代わり
「うし、撤収!!」
「……タツ、それでいいのか?」
「いいのか?って言われてもなあ。……どうしようもねーし」
サファイアにとっては消化不良か。
……まあ、本当にどうしようもないからな。
システム上これ以上は進行不可能。ギブアップだ。
本音言うと、ボスの振り分けを全部確認したかったがね。
現在分かっているボスは三人。
東の一番目にアサシン。
二番目に斧。
西の一番目に魔導師。
残っているのは……弓、槍、タンク。
……この中でタンクだけが異質だ。
今まで戦ってきたボスは攻撃方法に大きな変化は見られなかった。
そうなるとあのタンクもどきの重武装のボスだけ単騎性能が著しく低い。
そもそも『自分以外の味方の守備力上昇』なんて単独ではなんの役にも立たない。
……こいつが三戦目の片割れだろうな。
とりあえず町に帰って来た……が、タツが明らかに普段より口数が少ない。
……当然か。頭の中で色々考えているのだろう。
ただ、どう考えても個々の能力が足りない。
自分も多少頭の中でシミュレートしているが、全て倒せる気がしない。
前回のように、ボスと戦わずに済む方法もまず無いだろう。
そうなると真っ向からボスを全部倒すガチンコ勝負しかない。
……無理だなあ。
「なあ、一つ聞いていいか?」
俺もタツも黙ってしまった中サファイアが口を開いた。
「あん?なんだよ急に?」
それに軽く返したタツ。
しかし、俺たちが思いもよらない言葉が返ってくる。
「……私は足手まといか?」
「……は?」
沈黙が流れる。
何故急にこんな事を言い出したのか理解出来ない。
俺もタツもそんな事は一度も思った事が無い。
「いやいやいや」
どうしよう。どう返すのが正解だろうか。
真面目なトーンで話すか?
「急にどしたよ」
軽い感じでサッと流すか?
『足手まといか?』そう聞かれたなら答えはもちろんNOである。
……決めた。
「そんな訳無いだろ。普通に普段から頼りにしてるからな」
軽く流して話題切ろう。
こんな重そうな話題何人もやってられっか。
「ああ、いや……。普段……とかは置いといてだな……」
いつものサファイアらしく無い……が、こんな事やはり言いづらいか。
「このクエストは……役に立たない……というか……」
あー……言いたい事は分かった。
分かったけど、どう答えよう……。
「そうだな」
……考えていたらタツくんがバシッと言ってくれました。
複数人を強化出来る『陣剣士』。
周囲にバフをかけながら自分も攻撃に参加出来る便利な職業。
……ただし、人数が揃っている事が条件だ。
便利さ故にスキルやステータスそのものが抑えられている。
一人当りのバフ効果は当然『エンチャンター』には遠く及ばないし、前衛職のように敵に突っ込んでいくだけの強さを持ち合わせていない。
強制的にPTを分断されるこのクエには、『向いていない』のが現状だ。
「そうか……いや、予想していたからな。はっきりと言ってくれて助かった」
多少声に元気が無いように思える……が、それでも普段通りの『サファイア』を演じようとしているのが分かる。
……返事としては何が正しかったんだろう。
ゲーム開始当初のド素人だった頃のサファイアなら気づかなかったかもしれない。
フワッとした当たり障りのない返事なら、そのままこの話題が終わっていたかもしれない。
現にそうしようとしていた。
それは初心者であるサファイアを……。
「それなら……今回は外して貰えないか?」
「え……?」
またも予想していなかった一言。
思わずサラも声を出す。
……『サファイア』は真面目で責任感が強いキャラ。
そうロールしているのかと思ったが……素でもそんな性格のようだ。
「だ、ダメです!!」
サファイアにいち早く反応したのは……俺でもタツでもない。意外にもサラだ。
「だ、だって今まで一緒で……そ、その……これからも……」
……いや、盛り上がってるとこ悪いけど……サラは深刻に考え過ぎじゃね?
別に引退する訳でもなし……仮にサファイアの言う通りにしても次のクエ一回不参加なだけじゃん。
……これ以上ほっとくとサラの方もやばそうだな。
「いや、普通に出てもらうけどな」
「代わりなんかいねーよ」
……俺とタツが被った。
「う、うん?すまないが良く聞き取れなくて……」
ですよねー。
「……タツ、俺から言うわ」
「ん、了解」
どうせ考えてる事は同じだろう。
それならどっちが言っても同じだ。
「んー……とりあえずな……」
初心者に大して子供をあやすような態度で接しようとしてきた。
ただ……サファイアは自分で考え、この結論に達した。
もう立派な『ゲーマー』だ。
それなら同じ『ゲーマー』として答えよう。
「俺もタツもこの八人を崩す予定無いから」
「いや、それは……」
「真面目に答えるとさ……『陣剣士』は確かにこのクエ不利だよ。誰かと代わるのは間違いじゃないと思う」
「ショウさん……?」
ただそれは……。
「『誰か』がいるなら」
「……他の誰かを募集すれば済むのでは?」
陣剣士はこのクエストで100%の力を出せない。
せいぜい70%がいいところだろう。
「相性悪くても野良にお前以上のやついないんだよ……」
確かにこのメンバーでクリアしたいという思いもある。
ただ……そういう情なんかを取っ払って考えてもサファイアの参加は絶対だ。
「相性悪い高レベルの方が、相性良い低レベルより役に立つからな」
サファイアが70の力だとして……それ以上の人材が野良で見つかるかと言えば……可能性は低い。
そんな幸運にかけるならレベルを上げてゴリ押しした方がマシだ。
ゴールはここでは無いのだから。
「だから変な事言い出すなよ。……どうしてもって言うなら代わり探してきてくれや」
「……ブラックなコンビニバイトみたいな事言うんだな」
……代わり用意してから辞めろって言われるんだっけ?
バイトした事無いから詳しく知らんけども。
「そもそも全体のレベルアップ必須だからな。お前代えたぐらいじゃどのみち変わんねえよ」
まあ、うん……。そうだけどタツも言い方ってものが……。
「お前たちは……優しいのかなんなのか分からなくなってくるな」
……タツと同列にされるのは心外だな。
あいつよりは気を使っているつもりだが……一応。




