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ウチのPT@0  作者: ららら
1章 ゲームスタート
12/84

戦火の予兆ー4

 対処していない四択目からの攻撃。

しかしーーその刃は自分に届く事はなかった。

射線上に飛び出した幼女さんの手によって……。

二人は飛び出し一人はその場を飛び退く。これを逃すまいと俺とタツは全力で切りかかる。敵の体力は残り一割程度。ここで押しきる。

今効果が切れた『アーマー解除』について少し悩む。再度かけ直すか否かだ。

ーーうん、辞めよう。一か八かの賭けはここまでだ。これを使わなければ『ステルス』を使われても耐えられるはず。

【ステルス】

もう敵のHPバーは残りが見えないくらい弱っている。

前回と同じく壁に背を向けガードの体勢をとる。どのみち当たろうが当たるまいが死にはしない。

【火遁の術】

え?何もないところに火炎がぶつかり爆発した。

「おっ、ラッキー」

消えた相手に対しテキトーにぶっぱなしたタツの術。ステルス中はスキルのロックオンすらできないので手動で照準を合わせ当てたらしい。

【くっ!!】

【貴様ら冒険者風情に破れるとは……】

【一旦下がるぞ!!】

【我が軍は退却する!!】

なんかお決まりっぽいセリフでこいつは帰ったらしい。

透明中に倒したから全く実感が沸かないが。

さて、ボスも倒したしのんびりーーしている余裕はない。

三人はすぐさま町の前まで戻るのだった。


 どうしましょー、これ……。

『ここ頼む』とだけ言われ、幼女ペロペロさんとどこかに走って行ってしまったタツさんとショウさん。

「ミイちゃんどうするー?」

「どうするって言われても……」

うん、待つしかないよねー。どうやらタツさん達との回線は切れてしまったみたい。

「ボスを倒しに行ったのかなあ……」

『総攻撃』敵のなんとかのなんとかさんはそう言っていた。たぶんここに来る前に、ボスを倒してしまうつもりだと思う。

「私たちじゃ駄目だったのかな……」

妹がそう呟く。

「んー……」

言葉に詰まる。実際『駄目』だったのだろう。

レベルも装備もあの二人……いや、三人はこの中でも抜きん出ていた。それに足りないのはゲーム内のデータだけではない。

中の人間のゲーマーとしてのレベル……ゲームプレイの『経験値』が圧倒的に足らない。

「だいじょーぶ!!」

「え……?」

「その内あの人達に追い付けるから!!ね?」

「……」

妹は何も返さない。うん、追い付くなんて無茶だと自分でも思う。

「んーとね」

次に続く言葉を探す。その時ーー。

「来てる!!」

ミイちゃんの声。何が?と思い入れ辺りを見渡してみる。

そこへ弓兵が数人がやって来た。先程から来るのは弓兵ばかり。

「よし、行きますか!!」

「……うん」

少し元気がないカワイイ妹。ゲームに興味を持ってくれたのは嬉しい。嬉しいけど気持ちが入りすぎてると思う。

相手は顔も名前も知らない存在。それなのに実際にいる友人との事で悩んでいるかに見えてくる。

「私たちは置いていかれたんじゃない。『任された』んだよ?」

「ん……」

防衛だって大事な仕事だ。

『足手まといだから置いていかれた』

ではなく

『町の守りを任された』

こう思えば多少でもやる気はでてくる。

「でも……」

「ん?なーに?」

「これ、五人も要らないよね?」

……返す言葉もないわー。どう考えてもこっちのが楽だもんね。

「えーと……。なんかこう……、私たちには分からない何かが……。ね?」

会話しながらでもあっさり終わった今の戦闘。

この場の全員が感じてるだろう『五人も必要ない』と……。

「……」

リアルでも真横にいる妹からの無言の圧力。

VR機器を着けているため顔は見えない。見えないがジと目で睨まれているのが分かってしまう。

早くあの二人が帰ってこないか辺りを見渡す。すると、遠くに数人の敵影を見つける。

「あ、ほら敵だよー」

五……六……七。今回は少し多い。正直会話に詰まったこのタイミングで来てくれてありがたい。ただ近づいて来るに従って一人だけ他のモブザコとは少し違う事に気づく。

長い金髪。他よりも豪華に見える弓。明らかに一人だけ別格だ。

嫌な予感がする。これはもうーー。

【あなた方はこの国に雇われた冒険者……という訳ですか】

【あなた方に恨みはありませんがこれも我が主の命】

【『砕弓のべロペロネ』参ります!!】

「まーたペロペロなの……」

味方だけでなく敵までペロペロ。このゲーム大丈夫なのだろうか。

「『ペ』じゃなくて『べ』だよ。『べ』ロペロネ」

「え……」

妹からのツッコミを受けログを確認する。確かに『べ』だ。

「ええ……。どっちにしろ何この名前……」

「花の名前だけど……」

「実際の?」

「実際の」

なんでこんな名前の花を知っていたんだろう。

私も花の事くらい覚えた方がいいのかな……。


【挑発】

【防御の陣】

サファイアさんと(^◇^)さんが防御寄りのスキルを発動させている。

回復は私とサラさんがいる。

一般の弓兵は姉の魔法ならまとめて倒せる。

これなら三人が戻るまで時間を稼げる。

……そう思っていたのは甘かった。

【鎧通し】

べロペロネが発動させた弓矢のスキル。

これを『防御の陣』の効果範囲内でガードをして矢を止める(^◇^)さん。それでも一撃で体力の半分程減ってしまう。

【ヒール】

【ヒール】

私とサラさんでヒールを使いすぐ全快までHPを戻す。

【ファイヤーボール】

マイちゃんの魔法は当たってはいる。いるけど……。

【鎧通し】

また先程の攻撃で(^◇^)さんの体力が大きく減ってしまう。

【ヒール】

【ヒール】

これじゃあ埒が明かない……。五人中四人が防御に回ってしまっている。

(^◇^)さんはみんなの盾となり動けない。

サファイアさんは陣の位置取りの為動けない。

私とサラさんはすぐ回復を使う為に動けない。現状攻撃できるのはマイちゃんだけ……。

ただ敵のHPの減りを見る限り、間違いなく倒しきれない。このままダラダラ戦っても敵の体力より先に回復のスキルが尽きる。

……そうなったら打つ手がない。

今、私ができることは……。

一瞬敵の攻撃が緩む。敵を見ると空に向けて弓を引き絞ったまま動かない。

今しかない。そう思い駆け出したその瞬間。

「ダメ、ミイちゃん!!」

その声で思わず足を止める。

「マイちゃん?」

【高速みだれうち】

聞き返したその瞬間敵の攻撃が発動しーー。

この場の全員が大ダメージを負った。


『範囲攻撃』というやつなのだろうか。

べロペロネは空に向けて多数の矢を放ち、空から降ってきた矢が私たち全員にダメージを与えた。

咄嗟に範囲回復のスキルを発動の準備に入る。

「あ、ミイちゃん……」

姉の声。何か間違えたのだろうか。同じ回復役のサラさんも範囲回復の準備に入っている。私が間違えたとは思えない。

【鎧通し】

これが直撃し(^◇^)さんのHPが残りわずかにーー。

「あ!!」

失敗に気づく。二人同時に時間がかかるスキルを選択するべきではなかった。

【エリアヒール】

【ヒーリングウインドウ】

二人の範囲回復が発動する。

【ヒール】

【鎧通し】

【ヒール】

【ヒール】

ダメ、回復が追い付かない。

二つの回復で間に合わずに(^◇^)さんに回復をかけるが、その直後に敵の攻撃でまたダメージを受ける。

そしてまたすぐに回復をかける。

このままじゃ……。

【回復お願いします】

「ミイちゃん!?」

定型文で皆にそう送る。

『攻撃するのでサラさん回復お願いします』

さっきの文でこう伝わってくれるだろうか……。

少し不安だったが相手に向かって走り出す。


 弓使いは接近戦に弱い。マイちゃんのような職業だーーとタツさん達に聞いた覚えがある。

私が少しでも敵の攻撃を邪魔できるなら、回復だけして立っているより役に立つはず。

一発、二発……。私の攻撃が当たる。これなら……。

その時急にべロペロネがバク転で距離を開けーーバク転中に矢を射ってくる。

「っ!!」

咄嗟に横に飛び退き回避する。

【スナイプアロー】

敵がバク転を終え着地と同時にスキルを発動させ、目にも止まらぬ速さの矢が私を貫く。

避け切れない、かなりのダメージだ……。

……それでも前に出ないわけにはいかない。

遠距離から『鎧通し』や『高速みだれうち』を使われるよりははるかにマシ。

そもそもの目的は皆が帰るまでの時間稼ぎ。

近づいて相手が距離を取ってくれるなら、延々とおいかけっこになってくれて助かる。

私が近づき、相手がまたバク転で逃げる。

バク転中の矢を避け、相手のバク転終了のタイミングを見る。

ーー今だ!!

【スナイプアロー】

スキルを打たれる前に横に飛ぶ。どうやらギリギリ回避できた。

これならいける!!

もう一度距離を積める。私が回避できれば安全に時間を稼げる。

八人揃えばーーあの三人が帰ってくればきっと対抗手段もでてくる。

そう思い走り切りかかるーー。

その瞬間弓で殴られた。


 えーー。思いもよらぬ行動。そのまま数発弓で殴られる。

【ヒール】

サラさんが回復をくれた。このまま退かずに切りかかる。前回は油断していた。

気持ちを切り替えどちらにも対応できるように意識を変える。

今度はーー、敵の姿が宙に舞う。バク転中の矢を避け、相手が着地するタイミングを……。

また様子が違う。後方ではなく真上への大きなジャンプ。そして……。

【爆砕矢】

放たれた矢が地面に接触すると、大爆発が起こった。

爆発で大きく吹き飛ばされる。

しまった、ダメージもあるが、距離を離されたらーー。

【挑発】

【鎧通し】

爆風から起き上がった私には見慣れてしまった光景。

「悪い、大丈夫か!?」

まだ会って少しだけどとても安心できる声。

「ボスがもう来てたか。よく耐えたな」

この『世界』で初めて優しい声を書けてくれた人たち。

騎士と忍者がそこに立っていた。




残り時間9分

ボス1体討伐

残り2体生存確認


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