脅してますか?
「ち、違うぞ、そんな事は本当に思ってないし、ちゃんと別の理由だから! ほら! 俺と理衣亜喧嘩してるだろ? そ、その時に話しかけるなとか、色々と言ったからだよ! 友達と話したいけど俺がいるから話しかけに行けなくてとか、ほ、ほらどうだ!? だから辛そうな顔をしたんだよ! 話したくても話せないから! な? そう思わないか!?」
「ふーん、話しかけるなとか、色々と言ったせいで、おにいがいたから友達と話せないね、早くお母さん達の所に行って、同じ言い訳したらいいんじゃない? 私はおにいを、そろそろ見損ないそうだよ!」
「なんでだよ!? まともな理由だろ!? 目の前に友達がいたのに、友達と話せないんだぞ!? 辛いだろ、辛すぎるだろ!? それにそんなに疑うなら、理衣亜に直接聞けばいいだろ!」
「いやおにい、そんな熱弁されても困るし……そんなのおにいだけだし、それにリアねえに聞けるわけ無いでしょ? 本当に考えて言ってよ! 知り合いが幼なじみが犯罪者になってるんだよ!? 私がフォローしなきゃリアねえ泣いてたよ!?」
何で自分の友達を見ただけで、泣きそうになるんだよ、意味が分からなさすぎるだろ。
理衣亜は、まさか本当に俺が、誘拐したと思っているのか!? 悠里は悠里で、信じないしどうしたらいいんだよ。
「わかってるのおにい!? そこは私に感謝してよね、フォローしといたんだから! それで? どうするの、まだ言い訳……誤魔化すの? おにい本当に大丈夫だよ、みんながおにいを嫌っても、私はずっと傍にいるし、嫌いにならないからね、だからそろそろ罪を認めよう? もう、おにいの見苦しい姿を、私は見たくないし」
途中で、良いように言ったでたけど、最後のやつが悠里の本音だよな、もう絶対に、面倒くさがってるだろ。面倒臭いなら疑うのをやめて欲しい、そんなに俺は信用ないのかよ。
最近嘘を何個かついたばっかりだった。
「はあ……わかったわかったよ、どうしたら信じるんだ? 理衣亜に聞いてもらうのがダメなら、どうしたらいいんだ?」
「おにい往生際が悪いよね、いい加減認めたらいいのに……」
認められるわけがないだろ、幼女誘拐の冤罪を誰が認められるんだよ。俺じゃなくても、誰もそんな事を認めないからな。
それを、その冤罪を親に言うとか、酷すぎるだろ。
お小遣いを減らすで済めばまだいいが、パソコンまで没収とかされたら、目もあてられない。
「だからどうしたらいいんだよ」
「ふーん、あくまでしらを切るんだね、おにい。ならリアねえとその人の学校でのツーショットの写メか家に連れてきてよ、リアねえと一緒に」
悠里は今なんて言ったんだ……? え、聞き間違いだよな、聞き間違いであって欲しい。
「おにい? なんか言ってよ、どうなの? なに、やっぱり無理なの? 無理なら無理でいいんだよ? で、どっちにするの? ツーショット写真? 家に連れてくる?」
どうやら俺の、聞き間違いはないらしい。
ツーショット写真ならまだ……いや、なんて頼めばいいんだよ、後藤さんが幼女と見間違われてとか誰が言えるんだ。
後藤さんの写真を貰えばいいのか……? い、いやでもなんて言って、貰えばいいのかわからないし無理だ。家に連れてくるのも無理だし……
「おにいどうなの? 無視しないでなんとか言ってよ犯罪者!」
「違うからな! 犯罪者じゃない!」
「どっちにするの? どっちか出来るなら信じるよ、お母さんにもお父さんにも言わないよ」
「ほ、他の方法はないのか?」
「ないけど、何があると思ってるの?」
「そ、そうだな……勿論冗談だぞ!? 分かってる分かってるから!」
「今、冗談言える程余裕なの?」
余裕か余裕じゃないかで言えば、余裕に決まってる。
悠里が、親に何かを言いに行っても、お小遣いが減る覚悟さえあれば、どうとでもなる。悠里も一緒にお小遣いが減るな。紛らわしいことをするなと。
出来ればそれは避けたい、特に本当にお小遣い、円満に終わる方法ないのかよ。
後藤さんに頼めない、親にも言われたくない、理衣亜に、謝らないといけない、黒木と山崎に、土曜日の事を謝らないといけない……土日の間に、何があったんだ、謝ってばっかりだな俺。全部悠里が関わっている気がするが。
「はあ、おにい、早く決めてよ、私はおにいが罪を償うならいいし、冤罪なら冤罪で証明してくれればいいだけだよ? 簡単でしょ?」
簡単でしょじゃないだろ! 簡単じゃないから悩んでるんだ、なんで分からないんだ、どの口が言ってるんだよ。
「はあ分かったよ、写メ貰ってくるし、もうそれでいいだろ?」
「本当に出来るなら全然いいよ! 私はおにいを信じてるからね! 裏切らないでね?」
悠里は、どの口が信じてるからねとか言えるんだ。
信じてるの、しの字もなかっただろ。あれか、やっぱりまだ、幼女を連れ回して遊んでたのを、信じてるって事なのか? 兄としての、この信用の無さが辛すぎる。
「あ、そうそう、おにい、私ね? 嘘つかれたらパソコンとベッドね、ついつい口が滑るかも」
続けて悠里が言うが、言ってる意味がわからず俺は、パソコンとベッドを見るが、何も変わりはない。
口の何が滑るかが、本当にわからない。
結局、悠里の言いたいことがわからず、聞いてみる事にする。
「どう意味なんだ?」
「うん、別にいいんだけどね? パソコンの履歴と、ベッドの布団の下にある、どうやって買ったか知らないけど3冊の本と、それに挟んでるリアねえのね? ついつい口が滑るか、リビングに本を開いて置きっぱなしに、するかも知れないなあって」
俺は耳を疑った。こう言う時に使うってことだな……じゃなくて、は!? 悠里は今、何を言ったんだ!? え、待て、いやいやいやいや、どうして悠里がそれを!? いやそれより……あ、待って理解が追いつかないとか以前に、理解をしたくない!
「だからね、おにい嘘つかないでね?」
笑顔で悠里が言うが、俺は口が開かない。正しくは、開けないが正しいけど、今はそんな事を考える場合じゃないな、現実逃避を軽くしてしまった。
悠里の性格が悪すぎるだろ! ただの脅迫じゃねーか!




