お母さん?
「これは着やすいけどよれて、だらしなく見えるかな? このクマさんとうさぎさんは、子どもっぽすぎるよね、こんな事になるなら、新しく可愛いパジャマ買っとけば良かったよ……」
悠里ちゃんと電話を終えた私は、お風呂の用意をしようと、下着姿のまま、パジャマの事で頭を悩ませている。
本当に本当に、写メを送る気は無かったけど、悠里ちゃんの言葉が、私の送らないって気持ちを、なくさせてしまった。
その妹ヒロインもののタイトルを聞くと、タイトルもダメだった。
俺は可愛い妹が大好きすぎて恋ができない! ってタイトルみたいだけど、本当に本当に意味が分からないよ。
コンコンッ
物語は、うん。可愛い妹の為に、尽くすお話みたいだけど、お兄ちゃんが妹を、恋愛対象として見ているのが本当にダメだった、ダメすぎるよ。
健人が、悠里ちゃんを、恋愛対象にする様になったら、冗談でも笑えないよ。
コンコンッ
悠里ちゃんの、羨ましい健人のお部屋訪問と、写メの事は、取り敢えず置いといて、ラノベの話を私はもっと詳しく、健人に楽しくお話をしてもらう為って、事にして話を聞いたけど後悔する事になる。
私が想像していた、妹もののラノベは兄妹が仲良く、ほのぼの楽しく過ごす様な、物語だったらどれだけ本当に良かったか。けど尽く違っていた。
妹に溺愛され結婚を迫られる俺!? とか義妹監視中につき彼女が作れない!? ってラノベも読んでいるみたいだけど、本当に聞かなければよかった。
コンコンッ
毎晩毎晩、妹が添い寝をしてきて一緒に朝を迎えて、休日は必ず妹とデートをしたり、お兄ちゃんのお部屋には監視カメラ仕掛けたりと、そんな羨ましいお話しばかり。
話を聞いてる時、悠里ちゃんの声は何故か「気持ち悪いよね」って言いながらどんどん弾んでいく、それに比例して私の声はどんどん沈んでいく。
あまりにも羨ましすぎて、私は、話を聞くのを途中でやめた。もしかして既に健人は、悠里ちゃんにされてたりするのかな、そのせいで悠里ちゃんを大好きになりすぎて、私を大好きになれないのかな、と色々と頭を過ぎった。
健人が大好きだと思った、金髪さんを真似て、髪の毛も折角染めたのに、スカートも、は、恥ずかしいけど頑張って短くしたのに……金髪さんも、ま、まさか妹って事は無いよね……?
「……理衣亜、何しているの? 入るよ?」
健人が実は、悠里ちゃんが大好きすぎたとか、絶対にダメ。大好きなのはいいけど……
わ、私が早く、な、何とか健人をしなくちゃいけないよね、健人が、あ、危ないから、これはしょうがないんだよ、うん。悠里ちゃんと付き合うなんて本当にダメ。
は、早く健人の目を覚まさせたいけど、パジャマが本当にないよぅ……こ、このパジャマ達だと、目を覚まさせるどころか、悠里ちゃんにまっしぐらだよぅ……
「……理衣亜?」
悠里ちゃんとパジャマを、日曜日に買いに行こうかな? でも可愛いパジャマなのに高すぎるよ……パジャマで8000円とか私の安い洋服3着は買えるよ。
でも可愛いし……うぅ、お小遣い貯金を、使わなきゃいけないのかな? で、でも健人の誕生日プレゼントとかに使いたいし……
「理衣亜!」
「へっ!? お、お母さんなんでいるの!?」
お母さんに、大きな声で名前を呼ばれて、驚き振り返りながら返事をする。
「お風呂が空いたから、呼びに来たの」
「の、ノックぐらいしてよ!」
ノックぐらいして欲しかったよ、急に入って来られたら、びっくりするし困るよ。でも、よ、呼びに来たのがお母さんで、よ、良かった……
け、健人にもまだ見せたことがないのに、お父さんに見られるとか私、絶対に無理だよ。健人に見られた後も嫌だった……うん、本当にお父さんに見られるとか、絶対に無理だよ。
「何度もしたし、それより下着姿で、パジャマを見てどうしたの」
ノックを何度もしていたなんて、ぜ、全然気が付かなかったよ。パジャマ選びに夢中になってたみたい。
「ど、どうもしてないよ……? えっと、えと……どれが今日良いかなって、そ、そう悩んでいただけだよ! うん」
「……。そう、健人君に見せるなら動物は子供っぽいかな? よれてるのもあれよねぇ」
「な、……けけけ健人は何も、か、関係無いから、うん。へ、変な事を言わないでよ」
お母さんが私の考えを、見透かした様に言ってくるから、何とか吃りながらも返事をする。
「あら? 健人君の家に、泊まりに行く予定があって、健人君に見てもらう為の、パジャマ選びをしているのかと思っていたけど違うの?」
「ま、まだ、そんな予定ないよ! パ、パジャマはあれだよ、えっと……そう、そろそろ替え時かどうか悩んでたんだよ。うん」
「そう、予定はまだ無いのね。いつ、予定が出来るか楽しみ。ふふふ」
「あ、うぅ……も、もう、本当にお願いだよ……ゆ、許して……」
「顔を赤くして可愛い、流石、私の娘。ちなみに何を許して欲しいの? ふふふ」
お母さんの言葉に、私はとうとう黙り込む、もう何を言っても、変に返されそうで怖いから。
お、お母さん、い、いじめないで……本当にもう、ゆ、許してよぅ……
それからも、少しの間からかわれてから、お母さんが部屋を出ていった。
出ていく時にも「早くお風呂に早く入って暖まりなさい。風邪ひくわよ? 健人君に看病して欲しくて、その格好してるなら何も言わないわ」と言い残しながら。
私はその言葉にも、何も言えないまま、お母さんを見送って、服を着てクマさんのパジャマと下着を持って、お風呂に向かう事にした。
可愛いパジャマを、お小遣い貯金使って必ず、悠里ちゃんと買いに行こうって決めながら。
「そうそう、理衣亜? 健人君の家に泊まるのはいいけど、お父さんには黙っときなさい。それと健人君を襲っちゃダメだからね? ふふふ」
「……うぅ、お母さん!」




