微かな綻び
すっごい今更ですけど4章タイトルつけました
カスミの『ラスト・ブレイカー』は発動まで時間のかかるスキルだ。
その為ターゲットが固定されている状態ならまだしも、『バーサク』でランダムに狙われている状態なら当てる事は難しい。
……そこで、カスミを狙いに来た時にカウンター気味に発動させた。
無論、発動前に敵の攻撃を受けると解除されてしまうが……サラの『マジックシールド』で敵を止める事で発動までの時間を稼ぐ事に成功する。
そして、発動させた『ラスト・ブレイカー』は敵を一閃……ロウのHPを0にする事に成功した。
「凄かったなカスミ!!」
「そうですよぉ。カスミちゃんカッコ良かったです!!」
ボスにとどめを差したカスミを褒め称えるマイとサファイア。
……確かに咄嗟にスキルを発動させたカスミも凄かったが、本当に凄いのは……。
【サラさんのおかげです】
「おお、カスミちゃん謙虚ですねぇ!!勿論サラちゃんもカッコ良かったですよぉ」
謙虚……というか、とどめの功績の殆どがサラになると思う。
最後だけではない。このクエ通してのMVPはサラになると思う。
今日のサラはそれほどまでの仕事っぷりだった。
【そんな……我々は陛下に騙されていたと?】
【……済まない】
【君たちが止めてくれなければ……】
【とんでもない過ちを犯すところだった】
ロウを倒した後ムービーが始まった。
今画面で話しているのはリー・ダー。
……いや、こいつさあ。
「生きてたんかい!!」
マイが俺の言いたい事を言ってくれた。
それも切れのあるツッコミで。
【……貴殿らには謝罪と感謝を述べねばならぬな】
おぼつかない足取りで全身に包帯を巻いた老兵が歩いてくる。
【ロウ!!】
【もう動いても大丈夫なのか!?】
こっちも生きてるんかい。
元気な爺さんだね。
【ええ……】
【そちらの方々が手加減をしてくれましたからな】
「あら、そういう設定だったんですねぇ」
「実際には躊躇無く攻撃してたがな」
一応人間相手には加減している設定なのだろうか。
【そうは言っても……】
【君は一番酷い状態だったじゃないか?】
【事後処理は私がするから休んでいてくれ】
最後の方は八人がかりでリンチ状態だったしなあ。
【一つご報告がありましてな……】
【皆様にも聞いていただきたいのです】
ロウはプレイヤー側に向きを変えると会話を続ける。
【こちらの兵は死者・重傷者共に0です】
【数週間もあれば全員戦線に復帰出来るでしょうな】
「ほらー!!私の言った通り生きてるじゃないですかぁ!!」
「ご都合主義にも程があんだろ……」
「なーにが、『カップルキラー』ですか!!ちゃーんと手加減してるんですよ!!」
まだそれ覚えてたんかい。
「……めんどくせ」
「あ!!タツさんまた!!」
うん、タツじゃなくてもめんどくせえわ。
あの後も話しは少し続いた。
リー・ダーたち騎士団が正式に王宮に駐在し、王が悪政を働かないように目を光らすとかなんとか。
ぶっちゃけ特に興味無い。
どうせ、こいつら二度と出てこないだろうし。
なんだったらこの国自体クエストで使われる事はもう無いかもしれない。
正直こんなクエの結末よりも、気になる事があってそれどころではない。
「なあ、ショウ」
……きたかあ。
「さっきのどういう事だよ」
どうすっかね……。
「なんか考えあったんだろ?」
「あー……まあ」
あった……んだけど……。
ここでは話せないしなあ。
「……サラの調子が良かった事分かってたろ?」
うん、分かってた。たぶんPT内で一番良く。
「今日のサラなら……残すべきだっただろ。なんで回復枯渇させたよ?」
攻撃が激しくなるボスの後半戦。
もし、サラに回復を温存させていたら安定した戦闘だっただろう。
今日のサラは、回復も防御も同時に確実にこなしていた。
……だからサラにこれ以上負担をかけられなかった。
今日のサラは調子が良かった。
……いや、調子が良すぎたと言った方がいいか。
ゲーム初心者であるサラがここまで出来た理由……たぶん集中力だろう。
なんとなく場を見て咄嗟に対処出来るタイプとは違う。
やるべき事を強く思い……その事に強く集中する。
おそらくサラはそういうタイプだ。
それも……何かを削りながら『集中力』を発揮するタイプの。
ゲーム風に言えば……『毎ターンHPを消費してステータスを上げます』こんなところだろうか。
……だからなるべく仕事を減らしたかった。
回復と防御。この二択の内、一つを早めに消したかった。
回復さえ無くせば少なくとも、『仲間のHP』に対して気を回す必要は薄れる。
まあ……サラのスキルを使い切らした理由はこんなところか。
問題は……。
「ごめん、俺のミスだった」
「あん?」
それをこの場で言えない事だな……。
『サラが心配だったから』なんて理由を言うと確実にサラはこの事を気にする。
そもそもそれを言うなら、もっと早くにサラを止めれば良い。
サラの精神になるべく負担をかけずに済む方法……俺の指示ミスが無難かな。
「ちょい気になる事あったけど……俺の勘違いだわ」
「……」
おおう、タツは絶対に納得してない。
画面越しだが、無言の『ちゃんと話せ』オーラが見える気がする。
「いいじゃないですかぁ。そこらへんで」
マイが仲裁……というか、重い雰囲気をぶち壊して入ってきた。
「ショウさんだってたまには失敗しますよぉ。ね、タツさん?」
「……そうだな」
うん、マイがいてくれて良かった。
……今回だけは素直に感謝したいと思う。今回だけは。
「さ、次はストーリーですよね?この調子で行きましょ!!」
「ああ、んじゃ……」
「ちょい待ち」
「あらら?ショウさんまだ何かあるんですかぁ?」
行きたいけど……その前に一つやる事がある。
「ちょい休憩」
絶対にサラの体力が持たない。
結局あの後一時間程度の休憩となった。
ベッドに潜り今日の事を思い出す。
……怖い。
なんだろう、この感じ。
怖い、怖い、怖い。
今日のショウさんとタツさんは少し変だった。
このまま……この先もずっと八人で……。
そんな風に思っていた。
……思っていたのに。
「ミーイちゃーん」
姉が後ろから覆い被さってくる。
「ねえ……」
たぶん姉に聞いても意味は無い。
「んー?なーに?」
そう分かっている。
「このまま……皆一緒だよね?」
分かっているのに……。
一瞬目を丸くしてキョトンとした……が、すぐにいつもの笑顔に戻り抱きついてくる。
「ミーイちゃーんかーわーいーい!!」
……こんな人に真面目に話したのは失敗だっただろうか。
そんな事を思っていると耳元で微かな呟きが聞こえてきた。
「……大丈夫だよ」
いつもの優しくて……いつもと違う真面目な声。
ぎゅっと強く抱きしめられる。
「きっと……いつもの二人に戻ってるから……ね?」
何一つ根拠の無い……だけど、優しい励まし。
「うん……ありがとう」
素直に礼を言い、少し眠る事にした。
……暑苦しい姉を引き剥がして。




