楽しかったけど.......?
今は、そんな事を考える場合じゃないな、早く終わらせたいしな。俺はそう気持ちを込めながら、目の前にいる同級生の女子を、本当に頼む、もう変な事言うなよ、絶対に言うなよ、フリじゃなく本当に言うなよと、祈るように見る。
「は、恥ずかしいです……も、もう許しているので……本当に、だ、大丈夫です……」
アイツの友達の、その言葉を聞き俺は、話がこれでようやく終わると、胸を撫で下ろした。
「じょ、嬢ちゃん!? 正直に言っていいんだぞ、照れて我慢をしなくてもいいんだ! 甘えたい時はたっぷり甘えていいんだ! そうしないと嬢ちゃんの、大好きなお兄ちゃんも、悲しむ事になるんだ」
暴走機関車お兄さんは、一体何を言ってるんだよ、どうやったら止まるんだよ、悲しむ事になる事には否定が出来なさすぎるが、お兄さんの考えていることと、絶対に違うからな。
「か、悲しませないので……だ、大丈夫です……」
「て、天使かこの嬢ちゃん……すげぇお兄ちゃん思いなんだな、お兄ちゃんが大好きなんだな、いいな、じゃ、じゃねーや、な、仲がいい兄妹で羨ましいぜ、そ、そうだ俺は加藤真人って言うんだ、よろしくな、坊主達はなんて言うんだ? それから時間まだあるなら一緒に遊ばないか?」
正直よろしくもしたくもないし、遊びたくもないな、見た目と違っていい人なんだろうが、面倒臭い、面倒くさすぎる。遊んだとしても何かある度に、また色々と言われそうで、本当に面倒くさそうだ。拒否権あるかなあ……あるといいな。
「嬢ちゃんは自己紹介出来るかな?」
お兄さんに言われ、チラッと俺の方を向いているが、俺は、一緒に遊ばない方向で考えるのに、精一杯で気付かなかった。気付いていれば変わったかも知れないし、変わらないかもしれないが、気付くべきだった。
「え、えっと、はい……ま、ま増田つかさ……です……」
「は?」
「そうかそうか嬢ちゃんはつかさちゃんって言うんだな可愛い名前だな! 自己紹介するだけで照れるとか、本当につかさちゃんは照れ屋だな! あっはっは」
アイツの友達の自己紹介を聞いて、俺は変な声を出してしまったが、お兄さん気にした素振りも見せていなかった。
違うから、いやいや本当に違うだろ!? 何で、何で苗字から言うんだよ! 名前だけでよかっただろ、俺が苗字を言えば済んだだろ、え、待って本当に待って、なんだこれ意外と恥ずかしすぎるだろ!
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俺もその後自己紹介をして、結局真人さん達と遊ぶ事になった。
それはいい、それは本当に良かった、生まれて初めてアイツや悠里意外と、遊べたんだ本当に楽しかった。
エアホッケとか言うゲームも少し、いやかなり文句を言いたかったが楽しかった。
板? 円盤? 魚のホッケの形をしたやつを、大きな皿をモチーフにしたやつと、箸をモチーフにしたやつのホッケーで、俺は案の定、箸の方を使わされ1点もとれずに負けたが本当に楽しかった……本当にだ。
なんなんだよ、誰なんだよこんなの考えたやつは、ただの嫌がらせだろ! 誰が箸であんな思いっきり飛んでくるのを打ち返せるんだよ。
箸で打ち返すとか怖すぎるだろ、ありえないだろ。楽しかったから許すけど。
他にもレースゲームや色々として、楽しんだ後の帰り道、何でこんな事になっているんだ。
「増田、さっきからボーッとしてどうしたの? 」
「あ、あぁなんなでもいぞ」
「ふーん、それより今日は本当にごめん、凄い迷惑だったでしょ? 私も最初は色々と言って、大丈夫って言ってたんだけど、全然信じてくれないし、話を聞かないし、そ、それで増田を見かけた時にね、本当にごめん。そ、それでね、わ、私ってそんなに高校生に見えない? そんなに幼く見える……かな?」
そう言われ俺は、つかさを見てみる。
身長はアイツより低い150あるかないかぐらいか? 髪は茶髪の緩いツーテール? 顔は幼いな、服装はうさ耳フードか、これでだいぶ幼く見えるな、だいぶって言うより子供だな。
ショートパンツにニーソにスニーカー、体型はうんそうだな言えないな、黙っておこう、そんなことより、素直に謝ってきて事に俺は驚く、俺みたいな陰キャに謝るとか誰も想像出来ないだろ。
素直に謝ってきたし許すか許さないかで言えば許す。だけどだけどだ、巻き込まれて良かったと思う自分もいた。
巻き込まれた当初は巫山戯るなと思っていたけど、楽しかったんだよな、初めてあんな感じでゲームセンターを楽しめて本当に楽しかった。だから今はどうかと言われたら、そこまで何とも思っていなかったりする。まあ今は、そこより別の問題だ。
「いや、別に今日の事は、それはいいんだけどな? え、えっといつまで手を繋いでいるんだ? もうそろそろ手を離しても良くないか? あの、真人さん達ももういないんだし」
ゲームセンターでは、真人さん達に色々と言われ、手を繋ぐ羽目になって、手を繋ぎ行動していたが今は帰りだ。
もう繋ぐ必要も無いのに未だに手を繋いでいる。
「え、あっ、まだ! うん一応まだ繋いどこう? ほ、ほら! まだどこかで見られているかも知れないし、真人さんは、人の話を聞かないからね? 見つかったらまた長くなりそうだし、もう少しこのままの方がいいよ、うん。そうだよ、そう思うよね!? だ、ダメ……かな?」
何を言ってるんだ、ゲームセンターから結構離れた上に真人さんは、もう少しゲームをするって言っていたから何の心配もいらないだろ、どこで見るんだよ。なんでだ、なんでこうなったんだ。
学校の時と違いすぎるだろ、俺なんかほっといてとか言ってなかったか? いや、今は関係ないのか? 余程、真人さんが苦手になったのか? それにしても心配しすぎだろ。
「ダメだろ、普通に考えて……誰かに見られたらどうするんだよ、困るだろ? つかさちゃんも俺も」
「え? 増田ってなにか困ることあるの? どう困るの? 私は別に困らないよ? 後、そのつかさちゃんって言うのやめて、なんかムカつく」
「何に困るって困るだろ!? 勘違いされたらどうするんだよ!? 俺に、か、かか彼女が出来なくなるだろ!?」
「え!? 」
「へ? なんだよ……」
「え、いや、増田って彼女とか出来るつもりでいたんだって思って……」
おかしいな、あれ? 俺、今日初めてまともにつかさちゃんと話したよな? え、ちょっとというかかなり失礼すぎるだろ!?
「いやいや出来るなら欲しいに決まってるだろ!? 俺にだって出来るかもしれないだろ、出来ないとしても夢ぐらい見てもいいだろ!? そう言うつかさちゃんはどうなんだよ」
「私? 私に聞くの? セクハラだよそれ? それとさっきも言ったよね、ちゃんはやめてって」
「出来るつもりでいたんだって、言葉はどうなるだと、言いたいけど……じゃあ苗字教えろよ、仕方ないだろ知らないんだから」
「何言ってるの増田? 正気? 同じクラスだよね? 真面目に言ってるの?」
「え、いや……ご、ごめん……」
「はあ……いいよ、さっきも言ったと思うけど……」
さっきも言った? あれ、言われた記憶全くないんだけど俺の気のせいか? いつ言ったんだ……全く覚えが無さすぎる。
「嘘だろ!? ご、ごめんな、本当に分からないから、もう1回だけでいいから、教えてくれないか?」
「最後だよ? 分かった?」
「ああ、大丈夫だ、今度はしっかり覚えとくから」
「分かったよ、私のフルネームはね……」
早く言ってくれないか、何でこんなに、勿体ぶる言い方をするんだよ。最近の流行りなのか?
「ああ、なんて言うんだ?」
「増田つかさだよ?」
「……」
つかさちゃんの発した言葉を聞き俺は固まった。
なんだ、なんなんだ、つかさちゃんバカなのか? バカだよな? 絶対バカだろ!




