なんだ。

 言え!言うんだ!!



「事と次第によっちゃあ......」


「違うんです!!」


「あん?」



 ギロリと団長さんの目線がボクに向かった。

 わなわなと震える手を握り締めてボクは言う。



「彼女達は悪くありません!危うく殺される所を彼女達が......」


「団長!!!」



 サヤさんがいつの間にか『鬼人化』を発動させてボクの言葉を遮る。



「ほぉ、俺の得意技(スキル)を受けて尚動けるか、サヤ」


「......ぎぎぎ」



 やはりこの重圧感は彼の仕業らしい。


 彼を取り巻く重圧感が一層濃くなった気がする。

 それでもサヤさんは言うことをやめない。



「少年......は、っぐ......少年はコウとはぐれたアタシを命懸けで助けてくれたんだ!」


「なんやて?」



 言うなり今までの重圧感が霧散した。

 サヤさん達も拘束を解かれた様に力無く床にへたり込む。



「サヤを助けた?そのガキが?」


「はっは...はぁ...はぁ......それだけじゃないぞ!スグル少年は、左拳一発でシールドベアを討伐したんだ」


「なんやそら......」


「んもお、怒るにしてもお、もうちょっと人の話を聞いてからにしてほしいわあ」



 ようやく動ける様になったコウさんが薬を取り出しながら言う。



「えろうすまんなあ、俺はてっきり怪我でもさせたんかと思うてな?」



 言うなりボクの前まで来て同じ目線になるように屈み、ボクを見つめる団長さん。



「ウチの団員を助けてくれてありがとーな」



 真っ直ぐに、なんの躊躇も無く彼はボクに礼をした。

 こんな低ランクのボクだと知った上で、だ。



「それにしたってサヤ、スグルをこんなとこに連れて来てどないするつもりや?」 


「うん!このギルドにスグル少年を迎え入れてくれないだろうかってね!」


「ええっ?!」



 後ろで無表情のまま見ていたトビさんが見た目に似合わない素っ頓狂な声を上げた。



「サヤさん?!今のギルドの状況を分かってて言っているんですか?」


「はっはっは!ギルドが貧乏なのは今に始まった事じゃないでしょ!」


「だからってこれ以上負担を増やすわけにもいかないんですよ?人員を増やすという事はですね......」


「ええよ」


「えええっ?!!!」



 未だに真っ直ぐボクを見つめる団長さんは、トビさんの声を聞かず、即答した。



「『戦鬼(せんき)』のサヤを左拳一発で助けるFランク冒険者......。ええやんけぇ」


「ですが団長」


「ええやんトビ、おもろそうやで、この坊主」



 ニィっと歯を見せて笑う団長さん。



「気ぃついとったか?コイツ、俺の得意技(スキル)の余波を浴びて立っとったんやで」


「?!」


「大抵の大人が余波だけで小便ちびる俺の得意技(スキル)で、や。カカカ!おもろいやろ!」


「確かに......」



 団長さんの得意技はそれほど凄いものらしい。

 あのサヤさんが『鬼人化』しないとまともに喋れもしないような得意技(スキル)だ、そういうのも頷けるのだが......。



「あの、ボクにはそんな得意技(スキル)なんて......」


「あるんだよ少年!キミには得意技(スキル)が!」



 サヤさんが言い放つ。

 そもそも得意技(スキル)というものを見た事すらこの人達だけで初めてだというのに、自分にそんな凄い能力があるはずないと思うのだけど......。



「ええやんええやん!なんにしてもその格好やったら困るやろ、後は風呂入って飯でも食いながら話そうや」



 大きな手をボクの背中に優しく当てて団長さんは言った。



「いやでも団長さん、ボクお金が......」


「カカカ!リューでええよ、かまへんかまへん!あとな、スグル」


「はい?」





 リューさんはまたニィっと笑って言った。






「ようこそ、我らギルド『万華鏡』へ」









 いかがでしょうか?

 得意技について解説が未だに無くて申し訳ありません。

 次で色々と分かってくると思います。



 ちなみに次はお風呂回から始まります。

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