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ウチのPT@0  作者: ららら
1章 ゲームスタート
7/84

はじめてのなかま

今更ですけど

「」通話などによる普通の会話

【】がチャットやメールなどゲーム画面に表示される文章となっております。

「ギャギャギャ!!」

「キィキィ」

今、俺たちはこの奇声をあげている二種類のモンスター『コボルト』と『フライアイ』と戦っている。ーー正確には戦っているマイとミイの姿を見ている。

【最初は私たちが戦うから見ててください(*´∀`)】

【何かオカシイところがあったら言ってくださいね( ̄▽ ̄;)】

……だそうだ。二人のやる気を削いでも悪いと思い、俺とタツはあまり手出しをしていなかったのだが……。

「どうしようかこれ……」

「確かに『合わない』だわ……」

『合わない』ーー『ヘタ』でも『弱い』でもなく『合わない』。この意味がようやく分かった。初心者にアドバイスの一つでもすればいいと思っていたが、どうやらそうはいかないらしい。


 剣を手に襲いかかってくる犬の獣人コボルト。それを絶妙のタイミングで回避し、すれ違い様に剣で切りつけるミイ。

その名の通り羽がついた目玉のフライアイ。その巨大な目からビームを撃ってくるが、撃つ直前に火球をぶつけ撃ち落としていくマイ。

この調子なら暫く手を貸す必要はなさそうだ。大したダメージも受けてはいない。良い立ち回りだと思う。ーーミイがヒーラーでさえなければ……。


第一陣のザコを二人だけで突破した後、次に現れた敵と四人で戦ってみた。しかしミイの立ち回りは変わらない。人数が増えても基本的に接近戦を繰り返す。タツが試しにわざと攻撃を受けてみる。すると、後ろに下がり回復の呪文を使ってくれた。

「なあ、なんて言えばいいんだ……?」

「任す!!そもそもお前が引き受けたし」

「ひっでえ……」

正直俺もどう言ったらいいのか分からない。

これには正解がない。

プリーストーーヒーラーを代表するかの様な職業だ。数多くのゲームに登場しているメジャーな職業であり、名前だけでもRPGに熟練した者ならばどのような職か分かってしまうだろう。傷を負った仲間を癒しの術で助ける職業である。

では、回復が必要ない時には何をするのが正解なのだろうか。

これは本当に分からない。

『ミイのように前線で戦うべきか?』

『後ろで待機し、回復に備えるべきか?』

これは全員が納得できる百点満点の答えなんて存在しない。

はっきり言ってプリーストの攻撃力は微々たる物だ。今はまだいいがスキルが揃う後半ではその差が顕著に現れてくる。

前線で戦ったところで大した火力にならず、ヒーラー負傷のリスクが高まる。これなら後ろでただ立っていたほうがマシ。恐らく『合わなかった』PTの人たちはこの考えだったのだろう。

ミイは真面目で素直なんだとおもう。聞けばネットどころかゲーム自体初心者らしい。周りの足引っ張らぬよう、練習して、練習して、練習して、練習して……。皮肉にもヒーラーとは真反対に進んでしまったのだ。才能があったのか努力の賜物なのかは分からないが、普通にうまい。

『敵の攻撃に当たるから後ろに下がってくれ』

これを当たらない人間に言うのも躊躇われる。

そもそも前線に出るヒーラー以上にダメージを受けるアタッカーもバツが悪いだろう。

【私たちオカシイところありました?(つд;*)】

【おねがいします。おしえてください】

ーーヤバい、まだ思いつかない。

本当にタツに丸投げしてやろうか。

『後ろで回復に専念すればいいですよ』

これを送ればすべて解決する。ただし今までの努力全否定だ。全部平仮名で送ってきたたどたどしいチャット。ネカマの事なんかもう、これっぽっちも疑ってはいない。完全に初心者だと確信して行動している。顔も声も分からない相手。分からないから相手の様子がうかがえない。

震えながら送ってきているのかもしれない。

返答によっては泣いてしまうかもしれない。

ーーこれを教えたらこのゲームを辞めてしまうかもしれない。

画面の向こうの人の事を何一つ知らない。

しかし、それでも自分と同じ『人間』がいるのだ。

『失敗したからリセット』なんてできない。

例え実際に会う機会がなくても『ゲーム』で誰かを傷つけたくはない。

うまく言葉にはできない。ただこの先もこのゲームを楽しんで貰える様にチャットを打ち始めるーー。


【全然悪いとこなんてなかったよ(^-^)】

自分が完成するより先にタツが送っていた……。

そしてタツのチャットは続く。

【きっとその人たちが見る目なかったんだよ】

これは……。

【だから今のままで大丈夫(^_^)v】

ぶん投げやがったこいつ……。

【本当ですか!Σ( ̄□ ̄;)】

【ホントホント、ボクたちとフレ登録して欲しいぐらいだよ(^-^)】

【嬉しいです((o(^∇^)o))ぜひお願いしますo(*⌒―⌒*)o】

……どんどん話しが進んでいく。いや、別にいいんだよ?いいんだけどさ……。

「なんか初心者騙してるみたいじゃね?」

「うっせえ」

本人にも自覚はあったらしい。

【こちらこそよろしくね(^-^)】

タツはそのまま突き通すらしい。

【二人ともよろしく!!】

俺も諦めた。まあいいか、悪いことしてる訳でもないし。

【それじゃあフレンドコード送りますねo(*⌒―⌒*)o】

マイのこのチャットの後、二人からフレンド申請が届き、すぐに俺もタツも登録する。

【よければだけど二人もボイチャしない?】

【ボイチャ?】

【ボイスチャットの略】

【なるほど( ・∇・)】

【そそ】

【マイク持ってないんですよ(T_T)】

タツとマイのやり取りを見ていたが、少し違和感を覚える。

【マイさんとミイさんって既にボイチャしてるんじゃないの?】

思わず口を出す。あの二人は連携が取れていた。いや、取れ過ぎていた。チャットを打ちながらとも考えにくい。

ーーとここまで考えてから、さっきのチャットを後悔する。

警戒してるのか……。まあそうだろう。会ってすぐに『ボイチャしようぜ!!』とか怪しいわ。

どうしよう……。やんわり断ろうとした二人の退路を潰してしまった。

どうにか話題を変えようと、チャットの中身を考えていると予想していなかった文が送られてくる。

【あれは直接話してるんですよ~(*^o^)/\(^-^*)】

【今もミイちゃんと隣でプレイ中です(^^)人(^^)】

ーーうん?友達同士が遊びにでも来てるのだろうか。PC二台環境とか凄いなー、などと思っていたら次のチャットがきた。

【私たちリアルで姉妹なんですよ(・∀・)人(・∀・)】

マジか。まあ、ある意味納得だ。キャラが似ている理由もそうなんだろう。マイがゲーム初心者のミイを誘って開始したんだろうか。

【マイクって有ったほうがいいんですか?( ・∇・)】

【まあ、あったほうが便利】

これは別に『女の子と話したい!!』なんて下心ではない。別にオッサンだろうが幼女だろうが等しく誘っていた。戦闘中にチャットまでは操作しきれない。少なくとも俺には不可能だ。それ故に声でのやり取りは必要になってくる。

【それじゃあ早めに用意しますねq(^-^q)】

【んじゃ、マイク買ったら教えてくれ】

タツのチャットが段々素になっていく。

そりゃそうだ、ボイチャ始めたら猫被りバレるもんな。

【あ、ちょっと待っててくださいm(__)m】

このマイのチャットの後、数分会話が止まった。

【ごめんなさい!!二人とも落ちますね(T_T)】

突然のログアウト宣言。姉妹なら家の用事でもできたのだろうか。

【マイク買ってきます(*´∀`)】

【はえーよw】

はえーよ。思った瞬間にタツがツッコミを入れていた。

【そんなに焦って用意する必要ねーぞw】

正直ウチらが急かして用意させるみたいで気が引けてしまう。

【でも、ミイちゃんが乗り気だし(/_;)/~~】

意外だ。あまり喋らないタイプだと思っていた。チャットが苦手なだけで実際の会話は好きなんだろうか。

【そんな訳で落ちますね(*´∀`)】

【たぶんお昼前には帰ってきます\(^_^)/】

【おつかれさまでした、私たち姉妹をよろしくおねがいしますo(^-^o)(o^-^)o】

【おつかれさまでした】

本当に買いに行くらしい。凄い行動力だ。

【おつ~マイク買ったらボイチャの設定教えるから言ってくれ】

【おつかれさまでした~】

おつかれのやり取りを終え二人がログアウトしていく。なんやかんや言ってもタツは面倒見がいい。何はともあれ新たなフレンドが増えた。



『ウチのPTは@4』です

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