お願いと約束?
恥ずかしい思いをしながらも、理衣亜にクレープを食べさせられ、赤くなってる筈の顔を隠して、心を落ち着かせる様に深呼吸をしている。
食べさせられたのは、きっとあれだ、土曜日の仕返しだ、きっとそうに違いない。
仕返しと思っていなきゃ寧ろまた、勘違いをしそうになりそうだ。
落ち着け俺、これは仕返しだ、俺に恥ずかしい思いを、理衣亜がさせたかっただけなんだ。酷いことを言った俺が悪いから、これは受けなきゃいけない罰なんだ。
「け、健人、ど、どう? お、美味しい?」
「あ、あぁ、お、美味し、美味しいぞ」
「だ、だよね美味しいよね、け、健人も……そ、そのね、わ、私にも……た、食べさせてくれないかな……?」
「…………え、いや、は、恥ずかしいから、む、無理だな……」
必死にドキドキとなる心臓を落ち着かせる為に深呼吸をして、落ち着き平静を装って、何とか言葉を返した所にまた理衣亜がとんでもないことを言い出した。
罰はさっき受けたはずだ、理衣亜はいったい何を言っているんだ。
食べさせられるだけでも恥ずかしいのに、食べさせるとかどう考えても無理に決まっている。
恥ずかしい思いを我慢して、必死に1口を食べたのに、まだ恥ずかしい思いをさせるとか、どんな嫌がらせだよ。罰はさっきのだけで許して欲しい。
「え? け、健人は、私にだけ恥ずかしい思いをさせるの? そ、それはダメだよ、ず、ずるいよ、だ、だからね……?」
理衣亜が何を言っているのか分からず、俺は言葉が出てこなかった。
理衣亜がしてきた事なのになんでずるいとか言われなきゃいけないんだよ。
「あ、あれだ、さっき理衣亜も言ってただろ? 落とすと大変って、だ、だから恥ずかしいとかじゃなくてな?」
「し、慎重に渡せば大丈夫かなって思ったんだよ、そ、そうだよ、慎重に渡せば大丈夫だよ、だから、け、健人も」
「…………え、えっと、俺も食べさせられるの恥ずかしかったし、も、もういいだろ」
「わ、私も食べさせられる、恥ずかしさを受けるから、こ、これでいいよねお互いにどっちもだよ!」
理衣亜が折れないのは相変わらずだな、もう諦めて大人しく、言うことを聞く方が賢い気がしてきた。
これも一瞬だ、一瞬で終わらせればいいだけだし大丈夫、周りはかぼちゃ、かぼちゃがいっぱい置いてあるだけなんだ。
「……はぁ、わ、分かった、じゃあクレープ渡してもらってもいいか?」
「ほ、本当!? は、はい……じ、じゃあ、えっと、お、お願い」
お願いと言われ、渡されたクレープを俺は理衣亜の口元に持っていき、食べるのを待った。
こ、これもこれで恥ずかしすぎるだろ。人がいる所でやるような事じゃないな。
ラノベや漫画では、中庭やデートやでよく見るがよく出来るな……あ、どっちも殆ど付き合ってる設定だな……あ、あれ……だ、ダメだ俺、考えるな何も考えるな。
「は、恥ずかしいね……」
「そ、そうだな……も、もういいだろ」
「う、うん、後は健人が食べていいよ」
理衣亜も小さく口を開けクレープを食べ、やはり恥ずかしかったのか、顔を赤くしている。
恥ずかしいならさせるなよと思わなくもない。
その後、俺はクレープを食べきった。
「クレープ美味しかった? 健人が甘いものを食べるの久しぶりにみたよ、甘いのは苦手とか言ってるのに」
「普通に美味しいクレープだな。甘い物は苦手なままだぞ? 理衣亜も知ってるだろ? あったら食べるし、保存出来ないのも食べるって」
「そうなの? 中学生の頃は全然食べようとしなかったよね?」
「冷蔵庫で冷やして置けるからだろ? 俺の家で一緒に勉強した時は、ポテトが多かっただろ? 理衣亜の家でした時は、甘いのが多かったな」
理衣亜の家で、勉強を一緒にする時は本当に大変だった、チョコにチョコにクッキーの時々ケーキ、そしてプリンが最後に出てきていた。
クッキーの時が本当に口の中が甘く甘く重かった。開封したら湿気るから食べるしかないしな。
その後にでてくるプリンは、どこのボスだよとどれだけ言いたかったことか。
理衣亜の家で勉強した後は、本当に甘いものが一時は、食べたくなくなるほどだった。
「勉強する時は頭を使うから、甘いのを食べても太らないからいいんだよ、寧ろその時じゃないと思いっきり食べられないんだよ!」
「な、何を言ってるんだ? 別に理衣亜は太ってる訳でもないし、いつ食べても大丈夫だろ?」
「け、健人は分かってない、分かっていなさすぎるよ! その油断がダメなんだよ」
そう言うものなのか、見た目理衣亜は痩せすぎって訳でもなく太っている訳でもなく、別に食べても大丈夫と思って言ってみたが、どうやらダメだったらしい。熱く語られてしまった。
そろそろいい頃合いか、今は、普通に話せている事だし、予定通りに謝る方向に話をしよう。
謝る時にまた機嫌が悪くならないといいけど。
「まあ、今はその話を置いといて、話したいことが2個あるんだけど、そろそろいいか?」
「え? あ、そ、そうだったね……う、うん、いいよ」
俺が聞くと理衣亜は突然顔を俯かせ、30秒ぐらい前の元気は、どこに行ったんだと言った感じで消沈した。
この姿を見ているだけで、許してくれなさそうな気がしてならない。
許してくれなくても、俺が悪いことに変わりは無いから、謝ることしか出来ないけど。もうちょっと普通に話しとくべきだった。
「……そ、それでな、えっと、土曜日の事なんだけど……その、本当にごめん、色々と言いすぎた、本当にごめんなさい」
理衣亜の方を向きながら謝りつつ、勢いよく俺は頭を下げた。このまま頭を、叩いてもいいから許して欲しい。許されなかったらなかったで、どうしようも出来ないし、どうしていいかわからない。
「……え、えっと、う、うん」
「え……許してくれるのか?」
「そ、それでもう1個の話ってなに? そっちを先に話してよ……そ、それから」
1個ずつ許されたかったが、それは許されなかった。さっきのに比べてまだメールの方は許されそうだが……どうなんだ。
「あ、えっと……わ、分かった。えっとな理衣亜が次の日メール送ってきただろ? そ、それを読まずに削除したんだ、本当にごめんなさい」
「け、消したんだ……メール消したんだ……そ、そっか、まぁうん、それはそれでよくないけど、よくないけどよかったよ……」
しっかりとまた頭を下げて謝るが、こ、これはいったいどんな反応なんだ。どう捉えればいいのかわからない。
理衣亜の言葉を聞いてると全くよかった感じが伝わってこない。怒ってると言うより消沈している。
「え、えっと理衣亜?」
「ねぇ健人? 本当の本当にちゃんと消した!? 間違いなく本当に消してる!? す、スマホ見せてもらってもいい!? 寧ろ見せないとダメだよ!」
かと思えば、すごい剣幕で本当に消したか聞かれ、スマホを見せろと言われる。軽く返事をしてから俺はスマホを手渡した。
やましいのがデータに入ってなくてそれはそれでよかった。
何でそんな必死にスマホ見てるんだ、なんかあったのかメールに。それよりも許されるのか許されないのかどっちなんだ。
「う、うん、ありがとう、大丈夫だったよ」
「え、えっと、本当にごめんなさい」
「うん、取り敢えず顔をあげようよ」
理衣亜にまた頭を下げ謝っていた俺は、理衣亜に言われ顔をあげる事にする。
俺が悪いのは分かってるが許すのか許さないのかここまで引っ張らないで欲しいと思っても口には出さないがどうなんだよ。見た感じ怒ってはなさそうだけど。
「え、えっと、それで理衣亜? ゆ、許してくれるのか?」
「え、うん、まだ許さないよ? 2個お願い聞いてくれたらかな?」
「そ、そうだよな、できる範囲で何でもするから言ってくれ」
「わかってるよ、ちゃんとできる事だから約束守ってね? 私も許す約束を守るから」
都合よく許してくれるとは思わなかったけど、お願いを聞くことを条件に俺は理衣亜に、色々と酷いことをした事を許される約束をした。
お願いを聞いて許されるならと、寧ろ聞くのは当然だと思っていたけど、理衣亜のお願いを聞いて後悔した。
「明日から手を繋いで登下校を一緒にしよ、そして次の休みの日にどこか2人で出掛けよう」
満面の笑みで理衣亜がそういった。
その笑顔を見てドキッとしたのは、理衣亜に内緒だ。




