皆の色々?
別れの卒業式が終わり、とうとう出会いの入学式の日を迎えた。
スマホデビューをした俺だが、結局スマホの連絡先に、両親と妹のしか登録出来なかった。
これから友達を作って連絡先が増えると考えたら嬉しすぎて震える。
決して決して、悲しくて震えていた訳じゃない。
「健人、ご飯よ。早く降りてきなさい」
「はーい、準備も終わったら、すぐ降りるよ」
今日は、入学式のみなので特に持ち物は、カバンしか無い。それよりもこの時のために、鼻の頭まで伸ばした前髪を整える。
正直邪魔すぎるこの前髪は、ラノベ主人公達はよく我慢が出来るな。
鼻の頭が痒くてしょうがない、そうならないように、前髪を整えてはいるが……なかなか難しい。なかなか決まらず、どうでも良くなってきた俺は下に降りることにする。
「健人、随分遅かったわね? 悠里はもう行ったわよ?」
「色々あるんだよ、俺にも」
「ふーん、それより本当にその前髪で、学校に行くのね……本当に切らなくていいの?」
「もう前髪のことはもういいだろ! 早くご飯食べよ」
それだけ言って俺は、黙々とご飯を食べることにする。
母さんも悠里も、ここ最近ずっと前髪の事を言ってきて、正直俺はうんざりしている。
悠里なんて口を開けば「外で私を見かけても話しかけないで」と言ってきたり「おにいは不審者になったの? 変質者になったの? 違うね、幼なじみのストーカーだったね! 一緒に交番までデートに行こうか?」とそればっかりだ。
幼なじみのストーカーってなんなんだ、意味が分からなすぎる。確かに理衣亜の事は好きだった、確かに好きだったけど。両親は両親でそれを聞いても笑っているだけ。
そんな訳で前髪の話は、正直な所もうしたくない。
ピーンポーーン
「こんな時間に誰かしら? 理衣亜ちゃん、今日来るとか言ってたかしら?」
「さあ? 出てみれば?」
はいはいとだけ言って母さんは、そのまま玄関の方に向かった。理衣亜はもう来ないよと言いたかったが、理由を聞かれ振られたからとは言いたくない俺は、その間もご飯を食べ続けることにする。
全く朝早くから迷惑だ、せっかくの朝ごはんもゆっくり食べられない。まあ俺は気にせずに食べているが。
ご飯をそのまま気にせずに食べていると、ちょっとしてから母さんが朝早くに来た人と一緒に、リビングに入って来た。
「な、り、理衣亜!? お、お前頭どうしたんだよ!?」
「おはよう健人。 頭は、どうもしてないよ!? 健康そのものだよ!?」
「いや、頭大丈夫かとかそんな意味で言ったわけじゃ……それにその格好も」
「健人、照れてるのかしら? 理衣亜ちゃんちょっと変身し過ぎたけど相変わらず可愛いわね」
照れてるとか照れてないとかじゃないだろ、 理衣亜は本当にいったいどうしたんだ。ある意味頭大丈夫かとは言いたいけど。
母さんが理衣亜と一緒にリビングに入ってきた時、俺は理衣亜のあまりにも変わった姿を見て、驚きで声をあげた。
中学生の時は、ずっと黒髪だったのにいきなり、金髪に近い茶髪に変わって、スカートの丈も、中学校の時はしっかりと膝下だったのが膝上何センチだよと、言いたくなる長さ。
何があったら、こんな格好をする様になるのか、本当に不思議だ。
「健人、そんな事より朝ごはん食べて、早く一緒に学校に行こ?」
「ああ……」
「健人? 女の子は待たせちゃダメよ?」
それから数分後には、朝ごはんを食べ終えて、理衣亜と学校に行くために、駅の方に向かっている。
告白して気まずいなと思いつつ、あの会わなかった休みの間だったのに、会ったら会ったで、やはり何ともなく、会話は普通に出来た。
「な、なあ理衣亜? 何で今日迎えに来たんだ? それにその格好…」
「え? 何でって、一緒に学校行くためだけど? 格好やっぱり変かな? 私の格好を言うなら、健人の前髪もだからね!? どうしたの?」
「一緒に学校って、お前俺を振ったろ? 1人でいけよ。それと、前髪の事は触れないでくれ、色々あるんだよ俺にも」
「前髪の事は、じゃあ聞かないとくね。振ったけど、それはそれ、これはこれだよ? 家はどうせ隣なんだし、別にいいでしょ?」
それはそれってどういうことだ。え、何、俺の告白って、そんな簡単に片付けられる問題だったのか。
あれからだいぶ経ったのに追加ダメージだ。
「良くねーよ、理衣亜と一緒に学校に行って、勘違いをされたらどうするんだ? 俺に彼女出来ないだろ? 勿論理衣亜も彼氏が」
「うーん、私はどうでもいいかなあ」
「はいはい、花より団子ってことだな理衣亜」
そんな会話をしつつ、駅に着きホームに向かい、ホームについても、何故か理衣亜が着いて来る。俺は勘違いをされたくないと言ったばっかりなのに。
「どうした理衣亜?」
「どうもしないよ? 健人こそどうしたの?」
「だからな、俺は勘違いをされたくないんだよ。そ、それに痴漢とか、理衣亜がされたら嫌だから、女性用車両乗れよ」
「え……?」
なんなんだよ、えって、知り合いが痴漢にあうとか嫌だろ。そんな不思議そうな顔をしないでくれ。
「え? じゃなくてだな? 理衣亜は可愛いんだから、とにかく女性用車両に乗ってくれ、お願いだから」
「……う、うん健人がそこまで言うなら……健人も一緒に女性用車両乗る?」
乗れるわけがないだろ。何を言ってるんだ理衣亜は、乗ってみたい気持ちはあるが、考えたら分かるだろ。
高校の最寄り駅に着いて、すぐ理衣亜がやって来て、結局一緒に高校まで並んで行くことになった。