深淵の世界へ
【どうもありがとうございました(^_^)】
大手……らしい商業系ギルド『アポカリプス』との商談が終わった。
……それっぽく言ってみたけどアイテムの売値聞いてみただけだが。
「どうすっかね……」
アポカリプスでの『ブルーグラディウス』の販売価格は約30000G
買い取り価格は20000G
おおよそ2/3程度。
うーん……売るべきか?
「しかし凄い人ですねぇ。これ、今無理に決めなくてもいいんじゃないですかぁ?」
「んー?」
「明日や明後日なら人も少しは落ち着いてるんじゃ……」
それじゃあ遅すぎる
「値崩れするからパス」
「え……?早くないですか?」
そんなもんだろう。
……一週間もすれば確実にNPCの店の定価と変わらない値段になると思う。
「……ショウやタツは二、三日でそこまで暴落すると思うのか?」
「「する」」
「おおう……ハモりましたねぇ」
「即答だったな……理由は?」
「一つ目は供給先が多すぎる。リアルと違って大元の供給は一つじゃ無いだろ?」
「あー……まあ、そうですねぇ」
リアル世界と違い製造から販売までのフットワークが軽すぎる。
ワンクリックで出来てしまう商品に、出来てすぐに販売可能な店。
製造や納品などのタイムロスをバッサリ切る事が可能。
……これが一企業ではなく個人で複数いるのだ。
「分かった……タツ、二つ目は?」
「需要が見た目より少ないんだよ。消費アイテムならともかく武具だしな」
「ん?武具だとどうなんだ?」
「一人一個でいいだろ。全員に行き渡ったら二本目買う奴いねーよ」
リアル……で剣と言うのもおかしいが、この世界では武器破損の心配が無い。
現実と違い、破損はおろか刃こぼれの心配すら無いのだ。
ランダムエンチャントで多少の差違はあるが……そこまで拘る人間なら自力で作るだろう。
「三つ目」
「な!?まだあるのか!?」
「俺らみたいのが売りまくるからさらに加速すんだよ」
「……つまり私たちもこの競争に参加すると?」
「おう。またさっきのクエ周回だな」
実際、今はボーナスチャンスだ。
極一部の人間だけの極一部の期間のだが。
「……なんというか」
「あん?」
「いまいち納得いかない……ような」
「今説明したろ……。それともまだ理由が必要か?」
「あ、いや、そうじゃないが……」
どうもサファイアは歯切れが悪い。
……ああ、なんとなく分かった。
「……弱みにつけこむみたいで……こう」
やっぱり……。キャラ通りマジメっぽいもんな。
サファイアの言ってる事は分かる。
ただなあ……。
「普通に商売してるだけだろ?おかしいか?」
俺もこいつも別ゲーで散々やってきたからなあ……。
麻痺してんじゃねえの感覚が。
「普通……普通?……これが普通なのか?」
定価の十倍とか行楽地のジュースもびっくりだが……ネトゲなら大抵こんなんだし。
「別にゲーム内のルールは破ってねーぞ」
別にポーション一億で売ろうがルール違反ではない。
本当にアウトなら定価を基準にした値段の上限でも決めておくだろうし。
「いや、そうですけどぉ……。サファイアさんが言ってるのはマナーというか……」
「ネットのマナーなんてこんなもんだろ」
「……そうですね」
あ、マイは諦めたな。
「なあ、家具屋がオープンしたの知ってるか?」
「あ?そんなもん公式に書いてあんじゃねえか」
そらお前は知ってるだろうよ。
お前じゃねえ。他……というか女性陣に言ったんだ。
「家具屋……ですか?」
「あ、そんなん出来たんですねぇ」
姉妹が食いついてくれた。
「新しいぬいぐるみとか売ってるんだが……高いんだ」
後は言わなくても分かるだろ?
「ショウさん……卑怯ですよぉ」
ほっとけ。とにかく今はこのゴールドラッシュを逃したくない。
「さて、クエストに行きましょうか!!」
あっさりミイが釣れた。
「うわぁ……ミイちゃんがぁ……」
【行きましょう】
カスミも乗ってきた。
……意外とノリが良いのか?
家具関係ならサラも乗るだろう。
単純に金稼ぎになるならロロも大丈夫だ。
後は……。
「……分かった、私もいいぞ」
これなら全員参加だな。
『白銀に舞う鮮血』
舞うどころか、血で真っ赤に染まりそうな位狩りまくった。
現在深夜二時。
あれからぶっ通しでクエ回し……は流石に無理なので適度に休憩を入れながら。
「……そろそろ解散すっか?」
「……逆にサラ抜きで出来るのか?」
「ごもっともだ。んじゃ、解散すんぞー」
サラの中身は……深淵の世界へと旅立ってしまった。
……いわゆる『寝落ち』
ここ数回のクエストで動きが怪しかったが……遂に前回のクエストで限界を迎えてしまった。
「明日はサラちゃんに優しくしてあげてくださいね?」
解散直前にマイから言われた言葉。
珍しく真面目なトーンだと思う。
「あん?何でだ?」
……だと思ったよ。
「俺が分かってるから大丈夫」
「それならいいですけど……じゃ、おやすみなさい」
「おやすみー」
「おやすー……ありゃどういう意味だ?」
「……タツはサラの寝落ち攻める気無いだろ?」
「ん?攻める必要無いだろ」
……だよな。それならいいんだ。
「それが聞ければ充分だよ。んじゃ、俺も寝るな」
「あ?お前までなんなんだよ」
それがログアウト直前に聞いた言葉。
たまには、少し位困らすのも面白い。
サラの明日開幕一番の言葉を予想しようか。
間違いなく『ごめんなさい』だ。
寝落ちなんか良くある事だけど……これもサラは気にするだろうなぁ……。
……今のうちにサラへのフォローの言葉考えとくか。
タツは良くも悪くも気にしてないし……これは俺の仕事だろう。
今はとにかく……寝落ちで風邪なんか引かないで欲しい。




