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チャンスが?




 入学式から2週間経った。

 理衣亜との通学は、入学式以来1度もない。理衣亜が迎えに来る前に、学校に来ているからだ。



 おかげで、登校するのは毎日1番。勘違いをされるのが嫌だから、1人で来ている。俺なんかで勘違いするかは別として。



 俺はまだ、彼女が作れないのは分かっているから、最初に友達を作ろうとしている。

 ラノベではなんだかんだと、モブ的な男友達がいるか、主人公気質なヒーロー的な男友達が直ぐ登場したりして、まあ登場しないのもあるが……取り敢えず、そこからハーレムみたいになって、告白されたりしている。



 しかし、考えたらわかると思うが俺にそんな人は居ない、なら作るしかない。そう考え、俺は色んなクラスメイトに、必死に声をかけたりしてみた。

 そりゃあもう必死にだ、自分でもこんな気軽に声をかけられるのかと、驚くぐらいに声をかけたが、全く友達ができる気がしない。



 まあそれは、妄想だから当たり前なんだけど。

 俺は家族と理衣亜としか、ほぼ話してなかった中学校時代。

 何て声を掛けていいのか、全く分から無くなってしまった。



 ラノベの様に、誰か声を掛けてくれないかなと、期待をして待っても見たが案の定、話しかけて来るのは理衣亜だけ。

 他には声をかけられる事もなく、あっという間に2週間がたってしまって、色んなグループが出来上がり尚更声をかけ辛くなった。



 授業中に休み時間にもと、色々考えても見たりしたが、結局このままでは一緒だなと、考えて俺は昼休みになった今、話しかけることを決めた。



 授業も終わり昼休み、俺は席を立ち妄想の様に場の空気が凍りませんようにと、祈りながらそこへ向かう事にする。



「なあ、俺も一緒にご飯を食べてもいいか?」



 教室の隅っこに居る背が高いメガネをかけた男子と、横に広く背の低い男子に声をかけた。

 俺みたいなボッチで隅っこにいた奴は、似たように隅っこにいる奴にしか、声をかけられる自信がないから。



 大丈夫だよな、俺と同じく隅っこ同盟に断られたら、軽くどころじゃなく、純粋にショックで寝込みそうだ。



「え、えっと……」


「私は別にいいですぞ?」


「ほ、ほんとか!?」



 背の高い喋り方が独特な人は了承してくれた。

 嬉しくて思わず声が、少し大きくなったのは、しょうがない。場の空気が妄想と違って凍らずに、いいと言われたら思わずこうなる。



「本当かと言われても本当ですぞとしか言えないですぞ?」


「あ、うん僕もご飯を一緒には、いいんだけど名前が分からなくて……ごめん」


「気にしなくていいぞ。俺も分からないしゴメンな? 俺は、増田健人って言うんだ」



 焦った……名前が分からないからダメだと、言われてるのかと思った。

 まあそうだよな、話してもないんだから、顔と名前が一致するわけが無かった。



「うん、ごめんね増田くん。僕は山崎智也(やまさきともや)よろしくね」


「私は黒木義孝(くろきよしたか)よろしくですぞ」


「ああ、山崎に黒木よろしく!」



 俺達3人は自己紹介を軽くしてから、弁当箱を開いて、弁当を食べ始める事になった。

 俺は、内心喜んでいた。妄想と違いこうも上手くいくとは思わなかったし、友達になる第1歩行けたんだから。



「増田君は普段何してるの?」


「え、あ、普段はラノベ漁りとか前まではアニメとか漫画読んでたかな」



 受け答えは大丈夫だよな。普段何してるか気になるとか、ストーカーかとか考えすぎだよな。



「ラノベかあ、なら増田君もやっぱりチー……」


「健人! 私達も一緒に、ご飯食べてもいいかな? 色んな人と仲良くなりたいし!」



 山崎が喋ってる途中で、声をかけて来たのは理衣亜だった。

 今まで俺が1人で食べてる時には、来なかったのに何で今更来るんだ。

 決して寂しいとかじゃない、1人は慣れたものだ。



「無理だ、いつもの友達と食べてたらいいだろ?」


「え? 勿論一緒にだよ? 6人で! 色んな人と仲良くなりたいし、皆で食べた方が美味しいよ?」



 いやいや理衣亜の後ろで、その友達の顔が引き攣ってるんだが……それが分かってるからこそ、言ってるんだ。

 理衣亜が良くても、後ろが嫌そうにしてるんだから察してほしい。



「山崎君と黒木君だよね? いいかな?」


「あ、え、えっと、そ、そそうだ僕お茶を、買いに行こうと思ってたんだった! ま、増田君達、先に食べてていいよ!」


「わ、私も行くですぞ! わわ、私も、おおお、お茶が無いの忘れてたですぞ! では増田殿先にどうぞですぞ」


「あ、ああ」



 2人は慌てた様子で、それだけを言い残して教室から出て行った。俺と理衣亜は呆然と見送り、理衣亜の友達は相変わらず、引き攣った顔をしている。



「あれ? 机の上に置いてある飲み物は、全部健人のなの? こんなに飲んでお腹大丈夫なの?」


「はあ……」



 ご飯の時にほぼ1.5リットルも飲めるわけないだろ、と突っ込みそうになったが、思わず溜息が先に出た。

 可愛い女子が3人いきなり現れて、ご飯一緒に食べようとか言われたら、隅っこ同盟は混乱してこうなるのは当たり前だ。俺も理衣亜と幼なじみじゃなかったら、ああなる自信がある。



 後ろ2人は、俺達隅っこ同盟と食べたくなさそうな空気があるし、相変わらず黙ったまま顔は引き攣ってるし、一緒に食べたとしても気まずすぎる。



 結局昼食は、4人で食べようとする理衣亜を、何とか説得し俺1人で食べ、渋々納得した理衣亜は、別の場所で3人仲良く食べることになった。



 山崎と黒木の2人が戻ってきたのは、昼休みが終わる10分前で掻き込むように、ご飯を食べていた。



 結局連絡先も聞けなかったし、俺の友達作りの第1歩が失敗に終わり、こんな前途多難なスタートにも関わらず俺は決意する。

 次は聞いて見せる連絡先をと。



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