最終決戦の下見
「おはよう……ずいぶんと盛況だな」
この声……サファイアか?
こんなに早くとは珍しいな。
「はよーっす」
「おはようございます」
「おはよう」
「……一体どうなっているんだ?結局自分たちで売っているのか?」
どうなっている?逆にこっちが聞きたいくらいだ。
正直ここまで売れるとは思わなかった……が、今はそんな事よりも……。
「サファイア、ナイスタイミング」
「む?何がだ?」
早朝バイト一名確保。
「結局品切れとはな……」
サファイアの分の素材を使っても数十分程度しか持たなかった。
これで四人の水系素材の在庫はほぼ0である。
「案外防具も売れるんだな……」
恐らくこれを装備して自分たちもクエ回しで一攫千金でも夢見ているのだろう。
……その頃には値崩れが今よりも激しくなっているかもしれないが。
しかし貯まった貯まった。
時間にして三十分程度で一人頭百五十万程。
アプデ後からインフレ具合が凄まじい事になっている。
……だからといってゲームが楽になるかと言うとそうでもない。
店に高額なレアアイテムが並んでる訳でもないし、町には金でどうこう出来る施設がある訳でもない。
プレイヤーから金で強力なアイテムを買おうにも自分たち以外も稼いでしまっている。
あって困る訳ではないが……まあ、別にそこまで重要ではないのだ。
「しかしどうするよ……微妙な人数だな」
現在四人。……野良で募集をかければランクを落としたクエに行けなくもない。
ただ、もう少ししたらマイやミイが来るかもしれない。
野良中に身内がログインすると……正直対処がメンドイんだよなあ。
「……前から二人に聞きたかったんだが」
二人?俺とタツか?
「お前たちはいつもこんなに早いのか?」
「ああ」
「普通だろ」
何を今更。
「……そうか」
何かを諦めた口調でサファイアは返事をする。
……いや、俺はおかしい自覚があるけどタツは本当に『普通』と思っていそうだな。
「あー……暇だしアレいくべや」
アレ?何かあったか?
「アレ?」
「あーっとな……アレだアレ……。次のストーリーのやつ」
あー……クエスト名なんだっけ。
最後の戦いとかそんなんだっけか。
「よ、四人でですか……?」
「下見だ下見。……流石に四人でクリア出来ると思っちゃいねーよ」
……まあ、そうだろうな。
「あ……良かった。」
情報もネットに出ていないし……一回見に行く必要はあるか。
「んじゃ、クエ持ってくるわ」
そう伝えるとクエストの受注場所に歩き出すのだった。
「なあ、タツ、ショウ……」
「あん?なんだよ?」
「ん?」
「このクエスト『隊長全員』と書いてあるが……?」
「あるな」
「……こちらが全員いても勝てるのかこれ?」
「確認の為に行くんだろうが」
「ああ……まあ……そうだな」
……こっち八人いても無理だろうなあ。
「それにだ……敵が一人づつ向かってくるなら勝てるだろ」
今まで出てきた敵国のボスの数は六人。
八対六で真っ向からぶつかったのなら間違いなく勝ち目は皆無。
しかし、一対八を六回繰り返せるなら勝ち目はある。
【どちらの場所に配置するか選んでください】
……は?なんだこの選択。
「あん?なんだこりゃ……」
タツもか?俺だけじゃない?それならクエストの受注主関係無いのか?
「あ、あの……。説明文に二手に別れろって書いてありましたけど……」
「は?マジかよ」
「え?マジで?」
「……中間に書いてあったが……見てないのか?」
見てないのか?そんなん当然……。
「「見てない」」
「はあ……」
大きなため息が一つ聞こえた。
「と、東西の二手に別れて迎撃してくれ……って書いてありました」
「へえ……よく読んでんな」
本当にな……あんなんフレーバーテキスト的なあれだと思ってた。
「タツは読まないのか?マメなタイプだと思っていたが……」
「読まねえよ。長ったらしい……」
だろうね。
「……ショウは?」
「読んだけど忘れた」
隊長全部のインパクトが強すぎて忘れたんじゃないかな。
「お前たちは……。まあ、いい。とにかくどうするんだ?」
どう……と言われても。テキトーでいっか。
「俺とサラ。タツとサファイア。場所は……俺らが東な」
「あいよ」
「はい」
「了解だ……が、随分と決めるの早いな」
「現時点で何も分からないからな。考えたって無駄無駄。」
「……成る程」
『死』のペナルティなんて無いようなもんだしな。
【やはり来ていただけましたか】
【ふふっ】
【いつの間にか貴方が側にいるのが】
【当たり前になってしまいましたね】
「……勇者が当たり前になってきやがったな」
「『最終決戦』でいない方が不自然だろう?」
「……まあな」
そりゃそうだ。
【あの後陛下に確認を取りました】
【確かに邪神はこの地に封印されています】
【……しかし】
【あの陛下が封印を解くとは考えられません】
「……は?なんの話しだ?」
「前回王に確認取ると言っていただろう!?もう忘れたのか!?」
「あー……言ってたっけか」
残念サファイア。忘れたんじゃない、読み飛ばしてたからそもそも覚えていないんだ。
【その証拠としてこれを預かって来ました】
そう言うと勇者は一つのカギを取り出した。
……なんか展開が読める気がする。
【邪神の封印を解く事の出来るカギです】
【潔白を示す証として私に預けてくれました】
「なあ……そんなものを渡して大丈夫なのか?」
「敵にパクられて復活パターンじゃねーの」
何故に前戦で戦う人間にそんなもの渡すのか。
ウチの王様黒幕じゃなくて、単なるバカなのかね。
【邪神の事について疑問はあるかと思いますが】
【今は私に手を貸して頂けませんか?】
【ーーありがとうございます】
【……こうして共に戦っていると】
【仲間……に見えますかね?】
→【はい】
【いいえ】
「あ?動かせねーぞ」
「私もだ……」
あれ?普通にカーソル動くが……。
「……俺動くぞ?」
「それなら……クエの受注者が選ぶんじゃね?」
ああ、そういう事か。
どっちもでもいいが……。
【はい】
→【いいえ】
『いいえ』にカーソルを合わせてボタンを押した。
【はい】
→【いいえ】
このゲームっぽい表現縦書きだとどうなってしまうんだろう




