戦火の予兆ー2
弓兵部隊に向かって駆ける。ショウの言う事も分かるが、このままではじり貧だ。
「っ!!タツさん!!信じますよ!!」
『信じる』……。これはたかがゲーム。仮に全滅してももう一度クエを受ければ済む話しだ。
……それでもーー。
敵とマイの射線上に入り飛んできた矢を刀で弾き落とす。
このゲームは『物理系の飛び道具』はタイミングが合えば攻撃で弾く事が可能だ。種類やステータスの差で例外は出てきてしまうが。
遅れてきた第二射も弾く。所詮は雑魚敵のAIだ。『複数の方向から一斉掃射』でもされたら防ぎきれないが、そんな高度なAIはない。敵を見つけたらその場に留まり射つだけ。これなら自分でも時間稼ぎが可能だ。
今は妙に頭の中がクリアになっている。
弓を引いているモーションまでよく見える。
タイミング的に三連続で矢が飛んでくる。
一、二、三それを全て叩き落とすーー事は叶わず三本目は被弾した。
攻撃は見える、タイミングも分かる。それでもーー。
『キャラがついてこない』
『タツ』の現在のモーション速度では矢の全てを落とす事はできない。肉壁でかろうじて止めるのが精一杯だ。
比べるが間違いかもしれないが
『前のゲームのキャラならこんな事はなかった』
始めたばかりのゲームではいつもそう思う。
ゲームが進化し、リアルになればなるほど感覚の違いを大きく感じてしまう。
今度は五人全員の射撃。被害を最小限にする答えを瞬時に判断し、二、三番目の矢を食らう事にした。
タツさんもショウさんも手が離せない。
姉も魔法の準備で動けない。
……今まで頼り過ぎていたツケでもきたのかな。
敵を倒すことではなく『妨害する事』を意識して騎馬兵に切りかかる。
正直この行動が合っているか分からない。
今は何をすべきなのだろう。戦うのか、それとも回復に回るべきなのだろうか。
指示を出してくれる人に今は頼れない。
『私は何をしたらいいですか?』
この一文ですら私のタイピング速度では命取りになってしまう。
そんな私の心を知ってか知らずか
【パワーアップ】
私に攻撃力アップのスキルがかかる。
『間違ってない!!行け!!』と言われた気がした。
さっきより自信を持って敵に向かえるーー。
【バーストフレイム】
騎馬兵にマイの魔法が発動する。凄く長く感じた詠唱の数秒間。それでもどうにかタツはマイを守りきった。今度の魔法は騎馬兵六人を巻き込んだらしい。今の魔法で五人倒したようだ。
「マイ!!後は範囲魔法は必要ない!!」
「え……。あ、はい!!」
「ミイ!!お前も回復にまわってくれ!!」
「はい」
【ファイアーボール】
ミイと入れ替わるように少し前に出て魔法を使うマイ。
【ヒール】
【ヒール】
【ヒール】
【ヒール】
俺とタツは回復を貰う。因みにまだ絶賛敵からの袋叩き中だ。
騎馬兵は残り二体になった。これなら問題はなさそうである。あっちが終われば加勢に来てくれるだろう。そうすればこの戦闘は難なく終わる。
こうして、なんとか一つ目の波をクリアした。
あの後は基本的に楽な部類だった。あまり激しい戦闘もなく気が少し緩んでくる。しかし、クエストの残り時間が半分近くなった時、あるチャットが入る。
【ほほう。私にここまで食い下がるか……。】
【成る程、この町にも骨のある連中がいるようだ……。】
【オトナリ帝国騎士長が一人『迅雷のダリア』……。】
【本気で参る!!】
なんか顔も知らない迅雷()のダリアさんが本気になったようだ。
「なんですかこれ?」
マイの疑問。だが正直俺もタツも明確な答えを持ってはいない。いないのだが……。
「たぶん、アイツらが迅雷()さんに攻撃してイベントでも始まったんじゃねーの」
タツと同じ意見だ。忘れかけてたけど残りの八人が迅雷()さんにたどり着いたのだろう。
まあ、頑張ってほしい。一応同じクエストを受けてる『仲間』なのだから。
しかし他人事気分だった俺たちに最悪のチャットが入る。
【これ程の手練れに様子見なぞ必要あるまい!!】
【伝令をだせ!!他の隊長にも総攻撃をさせるのだ!!】
ーーは?
【一刻も早く町に侵入し、『アレ』を奪え!!】
総攻撃!?東西からボスが挟み撃ちしてくるのか!?
ボス二人は今のPTでは確実に耐えきれない。
打開手段は……。
「ショウ、走れ!!三人でボス一体仕留めるぞ!!」
「マイ、ミイ!!ここ頼む!!」
「え?」
【幼女さん来て下さい】
そのチャットを受けた幼女さんは、何もチャットを返さず俺たちの後を走って付いてくる。
走っている途中でボイスチャットの申請が入った。
ONにすると女性の声で通信が新しく入る。
「三人でボスを?本気ですか?」
ーーえ?こんな名前で女なのかよこの人……。
オッサンがネタでつけた名前じゃないんかい。今日一番の驚きだわ。
こんな場合でなければ色々ツッコミたいけどそれどころではない。
「本気」
「……分かりました。」
確かに三人でのボス討伐は正気ではないかもしれない。それでもこれしかないのだ。
【ふん、貴様ら運がなかったな】
走っていると急にチャットが入る。
「ボスが近いです!!」
幼女さんがそう叫ぶ。これボス登場のセリフか。
【この『疾風のリンドウ』が葬ってやろう!!】
遠くからいかにも暗殺者な出で立ちの人が向かってくる。
疾風()のリンドウさんが現れた。
残り時間15分
ボス3体生存確認




