火力不足
下見のおかげでなんとなくだが、このクエストが掴めてきた。
二手に別れ道中のボスを倒しながら進んでいき、今までの隊長全てを倒したらクリアー……だと思う。
第一関門で諦めたから予測でしかないが……こうだろう。
見た感じザコ敵が存在せず、ボスの姿しか見えなかった。
……いわゆる『ボスラッシュ』というやつだ。
「どうよ、そっちは。いけそうか?」
死んで一足先に町に帰ってきていたタツが話しかけてくる。
「まだなんとも……出来れば一人目だけは倒したかったかなあ」
無いと思う……いや、無いと信じたいが……二人目以降の強さが跳ね上がったり複数人で出てくる可能性もある。
そうなったら……残念だけどお手上げだ。
素直に別のクエでレベル上げコースになる。
「俺もそう思うが……この人数じゃ無理だよな」
無理……というか長くてだれる。
いつになるか分からないけど……他のメンツ待ちだな。
そう思い、諦めようと声を上げる直前に……。
「あ、あの……」
「ん?サラどしたん?」
思いもよらない人間からアイディアが出た。
「よ、四人で集まったらダメなんですか?」
「四人……?」
「ぜ、全部倒さなくていいんですよね?それなら片方に集まって途中まで行けば……」
おおう。盲点だった。
「サラ……」
「ダメ……ですか?」
「天才!!」
「ええっ!?」
俺の素直な感想。
そういやそうだ。何もキレイに分ける必要無かった。
「……お前たちは賢いのか抜けてるのか分からなくなるな」
……どうしても『クリア』が頭をよぎるからじゃないかな。
今の人数だとクリアできる確率は0に等しい。
しかし、人数を片方に集中させると完全に0になってしまう。
僅か数%ではあるが、クリアの可能性があった方に自然と考えがいってしまったのだろう。
【火遁の術】
タツから放たれた火球が疾風のなんちゃらさんに命中し……倒れた。
【くっ】
【またも敗れるとは……】
【後は……頼む……】
仲間に後を託しその場に倒れ込む疾風のリンドウ。
いや、この演出さあ……。
「味方側だろ。これやるの」
ですよねー。味方がラスト付近でやる事だろ。
一人目のボスを倒し……予想通り先へのバリケードが一ヶ所解放された。
「大した事なかったな。この調子なら楽勝ではないか?」
……しかし、サファイアに答える者はいなかった。
「……どうした?私はおかしな事でも言ったか?」
確かに危なげない戦闘だったと思う。
体力が減ってからの『ステルス』による奇襲攻撃も健在だったが、あの時と今とでは状況が大きく異なる。
ヒーラー抜きで、さらに時間がなかった前回と、時間制限が無く人数に余裕がある今回。
見えようが見えまいが俺が受けて回復してもらえばいい。
即死さえしなければ単発の攻撃など怖くはない。
勝てるのは当然と言っても良いだろう。
問題なのはその過程だ。
「……スキル使い過ぎかもな」
大事なのは余力を残せるかどうかの訳で。
「そう……か?私はまだ余裕あるぞ。……他の皆もそれほど多く使っていない印象だったが……」
「ん……悪いな。まだ分からん。俺のただの感だ」
タツの『感』か。
……俺もこの先嫌な予感がしてならない。
まあ、『感』は置いて考えよう。
ボスは全部で六人。単純に考えて3:3で分かれてるとしよう。
それぞれのボスを1/3のスキル消費で倒さなくてはならない。
……現状だと非常に厳しい。やはり、レベルアップは必須か。
バリケードから少し進むと先程と同じような場所に出た。
同じような広さの空き地に同じようなバリケード。
そして……。
【へぇ……リンドウのヤツを倒したってのかい】
【やっぱりアタシの目に狂いは無かったみたいだね!!】
【『破城のガーベラ』!!今度こそ叩き潰してやるよ!!】
同じようなボス戦……。
【大切断】
この攻撃も何回目だろう。
こいつの他にあの……山賊だか盗賊だかのボスも使ってきたっけか。
この攻撃を問題無く盾で受け止める。
流石に雪原クエストを超周回しただけはある。
新防具にレベルアップと、こちらが強化されているだけあって、前回よりダメージがかなり低く感じる。
……ただ問題は。
【火遁の術】
【光牙斬】
PT全体の攻撃力が低過ぎる……。
タツの術も勇者の技もいまいち決定力にかける。
プレイヤースキルを考えないとしよう。
ウチのPTの中で最大火力を誇るのはマイかカスミだ。
物理と魔法の違いがあり、どちらが上かは比べる事が難しい……が、少なくとも他のメンバーには負けないだろう。
その次……三番手には魔法剣士のロロが入る。
そして魔法剣士に無い、速さやデバフなど、搦め手を使う分忍者が四番手になってしまう。
……この次は、正直良く分からないというのが本当のところだ。
守備専門のタンクの俺。
ヒーラーだが、強力な自己強化を持っているミイ。
範囲強化を持つ反面、単純なスペックを抑えられているサファイア。
……正直だれでも同じなくらいだ。
瞬間火力ならミイだが、スキルが切れた瞬間その差はひっくり返る。
……そう、残念な事に今この場には火力上位三人が誰もいないのだ。
タツの【猛毒付与】により、毒となったガーベラ。
体力はようやく半分ちょいを削ったといったところか。
……毒耐性無くて良かった!!
互いに決め手に欠けるこの戦いで『毒』は非常に役に立つ。
「……しかし長いな。どれくらい時間たった?」
「まだクエ始まってから十五分ちょいだぞ」
「ん?そんなものか……?」
サファイアが間違うのもしょうがない。
長い……というより動きが無いんだもの。
普段と違い、味方に攻撃スキルを持つ者が少ないからチマチマ通常攻撃で殴り合っていて……正直地味だ。眠たくなってくる。
そもそも一度倒した相手。どうしても緊張感が湧かない……あれ?
……んん?
何かが引っかかる。
俺たちはこいつ倒したっけ?
……あ、考え事してる場合じゃ無かったな。
【ギロチンスラッシャー】
斧を頭の上で真上に構え、そこから勢い良く振り下ろす。
少なくともこのゲームで見るのは初めてのスキル。
完全に油断していた。
気付いた時には巨大な真空波が斧から放たれた後だった訳で……。
「ショウ!?」
「ショウさん!?」
「……なんとか大丈夫」
『なんとか』大丈夫だった。
最大HPの七割程持っていかれたが。
【ヒール】
サラがいてくれて良かった。
ミイかサラがいなかったら、ここで終わりだっただろう。
「こんな攻撃見た事ないぞ!?新技なのか?」
「あー……サファイア、それ違う」
この技こそが先程感じた違和感の正体だ。
「ん?前回使ったか?」
「俺も記憶にねえぞ、こんな技」
タツもか……。まあ、勘違いしていても仕方無いのかもしれない。
現に俺も先程まで勘違いしていた。
「……俺ら前回こいつ倒してないだろ」
「何を言っているんだ?確かに私たちはクリアを……あ!!」
そう、クエストを『クリア』はしたんだ。
……こいつと戦わずに。
「恐らくこの技の設定だけはされてたんだろ。一回目はボロ負けだし、二回目は戦いすらしなかったからな」
このタイミングで使われたという事は、例のごとく、ボスが弱った時に使う必殺技ポジションだろう。
残念ながら二回ともこいつを弱らせてはいなかったので、見た覚えが無かったのだ。
……しかし、謎解きを終えたところで何かが解決した訳ではない。
そもそもあれへの対抗策を見つけてはいないのだから。
【ギロチンスラッシャー】
「ああっ、くそっ!!」
単純に耐えるしかない。
既に『防御の陣』を張っている。
ガードも気休めレベルだが出来ている。
こうなったら後はサラの回復に託すしか方法はない。
……そんな事を思いながら直撃した。
【ははっ】
【あんたたちやるねえ】
【久しぶりに楽しかったよ……】
そう言い残すとガーベラは倒れた。
二人目を撃破し、辛くも勝利をもぎ取る。
しかし……。
「サラ、回復どれくらい残ってんだ?」
「え、と……。ヒール三回です。ヒールウインドウはまだたくさん……」
「……分かった」
そう言うとタツは少し黙ってしまう。
「あ、あの……。使い過ぎでしたか?」
「ん……いや、そんな事無いぞ。敵が単純に強かっただけだ」
……無いとは思うが……地雷踏むなよ?
『使い過ぎだ』とか言ったらサラは気にするからな?
まあ、フォローしないでも、タツの言う通り敵が強いだけでサラに落ち度無いんだけどさ。
決定力の無さがここに来て大きく響いてしまった。
大技ぶっぱなしてくる相手に持久戦とか、回復スキルが持つはずが無い。
「……まあいいか、どうせ目的はほぼ達成だしな」
そう、恐らく次が東側最後の相手だ。
倒せなくても誰かだけど分かれば対策が立てられる。
……対策立てても結局はレベル上げ必須だろうけど。
「ん?開いてねえな……」
バリケードを抜けて歩いてきた先には……バリケード?
……あれ?ボス素通りしたとか?
「おい、こちらにも開いてない場所があるが……」
サファイアが見つけたのも……バリケード。
んー……一度地理を整理してみよう。
俺たちは町を東から出て、北に真っ直ぐ進んで来た。
進行方向から西は町を囲う壁。東は岩山。南は行き止まり。
一本道なので間違いは無い……はず。
「タツ、西ルートも似たような地形だったか?」
「ん……ああ。基本的に上に向かって真っ直ぐだ
な」
……良いけどね上でも。いや、今はそんな事どうでもいいや。
そうなると両チームが北に進んで……。
「ここが合流地点……か?」
バリケードは北と、西側に一つずつ。
東西の敵全てを倒したらここで合流し、北のバリケードが開くのだと思う。
「なあ、ショウ、タツ。そうなると最後は……」
……正直少し予想していた。
出来れば当たって欲しくは無かったが。
「ボス二体対全員だろうな」




