メールの落とし穴?
その日の、昼休み以降の俺は、いたたまれなった。理由は分かるだろう。理衣亜が、中学生の時も一緒に寝たよと、とんでもない、爆弾発言を言ってくれたからだ。
昼休みが終わって教室に戻ると、針を刺す様な視線を浴びるし、今井君に至っては、怒気の篭った目で睨んでくる。
そんな訳で俺は、その日の授業が終わると、即座に教室を出て、寄り道もせず家に帰り、部屋に向かった。
「はあ、黒木と山崎の連絡先を聞けなかったな」
部屋に入り制服から着替えて、ベッドに横になった俺は、思わず独り言がでる。
黒木と山崎は、どこに行っていたのか、昼休みが終わるギリギリで、戻って来ていた。昼食は勿論、俺も含めて食べていない。
そのおかげで、土曜日の遊ぶ話も連絡先も、分からずじまい。
明日の休み時間に、聞こうとも考えるけど、聞けなさそうな気がしてしょうがない。
友達への1歩目が、上手くいったと思ったらこれだ。
昼休み、あんなに俺の気分を持ち上げておいて、あの結果はあんまりだ、ドン底まで落とされた。
明日どうなるかな、今井君には、色々聞かれそうな気がするが、気がするだけだと思いたい。
他のクラスメイトは話したことも無いし、聞いてこないよな、聞いてこないはずだ。
こんな時は、友達がいなくて良かったと、思ってしまう。
ブーブブーブー
色々と頭を悩ませていたら、スマホが震えだす。
確認しなくても分かる、間違いなく悠里からのメールだ。
スマホ買って貰って結構経つが、未だに悠里としか、連絡をとったことが無いから。
本当になんの為のスマホだ、妹としか連絡とらないスマホとか、ある意味悲しすぎるだろ。
〔おにい暇? ごめん、聞かなくても暇だよね! お母さんに頼まれた買い物代わりに行ってきて。お金を持ってでるの忘れた!〕
わかってて言ってるだろ。ああ暇だ、暇してる、何も言い返せない俺が悔しすぎる。悔しさを噛みしめつつ、俺は返事を返す事にする。
〔ごめんな、とっても忙しいんだ。だから帰ってから行けばいいんじゃないか?〕
勿論嘘だが俺も忙しいと、ない見栄を張ってみた。それを送ってから、悠里からの返信がすぐに返ってきた。
〔家にいるおにいが行った方が早いよね? 明日おにいが帰ってきて、本棚の中身がスッキリしてるのと、買い物どっちがいい?〕
こんのクソ妹がああ、捨てるのか、捨てるって事なのか!? いやいやそれはダメだろ。
流石にそこまでしないよな。冗談だよな、それより何で家にいるのが分かるんだよ……監視カメラでもあるのかよ。
返事を考えていたら、また悠里からすぐにメールがきた。
〔忙しいって、嘘つかれた私は、凄くショックだなあ。嘘つかれたショックで、本棚をスッキリさせて、私のこの気持ちもスッキリさせちゃうのは、しょうがないよね?〕
俺は、そのメールを見て俺の心読んでるのか、そんなスッキリのさせ方やめてくれと考えつつも、すぐに悠里に、何を買ってくればいいか確認をした。
俺は、確認をしてからすぐに買い物に行く用意をして、用意といってもエコバッグと、テーブルに置いてあったお金だけだが、それを持って買い物にでた。
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「おかえりーありがと、おにい」
「どういたしまして、ただいま。冷蔵庫には悠里が入れといて。俺は部屋に戻る」
俺が買い物から帰って来ると、妹も帰ってきていたみたいで、リビングに入ると声をかけられた。
軽く返事をして部屋に戻ろうと思い、買ってきたものの片付けを悠里にお願いした。
「えー」
うん、やっぱり嫌がるよな分かってた、分かっていたのに言った俺が馬鹿だった。そう思い、なんでもないとだけ言って、自分で片付けていくことにする。
「おにい、そろそろ友達が、片手分ぐらい出来た?」
「あ、当たり前だろ!? 何言ってるんだ!? 俺はもう部屋に戻るぞ!」
片付けを終わらせて、部屋に戻ろうとしたら悠里が聞いてきた。
絶対分かってて聞いてるよな、なんて妹だよ、親の顔が見てみたいって、こんな時に言うんだな。
それから夕食までの間は、ラノベを読んで過ごした。
夕食を食べてる時、悠里に「俺の本棚をスッキリってどういう事だ?」と確認してみたら「どう言う意味? おにいが帰って本棚の中身がスッキリとは言ったけど、おにいの本棚の中身をスッキリとは言ってないよ?」と言われ俺は、その時溜息しか出なかった。会話が難しすぎる。
それから夕食を食べ終わり、しばらくはテレビを見て過ごし、悠里がお風呂から上がり、その後、俺もお風呂に入って部屋に戻った。
部屋に戻り俺は、ベッドに横になりながら、考えていた。理衣亜と連絡先を交換したし、何かメールした方がいいのか?
こんばんは? 次が浮かばない……何してるんだとか聞いてもキモがられるよな……なんて送れば正解なんだ。
こんばんは、だけだとかまず送る意味無い。何食べたとかか? 気味悪がられそうだな……風呂入ったかとかは、セクハラだし問題外。ラノベの話は理衣亜が分からないから、会話にならないだろうし論外。
悠里とのメールを見て決めるか……そう考えて見てみる俺。
見てから俺は後悔をした。俺ってまさか、会話の才能が無いのではと、悠里からのメールは今日みたいな頼み事ばっかりだ。
その悠里からの、頼み事メールばっかりで、俺からしたメールは1通もなし。どうしろって言うんだよ。
理衣亜と連絡先を、交換したいと思っていたけど、連絡先の交換したのはいいが、理衣亜の連絡先があっても、メール内容が浮かばないとか……
理衣亜の連絡先を、せっかく知れたんだから、メールをしたいが、本当に何て送ればいいかわからない。
悠里に聞くか? とも考えたが、聞いたところでキモイと、言われるのが目にみえる。
メールがこんなに難しい何て、思いもしなかった。俺って普段理衣亜と何を話してた……。
ダメだ話を振られた記憶しか、いくら思い出そうとしても出てこない。
本当にこんな落とし穴が、メールにあるとか思いもしない。
そして、その後も俺は色々と、理衣亜に何て送るか考えていたが、いつの間にか眠りについていった。




