温存
気づいたら前話から一週間近く間空いてた……
「あの……何をしているんですか?」
「何って言われてもな……休憩タイム?」
疾風さんを倒した俺たちは……次のボスに向かわないでその場に留まっていた。
「……ええと、HP満タンですよね?」
「あー……回復は俺らじゃねえ」
そう、プレイヤーの回復待ちではない。
「そこらに寝っ転がってるやつらだ」
勇者様とヒーラーもどきの自動回復待ちである。
一部を除き仲間NPCはHPが0になっても一定時間後に復活する。
勇者はともかくこっちの薬師にもその能力は備わっている。
「……そこまでする必要あります?はっきり言って大して役に立ってなかったですよね?」
「お前意外と酷い事言うのな……」
確かに大して役に立ってない……というかこいつら含めて四人で戦うより、ミイと俺ら三人のが楽だし早い。
でも……。
「無限リソースだからな。活用しなきゃ勿体ねえ」
「はあ……。無限……リソース?」
あの二人は無限スキルに永久ゾンビだ。
プレイヤークラスの強さ……とはお世辞にも言えないが、長期戦を見越しての戦いならそれなりに役に立つ。
死のうが無駄にスキルを乱発しようが、こちらに大してデメリットは無い。
プレイヤーが全滅さえしなければ永久的に戦えるのだから。
「ああ、そうだ。今のうちに言っとくぞ。ミイは次普通に戦え」
「あ、はい。タツさん、温存は終わりなんですか?」
「あー……。回復だけは俺らのタイミングで頼むわ。なるべく攻撃参加で」
……次は速いだけの誰かさんとは違う。
『アーマー解除』をかけた後に攻撃を受けたら落ちる可能性も出てくる。
素直に『挑発』で普段の戦法に徹するしかない……が。
火力足りるかなあ……。
待つこと数分。
NPC二人のお昼寝タイムが終了し、俺たちは次のボスへと歩きだした。
「……マイちゃんたち大丈夫でしょうか」
歩きの途中でミイがポツンと呟く。
「そんなに姉が心配かよ。……大丈夫に決まってんだろ」
この言葉が出たという事は、タツはマイを信頼しているから……ではない。
……だってステータスで見れるからね。
離れている……といっても同じ『PT』だ。
同じPTメンツが死んでるかどうか位、その場にいなくても瞬時に確認出来る。
「だってタツさん……『アレ』ですよ?」
実の姉をアレ呼ばわり。
「ああ……『アレ』だもんな……」
まあ……『アレ』だししょうがないか……。
【へぇ……リンドウのヤツを倒したってのかい】
【やっぱりアタシの目に狂いは無かったみたいだね!!】
もう何度も見たセリフ。
【『破城のガーベラ』!!今度こそ叩き潰してやるよ!!】
さて……ここからだ。
【挑発】
「ミイ、俺と一緒に殴るぞ!!」
「はい!!」
【猛毒付与】
【まきびし】
【火遁の術】
火遁でステータスを下げ、毒とまきびしでじわじわ弱らす。
タツは長期戦向けにキャラ育成をするようだ。
……なんやかんやでタツもこのPTが気に入ってるんだろうな。
『タツ』というキャラクターはこのPTに実に合っている。
搦め手を使える職業が少なく、持久戦寄りのメンバーになっているこのPTにとって、欠けているピースを埋め込むかのような選択である。
ただし……中の人間の『タツ』と合っているかと言われると……。
【グランドインパクト】
直線上に放たれた衝撃波。
俺に命中し、HPをそれなりに削る……が。
「ショ……」
「まだいらない!!」
ミイの確認を俺が遮る。
……なるべくギリギリまでミイの回復を使わない。
【お手製傷薬】
俺のHPがNPCの手によってほんのりと回復する。
この回復、使用回数は無限……ではあるが、一度使うと次の使用までに時間がかかる仕組みのようだ。
一分……いや、もっとか。
おそらく一分半から二分の間だろう。
……使用出来る物は何でも効率的に使う。
可能な限りこいつの回復メインでこいつを終わらせたい。
……さて、そろそろだろうか。
前回の下見より早いペース……なんて事はなく、既に倍近い時間がかかっている。
そりゃそうだよな。
温存作戦で戦ってるから、こればかりはどうしようもない。
【ギロチンスラッシャー】
「「きた!!」」
俺とタツが同時に叫ぶ。
前回散々苦しめられた技……。
勢いよく頭の上から降ろされた斧。
それをガードするが……大きなダメージは避けられない。
「まだいい!!」
【ドレインソード】
ミイに叫ぶとすぐさまコマンドからスキルを発動させる。
これだけではさすがに心許ないが……。
【お手製傷薬】
……これで安全圏まで戻ってきた。
「ショウ、お前……」
タツが不安そうに訪ねてくる。
「『ドレインソード』ここで使いきる!!」
俺の宣言にタツは少し戸惑ったように感じた……が。
「分かった。任す」
こう言ってくれた。
……任されたならやるべき事しないとな。
「ミイ、俺がヒールかハイヒールか言うから」
ここから先は失敗出来ない。
「それ言われた後に回復頼む」
回復を温存したい……が『ギロチンスラッシャー』を変なタイミングで撃たれると、あっさりと死亡する確率が高くなる。
……タンクの腕の見せ所かね。




