山賊砦
『味方NPC』ーー何かしらゲームをプレイした事があるなら、一度くらいは共に戦った事があるだろう。
果たして味方NPCに必要な物は何だろうか?
ステータス?装備?強力な技や便利な魔法?
確かにそのどれもが大事だと思う。
それでも自分はコレを一番に挙げたい。
『AIの精度』
【すみません……】
【後は……お願いします】
「ちょっと!!勇者すぐ死んだんですけど!?」
いや、すっげーなマジで……。
戦闘開始三分程度で勇者様が倒れました。
「ご、ごめんなさい!!」
「えっ!!別にサラちゃん悪くないですよぉ」
「あれはしょうがねえ!!勇者がアホなんだ!!」
そう、タツやマイの言う通りサラの回復が遅いわけでは無い。
勇者がアホAIだったのだ。
『ステータスは高いのに棒立ち』
『強力な魔法を持っているのに使わない』
『敵軍に単身突撃』
そう、糞AI。
古来よりゲーマーが通ってきた道だと思う。
古き良きコマンド制のRPGからあった問題だ。
コレが一番マズイところはスペック上だけでは分からない点である。
勇者のステータス自体は全体的にかなり高水準で『勇者』らしい遠近両方いけるスキル構成になっている。
なってはいるのだが敵集団を発見後に速突撃。
囲まれてフルボッコ状態の上に弓などの遠距離攻撃で一斉放火。
援護する間もなく勇者様はあっさり倒れた。
「数が多いな……」
目の前には斧を持った山賊が八人。
その後ろ、門の前に分厚い鎧を着たガードマン?らしき者が五人。
門の上に弓兵が五人。
……それにーー。
「いたっ!!」
ガン!!という音と共にマイにダメージが入る。
「この攻撃って……上のアレですか?」
「たぶんな……」
視認できる限りで投石機が建物の上に四……。
上のアレ……投石機とかカタパルトとか呼ばれるアレだ。
西洋風の世界の城壁にあったり無かったりするアレ。
「なあ、上のアレどうすればいいんだ?」
……サファイアも名前が出てこないんだろうか。
『上のアレ』で名前が固定されている。
……まあ、自分も自信無いからアレでいいけど。
「全員少しづつ下がれ!!」
タツの言う通り全員少しづつ下がっていく。
……投石が止んだ。やはり初撃は射程距離ギリギリから撃ってきたらしい。
投石してきたのは四台の中で一番手前の一台だけだった。
たぶん勇者の様子を見ていたマイがアレの射程に運悪く入ってしまったのだろう。
「「マズイな……」」
俺とタツがハモった。
「なっかよし~」
アホなマイは無視しよう。割とマジでこれはキツイ。
「これマズイのか?」
「かなりマズイ……下手すりゃこの戦力じゃ突破出来ないかもしれん」
「そうですか?私でもそこまでダメージ受けてないんですよ?」
「ダメージ量じゃない、ダメージを受ける事がマズイんだよ」
「んん?」
「行動キャンセルされるだろ」
「あー……」
そう、ダメージ量以上に行動が止まるのが問題だ。
発動に時間のかかる範囲スキル【フレイムバースト】や【ヒールウインド】が発動キャンセルされてしまう可能性が高い。
しかも、直接正面から飛ばしてくるなら防ぎようがあるが、山なりの弾道で真上から降ってくる。
上を見ながらの戦闘なんて不可能だ。
……手前の斧持ち山賊は突破する方法はある。
ただその奥はどうだろうか。
『肉壁です』と言わんばかりの敵の後ろに遠距離武器九人。
弓は下から魔法でも撃てば倒せるかもしれない。
問題は投石機だ。おそらく下からでは攻撃が届かない。
常に投石ダメージを受けながらタフそうな門番五人を同時に倒す……ダメそうだ。
「あ、あの!!」
「ん?」
珍しいサラの発言。
「ショウさんが挑発かけて私がずっと回復してたら……なんとかなりませんか……?」
「それしか無いですよねー」
「無理。届かん」
「届かない……?」
「挑発が届かないんだ」
挑発は『周囲の』敵を引き付けるスキルだ。
いくら敵の攻撃範囲に入っていようと、遠くにいる相手には効果がない。
近接組には効果があるが遠距離組にはたぶん届かない。
半端に攻撃がばらけてしまう。
「あう……」
落ち込んだみたいだけど発言してくれた事は嬉しい。
というか、遠距離無視して突っ込むぐらいしか手は無いかもしれない。
……事前に分かっていれば対処法は有ったんだけどな。
とにかく手前の山賊から片付けるとするか。
敵のAIも様々な者がいる。
ランダムに動き出会ったら戦闘になる者。
特定の場所からあまり動かず防衛に徹する者。
そしてーーその場に留まりこちらを見つけたら一直線に向かってくる者。
「なーんか地味ですねぇ……」
近くの山賊に近づくと投石を食らってしまう。
それなら答えは簡単だ、山賊の方を釣って動かせばいい。
ファイヤーボールを撃ち、全員で少し下がる。
そして、投石の射程外まで追ってきたところを普通に倒す。
確かにマイの言う通り地味ではあるが確実だ。
実際、ダメージやスキルの消費を抑えて全て倒す事ができた。
ここまではいいんだ、ここまでは。
問題は分厚い鎧を着て門の前にいる集団。
先程のように釣れるならいい。
だが、動かなかった場合、矢と石を受けながらの戦いになる。
「どうしました?早く行きましょうよー」
「んー……」
「……心配しすぎではないか?正直言うとそれほど大した事は無かったと思うが……」
「そうですよー。なんだかタツさんも口数少ないし……」
『心配しすぎ』サファイアやマイの言う通りそうなのかもしれない。
これはしょうがない、だってこのクエの情報を持っていないのだから。
仮に全滅しても大した被害はない。
それでも慎重にならざるを得ないのはーー性格だろうか。
ネトゲなんて情報があって当たり前の世界だ。
それが染み付いているのだろう。
「ねー、行っちゃいますよー」
その言葉でハッと我に帰る。
「おーい!!びびってるんですかー?」
こいつ……。ひっぱたいて……。
しまった!!ミイがいない!!
失ってから分かる人間の重要さ。
「おーい!!おーい!!」
生身にダイレクトアタックが出来る人物がいない。
「ちょっとー!!ホントに起きてます?」
考えろ……このアホに天誅を下す方法を。
何か……何か……!!
「二人と痛あっ!!」
なんか知らんけど天誅は下ったようだ。
タツさんからメール?なんだろう……。
【悪い、手が空いてるなら姉を叩いてくれ】
……とりあえず近くにあった本を姉へ投げておいた。




