表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウチのPT@0  作者: ららら
2章 ボクたちのこれから
38/84

絶望の地

 ドラゴンが大きく吸い込んでいた息を止め、こちらに照準をつける。

勿論、繰り出されるのはあの攻撃。

【フレイムブレス】

空を見上げていたPT全員の目の前に、灼熱の波が広がった。

これは単なるゲーム世界のエフェクトに過ぎない。

熱くもなければ痛みもない。

ーーそれでも反射的に手が少し動いてしまう。

機器から手を離し、炎を払う為に手を動かそうとしていた。


 ……危ない、完全に飲まれるところだった。

すぐさま我に返り、画面を確認する。

ドラゴンはまだ攻撃に入っていない。

PTの皆の体力はーーほぼ全員が半分程度削られている。

……想像していたよりもきつい。

炎耐性を持つ『炎鎖のマント』を全員装備してこれなのだ。


 場を確認し終え、次の行動に移る。

敵の追撃に備え、俺は壁となる為に前に出た。

他の皆も攻撃する為ーーいや、動いてるのはタツ一人だ。

「ミイ、サラ!?どうした!?早く回復……」

タツより少し遅れて俺も声をかける。

「皆大丈夫か!?無理そうなら言ってくれ!!」

「え、あ……」

「……すまない、もう大丈夫だ!!」

「あ……ごめんなさい!!回復します!!」

……これで、なんとかなったか?

ようやく皆動き出す。


 今動けたのは、俺とタツの二人。

ゲームの世界に『慣れている』二人だ。

……どの時代でも血や死体に慣れていない新兵を戦場に連れていっても、初陣は殆ど機能しないとかなんとか。

これも、同じだろう。このグラでVRを付けてしまえば、リアルとバーチャルの境目が一瞬分からなくなる。

……先程の俺のように。


 行動を止めていたドラゴンが空から、炎の弾を吐き出す。

……標的は俺だ。まだ挑発は機能している。

火球を受け止める……。

HPバーが残り僅かとなり、ステータス画面が赤く警告してくる。

【ヒールウインドウ】

しかし、次の攻撃の前にサラの回復が発動する。

【火遁の術】

【ファイヤーボール】

【百花繚乱】

二重の炎がドラゴンを包み、大量の武器がドラゴンを貫く。

こちらも反撃を開始した。

そして、続くは大本命の一撃。

【フロストインパクト】

人の背丈以上はある巨大な氷塊が、ドラゴンに命中する。

マイがドラゴン戦の為に取った、水属性の中級魔法だ。


 ドラゴンは、『フロストインパクト』が命中した後、低い唸り声を上げ、痛みからか宙で体をよじらせる。

だが、そこまで。怯んだのは一瞬だけ。

そのまま急降下して襲いかかって来た。

直撃ーーする前にHPが回復した。

【エリアヒール】

ドラゴンはその勢いのまま俺を蹴飛ばし、急上昇して空へと帰っていく。


ミイとサラの範囲回復二回分でようやく、全員がブレスのダメージを回復出来た。

【ヒール】

……このヒールでやっと安全圏まで体力が戻る。

危なかった。ブレスの後に、満足な回復無しで攻撃を重ねられたら持ちこたえられない。


【フロストインパクト】

氷塊を受けるも、ドラゴンは効いていないかのようにまた急降下してくる。

……偉大なる先人の調査により、ドラゴンの行動パターンはある程度判明している。

この飛行モードを止める手段は二つ、一定時間を過ぎるか、ダメージを与えるか。

あれから遠距離チームが一斉攻撃を、何度も当てているのに悠々と空を飛び回っている。

うん、完全に火力不足だ。

ドラゴンの蹴りをガードし、敵のHPバーを見る。

……確実に減ってはいるんだ。ただ、倒しきれるか分からない。

そろそろ落ちてくれないとーー。

何度目かのマイの魔法。

それが命中した時、ドラゴンはいつもと違うリアクションを取る。

「ガアアァァァ!!!」

大きな声と共に、落下していく。

そのまま地面に叩き付けられーーはせずにその四本足で大地にしっかりと着地した。


「今だ!!叩け!!」

タツの合図でPTの皆は、遠距離から最初の近距離メインにシフトする。

無数の剣がドラゴンを切り、炎が肉を焼いていく。

【ポイズンファング】

それでも自分のダメージなどお構い無しに、敵は猛攻を繰り出してくる。

【ヒール】

【キュア】

猛攻ーーと言っても、ミイとサラが即座に回復してくれるおかげで、ブレスの時のような危険な状態にはなっていない。

うん、今はまだいいんだ、今は。

問題は、この泥仕合状態だとーー。


「……タツさん、もう『フロストインパクト』最後です」

「……分かった、『アイシクル』で攻めろ」

恐れていたーー訳でも無いな。予想通り主砲の弾切れ。

……マラソンで無理やり先頭集団に着いていったようなものだ。

当然、後になるに連れペースはダウンしていく。


かなりドラゴンの体力を削った。

……だが、それ以上にこちらのガス欠が酷い。

遠距離スキルが残っているのは、マイとロロのみ。

今はまだ回復が残っているが、じきに切れてしまうだろう。

そうなったなら、もうどうにもならない。

なまじ敵のHPが見えるせいで、先が見えてしまう。

『もしかしたらもう倒せるかも』

『次の攻撃で死ぬんじゃないか』

こんな希望を抱くことすら許されない。


「……皆死んでもまた、タツさんがなんとかしてくれたりは……」

「無理。いや、マジで」

「……ですよねー」

今回ばかりはタツでも無理だ。

超範囲のブレスの前では、回避も何もない。

結局のところ、リアルの腕前に意味は薄い。ゲーム内の数値で対抗するしか手はないのだろう。

……マイも実際分かっていて聞いたはずだ。


【フレイムブレス】

もう数えるのも諦めるくらい受けた、数回目のブレス。

この炎に目を奪われたのは、全員最初だけ。

二回目以降は、被弾してからの巻き返しは最初の比では無かった。

【ヒールウインドウ】

【エリアヒール】

即座に全体回復で立て直し、反撃をーー。

「タツさん、ショウさん」

ミイの声が流れる。嫌な予感がしたが的中しそうだ。

「……エリアヒール終わりです」

やっぱりか。そろそろだとは思っていた。

これは予想していた……。『これは』

しかしミイの言葉には続きがあった。

「それで……。ヒールも後二回しか……」

……絶望の道へと一歩進んだ気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ