なんのはなし?
相変わらず本当に、マイペースすぎだし、突拍子がなさすぎるだろ。マイペースって言うより、揶揄ってるの方が正しいか。
そんなに俺で遊んで楽しいのか!? 楽しいと、間違いなく言われそうだけど! だけども! 今は理衣亜に、話があるんだから、ほっといて欲しい。
やっと、やっとと言うほどでもないが、理衣亜が口を、聞いてくれたところだったのに。
「なんの話しって、増田が言ったよね、話せよって、今話してるよ? これでいいでしょ?」
「だからはなすが違うだろ!? 手を離すんだよ! わかってるだろ! 絶対に分かっててやってるだろ!?」
「前にも言ったけど、減るもんじゃないしいいでしょ? 学校で手を繋ぐ経験なんて、なかなか出来ないよ? 寧ろ出来ないよね?」
ケラケラと笑いながら、前と似たような事を、言いながら笑う後藤さん。
彼女が出来たら繋げるだろ! と、叫びたくなったが、ここは教室。間違ってもそんな事は言えないし、大きな声では何も言えないから、小声で後藤さんに反論する。
「俺も前に言ったけどな、減るんだよ減ってるんだよ、こうしている間にも、ガリガリと時間と精神と彼女が出来る確率が、どんどん減ってるんだよ、本当に減っていくんだよ、それに、お、俺にも、か、彼女ができるかもしれないだろ」
「え? なに聞こえないよ? もっとハッキリ言ってよ」
聞こえるぐらいの声では言っただろ! 教室にいる人がチラチラ見てる人もいるんだぞ!? 彼女云々を言えるわけないだろ。
遊んでるだろ、絶対に弄んでる! 頼むから許してください。
「だから、後藤さん、おねが……」
「え?なに? 前に気安く呼ばないでっていったよね?」
「だから気安くは呼んではないだろ!?」
「だから冗談だよ、ねぇ増田? まだ朝だよ? 朝から疲れないの? 少し落ち着こ? ね?」
誰のせいだよ。俺を疲れさせるのは、後藤さん以外の何者でもないからな。他に誰もいないからな、落ち着けって言うなら、俺で遊ぶのをやめてからだからな。
俺だって好き好んで、朝も早くから疲れたくはない。本当に何で、こんなことになるんだよ。
「落ち着いてるし、ムキにもなってないだろ!」
「まあ、そんな事より、土曜日のお詫びで、増田のお昼を朝も早くからね、用意して持ってきたよ、お掛けで寝不足だよ? それでね食べてくれる?」
笑顔で後藤さんが、話をコロッと変えて聞いてくる。
そんな事よりじゃないだろう、後藤さんから始めといて、本当に朝からはやめて欲しい。
話が変わったかと思えば、今度は、お詫びの話しか、いいよって言った記憶があるんだがなんでなんだよ。
本当に持って来てるかは、分からないが、正直なんて答えるか迷うな、これは罠だ、絶対に罠だと分かっているから、余計にタチが悪い。今までの会話で、否定が出来る部分がないしな。
ここで食べるよと返事をしたとする。
絶対にその後の、「冗談だよ? あるわけないでしょ? お詫びはいいって増田がいったよね?」と、間違いなく言われるだろうな。
仮に断れるかと、言われてもまた別問題だ。
相手が後藤さんって言うのが問題だ。後藤さんは理衣亜の友達だ、もしここで断ったとしたら、理衣亜に色々と言われた挙句に、理衣亜の機嫌が悪くなって、また理衣亜の返事を貰うまでに、苦労する未来が見える。
「おーい、増田、なんかいってよ」
どっちが正解なのか分からない。どっちも答えたくないのが、正直な気持ち。
せめて理衣亜の友達じゃなければ、まだ普通に断れたのに、何で後藤さんは理衣亜の友達なんだ。
平謝りしたら許してくれるかな、許してくれるといいな……
弁当持ってきてるし、断っても不自然ではないのか……? ちゃんとお詫びはいいって、言ったわけだし断るのは不自然じゃない? 相手がどう思うかは分からないが。
朝も早くからって言ってたから、お昼があったらあったで、申し訳なさすぎる気持ちが、あるのも本音だけど、本当にどう答えたらいいんだよ。
後藤さんに遊ばれる覚悟で言うべきか……これはこれでめんどくさい。
理衣亜に無視されるのを覚悟で断るか……これはこれで辛い。
後藤さんが本当に、何がしたいのか分からない。
なるようにしかならないか、なるようになれだな。
「増田? 無視? 無視は良くないよ?」
「あ、ごめん、えっと、お詫びはいいよって断ったはずなんだけど?」
「そのいいよって、言われたからだよ? 増田は、何を言ってるの?」
考えすぎていて、何も答えられなかった俺に、後藤さんの方から、声をかけてきた。
なるようになれと考えていたが、お昼が本当に持ってきた場合も考えて、先にお詫びは、断った話をする事にしたけど、お詫びは断ったはずなのに、逆の意味でとられてるとか、本当に日本語が難しすぎる。
「そ、そうだな、何を言ってるんだろうな、えっと、お昼は弁当を持ってきてるんだけど俺」
「あ、そ、そうなんだ、聞いとけば、よ、よかったね、ごめんね。でもちょうど良かったかな」
カバンの中に、手を入れながら後藤さんは言う。
おかしいな、あれ? 弁当があるって言ってるのに何がちょうどいいのか分からない。
後藤さんは、お昼を持ってきたんだよな、俺はお昼用意してるよな、何も良くないだろ。
「はい、お詫びのお昼、ちょうど良かったでしょ?」
後藤さんが、そう言いながらカバンの中から、袋を取り出して、手渡そうとしてくる。
俺は、それを思わずと受け取ってしまったけど……
「え、えっとこれは……なんだ?」
「見てわからないの? パンだよ? ちょうど良かったでしょ?」
「い、いやそれは分かるけど……なんだこれ、朝も早くから用意したって」
「だからパンだよこれは、朝も早くから用意して、本当に寝不足だよ? いつもより15分も早く、家を出たんだから」
後藤さん本当に話が通じない!
べ、別に、朝も早くからって言葉を聞いて、て、手作り弁当を期待したとか、そ、そんな訳じゃないけど、なんか違うだろ。本当になんだよ。パンだけどなんなんだよ、本当に何か違う。
「え、あ、えっと、そそうなんだな、弁当が、た、足りなかったら食べるよ、ありがとう」
「うん、増田があの時に、好きって言ってた、具材が入ったやつを、一応買っといたから」
「そ、そうなんだな本当に、ありがとうな、わざわざ」
「いいよいいよ、渡すのも渡したし、りぃの所に増田を返そうか」
返そうかか、なんか本当に物になった気分だな。
俺は「先にパンを、カバンに入れてくる」と言ってから席に戻った。
席に戻る俺の足取りは、家族や理衣亜以外に、お詫びだけど、物を貰えて嬉しいとか、そんな事を考えてはいないが、嬉しくないわけじゃ無いけど軽く感じた。
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「つかさ、おはよう、朝は一緒にいけないって、メールが来てたから、遅刻するかと思ってたけど、早かったんだ?」
「おはよう結衣、ま、まあね、色々とあってね」
「ふーん、その色々って今、この変な教室の空気関係ある?」
「ないよない、それよりね結衣」
「まあいいけど、なに?」
「お弁当ね、作り過ぎちゃったから食べてくれる?」




