決着
現在、俺の周囲に六人……つまりタツ以外の全員が一ヶ所に集まり、少し離れたところにタツだけが取り残されている状態だ。
「……集まりましたけどこの後どうするんです?」
「何もしない」
「……はい?」
うん、言葉通りの意味だ。
「いや、俺たちは本当に何もしない」
素晴らしい糞みたいな作戦。
本当の本当に最終手段だ。
「囮役だよ。俺たちはさ」
挑発……つまり、ヘイト操作さえあればタツは攻撃を当てられるのだ。
現状、『誰か』に攻撃を固定するのは不可能である。
それならば『場所』に固定する。
……そう、一ヶ所に集まっているこの場所に。
「なんとなーく、分かったッスけど……」
「これ無茶苦茶でしょ……」
ロロとマイは意図が分かったみたいだ。
MMOは初らしいが、さすがゲームには詳しいだけはある。
……ドラゴンが突っ込んでくるな。
オンゲーはスタートボタンで止める、なんて芸当不可能だ。まともに話す余裕も無い。
「避けないでいい!!死んでもいいからそのまま殴れ!!」
ドラゴンが突撃してくる。
狙いは勿論、俺たちのグループ。
そりゃ、確率なら7/8だ。さすがに来てくれないと困る。
ドラゴンに飛びかかり、タツは無傷で攻撃を成功させた。
そして、ドラゴンの突進攻撃。残り七人は全員ダメージを受ける。
俺たちの中で二、三人は攻撃に成功しーーマイ
、ミイ、サファイアが死んだ。
「あ……あの回復は……」
「サラは自分だけを二回回復してくれ!!」
「は、はい!!」
【ヒール】
……これでサラは次の攻撃も耐えられるだろう。
飛行モードは攻撃の頻度が落ちている事も幸いしている。
これなら攻撃の合間にヒールを二回唱えられるはず。
……次の攻撃はまあいい。確率で言えば4/5だ。
ほぼほぼ攻撃はこっちにくる。
……問題はそこで倒せなかった時だ。
ドラゴンの滑空攻撃に合わせた攻撃で丁度倒せたーーなんて事は無く、残念ながらドラゴンは健在だ。
……残りは俺とタツとサラの三人。
半ば諦めながらドラゴンを見つめていたが、異変に気づく。
「やばい!!」
「やべぇ!!」
「あ……」
俺とタツの少し後にサラも『ソレ』に気づいたようだ。
……このクエストで飽きるほど見たその行動。
ーーブレスの予備動作。
……最悪だ。このタイミングでそれかよ。
本当は運営が操作しているのでは無いかと疑いたくなる。
「……ショウさん、タツさん」
【ヒール】
サラは自分より先に俺を回復した。
……なんとなく、その意味とサラの言葉の先が予想出来る。
「……ごめんなさい。後、お願いしますね」
「ああ」
「……っ」
タツは何も言わなかった。
自分も短い返事しか出来なかった。
言葉が思い浮かばない。
【フレイムブレス】
ドラゴンの炎に包まれる。
……炎の中で仲間がまた一人消えていった。
【アーマー解除】
恐らく、このクエストで最後になるスキルを発動させる。
守りなんていらない。いや、意味が無いと言った方が正しいか。
ーーどうせ、二発は耐えられないのだ。
それなら、機動力を上げ攻撃に専念する。
敵を攻撃するチャンスは最大三回。
狙われて無い方がすれ違い様に切って一回。
狙われた方が相討ちで切って二回。
……生き残った方が最後に切り付けて三回。
正真正銘これで終わり。
他に攻撃タイミングは存在しない。
何も言わずタツと俺は間隔を開けて横並びになる。
五感を全て研ぎ澄ますんだ。
敵の行動一つ一つに集中しろ。
このドラゴンに限った話しでは無いが、細かな動作で次の行動が読める。
微妙にだが、攻撃に移る前の声の唸り方や首の捻り具合が異なっている。
タツはそれを見抜き、自分だけ当たらないコースを見極め攻撃していたのだろう。
つくづくレベルの違いを思い知らされる。
ドラゴンが攻撃に入る。
……あれはたぶん、オーソドックスな突進攻撃か。
勢い良く空から降りてくる。この角度……。
ターゲットは……タツだ。
……こんな時だけこっちを狙ってこない。
結局タンクが最後まで生き残る事になるのか。
皆を守る壁役としてどうなんだそれ。
意を決して走り出す。
自分が死んだら三十分以上の苦労が水の泡だ。
自分ではタツの技量には及ばない。
……それでも、今まで散々タツが成功する姿を見てきた。
立派な『お手本』を見てきたのだ。
あいつみたいに100%の成功率は無くてもいい。
今、この一回だけなら……!!
攻撃地点へとたどり着き、ジャンプする。
武器を振った時に、剣だけが触れる高度。
接近してくるドラゴンを見る。
今だーー。
タイミングを計り攻撃ボタンを押した。
繰り出すのはいつもの縦切り。
攻撃は剣を降る軌道の頂点でドラゴンに当たる。
そしてドラゴンは体に触れる事無く、頭上を通過していった。
ーー成功だ!!
着地し、ドラゴンを確認する為すぐに空を見る。
これでブレス系の攻撃を選択されたらゲームオーバーだ。
……しかし空のどこにもいない。
どれだけカメラを操作してもあの巨体が見つからない。
この時俺は本当に気づいていなかった。
少し視点を下げ、動かなくなったドラゴンを見つけるまでは。
「いやー疲れましたねぇ。私お腹空いちゃいましたよぉ」
「四十分くらいか?結構かかっちまったな……」
「……ショウさーん。なんか喋ってくださいよー」
「え……ん?」
正直今は頭に何も入ってこない。
ドラゴンの死体を見つけたと思ったら、クエストが終了し、ドロップアイテム等の画面に飛んでいたのだ。
今だに実感が全く湧かない。
「ん?じゃないですよ!!ドラゴン倒した人なんだから!!ヒーローインタビューってやつです!!」
ドラゴンを倒した……?俺が?
「……倒したの俺なのか?」
「いやいや!!カッコ良く飛びかかってドラゴンにとどめ刺したじゃないですか!!」
「いや、位置的に見えないし……」
「え?タツさんそうなんですか?」
「ああ、たぶん最後のシーンは足しか見えてないだろうな。俺が死んだ後おまえが切って倒したんだよ」
……そうだったのか。タツが相討ちで倒した可能性もあったが……。
「ヒーローがこれじゃ締まんないですねぇ。」
慣れてないんだ。ほっとけ。
「ていうか、皆ももっと喜びましょうよぉ」
「いや、疲れてるんだろ。ほっといてやれや」
うん、その通りだと思う。
……なんでこいつはこんな元気なんだ。
「まあ、確かに疲れましたねぇ。このまま解散します?」
「いや、ギルド作らなければいけないのではないか?」
やっべ、サファイアに言われるまでギルド忘れてた。
ドラゴン撃破で全て終わった気になってたな。
「……一番最初の作成だけ終われば後やっとくぞ」
「ならそれで!!タツさんお願いしまーす!!」
「私も構わないが……。大丈夫なのか?」
「基本後から変えられるからな。取り返しつかない要素は弄らないし」
「それなら朝一でログインして出来上がったギルド見ますね!!」
「後はギルマス決めとかねえと……」
「ギルマス?」
「ギルドマスター……ギルドのリーダーだ。一般メンバーと違って入団権限とか持ってたりするな」
「そんなもの、お前かショウだろ。」
「二人でサクッと決めといてくださいって。ミイちゃんうとうとモードなんですから」
「……いいのかよ」
「いいも何も、今までと変わらないじゃないですか。今更『リーダー変えます!!』とか言われる方が困りますって」
タツか『ショウ』。
サファイアはそう言った。
あんな使い捨ての囮みたいな真似をさせたのに『リーダー』の選択肢に入っていたのだ。
「結局全員落ちちまったな」
そう、六人共嫌な事一つ言わずにログアウトした。
全員で勝ち取った『ギルド』を全て任せるとして。
……とりあえず少しは期待に答えるとしますか。
このギルドの初仕事をするとしよう。
「……どっちがギルマスやるよ?」




