お願い?
亀を見た後また、手を引かれ次の所にやって来ていた。
理衣亜が、はしゃぎすぎていて、ついていけないのが今の悩み。
もう少し落ち着いて欲しいのが正直な気持ち。
手を引かれながら周りを見ていが、理衣亜と同じぐらいはしゃいでる人を殆ど見かけない。
殆どと言うことは、はしゃいでる人がいることにはいるが、休みの日にということもあり、家族で来ている子供達の事だ。
子供達は親に怒られたりもしていたが、理衣亜は誰に怒られるんだろうか。
そんな馬鹿なことを考えながら、手を引かれ次に来た場所はラッコがいる所に着いた。
「健人! ラッコさん! ラッコさんだよ! 可愛いね、本当にぷかぷか浮いてるね!」
「そうだなラッコさんだな、ぷかぷか浮いていたい気分だったんじゃないか?」
ラッコを見ながらはしゃぐ理衣亜。
何でラッコだけ、ラッコさんとつけるんだと考えたのは内緒だ。
ラッコの方がペンギンや亀より偉いのか……理衣亜の中では偉いんだろうな、よく分からない。
「ラッコさんもあれだね、健人に似てるね!」
「……今度はどこかだよ!」
「ラッコさん、水の上でまったりゴロゴロしてるでしょ? 健人はよくベッドの上でまったりゴロゴロしてたし、ほら似てるよ!」
ラッコを見ていると、理衣亜がまた変な事を言い出した。
もう何も言うまい……あれか、理衣亜は俺をこうやって弄って仕返ししてるんだな、そう思ってなきゃやってられない。
さっきから似てる似てると言われているのが、怠けてるやつしかいないのは気の所為だと思いたい。
俺はナマケモノじゃない、休みの日を有意義に布団の上で過ごしているだけだ。
「あれだね、ラッコさんもお腹の上に何かのせていたら、本当に健人そっくりなのにね! 健人は漫画をよくのせていたよね!」
「はいはい、次行くぞ、次」
「ま、待って! ら、ラッコさんの写真撮ってないよ!」
次こそ俺に似てるとか言わせない、そう考えながら次行く場所を、理衣亜がラッコの写真を撮っている間に考える。
アシカかオットセイはいないのか、いや、いるのか。
ここに連れて行って……理衣亜に似てるなパチパチしてる所……却下だな。
理衣亜がラッコの写真を撮った後、気を取り直して、次にやって来たのはクラゲコーナー。
「健人! 光ってる、光ってるよクラゲさん!」
「……そうだな光ってるな、ピカピカだな」
クラゲがフワッフワッといった感じで、光りながら漂っていると言うのか泳いでると言うのか、何とも言えないところだ。
態々クラゲを光らせる必要があるのかと、そんな事を考えながら見ていた。
「健人! クラゲさんが健人に似てるよ!」
「今度はどこがだ、俺は光ってないぞ!」
「俺のどこが光ってるんだよ、流石に似てるところなんかないだろ!」
「そんな事ないよ! フラーってしてる所とか!」
理衣亜の言葉を、もう聞き流すことにした。
クラゲに似て、フラーってしてるってなんなんだ、フラフラしてる生き物がどれだけいると思っていると思っているんだ。
理衣亜の手を引き俺は、次の所に早く行こうと足を動かした。
「アナゴさんだね、ユラユラしてるね」
「俺はユラユラしてないからな」
「わ、わかってるよ! で、でもアナゴさんも健人に似てるね!」
「どこかだよ! 今度は流石に似てない!」
「え? 穴の家に入って出てこないところとか? 健人も家から中学生の頃は中々出てこなかったよね、そこが似てるよ!」
無駄に光らせてるクラゲを見た後、アナゴを見ていた。
理衣亜の言葉に、言葉をもう出すことが出来なかった。
今回ばかりは、く、悔しいかな……こ、今度は否定が出来ないな、家の中最高だろ、と、友達が居ないから家にいた訳じゃない。
家が好きだから家にいるだけなんだ、友達とか遊びに行くことが無いんじゃなくて、家にいたかっただけなんだ。
なのに、お、おかしいな、涙が出てきそうになっているのは気のせい、気の所為なんだ。
「す、凄いね、お魚さんがいっぱいいるよ!」
「……そうだな、魚まみれだな」
「ヘンテコなお魚さんもいるね」
「俺には似てないな」
アナゴを見たあとは、無駄に大きい水槽の中にいる魚たちを見に来ている。
ここは流石に何も言われないよな、ここでも言われたらもう、俺の前世は海の生物で確定になってまいそうだ。
そんな事を考えたり、ボーッとしながら理衣亜を眺め、理衣亜が写真を撮り終わるのを待っていた。
ボーッと色々と考え事をし、理衣亜を眺めながら待っていると、写真を撮り終わった理衣亜が俺の方に駆け寄ってくる。
「健人! 大変だよ、忘れてた!」
駆け寄って来て理衣亜が言ってくる。
肝心の言葉が抜けていて、何を忘れたのか分からない。
何を忘れたのか分からないから、理衣亜の方を見てみることにした。
スマホは左手で持っている、何が入っているか分からないカバンも持っている。見た感じは、忘れ物がなさそうだ。
「何忘れたんだ? 見た感じは何も忘れてそうには見えないぞ」
理衣亜を見ても結局分からず、聞くことにした。
俺を何かに似ていると、言い忘れたのかとも考えたが、流石にそれはもうないと思いたい。
「健人と私の……しゃ、写真を忘れてるんだよ、だ、だからね健人、お、思い出にね一緒に写真を撮ろ……?」
写真を一緒に撮ってくれるか、不安そうな表情を浮かべながら理衣亜が言ってくる。
正直な気持ち写真に写りたくない。
有名な色々な人達が言うように、思い出は心の中でいいと思っている。
何が悲しくて、自分が写らないといけないのかも分からない。景色さえ写しとけば、思い出として残せるし思い出せる筈だ。
なのになんで、態々写らないといけないんだ、それを見た時の気持ちが変な感じになるし、悲しくなってくるだろ。
自分の顔を見ながら楽しめる、愉快な性格をしている訳でもないし、なんと言えばいいか……この気持ち、取り敢えず写真は嫌いだ。
「……な、なあ嫌だって言ったら?」
「え……? い、嫌なの? じゃ、じゃあ、それならお願い使うよ。お願いならいいんだよね、け、健人の出来ることなら何でもだし! お願いでいっぱい一緒に写真撮ろ!」
必死な表情を浮かべながら、理衣亜が捲し立てる様に言ってくるが、ここでお願いはずるい。
逃げ道が浮かばない……出来ることなら何でもとか言うべきじゃなかったんだな、もう少し軽いお願いが良かった。
「お、お願い使うんだな、それなら撮るか……」
「う、うん! じゃあ健人、あっちの方に行こ!」
理衣亜に返事をした俺は、言われるがままに一緒に水槽の方に行き、少し離れようとした所で、手を掴まれ止められた。
突然なんなのか分からず、聞いてみることにした。
「どうしたんだ? 離れないとあの同じところにいる魚が写らないぞ?」
「さ、お魚さんはいっぱいいるから大丈夫だよ! そ、それより前髪はそのままなの!? 折角写真撮るんだから顔を出してよ! だ、ダメなら前髪もお願い使う!」
理衣亜のお願いの使い方に、俺は言葉が出なくなった。
前髪を分けなくても、俺だと分かるからいいだろとか、色々と言いたいことはあるが、な、何も言えない。誰だよ、出来ることはするとか言った人は、酷すぎるだろ。
「こ、これでいいか……?」
「大丈夫! じゃあ撮るからもっと私に寄って」
髪を分けて理衣亜に確認すると、大丈夫だと言われ、その後もっと近くにと言われる。肩が触れそうな距離なのにどうしろって言うんだ。
「もっとってもう殆どギリギリだし、撮れるだろ」
「そ、そこにいる、お、お魚さんが入らないからだよ! 健人は後少し腰を落として」
理衣亜の言葉に俺が少し腰を落とすと、理衣亜が肩を触れ合わせ顔まで寄せてきた。
ち、近すぎるだろ、横向けばすぐに理衣亜の顔があり、俺はもう恥ずかしさや緊張で目がどこを見てるのかと言った感じだ。
魚がここまで寄らないと入らないとか、もう角度が悪すぎるだけだろうと思い聞いてみる。
「り、理衣亜、も、もうちょっと離れないか? か、角度を変えたら魚も入るだろ?」
「だ、ダメだよ! も、もう撮るから健人は動かないで!」
理衣亜が更に顔を寄せ、頬と頬がくっつきそうな程の距離で、スマホを正面に持ってきて、少ししてから撮影をした。
「健人、し、し失敗したからもう1回撮っていい……? お魚さんが入ってなかった!」
理衣亜の言葉に俺は、恥ずかしさでどこかにいっていた目線を、理衣亜の持っているスマホに何とか目を向け、スマホの画面を見せてもらうと、そこには本当に魚を撮る気があったのか疑いたくなる写真だった。
スマホの画面には縦に撮られた写真に、顔を少し赤くしながら、照れたような笑みを見せる理衣亜と、こっちも少し顔を赤くしながら、やはり目線が変なところにいってる俺の、2人だけが写っている写真が撮られていた。
魚が入らないから寄ったんじゃ無かったのかよ、何でスマホを縦で写真を撮っているんだ、と色々言いたいことがあるが、これはおかしい、おかしすぎるだろ。




