ガチャガチャ
……凄い人だかりだ。
マイがうるさいので、さっさとガチャの店まで来てみたが……人が多すぎてもはや何がなんだか分からない状態になってしまっている。
……別にプレイヤー同士が物理的に干渉しないから、順番待ちの類いは無いので別に大して問題は無いが。
「うっわぁ……人が重なりまくりで店員見えないですねぇ……」
集まっている人間の殆どが、店員がいるであろうカウンター前に集中しているので訳が分からない状態だ。
頭上の名前は重なって文字化けみたいになっているし、キャラの方はキメラや悪霊の集合体のように見える。
メンテ明け三十分もたっていないと言うのに…… いや、メンテ明け直後だからか?
……とにかくさっさとガチャ引いてしまおう。
「そういえば……これはどんなものが当たるんだ?」
サファイアなんかは公式見ないタイプだよなあ。
「んー……きっと『エクスカリバー』とか『正宗』とかがURで当たるんですよ!!0.02%くらいで!!」
お前も見てないんかい!!
……ガチャ無料のとこだけ見て景品見てないのか。
「0,02%……?そ、そうなのか……。随分と確率低いのだな……」
マイがテキトーに言った事信じそうだ。
「いいかげんな事サファイアに教えんな……。アバター変える為のアイテムがメインで武器なんて入ってねえぞ」
「ええっ!!タツさんウソですよね!?」
「景品一覧公式に載ってんぞ……」
「うええっ!?じ、じゃあ『菊一文字』とか『村正』とか……」
え、刀好きなのこいつ。
「ショックですねぇ……。伝説の武器的な物が手に入ると思ったんですけど……」
……仮に予想が全部当たったとして0,02%を無料ガチャ一回で引く気だったのかよ。
つーか、今言った武器全部装備出来ないだろ。
こいつは自分の職業分かってるのだろうか。
「アホはほっといてさっさとガチャを……ああっクソっ!!」
急にタツが叫ぶ。何にイラついているんだ……。
「どうしたんですかぁ?」
「……お前もガチャやってみ?」
「あー……ハズレで怒っちゃったんですかぁ?タツさんも心が狭い人ですねぇ……」
……そんなタイプだったか?
まあいい、とにかく俺もガチャを……。
プロフィールを確認しますか?
プロフィールを確認しますか?
プロフィールを確認しますか?
プロフィールを確認しますか?
プロフィールを確認しますか?
プロフィールを確認……うぜえ!!
「ちょっと!!全然話しかけられないじゃないですかぁ」
……これはキレたくなるわ。
店員ではなくカウンター前にたむろしているプレイヤーが優先されてしまう。
その気は無くてもプレイヤーに話しかけてしまい『プロフィールを確認しますか?』が表示される。確認しねえよ。
対処法は少しずつ角度を変え、対象者を変える事。
これならいつかは店員に……。
「あ……ガ、ガチャ出来ました」
……サラがこの難関をあっさりクリアー。
「……私も出来ました」
ミイもこの難関をあっさりクリアー。
「ちょっと!!二人ともどうやったの!?」
「ど、どうって言われても……」
「……普通に」
ミイとサラ……日頃の行いの差じゃないだろうか。
なんかこの先も絶対人様の迷惑になりそうな事しなそうだし。
「店員がマイを嫌がってんだろ」
「あ!!それ言ったらタツさんだってそうじゃないですか!?」
ああ、店員に高度なAIが搭載されてるのかもしれない。
そりゃ店先で騒いでるヤツなんか相手にしたく無いわな。
店員に話しかけるという高難易度ミッションをなんとか全員突破出来た。
……十分近くかかったが。
因みにビリ争いはカスミとマイだった……意外な事に。
これがカスミでは無く、俺やタツなら思う存分外野も先程の調子で野次れただろう。
『店員に嫌われてるトップ決定戦』とかで。
……ただカスミじゃあなあ……。
カスミがどんな人かは皆知らない。
声が聞けないので年はおろか、性別すら不明だ。
……ただ分かっている事といったら……真面目で良い人。それだけ。
俺やマイなんかの不真面目組と違って、ミイサラの真面目組に属するだろう。
……茶化せないよなあ。
中身が俺らと同年代の男なら良い。
いや、ニートのオッサンでも構わない。
……ただ中身が『カスミ』と同じ静かで真面目な
女の子だとしたら……うん、モニターの向こう側で泣かれでもしたら困る。
皆が二人に対して何も言えない空気の中カスミとマイの一騎打ち。
あのマイでさえ空気を読んで大人しくしている。
ただ、完全に黙るとそれはそれでおかしい訳で……本当に微妙な雰囲気だ。
…なるべく急かすような言葉を避けての会話。
皆会話がぎこちない……いや、これカスミにも気を使ってるってバレてるだろ。
こういうのはトークが上手い陽キャを大量に集めてやってくれ。
俺みたいな陰キャにこんな事させるな。
【ガチャ出来ました】
気まずい空気を切り裂くような一つのチャット。
「ああっ!!カスミちゃんにまで負けちゃいましたよ!!」
……こいつがビリで良かった。
「ちょっと待っててくださいよぉ……。残り物には副があるんですからねぇ……」
……もしかしたらマイは空気を読んでビリを引き受けたのかもしれないな。
外から誰がガチャを引いてるかなんて分からない。
既に話しかけるのに成功していて、カスミを待っていた可能性もある。
まあ今となっては真実を確かめる術は無いのだけども。
……どうでもいいけどデジタルの無限景品で残り物もクソも無いだろ。
少なくなったら足す……どころか減りすらしないのだから。




