~ワタシタチ憑キ合ッテマス~ 前編
明人
「高校を卒業して大学に合格し、そしてついに念願の一人暮らしがはじまる………!」
「わくわくする………!」
明人が住むのはちょっとボロボロのアパート。
しかし、家賃は安く、立地も悪くない。
部屋のカギを開けて、思いきってドアを開ける!
バン!!
そこには暗い部屋に一人女性が立っていた………。
その女性はセーラー服を来ており、顔は暗くてわからない。
明人
「ヒッ!?」
明人は戦慄した………。
これから一人暮らしする部屋にいきなり幽霊らしき女性が立っていたのだ………無理もない。
明人
(こいつはヤバい………!?)
明人は開けたドアをそっと閉じようとした………。
ガッ!!
しかし、閉める寸前で女性の手で抑えられる!
そしてドアの隙間から女性の恐ろしい顔が現れた!
明人
「うわあああああ!?」
目と目が合う………。
蛇に睨まれた蛙のように明人はその場で固まってしまった………。
女性
「おネガイ………」
「ニゲナイデ………!」
明人
「ひいいいいい!?」
明人がドアから手を離そうとした瞬間、幽霊は彼の腕を掴む!
ここから逃がしはしまいと力強く掴まれる………!
女性
「オネガイ!!ゴハンつくるから!!」
明人
「へっ!?」
女性の思いもしない発言に少し気を抜いた明人は、力が緩んだ。
幽霊はその瞬間を逃がしはせず、明人を家のなかに無理やり連れ込む!
明人
「うわあああああ!!」
明人は家の中に吸い込まれた………!
女性
「オネガイ………ワタシとイッショニいてクダサイ」
明人は女性が恐ろしすぎて何も話せない。
今にも失神しそうだ………。
女性
「ゴハンつくるから………」
明人
「………」
女性
「ヘヤのソウジもするから………」
明人
「………」
女性
「カジぜんぱんやるから!!」
女性の顔がさらに恐ろしくなり、明人はうんうんうなづいた………!
女性
「………アリガトウ」
明人
「………」
女性
「そろそろ12時お昼だね………
じゃあサッソク………ゴハンつくるね」
明人
「え?」
女性はキッチンに立ち、食材をどこからか取りだし、料理をし始めた………。
そしてできた料理を明人は食べることになった………。
女性
「ドウゾ」
オオオオオ………
明人の前に出された料理は、オムライスだ。
明人
「………」
明人はスプーンを握り、オムライスを見つめる………。
明人
(見た目は普通のオムライス………)
(でもこれ………食ったら死ぬだろうな)
明人はチラッと女性の方へ目をやる………。
女性は血だらけの恐ろしい顔でにっこり微笑む………。
明人
(怖ええ………)
明人はごくりと唾を飲む………。
明人
(これ食わなかったら食わなかったで殺される奴だ)
(ああ………俺はもう詰んでる………どちらにしろ死ぬしかない)
女性
「ドウシタノ?タベナイノ?」
明人
(ヒッ!?)
女性
「もしかしてオムライス………キライ?」
明人
「キライジャナイデス」
明人は観念してオムライスにスプーンを差し込み、ぷるぷる震えた手で玉子とチキンライスを掬い上げ、口に運ぶ………。
明人
(南無三)
パク………
明人
「うっ!?」
明人はオムライスを口に入れた瞬間、固まった………!
女性
「ドウシタノ!?」
明人
「う………」
女性
「クチニ………アワナカッタ?」
明人
「美味い………」
(なんだこのオムライス………口に入れた瞬間フワッと卵が広がって………それからトローりと半ば半熟の感じが旨味を引き出している!?それからその後にハフハフのチキンライスが現れて、そのライスがハフハフのアツアツの出来立てで、そこに半熟の卵が合わさって口の中で最高のコラボが実現している!?)
明人はスプーンが進みに進み、オムライスをどんどん食べていく………!
ガツガツ!!
あっという間に全てを平らげた………!
美味しそうに食べる明人を見て女性は、
怪しく恐ろしく殺伐とした顔で微笑んでいた………。
女性
「ジコショウカイがオクレタネ………ワタシのナマエはマキ」
「ヨロシクね」
それから一週間………。
女性は明人に朝昼夕の食事を作っては、洗濯から風呂掃除、部屋の掃除等、あらゆる家事をこなした。
一週間一緒にいたものの、特に女性には害が無く、むしろ一人暮らしを始めたばかりの明人にとっては大助かりであった。
明人
「ところでさ」
マキ
「うん?」
明人
「何で俺にここまでしてくれるの?」
明人は単刀直入にマキに尋ねてみた………。
マキ
「………実は」
明人
「うん」
マキ
「驚かないでほしいんだけど………」
明人
「………ゴクリ」
マキ
「私………幽霊なの!!」
明人
「うん知ってる」
マキ
「え………?」
明人
「え?」
二人
「………」
明人
「えっと………そこじゃなくてさ………」
「何で幽霊がご飯作って、家事をやってくれるのって聞いてるんだけど………」
マキ
「うん………それはね」
「あなたに………取り憑きたいの」
明人
「そ………そうだよな………幽霊がこんなに家事をやってくれるのは………ただじゃないもんな………やっぱり、俺を呪うために………」
マキ
「違うの!!」
「あなたを呪いたいのじゃなくて………私はここから出たいの!!」
明人
「………ここから出たい?」
マキ
「実は私は………」
女性は自分の過去について話始めた………。
マキ
「実は私はこないだの地震で死んだの」
明人
「こないだの………大地震のことか」
マキ
「私は確かあの日、学校へ向かっていたんだ」
「そしたら、いきなり地震にがあって………
立つことも困難で、結構大きな地震だった」
明人
「ああ………あの地震、震度6強だったもんな。俺もあの時は死ぬかと思った………」
マキ
「やっぱりあれ大きな地震だったんだ」
明人
「そうだな。死者も大勢でた」
マキ
「そっか………」
「えっと………それでね。地震がおさまった後、その時は何とか無事だったの。足を少し擦りむいただけで助かった。」
「それで周りを見渡したらね………周りの家が地震でほとんど崩れていたの。窓ガラスがあちらこちらに散らばってて、それから何人か人が倒れてて、中には崩れた家や信号機の下敷きになっていたの………」
明人
「………」
マキ
「それでね。私の目の前にあった店は、何とか形を保っていてね。でも今にでも看板か落ちそうになっていたんだ。それでね。私のすぐ側に小学生くらいの男の子が歩いていたの」
「そしたら次の瞬間、看板を支えていた棒が折れて、看板が落下した。私は咄嗟の判断で看板に当たらないように男の子を押し出したの………」
「それから………その後の記憶が無い。私は気がつけば家にいたの………」
「最初は何でここにいるのかわからなくて………ただ洗面台で鏡を見たら、自分の顔が血だらけでビックリした」
「こんなに血だらけなのに痛くも苦しくも無くて………やっとその時、私死んだんだって気づいたの」
明人
「………」
マキ
「それから私はここにずっといた………。ずっといたと言うより、ここから出ようとしても出ることができなかった」
「玄関から出ようとしても壁みたいのがあって、外には出られなかった………」
「私は外に出たかった………お父さんやお母さん、それから友達はどうなったんだろうって思ってここから外に出て確かめたかった………」
「だから何度も何度も探した………外に出れる方法を。でも………どうやっても出れなかった。」
「それである日、この部屋に新しい入居者が来たの」
「その入居者が外に出るとき、一緒に出ようとした」
「そしたらやっぱり壁みたいのが目の前にあって外に出れなかった………」
「もう諦めようとしていた時、入居者が忘れ物があったのか、すぐ部屋に戻ってきたの」
「もう一回試そうとして入居者の後ろにとりついた」
「そしたら私の体がその入居者の背中に張り付いて………そしてそのまま一緒に外にでることができたの………!」
「ただ、私は張り付いたままで、頑張ってもそこから動けなかった………」
「私はそのまま入居者の背中にくっついたままだった」
「そして入居者が買い物を済ませて部屋に戻って………そしたら背中から離れることができて自由に動けるようになったの………」
「この時私はわかったの………どうやら私は誰かに取りつかないとここから出れないんだって………」
「それから私は何度も入居者が外に出る度にとりついた」
「何度も試しても外に出たら自由に体を動かせなかったの」
「そしたらある日、ついに入居者が私の存在に気づいたの」
「いつもは見えないのに、どうやら何かおかしいって思ったんだろうね………。私と目があった瞬間、硬直してすぐ家から出ていってしまった………」
「次の日には住職さんが来てお経を唱えてて、その週には身支度して引っ越してしまった」
「私はそれからまたこの部屋に閉じ込められてしまった………」
明人
「………」
マキ
「お願い………私を外に出させて下さい!」
「父さん母さん皆が無事か確かめたいの………私がかばったあの子が無事だったのか知りたいの!」
明人
「………」
マキ
「皆の安否を知りたいだけなの………」
明人
「わかった」
「お前の家に行ってみよう………!」
マキ
「………!」
「本当に!?」
明人
「ああ………色々生活面で助けられたしな」
「もう害が無いとわかったし………」
マキ
「ありがとう!!」
マキは明人にとりつく………。
明人はドアを開け、外へと足を踏み入れた………!
明人
「どうだ?」
マキ
「うん………大丈夫そう」
明人
「お前の家ってどっちだ?」
マキ
「ここからまっすぐ20分ぐらい」
明人
「マジ?」
明人は女性の実家へと向かうことにした。