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借り物の冒険者  作者: Ny
13/15

合体技

 お疲れ様です。


 幼稚園児の頃、サンタさんに合体変形ロボをお願いして、クリスマスの夜に合体ロボを持った酒臭いサンタさんに耳を踏み抜かれた思い出がある私です。


 サンタよ、あの痛みは忘れぬぞ。





「トビ、今なんて?」


「だから合体です! 時間がありません、急いで下さい!」


「はっはっは! よくわからないけど面白そうだな!」



 何者かに精神を乗っ取られたスグルの能力は、立ち向かうメンバーそれぞれの能力を扱うという恐ろしいものだ。

 天井に張り付いてメンバー達に襲い掛かろうとする彼に対抗するべく、トビが考案んした策とは。



「はっはっは! よいしょっと!」


「ホンマにこれでええんかトビぃ?!」


「......この我が、殿に抱っこされている」



 まずリューが盾を持ったキドウを背後から抱き上げ、そのリューをキドウごとサヤが持ち上げた。



「はい、キドウさんは可能な限り硬質化してください、サヤさんは鬼人化をフルパワーで、団長もろともスグルさん目掛けて投げてください」


「なあトビぃ? 俺必要なんかなこれ」


「団長は飛翔中......上手い事やってください」


「なんやそら?!」


「来ますよ! 準備してください!」


「ちょ! ちょと待てちゃ——」


「はっはっは! いくぞぉおおおおおお!!!」



 サヤが大声を上げて鬼人化を発動させる、キドウはリューに直立状態で背中から抱っこされたまま可能な最高硬度にまで硬質化させた。



「......何やっテんのかワカンねぇけど、準備はいいみたイだな? んじゃいくぜえええええ!」


「いっけぇえええええええ!」



 スグルは上から盾を構えて凄まじい速度で飛び出し、サヤは下から二人を力一杯投擲した。


 トビはスグルの様子がおかしくなった時から発言を一言も漏らさずに聞いて考えていた。



(恐らく、乗っ取られたスグルさんの能力は、我々の得意技を理解し、使用する事。 先程『鬼人化25、硬質化25、神速50』と言っていたという事は、つまり複合して使用できるが使用する力の大きさに制限がある筈。 だとするのなら、100パーセントに硬質化したキドウさん、そして100パーセントの力で投げるサヤさんの投擲速度は、重力もありますが恐らくユズハさんの『神速』の半分ほどの速度は出るはず、だとすれば)



 スグルとキドウが衝突する。

 刹那、リューが直立状態で最高硬化したキドウをバットのように振り被って——。



「おんどりゃあああああ!!!」



 高速で落ちてくるスグルに向かってキドウを思い切り叩き付けた。



「あにじゃああああ!!!」



 兄の勇姿に涙を流すユズハ。





 ズガァン!!





 衝突による衝撃波が周囲に広がる。

 トビがニィ、と笑みをこぼした。



(得意技未使用の状態ですら鬼人化したサヤさんの7割程の力が出せる団長ならこれぐらい出来るはずですから)



「「がはあ!」」



 白目を剥いたキドウとスグルが空から落ちてきた。

 両者の衝撃は凄まじく、お互いにぶつけた盾が粉々に砕け散っている。

 リューは何事も無く綺麗に着地した。



「兄者......綺麗な花火で御座いました」


「......ぬぅ、妹よ......勝手に...散らすでない」


「はっはっ......うまくいったな、トビ青年!」



 コウに回復してもらって反動から回復したサヤは爽快な顔をしていた。

 身体は血塗れになっている、二人を全力で投擲した時の反動で色々な筋肉が爆散したらしい。



「はい、思ったよりうまく行きましたね」


「おいトビぃ?「思ったより」ってなんや?! 想像やとどういう予定だったっちゅうねん」


「さあ?」


「姉御! 殿も兄者もすっごく格好良かったです! 我も合体したい!」


「はっはっは! 今度練習しような!」


「......妹よ、我はもう、御免被りたい」


「......ぐ......けはは......なんてヤつらだ...」



 ふらふらになったスグルが起き上がる、だがもう限界なのか、『鬼人化』を使用して無理矢理動かしているようだった。



「こやつまだ! 殿! 如何しますか?!」


「けはは......まだまだ......力が足んねえな」



 ボロボロになったスグルは壁にある武器を取りに行こうとしている、まだ戦う気であった。


 と、そこに——




 ズガッ!




「ぐがあ?!!」


「はあい、もうそろそろおしまいよお」


「っぐ!!「リビドーの偽物」が! クそ!」



 コウの放った矢がスグルの四肢を撃ち抜いて地面に磔にした。



「もう強化の効力は切れたはずよお、私達はスグル君の特訓の為にここにいるのお、そろそろ彼を返してもらえるかしらあ?」


「っぐあ......っこの!......オレにハ目的が、目的があルんだ......」


「あらあ、目的ってなにかしらあ? スグル君の身体を勝手にしてまでして良いことなのかしらあ?」


「コのっ! ぐあ!!」


 コウがうつ伏せで動けないスグルの髪を掴んで地面に叩きつける。

 何度も、何度も何度も何度も。



「やっ! 止メ——!」


「コウ! それぐらいにしときや!! 本体が死んでまうで!」


「あらあ、大丈夫よお、こんなっ、ことじゃっ! 私の回復をっ、上回るっ、ダメージなんてっ!」



 よく見ればコウは片手で彼の頭を地面に叩きつけながら、もう一方の空いた手に薬瓶を持っていた。


 戦闘時、味方になれば不死になれたかのような回復力を見せ付けるが、逆に敵に回れば、このように気絶もさせず、死にも出来ない無限の拷問が可能になってしまう。



「ん......ゴク......っぷはあ、一つ教えてくれるかしらあ? 『リビドー』って何かしらあ?」


「へ......けへはは......本当に、なンにも知らネえんだな——がっ!!


「私こう見えてえ、結構気が短いのよお、早く話した方が良いわよお?」


「コウ......もうそれぐらいにしておこう、回復するから死なないとはいえ、その身体はスグル少年の身体だ」


「でもサヤ!」


「そんなコウはみたくないんだ......」



 スグルに『リビドーの偽物』と呼ばれてからコウの様子が明らかにおかしくなっていた。

 誰かが止めないと、今度は毒薬も使いかねない。



「なあ、まずはお前の名前を教えちゃくれへんかな?」


「んぐ......」


「俺かてコウを止めたいんや」


「オレは......『イド』ダ」


「ふむ、成る程、スグルさんの中にある『イド』と考えていいですか?」



 トビが考察するに、『イド』とは本来、人間の意識の根底にある無意識の領域を指す言葉で、誰かの名前を指す言葉では無い。

 先程スグルの事を『ペルソナ』と呼んでいた事もあって、スグルの精神構造の中で何かが起こっているのではと仮説を立てた。



「オレを『ペルソナ』なンかと一緒にすんジゃね——ぐあっ!」


「その『ペルソナ』っていうのがあ、スグル君の事ねえ?」


「っく、その手をドけやがれ! そうだよ! アイツは『エス』が保管されルまでの仮初ノ心だ!」


「その『エス』というのは?」


「この世にアる全テの『霊素』ヲ、収束させた、完成さレた魂」


「ふむ、その『霊素』とは?」


「ごちゃゴちゃうルせぇな! オレがその『エス』にナるって——っぐあ!」


「質問に答えてちょおだいねえ」


「っぐ!......お前らも持ってんだロうが! お前らが『得意技』とかほざいてるのが『霊素』でアって『スキル』なんだヨ!」


「ふむ、成る程」


「兄者! 我はもう訳が分かりませぬぞ!」


「......妹よ、安心しろ、我にも分からぬ」


「けひゃひゃひゃ! お前ラ自分の『スキル』を自分デ手に入レた才能とか思ってんじゃネえだろな? だとしタら笑えルぜ!」


「その言い方だと違うのですね?」


「けひゃはは......オレは『エス』になって完全ナ存在になル! 邪竜にナんてくれてやるモんかよ! それまデ精々『ペルソナ』と...おままごとデもして......いる事......だな」



 そう言うと、スグル、もといイドは沈黙した、気絶したようだ。


 コウは先程までの荒い扱いではなく、痛くしないように、スグルの四肢から矢を抜き取り、頭部を優しく抱きしめた。



「沢山痛い事されたねえ、ごめんなさいねえ」


「いや、お前がやったんやって」


「コウの姐御、後半ちょっと楽しそうだったよね兄者」


「......妹よ、世の中知らなくても良い事があるのだ」


「二人ともどうかしたのかしらあ?」


「「ひぃ!」」


「はっはっは! 取り敢えず皆んな無事で良かった!」



 気絶状態のスグルの周りで騒ぐ四人の後ろで、トビとリューは顔を顰めて話し合っていた。



「先程のスグルさん......イドの言動、どう思いますか?」


「ああ、「邪竜にくれてやるものか」とか言うとったな、ということは......」


「確証は全くありません、まずは何か証拠になる物を見つけることが先決だと思います」


「せやなぁ......それにしても、や」



 裏付ける証拠が無ければ、イドの言葉を完全に信用できる内容ではない。

 少なくとも、僅かなり信用させるには、彼の、イドの能力は異常だった。


 リューとコウ以外の出会った全メンバー

のスキルを真似し、複合的に使用する事が可能になるスキル。

 それに加えて——



「おかしいのよねえ」


「どうしたんだ? コウ」



 サヤは気絶したスグルを抱き抱えて座るコウに問いかける。



「あのねえサヤ、イドがスグル君から現れてからあ、リューに言われて死なない程度にスグル君の身体を回復はしてたのよお」


「うん、お陰でアタシ達もスグル少年に対して無茶出来たしね!」


「でもねえ、あの子サヤの『鬼人化』使ってたじゃなあい? トビ君の『全能』も」


「あれには驚いたな! つまりはスグル少年の得意技は......ん?」


「サヤも気が付いたのねえ?」


「コウも気ぃ付いとったか!」


「うん、そうなのよお、この子はキドウ君やユズハちゃんの得意技はともかくとして、サヤとトビ君の得意技を使っても反動が無かったのよお」



 得意技はそれぞれ、使用者に絶大な効果をもたらすが、同時に何かしらの反動が起こるというのがハンターの、この世界の常識である。

 スグルの、イドの能力が他者の得意技をコピーする力だとすると、その力は常軌を逸している、そして反動もそれに合わせて大きなものとなるはず。


 だがしかし、それが戦闘中まるでなかった。



「回復は私が出来るにしてもお、何処かダメージを受けない限り回復は出来ないのよお」



 コウの得意技はダメージを受けた対象に対して口にした薬の効果を反映させる事であって、ダメージを受けないようにする薬は無いのだ。

 サヤの得意技を使えるのであれば、サヤと同じく攻撃する度に自分にダメージが来るはず。

 それが無いのだ。



「ふむ......コウさんの様に反動を無くす得意技を持っているとか?」



 コウの『超回復』は『効果転移』の反動効果であるアイテムの副作用を打ち消す事ができる。



「だとしたらあ、他に何か反動が来るはずよねえ?」


「ふむ、確かに」



 トビの考えが一番正論のようなのだが、コウの場合で言えば『超回復』の反動効果が『渇き』であるように、打ち消す得意技の反動があるはずなのだ。



「......我には難しい事は分かりませぬが、つまりはイドが言っていた『スキル』が、我々の知る『得意技』とは違う物で、『スキル』には反動効果が無い、という事なのでは無いでしょうか」


「兄者、何を訳の分からない事を——」


「う......うぅ......」


「スグル君? 起きたかしらあ?」


「おっ! スグル少年が目を覚ましたな?」


「皆んな待て!」



 目を覚ましたスグルに全員駆け寄るが、リューがこれを制止する。

 まだ緊張の糸を緩めてはならない。



「まだイドの状態なんかもしれへん、もうちょい待て!」


「う......あ......」


「スグル君? スグル君大丈夫かしらあ?」


「ん......う......コウさ...ん?」


「良かったあ! スグル殿に戻った!」



 イドでは無くスグル本人が目覚めた事に全員安堵する。

 それと同時に、集会場からホームへと繋がる階段からフブキが降りてきた。



「みんな〜♪ たっだいま〜! 置き手紙に書いてある通りオニギリ作っといたから皆んなで食べよ〜......って! スグルんどうしたの?! ビンビンもサヤりんも血塗れじゃない!? なになに?!」


「カカカ! ここで考えててもしゃーなしやな! 皆んな飯にするで」



 一旦、ホームへと戻り、夕飯にする事になった。


 尚、今回のイドとの戦闘の際、サヤ、キドウと合体技を繰り出したリューがイドとの衝突による地下からの振動で、地上は地震騒ぎとなり、トビがアンに叱咤され、合体技を目の前で見ていたユズハと、話を聞いたフブキが新しい合体技を編み出そうと計画している事を、まだ全員知らないのである。




 ご覧いただきありがとうございます。


 日本人は地震って割と慣れているらしいのですけど、国外だとちょっと揺れるだけでもパニックになるらしいですね。


 北海道民が関東の雪を見ている気分なのでしょうか。

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