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借り物の冒険者  作者: Ny
3/15

絶対絶命Ⅲ

 お疲れ様です、第三話となります

 序盤でしばらくの間、解説が多くなってご面倒をお掛けしますが、良かったらお付き合い下さい。




「「グルルルルルル」」


「「グオオオオアアアアア!!」」


「「ガアアアアアアアア!!」」




 こんなの中央部から聞いていない。


 シールドベアが三体、茂みの奥から現れた。



「ひぃいい!!」



 流石にこれは無理。

 ボクは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。


 一撃を掠めただけでボクの腕を引き千切り、大木を毟り取るようなモンスターが同時に三体......。

 彼女達がいくら強くても、流石にこれは......。



「コウ!アレを使うぞ!」


「わかってるわよお、予備の薬も用意してあるからあ」


「心配性だな!」


「用意が良いって言ってくれなあい?」



 何故彼女達はこんなに平然としていられるのだろうか。

 サヤさんだってさっき殺されかけたばかりじゃないか!?



「スグルくん、だっけえ?動けるかしらあ?」


「む、むむ無理です!脚が、うううう動かない!」


「あらあ、困ったわねえ」


「大丈夫!そっちには行かせない!コウの後ろで見てて!」



 サヤさんはボロボロの大剣を地面に突き刺し、目を閉じると深呼吸をした。





「ふぅ〜......」





 サヤさんを取り巻く空気が何処となくザワザワとしている。



「サヤさん!何を?!」


「んふふ、いいからあ、見てなさあい」



 言いながらコウさんは丸薬の様な物をを口に運ぶ。

 お菓子を食べている様に見えるが、漂う薬品臭がそれを否定する。

 この人、会った時からずっと薬品を摂取してるような......。




「「......おおおおおあああああああああああああああああああああああああああ!!!」」




「?!」


「ほおら、はじまったあ」



 どうやったらそんな声量で人間が叫べるのだろうか、凄まじい声と闘気をサヤさんが放つ。


 シールドベア達はその姿にたじろいだ。


 サヤさんの身体のあちこちからメキメキと音が聞こえ、肌を赤褐色に染めていく。

 まるで何かが彼女に憑依したかの様に、へたり込んだボクから見たサヤさんは、ひと回り大きく見えた。



「......ゴクッ...ぷはあ。あれが彼女の得意技(スキル)『鬼人化』なのよお」



 何故かさっきから緑の液体を飲んでいるコウさんが言った。



「『鬼人化』......?」


「んふふ、後でゆっくり教えてあげるう、なんでここに居るか聞きたいしい、ね?」



 妖艶な顔でウインクするコウさん

 今は黙って見ていろ、と言うことらしい。




「いいいいくぞおおお!!ザコどもおおおお!!」


「「「グルオォオオオオオオオアアアア!!」」」




 サヤさんとシールドベア達との戦いが始まった。




 ......いや。



 サヤさんの蹂躙が始まったのだ。




 あんなボロボロの大剣でどうやってと思っていたのだが、サヤさんは地面に突き刺した大剣に目もくれず、先程討伐したシールドベアの死体の足を掴むと




「うりゃああああああ!!!!」




 突進するシールドベア達の一体に叩きつけた。



「「ゴアアアアアア!!?!」」


「はっはああああ!!痛いかあああああ!!?!もっとくれてやるあああ!!」




 ......。





 アレは本当に人間なのだろうか?




 何トンあるのかわからないシールドベアの死体を、巨大なハンマーを叩き付けるように使って攻撃している。




 もう一度言う。

 アレは本当に人間なのだろうか??


 派手な音と土煙を上げながら、鬼はシールドベアの一体を殴り続けた。



「おらああ!!もっとだああ!!」


「「?!!......!!??......」」




 体表に強固な鱗を持つシールドベアには、斬撃や刺突などの攻撃は有効ではない。


 ならばどうすれば良いのか?

 答えは単純明快、硬い鱗ごと中の肉体を叩き潰してしまえばいい。





 超重量の打撃を上から何度も打ち込まれ、あっという間にシールドベアの一体は声もあげられずに地面にめり込んだまま絶命した。



 その光景を唖然と見ていたシールドベアの二体。




 最早元型を留めていないシールドベアの死体を担いだ鬼が二体を睨むとニヤリと笑う。


 ビクリと肩を揺らす二体。




 ......怖い。


 涼やかに笑うあの笑顔は何処へやら。




「つぎはあああ?!お前らだあああ!!!」


「「グヒィイイイーーー??!!!!」」



 そりゃそんな声も出るよね、怖いもん。









 ......。




 こうしてあっという間にシールドベアのお煎餅が3つ出来上がってしまった。




「はっはっは!あ〜!すっきりした!」


「ちょっとやり過ぎよお?素材の剥ぎ取りが難しくなっちゃうじゃなあい」


「ははっ!ごめん!運ぶのはアタシがやるから」



 『鬼人化』からすっかり元に戻ったサヤさんは、コウさんと共にシールドベアの死体を解体し始める。



「どうだったスグル少年!凄いだろ!」


「は、はあ、あの、怖......いや!格好良かった......です!!」



 戦闘中の鬼の様な形相とは打って変わってキラキラとした目でこちらを見つめるサヤさんに、素直な感想なんて言えるはずもなかった。



「格好良い、か......。はっはっは!そうだろうそうだろう!」



 未だにへたり込んで動けないボクをまた持ち上げて軽快に笑うサヤさん。

 180センチ程あるサヤさんに、160センチのボクは子供の様に抱っこされて気恥ずかしい。



「それにしても、お二人のその力は一体......?」



 これまでの異様な状況の連続にすっかり麻痺していたのだが、二人の力はあまりにも異質だった。




 この世界には冒険者とハンターという職業がある。


 冒険者とは

 世界中に点在するダンジョン化した古代の遺跡等を調査、レポートや遺物を持ち帰って研究者に報酬を貰う職業である。

 地形探索や歴史の調査のような地味な仕事が多く、主に個人、チームで活動する事が多い。

 未調査の遺跡や遺物を発見出来れば報酬も多いロマン溢れる仕事だが、モンスターとの戦闘も加味されている為にハンターを雇う冒険者は多い。


 ハンターとは

 遺跡や遺物などから何かしらの影響を得て進化、変質化し、モンスターとなった生物が、人や街などに危害を加える可能性を未然に防ぐのを生業としている職業。

 冒険者よりもより戦闘に特化した職業であり、個人で活動する者や、チーム、ギルド、ギルドの連合体など、場合によっては政府などの機関によって騎士団として徴用される場合もある。


 どちらの職業も政府などに各個人、団体が登録されて、能力の高さはランク分けされる。

 モンスターの異常発生や強力な個体が出た場合は都市部から高ランクの冒険者、ハンターが起用され、討伐、捕獲、そして調査する事が義務付けられている。

 ランクは低い方からFからA、最高がSランクとされる。


 ボクはつい最近冒険者として登録したばかりなのでランクはFだ。



 彼女達の能力は一体どのぐらいのランクとされているのだろうか。

 サヤさんの『鬼人化』という得意技(スキル)はどう考えても普通ではないし、コウさんのあの薬の効力......。


 始めボクとサヤさんが出会ったあの時、彼女は既に満身創痍だったはずなのだ、加えてボクに薬を渡して自分は飲まなかった。


 それがコウさんが来た途端、何事も無かったように全身の傷が無くなって、あっという間にあのモンスターを倒してしまった。

 コウさんになにか秘密があるのではないだろうか?


 きっとここ一週間この森が封鎖されていたのは彼女達が居たからなのだろう。

 つまりは政府や都市中央部から派遣された高ランクハンターで、その辺の中堅ハンターではないはずだ。

 



「んふふ、興味津々ねえ」


「ははは!良い事だ!......そうだね、うん」



 サヤさんはボクを下ろして腕組みをし、うんうんと唸っている。



「サヤあ?もしかしてえ」


「うん!ギルドに連れていこうと思うんだ!」



 質問を無視して突拍子のない事を彼女はボク達に告げてきた。



「ええ?!」


「んもう、なにか考えがあるんでしょうねえ?」



 突然の事に驚くボクと、呆れているコウさん。



「はっはっは!コウ、あのシールドベアに刺さったスグル少年を見たろ?」


「そうねえ?遠目で見たらてっきり貴女がスグル君をシールドベアに刺したように見えたけれどお、この子がやったのよねえ?」



 あの時は無我夢中だったのだが、改めて思い出すと恥ずかしい。


 それにあの時のパンチの威力......。

 Fランク冒険者のボクにあんな力は無いはずだ。












「この少年、得意技(スキル)を持っているかもしれない!」









 

 如何でしょうか?

 続きは少しだけお待ちいただく事になるかもしれません。

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