またかよ?
落ち着け俺、こんな時こそ平常心が大事だ。健全な男子なら誰もが興味を持ち、とある動画や本を見るのは当たり前の事だ。
だけど親にこれが、バレるとなれば話が別だ、お小遣いは勿論、パソコンまで絶対に消えるのが分かる。
父さんは怒るだろうが、父さんも男だ、少しぐらいは理解……理解して欲しいな。
問題は母さんの方だな、どうなるんだろうな、全く想像が付かない。
悠里にまさかバレるとか思わなすぎる、てかどうやってパソコン見たんだよ本当に切実に! パスワードの意味が無さすぎる。
どうやって誤魔化すか……見られた時点で無理ゲー近い……ど、どうにか時間を……本は隠し場所を変えて、パソコンは履歴を消せば済む、問題は今、本当にどう誤魔化すかにかかっているぞ、頑張れ俺。
――――――――――――――――――――――――――――――――
清々しい朝を迎えた。天気も俺の心と違って快晴だ。
悠里にあれからも、散々と色々言われ、俺は諦めの境地に入った。あれは無理だ、どうしようも出来ないし、人間諦めが肝心なんだなと、改めて理解ができた。
まさか悠里に、訳ありな本を持っていかれるとは、思いもしなかった、誰が持っていかれると思うのか、是非とも聞いてみたい。悠里に必要性無いんだから持ってく必要はないはずなのに。
そんな事もあり何としても、今日俺は、理衣亜に謝り、許して貰わないといけない理由ができた。
許して貰わないといけないから、謝り方を考えながら、学校に登校したが、理衣亜に最初なんて声をかけたらいいんだ。
いきなりごめんなさいは、まず無いから却下、何の話だってなるのが目に見える、だからと言って、おはようと声をかけ無視されるのも、辛すぎるからこれもしたくない。しないといけないのは、分かっているが怖いものは怖いんだ。俺が悪いとは言え、無視されると思うと辛い。
本当になんて声をかけたらいいんだよ、俺が悪いとは言え、何を言っても無視をされそうで、怖すぎるだろ。理衣亜の機嫌が良ければされる可能性は減るか?
俺が声をかけた瞬間に、機嫌が悪くなられても嫌だから、機嫌が悪い方がいいのか……? どっちだ、正解が見えなさすぎる。未だかつて、理衣亜に話しかけるのを、考えたのは告白以来だ。
あの時と全然、状況は違いすぎるけど。
色々と考えている間に、時間が結構過ぎていたみたいで、クラスメイトが何人も、来ている時間になり、理衣亜もさっき教室に来ている。
本当になんて、話しかけていいか分からないが、俺が悪いんだなるようになれと、話しかけに行くことを決めた。
「……え、えっと、なあ理衣亜? お、おはよう」
席を立ち、理衣亜に声をかけたが、理衣亜は無言で俺をチラチラと見てくる。
や、やっぱり怒ってるよな、そりゃそうだよな、どう考えても俺が悪いしな。つ、辛い……なんとか言って欲しい。
「え、えっと理衣亜? お、おはよう。は、話があるんだけどいいか?」
理衣亜は相変わらず無言で、今度は、見向きもされなかった。
軽く泣きたくなってきた、ここまであからさまに無視をしなくても良くないか? どうしろって言うんだよ。
な、何を言えば正解なんだ……? なんか反応が欲しい。
「り、理衣亜? え、えっと話があるんだ、ちょっと時間くれないか?」
「……わ、わ私は、聞きたいこと事とか無いし……そ、それに何も、き、聞きたくない……」
……お、怒ってるよな、絶対に怒ってるな、わ、わかっていた事だけど、理衣亜に冷たい対応されると、辛いものがあるな……
まずは機嫌をとった方がいいのか……? そんな事を考えてる時点でダメな気もするが、あ、相手にされないよりはいいよな。
「……え、えっと、今日な帰りに、一緒にどこかに寄り道しないか……?」
「え、え!? い、行きた……や……」
「りぃと増田おはよう、何の話してるの?」
理衣亜が急に身を乗り出して、返事をしようとしていた所で、後ろから声をかけられた。
な、何でこんな時に来るんだ……日頃か、日頃の行いが悪いのか俺は。
理衣亜もなんて言おうとしてたんだよ、凄い気になる、行きたくないって、言おうとしていたのか、行きたいなのかどっちなんだ。本当になんてタイミングで来るんだ後藤さん。
「お、おはようつかさちゃん、け、健人とは特に何も話してないよ? 健人が話したいことがあるからって、それだけだよ?」
「そうなの増田? なになに? りぃに告白? 告白するの?」
いきなり来たかと思えば、何でそんなに話に軽く入ってこれるんだ……これで本当に告白だったらどうする気だったんだ、違うからよかったけど。た、頼むから今だけ、本当にどこかに行ってくれないか。俺は心からそう祈る。
「違うからな、ちょ、ちょっとあるんだよ、なんでもいいだろ」
「いいでしょ別に、減るもんじゃ無いでしょ?」
減るんだよ、ガリガリと削られていくんだよ俺の精神が! 理衣亜も苦笑いしながら見てるだろ気付けよ、何で気付かないんだ。
「色々と本当にあるんだよ、だからもういいだろ本当に」
「ふーんならいいよ、ねぇ、りぃ増田ちょっと借りていい?」
いいよ、って言っときながら借りるってなんだよ、俺は物か、物なのか!? いいならほっといてくれよ。
「俺は理衣亜に、話があるから無理だ」
「ごめんね増田、今ね、私は増田に聞いてないよ?」
何で俺の意思がフル無視なんだよ、そこは俺に聞くところだろ!? なに俺がおかしいのか、また俺がおかしなこと言っているのか!?
「え……え? あ、えっと、う、うん、私は別にいいよ? 健人とつかさちゃんって……あ、えっと、な、仲が良かったんだ」
「んー、そうでも無いよ? 友達未満知り合い未満だよ? 少し話したぐらいかな?」
「え、あ、そうなんだ、な、なんか急に仲が、よ、良さそうに話すから、お、驚いたよ」
なんなんだ友達未満知り合い未満って初めて聞いたし、もう知り合い未満でいいだろ。友達未満を言う必要がどこにあったんだよ。
理衣亜も何気に失礼だからな、俺が仲がいい人を、作れない見たいな、言い方はないだろ。
「まあ、話すと思ってなかった、私も驚いてるよ。取り敢えず増田を少し借りるね、また後で返すね」
話すと思ってなかったと、言いながら笑う後藤さん。
後藤さんのその後の言葉を聞き、理衣亜も「あ、うん……分かった」とだけ返事をした。
「えっ!?」
「は!?」
理衣亜の返事を聞いた後藤さんが、いきなり俺の手を掴み歩き出した事から、俺と理衣亜から驚きの声が出てしまった。
後藤さんの行動がわからない、ここ学校だぞ、学校だからって問題でもないが、いきなり手を繋いでくるとかおかしいだろ。
「どうしたの? 2人揃って」
「いや離せよ!」
「今、話してるよ? 本当にどうしたの?」
「はなすが違うだろ、手、離せよ!」
「増田ごめんね、私、手話出来ないんだよ」
「何の話だよ!?」
理衣亜は驚きの声を上げ固まり、俺は手を離そうと振りほどこうとするが、また手を離してくれない。何がしたいんだよ本当に。意味が分からなさすぎるだろ!




