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ウチのPT@0  作者: ららら
3章 ギルド結成
48/84

身内

この物語はフィクションです。

本当はネトゲの野良はとってもとっても楽しいです。

【戦神の憑依】

ワラウドさんが最後のバフを発動させる。

このメンツでバフの効果が残っているうちに倒すのは不可能だろう。

あの動画ではトロルに出会ってから二回目の発動で倒していた。

あの動画より火力が低く、かつ人数も少ない。

たぶん三、四回分の使用回数が必要なはず。

……楽しい楽しい泥仕合になるだろうな。


 トロルが右手に持った棍棒を大きく振り上げる。

【マジックシールド】

その棍棒が振り下ろされ、俺に命中する直前に障壁が現れた。

キュイイイン。一撃で壊されないか不安だったが、どうにか盾は持ちこたえてくれたようだ。

タツとワラウドさんによる高速の斬撃。

【フロストインパクト】

【ヘッドスナイプ】

そして魔法と弓矢による遠距離攻撃。

ここまでは想像以上に良いペースだ。

だいたい三割程削っている。

……『ここまでは』。

さて、ここからが本番だな。


「サラ!!回復どれくらい残ってる!?」

「え……と。半分以上です……」

「え、マジで?」

「あ……ごめんなさい。……使い過ぎました?」

「いや、違う!!逆!!」

結構残ってたな……。

てっきりもう少し使っているものだと……。

「あれだ、あの二人のおかげだろ」

あの二人?タツは誰の事を……。

……ああ、そういう事か。

「あの二人……?」

サラが不思議そうに尋ねるので答え合わせ。

「あの最初に死んだ二人」

「……え?な、なんで?」

まあ、あの二人の『おかげ』は少しおかしいかもしれない。

「回復使う前に死んでくれたから」

すげえな、タツがバッサリ言った。


このPTの悪い点は一部の人間が弱い事。

このPTの良い点は一部の人間が弱すぎて回復する間も無く死んだ事。

考えてみれば回復が残っていてもおかしくない。

素早くあまり被弾しない二人と硬い俺。

そして、残るは後衛三人。

被ダメ率は別段普段の身内PTと変わらない。

ちょっと殴られて即回復の介護士ループになる前に死んでくれていて感謝しよう。


 さて……ワラウドさんの『戦神の憑依』が切れたか。

【そのまま攻撃どうぞ】

【回復残ってるので】

ワラウドさんに個人チャットで送る。

……サラの回復が少なかったら後衛も考えたが、この様子なら大丈夫だろう。

【了解です】

これでよし……と。

【アイシクル】

……魔法がワンランク下になっている。

やっぱり向こうもスキル尽きてきたか。

比較的余裕があるのが俺、タツ、サラ。

……これだけで倒せるかなあ。


 どうにか泥仕合戦法でトロルの体力を七割程度削る事に成功する。

全員での死力を尽くした一斉攻撃。

両脇から剣で切りつけ、頭を弓矢で射貫き、足を杖で殴る。

……別に杖で殴らなくても良いんだけどなあ。

スキルが尽きても棒立ちは良くない……なんて事は言わない。

少なくとも俺は咎める気は無い。

十二分に仕事はしてくれたし、非力な杖の一撃なんて誤差レベルだ。

ぶっちゃけ、被弾して回復させる位なら後ろで何もしない方がありがたいまである。

……あるんだけど当たらないなあ、あの人。

タゲは俺が取っているとはいえ、後衛職なのに割りと上手い。

まあ、いいか。総火力に微力ながらも貢献してるだろうし。

たぶんPTの火力100が105ぐらいになっている。

……はあ。消費税以下かよ。


「おっはよーございます!!ってあれ?サラちゃん早いですねぇ」

「おはようございます」

朝から一名が凄いテンションだな。

「あ……。おはようございます」

「はよーっす」

「おはよ」

【大咆哮】

凄まじい雄叫びで周囲の全員にダメージと低確率でスタン付与。

トロルの強力な範囲技。

「なんか音漏れしてません?三人でクエスト行ってるんですかぁ?」

今の音リアルでも耳にダメージ受けそうだったからな。マイたちにも聞こえたのか。

「三人一緒に野良ってる」

「えーっ……。除け者にしないでくださいよ」

「ちょい待ってろ、もうボスだから」

「……はーい」

タツの言うように『ちょい』待つ程度で済むといいな……。

てか、早いなこいつらも。

こんな早いならもう少し待ってりゃ良かったか。


 ……ここまでくればもう勝ったも同然だ。

長引いてはいるが、所詮は『トロル』。

一度どころか何十体も倒した相手だ。

攻撃パターンは知っているし、第二形態的なアレも存在しない。

回復スキルもヘイト操作もまだ可能な以上、このクエストでやられる心配は少ない。

……問題はクエスト内では無く……。

「あ、この『竜の角』って買い取り高くないですか?」

「「やめろ!!」」

クエストの外からの妨害工作の方が危険である。


「ちょっと、二人してなんですか、全く……」

「あ……」

買い取り?暇だから商業区でも見てるのか?

「絶対に売るんじゃねぇぞ!!」

「お前、俺らが終わるまで動くな!!」

「ちょっ、どうしたんですか二人して……。別にチャット見てただけですよぉ」

【ヒールウインドウ】

今のは両方とも少し危なかった。

あれを売られたら困るし、今も落ちそうだった……あれ?ヒールウインドウ?

殴られてたの俺だけだよな?

もしかしてヒールが尽きた……?

「サラ?」

「ご、ごめんなさい!!そ、その……さっきの声で滑って……」

『あ……』って言ったのこれの事か。

「いや、別に大丈夫……。ヒール切れた訳じゃないよな?」

「あ、はい!!まだ残ってます」

「ああ、うん。じゃあいいや……」

「二人が大きい声出すからですよぉ」

……原因お前のせいだけどな!!


 マイさん、半分マンネリ化していた空気を打ち破ってくれてありがとう。

あなたのおかげで無駄に緊張感が出てきました。

……野良メンツだけでなく身内まで敵に回ってくれるとは思わなかった。

俺とタツに『さっさと終わらせてマイを引き止める』というクエストが追加されてしまう。

このまま安全牌を切っていても倒せたが、そうは言っていられなくなった。

一撃でも多く切ってから離脱し、一撃でも多く切ってからガードする。

今の俺たちに求められているのはそんな戦いかただ。

「ミイ、絶対に売らせるなよ!!」

「え、はあ……」

タツが会話をしながらも紙一重での回避に成功する。

ヘイトは俺に向いていると言っても相手はあの巨体だ。

距離を取らないと腕の振りだけでも関係の無い人間に当たるかもしれない。

「いやいや、さすがにここまで言われれば売りませんよ!!」

……戻ったら『売っちゃいましたよ、驚きましたぁ?』とかやりかねないからな。

さっさと倒して戻らないと。

いや、このクエスト諦めてさっさと帰ってもいいかもしれない。

それほどまでに『竜の角』は貴重なのだ。


 ワラウドさんの一撃が決め手となり、トロルの断末魔が響き渡る。

クエスト報酬の確認もそこそこに……と言うかボタン連打でさっさと飛ばして少しでも早く町に帰る。

「あ、やっと帰ってきましたね。ほら、ちゃんと持ってるでしょ!!」

待ち構えていたマイからトレード申請画面を開き確認する。

……良かった、売ってない。

「どうだった……?」

「ん、大丈夫だった」

やはりタツも心配していたのだろう。

「私どんだけ信用無いんですか!?」

「日頃の行いが悪いし」

「信用無いからな」

「あーもう!!二人して!!」

「……マイちゃんが悪いでしょ」

「ミイちゃんまで!?」

よし、問題が一つ解決した。

後は……野良PTの方か。


今のクエでPTを解散するともクエストを周回するとも言っていない。

どちらともとれるフワッとした募集にしておいた。

『周回します』で酷すぎるメンツならはっきり言って時間の無駄だし、逆に良メンツが集まりすぎて『解散します』は勿体無い。

正直なところ真っ先にくたばってくれた二人を抜かしてマイとミイを入れ、周回するのが理想である。

ただなあ……。『弱いので抜けてください』なんて言えないのが現状だしなあ。

そんな事言って晒されでもしたら目も当てられない。

……いっそクエを荒らしまくってくれた方が楽かもしれなかった。

本人は真面目にやった結果なのだろうから始末が悪い。


……良く見たらあの二人近くにいないな。

さすがに真っ先に死んで気まずかったのだろうか。

「たぶん二人空いたから来るか?」

「勿論ですよ」

「はい!!」

さて、他のメンバーに一応チャット送らないと……。

【気づいたらあの二人がいないので】

【フレ呼びますけど周回しませんか】

うん、こんな感じだろう。

……よし、全員承諾してくれた。

今度こそ楽になると信じて出発しよう。


【すごく楽ですね】

ワラウドさんからのチャットがPT全員に届く。

【ですなー】

とりあえず無難に返信。

ほんっと楽だわ。

マイの高火力広範囲で楽々に雑魚を殲滅し、控えにミイがいる事で回復切れの心配もまず必要無い。

「プリーストってあんな戦い方もあるんですね……」

「ん、ああ、まあな……。」

同じプリーストだからやっぱ気になるんだろうな。

「頼むからあんなのやめてくれよ……」

タツが必死の懇願。いや、ほんとやめてください。マジで。

「……駄目なんですか?」

「いや、駄目って言われると……。うーん」

タツ困ってるなー。ミイはまともで良い娘な分強く言えないし。

正直、育成方法に口出しはするけど強制は出来ないしなあ。

現状スキルや職業に取り返しがつかない以上、どのような育成にするかは個人の自由だし、責任持てない。

アタッカー寄りの道に進みたいのであれば『絶対やめろ』とは言えない。


「……ミイはあんな感じになりたいのか?」

「あー……どうなんでしょう」

なんとも歯切れの悪い答え。

……かと思いきやミイはさらに言葉を続かせる。

「私、『ヒーラー』の事よく知らなくて……。だからあんな人がいて、ただ凄いなあって」

たどたどしいながらも、理由を話してくれる。

「だから……えーと……役に立てるなら私もああやって前で戦った方がいいのかなあ……って」

……サラもそうだが自己評価が低すぎる。

『役に立つ』どころかサラとミイの二人はこのPTの生命線だ。

……ミイからの真剣な思いが乗せられて言葉になんて返したらいいか分からない。

俺もタツも黙ってしまう。

こんな場面で茶化して終わらすなんて出来ない。

「うっわ、ミイちゃん健気ー!!ほらほら天使がここにいますよ!!」

うっわ、よりによって身内が茶化しやがった。

悪魔がここにいる。

……おっと休憩も終わりか、魔物も現れた。

「……とりあえず次は前に出てみるか?」

「いいんですか?」

ほぼ六人でクリア出来たのだ、仮にあっさり死んでもクリア自体に支障は無い……はず。

「分からないなら色々やってみ?俺ら別に文句とか言わんし」

……野良のあの三人も言わないだろう。

なんせ最初の二人があれだったから。


【戦神の憑依】

【戦神の憑依】

W戦神が雑魚を蹂躙していく。

『前に出ろ』とは言ったがあれ使えとは言って無いんだけどな……。

いや、別に良いんだけどさ。

「戦いの神様も大変ですねぇ……。過労で倒れちゃうんじゃないですかぁ?」

過労死する戦神様なんて見たくない。

考えてみれば呼び出されて、数分で帰ってまた呼び出されて……。うん、すっげえブラックだ。

……このペースならワラウドさんの『戦神の憑依』はボスの最後までギリギリ持ちそうな気がする。

『早起きは三文の徳』……少なくとも身内の素晴らしさを再確認出来ただけでも早起きの価値はあったのではないだろうか。


 因みにクリアタイムは初回の半分程でした。









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