封印帝国
硬い寝台に仰向けになって、ティアは煤けた天上を見上げていた。なぜ自分はこんな場所にいるのだろう。一瞬、乱れた思考の後に、ゆっくりと記憶が蘇る。父と母に導かれて《空飛ぶ船》に乗せられた。そして。暗い海に落下する自分。その後の記憶を手繰ろうと意識を集中させる。と、扉の軋む音がそれを断ち切る。さらに、無遠慮な足音が近づいて寝台の脇でぴたりと止まる。
その人物をティアは記憶していた。彼の手によってティアはこの場所、おそらくザグレスのどこかだろう、に連れ戻された。ザグレスに戻ることはティアが望んでいたこと。
けれど。跳ね起きたティアは、その人物から少しでも遠ざかろうと身をよじっていた。
「そんなに怯えることはないだろう、お嬢さん」
ざらついて不快な口調だった。
「怯えてなんかない、あなたが信用できないだけよ」
ティアの挑発的な言葉に、男は歪んだ笑みを返し、
「俺はお嬢さんに大事な話をしに来たんだがな」
「大事な、話?」
「ああ、そうだ。その前に問う。お嬢さんはキルギアが憎いか?」
唐突な問いの意図をはかりかねて黙り込んでいるティアを無遠慮に見下ろして男は、
「お嬢さんはザグレス人なのだろう。ならば、ザグレスとキルギアの過去の遺恨のこと、知らないはずがなかろう」
「何を今さら、そんなことを。キルギアはわたしたちとって倒さなくてはならない敵、そんなこと、分かってるわよ」
すべての国民がキルギアを憎悪の対象と認識するくらいに、ザグレスは徹底した反キルギアの教育を施している。ティアの答えはそれゆえの帰結だ。
「ならばその倒すべき敵、キルギアをおまえが倒すんだ」
「わたし一人でそんなこと、出来るわけがないじゃない! 言っていることが無茶苦茶よ」
「おまえにはその能力が備わっている。そのことを自覚して、キルギア討伐に協力してもらう」
威圧的な口調で言い切ると、男は上衣の内ポケットを探り、金属製の杯と液体の入った小瓶を取り出していた。毒々しい朱色をした液体が杯に注がれる。
得体のしれぬ恐怖を感じて寝台の上を後ずさるティアににじり寄るように近づき、男はティアの口元に向かって杯を掲げていた。
「ちょっとした儀式だ」
素早く背後に回って喉元を羽交い絞めにすると、男は杯の中の液体をティアの喉に流し込んでいた。
「うっ……ぐふっ、ごふっ」
抵抗するいとまもなく流し込まれた液体が臓腑に向かって落ちてゆく。全身の血液が沸騰するような感覚に、ティアは身をのけ反らせる。抗う術もなく、ティアの意識は闇に呑みこまれていた。
網膜に映し出された光景は、理性を持った人間なら顔を背けたくなるくらいに凄惨なものだった。ティアの網膜は、カメラのレンズのようにその光景を捉え続ける。
放たれた火矢が家々を焼き尽くす。炎に焼かれながら家から這い出て命乞いをする人々に容赦なく剣を振り下ろす兵士たち。燃え盛る炎の狭間に、兵士たちの掲げる旗の紋章が踊っている。ティアにとってそれは忌まわしさを象徴するものでしかなかった。
ぎらついた眼で興奮の雄叫びをあげ、殺戮を繰り返すキルギア兵のありように、ティアは純然たる憎しみを抱いていた。心の芯から湧き上がってくるその感情は止めようがなく、ティアの意識を染めてゆく。
《みんな死んじゃえ!》
《殺意》へと収斂した感情を、ティアは網膜に映ったキルギア兵に向けていた。
至近に映った兵が目を見開き、苦悶の表情を浮かべる。のたうった果てに、兵の体は鮮血を噴き上げて四散していた。殺戮者だったキルギア兵たちは、為す術もなく躯と化してゆく。
目の間で展開される凄惨な光景を、ティアの網膜は記録し続ける。それは殺戮行為に対する当然の報いだ。野蛮な民の集まりであるキルギアという国などこの世から消えてしまえばいい。自分にはキルギアを滅ぼす権利があり、その能力も有している。ティアの感情は、大河の源流が海に向かって流れるような自然さでそう認識していた。
《おまえはキルギアが憎いか?》
深淵からの声がティアに問いかける。
《ええ、憎いわ。憎い、憎い、憎い!》
ティアの意識が答える。
《ならばおまえの力でキルギアを滅ぼすのだ。偉大なる力を我らザグレスの栄光に捧げよ》
深淵からの声が、ティアの意識を闇に染め上げてゆく。キルギアが憎い、憎い、憎い、憎い……
キルギアが憎い!
寝台の上で覚醒したティアの状態を、男は満足げに眺めていた。ぎらついた眼がじっと男を捉えている。闇の感情を湛えたいい眼だ。準備は整った。あとは彼女の力を解放するだけ。その後には彼の望む闇の支配が拡散するはずだ。
が、と彼の思考が一時停止する。
自身が絶対者ではないことを、彼は自覚している。彼は、上位の意思の代弁者なのだ。けれど、彼は自身の意思を成就しなくてはならない。たとえ相反する上位の意思とまみえることがあっても。それこそが自身の存在意義なのだから。
男が促すように背中を押すと、ティアはゆっくりと立ち上がる。
「さあ、お嬢ちゃん、俺と一緒に闇の道を歩もうじゃないか」
「ヤミノ、ミチヲ」
男の低い声に、ティアのくぐもった声が重なる。
全てを語り終えて王が言葉を切ると、広間は重苦しい沈黙に支配されていた。
王の語った《壁》にまつわる真実に世界観を根底から覆されて、ナディとライナは打ちのめされて言葉も出ない。さらには、キルギアの切り札であると告げられた《いにしえの力》の持つ意味に、ナディたちは心底からの恐怖を覚えていた。そのような力が存在すると考えるだけで怖気が走る。そんな力が行使されるなど、神にすら許されることではない。恐怖と怒りで、ナディとライナの体は小刻みに震えてさえいた。
感情が沸点を超えると、二人の意識の奥から第三者が俯瞰しているような別の感情が芽生えていた。自身が分断されたような奇妙な冷静さで、ナディとライナは互いに見つめ合うと、
「ティアは……」
「わたしたちの敵じゃない……ですよね、ガーヴさん」
二人の言葉を聞き咎めたのは王だった。
「それは、我が国に漂着したという若い娘のことか」
ティアの一件の顛末を、まだ王に報告していなかったことに気づいて、ナディとライナははっと息を呑む。
「その件に関し、陛下への報告が遅れたことは私に責があります」
すかさずナディたちを援護する言葉を発したのは校長だった。校長は続けて、
「ザグレスから漂着したと思われる少女の第一発見者が私の生徒であるこちらの者たち、ナディ、ライナ両名なのです。そして、私がその報を最初に受けた。忌憚なく申し上げましょう。その時点で即座に陛下に報告しなかったのは、神学校と王宮の立場の相違を考えたからです。我々は人命尊重と彼女の人権保護を最優先に考えました。王宮にとっては重大な政治案件ですから、彼女の本来あるべき立場は保証されないでしょう。そこで、神学校の立場として、私の判断で彼女をナディ、ライナ両名の保護下に置いたうえで、独自に《壁》の状況とザグレスの動向を見極めようとしました。むろん、差し迫った危険があるようなら王宮に報告するつもりでいたのですが、ザグレスの動きは私たちの予測を超えたものでした。私の判断ミス、痛恨の極みです」
王は、憤怒の炎を宿したに瞳を校長に向けて、
「戯言などよい。ならば、直ちにその娘の身柄を我が方に引き渡せ」
臆することなく王を見据えて校長は、
「そうしたくとも、今はできません」
「どういう、ことだ」
王が垣間見せた怒りの表情に、ナディとライナは竦みあがる。が、それは一瞬で、王の表情は平常の仮面を纏っていた。
「キルギアの手の者によって奪取されたのです」
校長の淡々とした声が流れる。
感情を鎮めるように長い息を吐いて国王は、
「状況は理解した。その失態の責、きっとりとってもらおう。今一度命じる。ガーヴ、ナディ、ライナよ、ザグレスが解き放とうとしている禁断の力を完全に消滅させよ」
冷徹な声音が空間を抉る。ひりひりとした緊張感が漂う中、さらに、
「結果を見届けるのが我だけなどということは許さぬぞ。どんな結果になろうと、おまえたちにもしかと見届けてもらう」
ガーヴ、ナディ、ライナ、そして校長も再度ひざまづいて王の言葉を耳に刻んでいた。
《行け》というように王の視線が皆を促す。無言の命に、恭しい一礼を返すと、一行は奥の間を退出していた。
早朝の靄の中、小型の帆船がゆっくりと進んでいく。舳先近くではナディとライナが乳白色に霞んだ行く手を凝視していた。まとわりつく靄の湿気が二人の髪に、素肌に水滴を浮かび上がらせている。
前方の波間には、断崖に囲まれた小島の影が浮かんでいる。船は岩礁を避けるように蛇行して進み、小島に近づいて行く。霞んでいた島影はしだいに輪郭を整え、切り立った岩が視界に迫る。岩礁の間の狭い入り江の中、船は潮の流れに委ねるようにして岩場に着岸して止まる。
「着いたようね」
「うん」
ナディとライナが背後に向きを変えると、船室から現れたガーヴがゆっくりと近づいて来るのが見て取れた。その背後には操舵員の男二人、左右に控えるように立っている。
操舵員の男たちと向き合うと、ナディ、ライナ、ガーヴは心得たように敬礼の動作を示す。
「では、ご武運を」
操舵員の言葉に促されるように、三人は潮目に揺れる船から足場の悪い岩を伝い、島に降り立つ。
潮目を伝って靄の中に消えてゆく船を見送ったナディたちは、岩間を洗う波を無言で見つめていた。
三人が立てた王の命を遂行すべく最初の計画は、敵のもとにいるはずのティアの行方を突き止めて接触するためにザグレスに潜入することだった。計画は、自身が持つ特殊能力によって敵(ティアを連れ去った男)の動向を察知できるガーヴの主導により進められることになった。潜入に当たっては、敵が辿った《壁》の抜け道を逆に辿ることとし、その具体的方法はガーヴ及びナディ、ライナの専権事項として国王の承諾を得たうえで《壁》の直近の孤島に渡る船の手配を依頼し、今、かの島に降り立った。
「さて、ここからどうやって《壁》を超えるの」
事務的なナディの問いかけに、ガーヴは、
「抜け道の場所は特定した。今からそこに向かう」
「それって、空を飛ぶ船で行くくらいの中空にあるんですよね。わたしたちは空を飛べないんですよ、どうやって中空まで行くんですか」
ライナの呈した疑問に、ガーヴは薄く笑んで、
「俺とどれだけつき合ってるんだ、おまえら」
ガーヴの周辺の空間が振動するように歪み、瞬く間にその範囲を広げていた。歪んだ空間が再構築されて焦点を結ぶと、ガーヴの姿は巨大な翼竜に変わっていた。
「なるほど、ね。あんたの素性のこと忘れてたわ」
「それ、ガーヴさんの本来の姿なんですか」
「俺にとって外見など無意味、ただの器だ。機能的であればそれでいい」
くぐもった声で言うと、ガーヴは両翼をはばたかせていた。
ナディとライナが背中に収まると、大きく広げられた翼がはためいて上昇気流を捉える。滑らかに滑空すると、翼竜となったガーヴはぐんぐん高度を上げていた。ドーム状の《壁》を俯瞰できる高度まで上昇し、進入路を確かめるように旋回すると、急降下して《壁》の切れ目に突入していた。
「お、お手柔らかに頼むわよ、ガーヴ」
「ふ、船酔いしそうですぅ」
手荒い飛行に翻弄されて思わず叫ぶ二人に、
「ここで音を上げているようなら、これから先の修羅場の戦いは生き残れんぞ」
ガーヴの手厳しい言葉が、唸る風に乗って流れる。
森の木々の間から仰ぎ見る空は淀んだような鉛色だった。下方の平野には、靄に白く霞んだ街並みが微かに見て取れる。
《壁》を抜けたナディとライナ、そしてガーヴは、ザグレスの王都を一望する森の袂に降り立って緊張を解いていた。
空のみならず取り巻く大気までもが鉛色に染まっていることが、閉塞された《壁》の内部にいることを知らしめていた。明るい陽光に溢れ、豊かな風景と自然を惜しみなく
晒しているキルギアとの差異に、ナディとライナは心もまた鉛色に沈んでいた。
「ティアのいる場所はもうわかっているの?」
気を取り直してナディは、元の姿に戻ったガーヴに問いかける。
「ああ。王宮のどこかに幽閉されているようだ」
ガーヴは即座に答える。人知れず短時間で事を見通してしまうガーヴの千里眼的能力は、ナディたちには驚くに値しない。
「それじゃあ、王宮に直接乗り込むってことですよね。そんなこと、できるんですか」
不安げなライナには、
「手筈は整えてある。まずは王都に入る準備だ」
そう言ってキルギアから持ち込んだ大きな荷物の包みを指し示す。ガーヴの意図を察してナディとライナは包みを開け、素肌が露出しないように大き目の服を纏ってフードを目深にして顔を隠していた。
残った荷物を背負い、森の大地を踏みしめてから、ガーヴを先頭に三人は王都へと続いている緩い坂道を下っていた。
一本道の街道を辿り、王都に近づくにつれて人の往来は活発になってゆく。異邦の地でも基本的な人の営みは変わることはない。そんな中に溶け込むようにナディたちは市街地に入っていた。ザグレス王都の賑わいはキルギアのそれと遜色なく、人波を避けて歩くのが困難なくらいになっていた。雑多な生活の匂いの合間からは香ばしい匂いが流れてくる。通りの脇に連なる食べ物屋の屋台では、炭火で炙られた肉が肉汁をしたたらせていた。立ち止まって物欲しそうに屋台を眺めるナディとライナの腹がぐるりと音を立てる。
「おにーさ……ん、んにゅ……」
声を出して店に並んだ串焼きに手を伸ばそうとしたライナを、ナディは口を押えて制止し、耳元に唇を当てて小声で、
「声を出しちゃだめ、正体を怪しまれるじゃない」
「うゆー」
不満げに手足をばたつかせているのを引きずるようにして、ナディはライナを屋台から引き離す。ガーヴが一睨みすると、ライナはしゅんとなってナディと歩調を合わせ、
先へと歩を進めていた。
メインストリートの人の流れにしばらく身を委ねた後、流れを抜けて狭い路地へと折れる。先頭に立ってしばらく歩いていたガーヴは、奥まった場所の古びた建物の前で立ち止まると扉をノックしていた。
すぐに扉が開き、年嵩の男が三人を出迎えていた。男が頷くと、ガーヴはナディたちに目配せして中に入るように促す。
中に入り、背後の扉が閉じられると、ナディとライナは顔を隠していたフードを剥ぎ取って大きく息をついていた。
「彼は俺の協力者だ」
ナディとライナのもの問いたげな視線にガーヴが答える。
「あなたも魔界の人なんですか?」
ナディの不躾な問いかけに、協力者だと紹介された男は、
「《魔界》というのはあまりよい言い方ではありませんね。《魔》とは邪悪なもの、人心を惑わすという意味があるのですよ。わたしたちの世界はそういう性質のものではありません」
「失言、でしたね。ごめんなさい」
しおらしくナディは自分の言葉の非礼さを詫びる。
「お気になさらず。ガーヴ殿と同じ世界の者かという問いであるのなら、そのとおりだと申し上げておきましょう。それより、あなた方二人のことはガーヴ殿から聞いていますよ。ガーヴ殿と対等のパートナー契約を結び、そのうえ、聖魔の刻印まで授かったのですね。刻印は優秀な魔導士としての証左、ガーヴ殿とあなた方の力になれるのでしたら協力は惜しみません、どうぞよろしく」
差し出された手を、ナディとライナが交互に握りしめる。
「いずれまたお会いすることになるでしょう。今日はこれで失礼させていただきます」
男が退室し、部屋にはナディ、ライナとガーヴが残される。
「ここで寝泊まりするんですか」
調度類の一切置かれていない殺風景な空間を見渡して、ライナが不安そうな言葉を漏らす。ナディもまた、眉間にしわを寄せた不満げな表情をガーヴに向けていた。
ガーヴは生真面目な表情で、
「安心しろ、寝泊まりするのは王宮の中だ。賄いもあるぞ」
「そんな簡単に王宮に入れるんですか」
疑うようなライナの問いには、
「王宮の雑役婦として働くんだ。先刻の協力者が手筈を整えてくれた」
「そんなの無茶よ。あたしたちキルギア人なんだから。外見は誤魔化しようがないじゃない。キルギア人がこの地に、ましてや王宮の中にいるなんて知れたら大変なことよ」
ナディの言には、
「外見を変えるのはたやすいことじゃないか」
「変身魔法でザグレス人の姿になれなんて言わないわよね。変身魔法を維持するのには膨大なエネルギーを消費するんだから。そんなことしたら体がもたないよ」
「魔法など使わなくても外見など簡単に変えられるじゃないか」
ガーヴが取り出した球状の包みにナディとライナは嫌な予感を覚えていた。包みの表面には褐色の粉末が付着している。
「こいつを使えば肌と髪の色を変えられる。素肌にも髪にも害はないから安心しろ。あとは少しのメイクでザグレス人の姿になれるだろう」
「やだっ、そんなの!」
「女性の肌をなんだと思ってるのよ!」
「文句を言っている場合じゃないだろう。何のために危険を冒してザグレスに渡ってきたんだ」
「分かってるわよ、そんなこと!」
「それとこれとは別問題なんです!」
ムクれる二人を意にも介さずガーヴは、
「翌朝には王宮に入ってもらうぞ、それまでに準備をしておけ」
有無を言わさぬ口調に観念して、
「わかりました」
「はいはいはい、ガーヴ様の仰せの通りに」
渋々と応じるライナとナディだった。
乱暴な手つきでガーヴから包みを受け取るとナディは、
「ティアをさらっていった男も王宮の中にいるんでしょ。奴と遭遇したらどうすればいいの。奴と直接対決なんて危険すぎるわよ」
「奴と直接対決するのは俺だ。おまえたちはティアの居所を突き止めればいい」
「それから、どうするのよ」
ナディの発した問いの真意にいち早く気づいたのはライナだった。
「ティアさんは、この一件とどういう関係があるんですか」
それは、ナディとライナが無意識のうちに封じ込めていた疑問、いや、答を知りたくないと封じ込めていた思いだった。
「彼女と直接向き合えば自ずと分かるはずだ」
言い切るガーヴに、ライナは真っ直ぐな瞳を向ける。
「分かり、ました」
ナディもまた、決然と、
「ここは、あんたを信じるしかないようね」
そう告げるとライナに向かい、
「きっと悪いことにはならない。やろう、ライナ」
「はい!」
ライナの澄んだ声が響くように流れる。
続く