姉妹
「因みにお前ら……出かける予定は?」
楽しい楽しいレベリングも終わり……タツがヤバい質問を投げつけてきた。
ログボボーナス100%のこのメンツに聞くのかよ。
「予定……とは?」
「ん?旅行で数日空けるとかそんなんだな」
「……それなら私は特に予定は無いが」
「ん……サファイア以外も大丈夫か?」
一同沈黙……うん、皆優秀なネトゲプレイヤーだ。
「どうせ暇な女ですよぉー。……そういうタツさんも出かけたりしないんですかぁ?」
「するわけねぇだろ」
一蹴。あいつ家族旅行で一人残るやつだしなぁ。
「……なんかタツさんゲーム優先して彼女出来ないタイプですよねぇ」
「……失礼だなテメーは」
それは少し間違ってる。『出来ない』んじゃなくて『続かない』だ。
顔を始めとしてタツはリアルのスペックもかなりの高水準だ。
だからそれに騙されて告白する女の子がたまーに出てくるが……長続きしない。
女が真横にいるのに俺らとボイチャしながらネトゲするとか、さすがにその娘に同情する。
しかもその愚痴を俺が聞かされるハメになる訳で……勘弁してほしいなあ。
「マイちゃんそれブーメランでしょ……」
「うぐっ……」
……そういえば前に付き合った事無いとか言ってたっけか。
「ほ、ほら私はこの夏出会うかもしれないでしょ!?」
「……この夏スーパーとコンビニ位しか出かけて無いよね?」
「客や店員さんにステキな人いるかも……」
「私たちが行くとこ、おじさんおばさんだらけじゃない……」
夏休みの大半をネトゲに費やしおじさんおばさんとしか出会わないJK……。
……なんか重力を自在に操れそうなキャッチコピーが作れそう。
「んー……そういえば、皆学生さんですよね?」
リアルをあんまり聞くな。
『五十才です』とか言われたらどうすんだ。
……いや、声でなんとなく分かるけどさ。
「まあ……」
「うん……」
「そうだな……」
ほら、微妙な雰囲気だ!!
『俺○○才だぜ!!』みたいな風にはならんだろ。
「……というか毎日昼間からログイン出来る人間なんて学生位しかいないだろう?」
サファイア!!ニートさんがいたらどうすんだ!!
「ですよねー!!ちょっと心配だったんですよぉ」
心配なら聞くな!!心の中に閉まってそのまま封印しておけ!!
……定期メンテまで後三十分。
これから何かに出るきもしないし……このまま最後までダベりかな?
俺はこんな時間も割と好きだ。
ネットだけの付き合いが無く、透明だった人物像に会話によって色が付いていく……そんな時間。
……タツは少しでも経験値を稼ぎたいかもしれんが。
「……ってあれ?タツさんは?」
……あれ?そういえば近くにいない。
会話聞いてて気づかんかった。
「買い物」
ああ、うん。戦わなくてもキャラクターの為になる事は山程ある。
クエを早々に諦めてそっちに切り替えた訳か。
「うっわ……タツさん団体行動できねー……」
どうでもいいけどなんか地味に口悪いな。
「うっせ!!ボイチャには参加してんじゃねぇか」
「うーん……いや、そうですけどぉ……絵的と言うか……ねえ?」
同意を求められても……言ってる事は分かるけど。
「修学旅行とか皆と一緒に仲良く回れました?」
「バカにしとんのか」
修学旅行の自由行動でネカフェに引きこもるという素晴らしい提案しやがったけどな。さすがに却下されたが。
「修学旅行のお土産でゲーム買ったりとか」
「……しねえよ」
「あれ!?言い淀みませんでした!?」
『ゲーム』は買ってないよな。
PCのメモリしか買ってないよな。
……中学の修学旅行でメモリ買う人間は全国にどれだけいるのだろうか。
「……ミイちゃんは高校でこんな修学旅行マネしちゃだめからね?」
「ほっとけや」
「……マイちゃんウザい」
「わーお、ミイちゃんツンデレ!!」
マイへの態度に関してはツンしか見てないが。
なんだろう、リアルではデレたりしてるのか?
……想像つかんな。リアルでベタベタして叩かれてる姿しか目に浮かばない。
「つーか、修学旅行なんて一緒にお前ら一緒に行くんじゃないのかよ」
「……へ?」
「あん?……ああ、違う高校か」
「んー?……いや、学校は同じですけど……」
……なんだろう話しが噛み合わない。
「……なんで同じ学校で修学旅行別に行くんだよ」
「いやいやいやいや……」
……これもしかして。
「年が違うからに決まってますよね?」
「……は?」
「いや、『は?』って言われても……。普通に姉妹って最初から言ってるでしょ……」
「……双子じゃないのか?」
「……普通に年の違う姉妹なんですけど」
「え、マジでか」
マジでか。
「……なんでタツさんは双子だと思ったんですか?」
「ええ……。いや、キャラ的にそうかなって……」
「キャラ的ってなんですか!?そもそも双子の確率どんだけだと思ってるんです!?」
「あー……うん」
「漫画やアニメの見すぎですよ。……そもそも双子に現実で会ったことあります?」
「いや、ねえな……」
……そう言えば姉妹とか姉とか言ってたけど双子とは言ってなかった……と思う。
てか、『俺も双子だと思ってた』なんて言わなくて良かった。
「だったらなんで私たちを双子だと思ってるんですか!?双子なんて全然いないの分かってたでしょ!?」
「うん……マジでごめん」
マイが全部ド正論だから困る。
普通に考えたら双子なんてめったに会わんわ。
「いや、でもさ……」
「はい?」
「ショウも双子だって言ってたぞ」
「あ!!ショウさんまで!?」
……人を巻き込むな。
てか、これ……マイって年上か?
ミイが高一とかどっかで聞いた気がしたから安心していたが……双子で無いとしたらマイは高二か高三……。
どっちにしろ年上か……マイ『先輩』……。
気分的に嫌だなあ。
「ちょっと!!ショウさんタツさん聞いてます!?」
これが年上かあ……。
「はーい聞いてまーす」
「はーい聞いてまーす」
「ああもう!!」
そもそもなんでここまで怒られなければならんのか。
「ミイちゃんもほら!!」
「……コレと双子だと思われるのはちょっと……」
「ちょっと!!ミイちゃん辛辣過ぎだよ!?」
……そうだな。『コレ』と双子は嫌だな。
うん、今の一言で目が覚めた。
「ああ、確かに……ミイ、ごめんな」
「ごめん、ミイ……本当に悪い事したわ」
「絶対バカにしてるでしょ!?なんで無駄に息合うんですか!?」
……バカな話題で盛り上がっているがメンテナンスの時間が近づいてくるにつれ、一人また一人とログアウトしていく。
「じゃーな。また明日」
「乙ー。明日な」
「お疲れ様でしたぁ。二人こそ寝坊しないでくださいね!!」
「お疲れ様でした。……おやすみなさい。」
メンテナンス十分前……最後まで残ったのはこの四人だった。
「ふわー……。眠いね」
ログアウトして一人……にはならない。
この世界に誘ってくれた姉がいつも隣にいる。
「ミイちゃんもう寝よっか?」
直接は恥ずかしくて言えないけど。
「……ミイちゃんお休みー」
「……お休み」
ありがとう……この世界に誘ってくれて。




