正義と正義と
大陸から離れたとある小さな島国。
特に目立った観光や資源は無く、人手も豊富とは言い難かった。
だが、男手を中心に漁業で生計を立て、国民は小国ながらも平和に暮らしていた。
……あの日までは。
突然現れた海賊の一団が王宮を占拠したのだ。
ここ数年大きな事件も無く、軍備に予算を割いていなかった国軍は脆かった。
また、王宮が海に近かった事も海賊たちには幸いした。
船から上陸した海賊たちは半ば奇襲のような形で城内へとなだれ込んで来たのだ。
……事件があったというのに妙に静かだ。
いや、静かなのは事件があったからか。
遠巻きでしか見る事は無かったが、威勢のいい海の男の声も、それを元気良く送り出す女性の声も聞こえてこない。
……許さない。
「リー・ダー殿!!こちらでしたか!!」
この声……。
「済まない、ロウ!!少し海を見ていた!!」
きらびやかな武具に身を包んだ、威風漂う老人がこちらに歩いてくる。
武に遠い者でも分かる強者の威圧。
私の剣の師にして一番の家臣。
そして……親代わりでもある『ロウ・ヘイ』
だ。
「海……ですか?ふふっ……初陣にしては随分と余裕ですな。いや、それほどの度量がないと……」
ロウは急に口を噤んだ。流石に目ざとい。
震えた手を見られてしまったか。
「……失礼しました」
「謝る必要はないさ。私自信情けない人間だと思う。……君の思い描く将とはかけ離れているようだ」
どうにか気丈に振る舞おうとしてきた。
どうにか平静を保とうとしてきた。
……皆の期待に答えようと。
しかし手が震えて剣が持てない。
足が竦んで動けない。
私は先頭に立ち道を切り開く立場だというのに!!
「くくっ……あはははは!!」
弱さを吐いた私に返ってきたのは……ロウの笑い声。
叱咤でも激励でも無く笑い。
これは私には完全に予想外だった。
「安心しましたぞ……やはり貴方はあの方の息子だ」
まだ笑いが残る声でロウが言った。
「……そして私の弟子ですな。こんな事まで似通ってしまわれたか」
……正直理解出来なかった。
「何を言っているんだい?君と父上は勇猛を絵に描いたような武人だろう?」
「少し昔話をしましょうか……貴方のお父上と出会った時の話を……」
「私の父との出会い……?」
「ええ……。あの方と出会ったのは共に初陣の時だったのですよ」
初陣?そんな話聞いた事がなかった。
古くからの友人……とは聞かされていたが。
「何を隠そう私は恐ろしくて戦場から逃げ出してしまいましてな!!」
「馬鹿な……君がかい?」
「はい……。今の貴方と違いただの一兵卒でしたが……それでも恐怖には勝てませんでした」
逃げる……今の彼からは想像も出来ない。
「逃げた後隠れるに良さげな場所を見つけましてな……。そこにいた先客が……」
まさか!!
「それが……私の父だと!?」
ロウは何も答えなかった……が、一つの優しい笑みを溢す。
「どうやら……震えは止まったようですな」
ハッとして、全身を確かめてみる……確かに震えは止まっていた。
「こんな老いぼれの話でも役に立つ物ですなあ」
そう言うロウの顔は、いつもの暖かい笑顔になっていた。
「ロウ……私は……」
「貴方は『止まった』だけだ。少なくとも『逃げた』私より勇敢です」
強き目で、強き言葉で……私に話しかけてくる。
「このような臆病者でも今日まで生きてこられたのだ。……自信を持ちなされ」
……騎士としての恥を捨て私を奮い立たせてくれたのだ。
「ロウ……ありがとう」
それならば答えよう。
二人の『臆病者』の父を持つ子として。
「バカな!!」
王宮の一室で筋肉質の大男が机を叩く。
「くくくっ……貴様ら海賊風情が……あやつらに勝てるはずがなかろう」
紐で縛られたこの国の王『アク・セイオウ』が漏らした言葉。
その言葉に机を叩いた男が反応し、詰め寄ってきた。
「海賊っ!?俺たちがかっ!!」
男は王の襟を掴み持ち上げる。
「ま、待て……」
王の言葉を遮り、男は怒りをぶつけるが如く叫んだ。
「ふざけるな!!俺は……俺たちは……重すぎる税を……なんとかしようと……」
男は涙を流しながら言葉を続ける。
「妻も……息子も……満足に食わしてやれない……こんな生活を変えたくて……」
「ふん……貴様ら……平民なぞ……飢えて死のうが……構うものか……」
王の口から発せられた悪態。
特に考える事もなく自然に出てきた本心。
……それが男の逆鱗に触れた。
「貴様あああっ!!」
「ひいっ……」
男は持ち上げた王を頭から床に叩きつけた。
「やめろ!!リョウシー!!」
……かに思えたが、床に接触する直前『リョウシー』と呼ばれた男は手を止めた。
「やめるんだ、リョウシー!!王を殺してしまえば何もかもが終わりだぞ!!」
「……済まない、リョウエー」
冷静さを取り戻したリョウシーは王を降ろし手を離す。
「……東の砦から兵が出発した事を確認した。数は少ないが……真っ向から戦えば勝ち目はあるまい」
『リョウエー』の言葉は正しい。
重税を憂いた漁師の一団は、幾度も王に税の軽減を求めたが聞く耳を持たなかった。
そこで強行手段に出る事にした。
防備の薄い海から侵入、制圧し、王を捕らえ力付くでも認めさせる。
平和ボケした王宮の守りの虚をつく事は難しく無かったのだ。
……ここまでは成功していた。
リー・ダーが率いる騎士団には『海賊』による占拠と伝えられ、事実を伏せられた。
漁師の反乱ではなく、海賊による支配だと。
そう、躊躇なく『敵』を斬る為に……。
海で鍛えた漁師とはいえ……戦闘では騎士と比ぶべくもない。
「……悪い。観光か仕事か……どんな目的で来たか分からねえ……が」
リョウシーは地に頭を付け頼み込む。
「あんたらみたいな冒険者に頼るしかねえんだ!!」
この戦いに勝機があるとすれば……。
「頼む!!俺たちに力を貸してくれ!!」
第三者……偶然この地を訪れていた君たち次第だ。
クエスト『新米騎士団の決戦』
成功条件『騎士団を全て撃破』
Q 視点が変わって見づらいです
A ごめんなさい
どう書けばいいか僕もよく分からないです




