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ウチのPT@0  作者: ららら
4章 不穏な影
76/84

生と死と

タイトルと違いシリアスではありません。

【ありがたい!!】

【敵は既に東の砦から向かってきている】

【こちらには近づけさせないで欲しい】

【騎士を倒せば国王も諦めるはずだ!!】

【済まないがそれまでよろしく頼む!!】


「……敵ってあのイケメン騎士なんですかぁ?」

「まあ……そうだろ……」

クエスト前の長いオープニングイベントが終わり、遂に行動可能に。

クエスト説明には『騎士団を全て撃破』と書いてある。

そして選択肢なんて存在しなかった。

……多少気乗りがしないかもしれないが『敵』は、マイの言うイケメン騎士なのだ。


【まきびし】

「うーん……キレイですねぇ」

マイは周囲を見てはしゃいでいる。

相手は勝手にこちらに来てくれるのだ。

それなら下手に動かず待ち構える方が吉だと俺たちは判断した。

【まきびし】

キレイか……少し疑問に思った事がある。

「……なあ、マイとミイは最高設定か?」

「え……最高?」

「そですよぉー。ちゃーんとハイスペですもん」

ミイは良く分かっていない様子。

……まあ、元から高スペックのPCなら設定気にする必要も無いか。


『最高設定』ーー簡単に説明するとゲーム内のグラフィックを最大限にキレイに描写しているかどうか。

PCのスペック……主にグラフィックボードの性能が低い時、設定を下げる事により、無理なくゲームをプレイする事が可能だ。

【まきびし】

それをVRつけて最高設定でのプレイ……。

ミイはゲーム自体が初プレイなのに……。

……家が金持ちなんだな。


【まきびし】

「……タツはさっきから何をやっている?」

「あん?見ての通りだサファイア。……まきびし撒いてんだよ」

タツが取得した忍者の新スキル『まきびし』。

効果は……説明するまでもないだろう。

敵が踏んだらダメージ。それだけ。

【まきびし】

「待ってる間暇だろ。……てか、こんなクエの為に取ったんだからな」


 このゲームは、いわゆる防衛戦がかなり多い。

一ヶ所に留まり、敵を迎え撃つタイプのクエでは『まきびし』はかなり効果的だと言えるだろう。

……逆にザコを蹴散らしながら進むクエストには不向きだ。

だって倒して進んだら、途中で撒いたまきびしは完全に意味無いんだもの。


「なんか……地味ですねぇ」

「ほっとけ!!」

「まあ……うん……忍者らしくていいんじゃないか」

「テキトーなフォローも辞めろ!!悲しくなるわ!!」

マイとサファイアのダブルアタック。

なんか……すっかり弄られ役だよな、タツも。

「ねぇ、タツさん……」

急にマイの話しのトーンが変わる。

「真面目な話……使えるんですか?そのスキル……」

「……」

タツはまだ何も答えない。

普段のふざけた返しではなく、真剣に言葉を選んでいるようだ。


「なんか……タツさんらしく無いんですよ。そんな……いかにも使いづらそうなの……」

マイは変なとこで鋭いな。

確かに『まきびし』は決して使いやすいスキルとは言えない。

ザコ相手に不利なだけでなく、この前のドラゴンのような相手にも部が悪い。

……飛んでるからまきびし踏まないもん。

俺も最初はタツがこれを取ったのか不思議だった。


理由は……このPTだからだろうなあ。

どちらかと言えばこのメンツは持久戦寄り。

クエストで苦戦する理由も、敵の攻撃に耐えきれない……ではなく、回復が切れる泥沼状態まで持ち込まれての事が殆どだ。

『まきびし』は、とてつもなく長い目で見ればそれなりにコスパの良い攻撃スキルかもしれない。


【ブリザードレイン】

敵軍の先見隊……なのだろうか。

騎馬兵の集団をマイが放った吹雪が包み込む。

新しく取得した『ブリザードレイン』。

水系魔法の範囲スキル。

いつの間にか取ってたのか。

……いや、別に文句無いけど。


 正直こいつらのレベルはそれほど高くない。

新スキルの試し撃ちなのでそこそこ程度の難易度のクエを選んだ。

はっきり言ってザコ兵は相手にならないレベルなのだが……。

「タツさーん……どうにかならないんですかぁ……これ」

「……諦めろ」

意外なところで問題が出てきた。

マイの言う『これ』とは……。


【うわぁぁぁっ!!!】

【助けてくれー!!!】

【リー・ダー様……後は……頼……】

【し、死にたくな……】


……ザコ兵の無駄な断末魔である。


「……すっごい気分悪いんですけどぉ」

最高のグラフィックと臨場感溢れるVR。

それによって映し出される……吹雪により力尽きていく人間。

そして、強制的に表示される悲痛な叫び。

ひっでえなこれ。

CEROいくつだっけか、このゲーム。

子供がプレイしたらトラウマ物ではないだろうか。

「大体……なんでセリフ付けたんですか!!今まで無かったでしょ!!」

精神を抉る為……なのだろうか。

それだとしたら運営の考えは大成功だ。


【フロストインパクト】

……あ、またマイが一人倒した。

【そんな……帰ったら……あいつと……結婚……】

「あーもう!!こんな分かりやすい死亡フラグ立ててるから!!」

「幸せな二人を引き裂いたな」

「お前……さすがに引くわ……」

「サファイアさんとタツさん酷くないですか!?てか、私ばっか倒してません!?」

だってなあ……マージは『詠唱後に高火力』が特徴だし。

普通に戦ったら、他の人間が削った後に魔法でとどめになるもん。


【あの人と……一緒に……なりたかった……】

「うわっ……さっきのヤツのじゃね?」

「……精神力がガンガン削られてるんですけどぉ」

マジで疲れてそうだな……。

声に元気がない。

【マイはカップルキラーの称号を得た】

「え……」

突如チャット欄に浮かんだ文字。

これは……。

「……タツさんのイタズラじゃないですか!!そろそろ本気で怒りますよ!!」

「ああ、さすがに気づくか」

「最初ドキッとしましたよ!!わざわざチャットまで打って!!」

タツも良くやるわ……ホント。

「てか、キルしてないですよねこれ!?良くあるパターンの気絶しただけとか……」

「あ……?さすがにくたばってるだろ……」

「いやいやいや……だって人間のボスって軒並み生きてたじゃないですかぁ。今回も私たちは察して手加減してる的な……」

言われてみれば人型のボスはほぼ死んでないな。

山賊、敵国の隊長……倒しても死んではいなかった。

……ザコまでは分からんけども。


「……来た」

「タツさん話し反らして!!別に今さら敵が来たって余裕でしょ!!」

「違えよバカ!!ボスだ!!」

……確かに今までの見た目同じのモブ兵とは違う。


【なぜ君たちのような冒険者が邪魔をするか分からない】

【しかし力付くでも排除させてもらう!!】

【リー・ダー参る!!】


【冒険者!!金に目が眩んだか!!】

【貴様らのような者に遅れを取るわけにはいかぬ!!】

【このロウ・ヘイの剣の錆びにしてくれよう!!】


 身なりが良さげで貴族や王子に見える、若き剣士。

白銀の鎧に身を纏った、強者の風格が見える老兵。

オープニングで見た通りの姿。

こいつらを目の前にして一つ思う事は……。

「こっちが完全に悪人ですねぇ……」

「普通に話し合えばいいのでは……?」

まあ……うん。そうだよね。

話し合ったらゲームにならないけども。



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