道
「回復でいいですよ?」
顔……は見えないが、きょとんとしたような態度で返された。
「え……?」
正直意外だった。
どちらを選ぶかは分からなかったが、ここまで迷いが無いとは予想外だ。
まるで当たり前だと言わんばかりの返事。
……ヒーラーとしちゃ正しいんだけどさ。
俺が考え過ぎだったのかな。
「ショウさーん……ウチのかわいい妹に物騒な物進めないでくださいよぉ……」
「ええ……」
そこまで考えてられっか。
「レディにそんなの進めるなんて分かってないですねぇ……。モテませんよぉ」
放火魔みたいなキャラになってるお前はなんなんだよ。
てか、モテないとか余計なお世話だ。
……まあ、なんにせよミイは大丈夫か。
【わかりました】
カスミの新スキルは話し合いによりひとまず保留。
無難に依存のスキルを強化するだけにした。
そもそもカスミには短所らしい短所が見当たらない。
近接の『十字切り』
遠距離の『百花繚乱』
自己バフの『集中』
大技の『ラスト・ブレイカー』
そしてPT随一の物理火力を叩き出せるステータス。
いや、物理攻撃しかないとか、脆いとか探せば短所は出てくるんだけど……現状対処出来ないしなあ。
これでカスミは終了。
ヒーラーの二人も終わった。
ロロは自分で勝手に調べて取るだろう。何一つ心配していない。
マイも自分で取る……んじゃないかなあ。
さすがに取り返しのつかない要素は真面目にやるだろう。
あんなんでもRPGの知識は高い。
wekiなんかを見てちゃんと調べるだろう。
……調べた後に『面白そうだからネタスキル録っちゃいましたよぉ』とか辞めてくれよな。
……後は……サファイアか。
「私の気持ちは置いといてくれて構わない」
相談し始め一発目の言葉がこれ。
なんか急にサファイアが男らしい事言い始めた。
「お前たちから見てどのスキルが有用だ?」
『有用』か……。
「どのスキルを持った人間と組みたい?」
こんな事を言い出したのは俺がミイやサラに遠慮しているのを見たからかな。
完全に自分の意思よりもPTでのバランスを優先する気だ。
「陣の強化バージョン」
タツがすんなり答えた。
いや、タツの得意分野だよな。こういうの。
「強化……?」
「『猛攻の陣』と『鉄壁の陣』だな、具体的には。この二つがあれば助かる」
「……分かった。ショウはどう思う?」
どう思う……か。
「全面的に賛成」
陣剣士という職業を純粋に強化した形になる。
サファイアの意思に迷いがないのなら、俺が反対する理由もない。
「新しい陣……」
「そうだ!!それ使い方に少しだけ注意点あるから後で伝えるわ」
「あ、ああ……」
タツと会話しているが……サファイアの様子が少しおかしい。
何故か少しサファイアの元気が無い気がする。
「あん?注意点つってもそんなに難しいスキルじゃねーぞ。そんなに不安か?」
「ああ……いや、そうじゃないが……」
「ならどしたよ?」
「……本当に私は『陣』で良いのか?」
ああ、そうか。
「……陣剣士が陣以外何取んだよ」
何に不安なのか分かってしまった。
「まだこの前の気にしてんのか……」
「う……」
この前……とは、『最終決戦』の事。
自分の本領を発揮出来なかったあのクエ。
それなのに取得する新スキルも『陣』なのだ。
解決策になっていない。
本人は攻撃スキルを進められると思っていたのだろうか。
「後々考えるとこっちのが良いんだよ。あれに焦点当てたく無いんだ」
「う……」
「別に誰も責めないし……ちゃんとそれ前提の作で考えてるからな」
「あ……う……分かっ……た」
え……強く言い過ぎた?
いやいやまさか……。
「サファイアさんいじめちゃダメですよー!!」
……いじめてねーし。
「レディはデリケートなんですから!!もっとこう繊細にですねぇ……」
お前はデリケートの欠片も無さそうだがな。
「あ、あの……マイ?別に私は大丈夫……」
「ダーメーでーすー!!こんな時はもっとガツンと言ってあげないと!!」
本人いいっていってるやん。
「ショウさんはですねぇ……もっとこう……女心を……」
……文句言ってやりたいけど微妙な空気を吹っ飛ばしてくれたから何も言えねえ。
結局見かねたミイが、リアルのマイにダイレクトアタックで鬱陶しい時間は終わった。
てか……いじめられてんの俺の方じゃねこれ。
……やっと全員分終わったか。
それならやっとクエにいける。
「うー……まだジンジンするんですけどぉ……。」
ミイはどんだけ強く叩いたんだ。
「それで……遂にあのクエストですかぁ?」
もちろん、次に行くクエストと言えばあれしかない。
「『新米騎士団の決戦』だな」
「……え?なんですそれ……」
新スキルの試し撃ちもせずに『最終決戦』なんてやってられっか。
『攻撃スキル』ヒーラー……と呼ばれている私の職業にも数は少ないが存在している。
欲しいかと言われれば欲しい。
あの人たちと肩を並べて戦いたい。
……それでも。
「回復でいいですよ?」
『ここ』はとても居心地がいいから。
だから……。
せめて……少しでも貢献出来る道を……。




